日本国と中華人民共和国との間の海運協定
日本国と中華人民共和国との間の海運協定
日本国政府及び中華人民共和国政府は、
千九百七十二年九月二十九日に北京で発出された両国政府の共同声明に基づき、
両国民の間の友好的な交流を促進し及び海運の分野における両国間の関係を発展させるため、
平等互恵の原則に従い、
友好的な協議を経て、
次のとおり協定した。
第一条 この協定の適用上、
1 「船舶」とは、商業的目的のために旅客又は貨物の海上運送に従事する商船をいう。
2 「一方の締約国の船舶」及び「他方の締約国の船舶」とは、次条の規定に従い、日本国又は中華人民共和国の国籍を有する船舶と認められた船舶をいう。
第二条 いずれか一方の締約国の国旗を掲げる船舶で、当該一方の締約国の権限のある当局が自国の法令に従つて発給した船舶の国籍の証明のための書類を備えているものは、当該一方の締約国の国籍を有する船舶と認められる。
第三条 1 いずれの一方の締約国の船舶も、両締約国の間又は他方の締約国と第三国との間における旅客又は貨物の運送に従事することができる。
2 両締約国以外の国の船舶で、いずれか一方の締約国の海運ξ企業が傭船したものも、他方の締約国が異議を申し立てない限り、1に規定する運送に参加することができる。
第四条 1 いずれの一方の締約国の船舶も、第三国の船舶と均等の条件で、他方の締約国のすべての開港に出入する権利を有する。
2 いずれか一方の締約国の船舶が他方の締約国の領海を航行し、他方の締約国の港に出入し、又は他方の締約国の港の内外において停泊する場合には、当該船舶並びにその旅客及び積荷は、税関、検疫及び港に関する規則及び手続の適用に関し、各種の課徴金及び費用の徴収に関し、港及び停泊地における停泊、泊地の変更及び貨物の積卸しに関し、港の設備及び航行補助のための設備の使用に関し、水先の役務に関し、並びに船舶、乗組員及び旅客のために必要とされる各種の物資の供与及び各種の便宜の提供に関し、第三国の船舶並びにその旅客及び積荷に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。
第五条 いずれの一方の締約国も、他方の締約国の権限のある当局が当該他方の締約国の船舶に対して発給した船舶の積量測度に関する証書を承認する。
いずれか一方の締約国の権限のある当局が発給した船舶の積重測度に関する証書を備えていない船舶については、他方の締約国は、当該他方の締約国の法令に従つて積量の測度を行うことができる。
第六条 1 いずれの一方の締約国も、他方の締約国の権限のある当局が発給した乗組員身分証を承認するものとし、当該他方の締約国の船舶が当該一方の締約国の港の内外において停泊している間、当該船舶の乗組員で前記の乗組員身分証を所持しているものに対し、出入国、上陸、税関及び検疫に関する規則及び手続の適用に関し、第三国の船舶の同様の乗組員に与える待遇よりも不利でない待遇を与える。
2 1に規定する乗組員身分証とは、日本国にあつては、「船員手帳」又はこれに代えて日本国の定めるものをいい、中華人民共和国にあつては、「海員証」又はこれに代えて中華人民共和国の定めるものをいう。
3 いずれか一方の締約国の船舶が他方の締約国の港の内外において停泊している間、当該船舶の船長又は当該船長がその代理人として指定する乗組員は、当該他方の締約国において必要とされる手続を完了した後に、当該一方の締約国の外交官又は領事官と面会することができる。
第七条 この協定は、沿岸貿易には適用しない。ただし、いずれか一方の締約国の船舶が、国外から運送する旅客若しくは積荷の全部若しくは一部を卸し又は国外向けの旅客若しくは積荷の全部若しくは一部を積み込むため、他方の締約国の一の港から他の港に航行することは、沿岸貿易とはみなされない。
第八条 1 いずれか一方の締約国の船舶が他方の締約国の沿岸において海難その他の緊急事態に遭遇した場合には、当該他方の締約国は、当該船舶並びにその乗組員、旅客及び積荷に対し、類似の場合に第三国の船舶並びにその乗組員、旅客及び積荷に与える援助及び保護よりも不利でない援助及び保護を与えるとともに、最も迅速な方法により、当該一方の締約国の関係当局にこれらに関する状況を通報する。
2 1の船舶から救い上げられた積荷その他の物品は、それが当該他方の締約国の国内における消費のために搬入されない限り、関税その他の租税を免除される。
第九条 一方の締約国は、他方の締約国の海運企業に対し、当該海運企業が海運業務に関連して当該一方の締約国の領域内で得た収入のうち支出を超える部分を、両締約国が受け入れることができる為替相場により、日本円、人民幣又は両国において認められている交換可能な通貨で、当該海運企業の本店に送金する権利を与える。
第十条 両締約国は、両国間の海運活動が相互の間の経済貿易関係の発展に寄与し得るよう、両締約国の船舶による旅客又は貨物の円滑な運送の促進につき、できる限り協力する。
第十一条 両締約国は、いずれか一方の締約国の要請がある場合には、この協定の実施に関連して生じた問題を処理するため、適当な方法により、両締約国が合意する日時及び場所において、協議することができる。
第十二条 1 この協定は、その効力発生のために国内法上必要とされる手続がそれぞれの国において完了したことを確認する旨の通告が交換された日から三十日目の日に効力を生ずる。この協定は、三年間効力を有するものとし、その後は、2の規定に定めるところによって終了するまで効力を存続する。
2 いずれの一方の締約国も、六箇月前に他方の締約国に対して文書による予告を与えることにより、最初の三年の期間の満了の際又はその後いつでもこの協定を終了させることができる。
以上の証拠として、千名は、各自の政府から正当に委任を受けて、この協定に署名した。
千九百七十四年十一月十三日に東京で、ひとしく正文である日本語及び中国語により本書二通を作成した。
日本国政府のために 東郷文彦
中華人民共和国政府のために 韓念龍