綿製品の貿易に関する日本国政府と欧州経済共同体との間の協定
綿製品の貿易に関する日本国政府と欧州経済共同体との間の協定
 綿製品の貿易に関する日本国政府と欧州経済共同体との間の交換公文
 一方日本国政府及び他方欧州共同体理事会は、
 綿製品の国際貿易に関する長期取極(以下「ジュネーヴ取極」という。)の規定、特にその第四条の規定に従い、日本国と欧州経済共同体(以下「共同体」という。)との間の綿製品貿易の秩序ある発展を確保することを希望し、
 相互協力の精神にのつとり、次の諸規定に合意した。
第一条
 この協定は、日本国を原産地としかつ積出地とする綿製品でこの協定の附属書に掲げるものに適用する。
第二条
 共同体は、この協定の期間中、この協定及び附属書の規定により、新たな数量制限を設けないこと及び現行の数量制限の適用を停止することを約束し、また、日本国を原産地としかつ積出地とする綿製品の共同体への輸入が合意された数量をこえない限り、ジュネーヴ取極第三条の規定を援用しない。
 日本国政府は、合意された上限が尊重されるよう適当な措置をとり、かつ、このため必要と認められる措置の実施について共同体と協力することを約束する。
第三条
(a) 総上限
 協定の有効期間中の各一年の期間について合意さりた総数量は、一二、七四五メートル・トンとする。
(b) 分類群別上限
 一年の期間についての数量は、二の品目分類群の間で次のとおり配分される。
 メートル・トン
 第一分類群 生地又はさらし綿織物(マーセライズされているかどうかを問わない。) 五、九一◯
 第二分類群 その他の綿織物、綿の二次製品及び綿の雑製品 六、八三五
(c) 個別上限
 (b)に定める各分類群別上限の限度内において、取引が過度に特定品目に集中することを避けるため、この協定に附属する品目表を基礎として個別上限が合意されるものとする。
 いずれか一年の期間において、共同体が、個別上限の対象となつていない特定の品目の輸入について急速かつ重要な増大を認める場合には、共同体は、個別上限を定めるよう要請することができる。この要請があつた場合には、当該品目についての個別上限の数量を合意するためすみやかに両当事者間で協議が行なわれる。
第四条
1 第二分類群について定める数量の十パーセントまで第二分類群から第一分類群への振替えを行なうことができる。
 個別上限の未使用分は、他の個別上限に転用することができる。ただし、当該他の個別上限の十パーセントを限度とする。
 個別上限の未使用分は、その分類内の他の品目で個別上限の対象となつていないものに使用することができる。
2いずれか一年の期間におけるいずれかの分類群別上限の未使用分は、振替え又は他の繰越しの対象となつていない限り、当該上限の十パーセントの限度内において次の一年の期間の同一の分類群別上限に繰り越すことができる。
  個別上限の未使用分は、振替え又は他の繰越しの対象となつていない場合には、当該上限の十パーセントの限度内において次の一年の期間の同一の個別上限に繰り越すことができる。
3日本国政府が適当な時に書面で要請する場合には、合意された各上限の十パーセントの限度内において、次の一年の期間について定められた上限から先取りが認められる。ただし、日本国政府は、特に季節的要因を考慮に入れ、すべての分類の綿製品の輸出が各一年の期間を通じてできる限り均等に行なわれるよう努力する。先取りの量は、次の一年の期間の上限から控除される。
第五条
 両当事者は、この協定中に規定する上限の管理が二重管理方式に従つて実施されることに合意する。
第六条
 両当事者は、共同体に仕向けられる日本国の綿製品の輸出及びこれに対応する共同体への輸入に関するすべての情報を交換することに合意する。各当事者は、この協定の適用にあたり、各自が用いる分類方法を適用するものとし、また、このようにして提供された情報の比較を容易にするため他の当事者と協力する。
第七条
 共同体が日本国政府に対し、この協定の実施につき共同体の輸入者と日本国の輸出者との間の現行の取引関係の維持について困難が生じた旨を通報した場合には、両当事者は、この取引関係の維持を確保するため必要なあらゆる措置を決定する目的をもつて協議を行なう。
第八条
 両当事者は、いずれか一方の当事者の要請があつたときは、かつ、少なくとも年一回、この協定の実施から生ずるすべての問題について協議することを約束する。
第九条
 この協定は、署名の日に効力を生じ、かつ、千九百七十年十月一日から三年の期間適用される。
 各当事者は、各一年の期間の満了の少なくとも百二十日前にこの協定を終了させる意思を通告することによつてこの協定を廃棄することができる。その場合には、この協定は、当該一年の期間が満了する時に終了する。
 この協定の附属書は、協定の不可分の一部をなす。
第十条
 この協定は、ひとしく正文である日本語、ドイツ語、フランス語、イタリア語及びオランダ語により本書二通を作成する。
 千九百七十二年二月七日にブラッセルで
 日本国政府のために
 安倍 勲
 欧州共同体理事会のために
 W・エルンスト
附属書
 協定第一条に規定する綿製品の表
 分 類 群 分 類   品   目   名
第一分類群 生地又はさらし綿織物(マーセライズされているかどうかを問わない。)
B生地綿織物
B1テリー織物
B2綿の含有重量八十五パーセント未満のもじり及びテリー織物を除くその他の織物
B3綿の含有重量八十五パーセント以上のもじり及びテリー織物を除くその他の織物で、平織、一平方メートル当り重量七十グラムをこえ百三十グラム以下、幅百十五センチメートルをこえ百六十五センチメートル以下、キログラム当り五万五千メートル(英国式三十二番手)未満のメートル番号の糸のみからなるもの
B4綿の含有重量八十五パーセント以上のもじり及びテリー織物を除くその他の織物で、平織、一平方メートル当り重量百三十グラム以下のもの(B3に該当するものを除く。)
B5綿の含有重量八十五パーセント以上のもじり及びテリー織物を除くその他の織物で、平織、一平方メートル当り重量百三十グラムをこえ二百グラム以下、幅八十五センチメートル以上百十五センチメートル以下のもの
B6綿の含有重量八十五パーセント以上のもじり及びテリー織物を除くその他の織物で、平織、一平方メートル当り百三十グラムをこえ、二百グラム以下、幅百十五センチメートルをこえるもの
B7綿の含有重量八十五パーセント以上のもじり及びテリー織物を除くその他の織物で、幅八十五センチメートル以上、平織以外のもの
B8その他の織物
C生地以外の綿織物
C1さらし(マーセライズされているかどうかを問わない。)
第二分類群 その他の綿織物、綿の二次製品及び綿の雑製品
C2もじり織物(生地及びさらし以外のもの)
C3テリー織物(生地及びさらし以外のもの)
C4パイル及びシェニール織物(五五・◯八及び五八・◯五に該当する織物を除く。)
C5もじり及びテリー織物以外の織物(浸染したもの)
C6もじり及びテリー織物以外の織物(捺染したもの)
C7もじり及びテリー織物以外の織物(糸染したもの)
D綿製品家庭用二次製品
D1ベッドリネン
D2テーブルリネン
D3テリー織のトイレットリネン、オフィスリネン又はキッチンリネン
D4その他の家庭用品
E綿製衣料品
E1メリヤス製手袋(ゴム糸を使用していないもの又はゴム加工をしていないもの)
E2メリヤス製下着(ゴム糸を使用していないもの又はゴム加工をしていないもの)
E3メリヤス製の外衣、その附属品及びその他の製品(ゴム糸を使用していないもの又はゴム加工をしていないもの)織物外のメリヤス製品(ゴム糸を使用したもの又はゴム加工をしたもの)
E4男子用及び少年用布帛製ズボン
E5その他の男子用及び少年用布帛製外衣
E6婦人用、少女用及び幼児用布帛製外衣
E7男子用及び少年用布帛製シャツ
E8男子用及び少年用布帛製下着
E9婦人用、少女用及び幼児用布帛製下着
E10ハンカチーフ
E11その他の衣類又はその附属品
Fその他の綿織物及び綿二次製品
F1毛布
F2雑巾、布巾、ダスターその他これらに類するもの
F3エア・マットレス
F4その他の製品
 (第一書簡)
 (綿製品の特定問題の解決、自由化の現状不変更及び個別上限の設定に関する書簡)
(共同体側書簡)
 書簡をもつて啓上いたします。本官は、日本国政府と欧州経済共同体との間で行なわれ、千九百七十二年二月七日に綿製品の貿易に関する協定の署名に至つた交渉の妥結にあたり、両当事者が次の諸規定に合意したことを確認する光栄を有します。
1共同体は、この協定がジュネーヴ取極の枠内で締結されることに留意する。したがつて、この協定の特殊な方式は、綿製品に関する特定の問題を解決するためのものであつて、他の分野において起こりうべき諸問題についてとられる解決になんら影響を与えるものではない。
2協定のいかなる規定も、共同体加盟諸国と日本国との間に存在する綿製品の自由化の現状に影響を与えるものと解されてはならない。
3関係品目の輸入の急速かつ重要な増大が市場撹乱を起こし、又は起こすおそれがあるときにのみ、共同体は、協定第三条(c)に基づいて個別上限を設定するよう要請するものと了解される。
 同条に定める協議の結果が得られるまでの間、日本国政府は、要請の行なわれた日から当該品目の輸出を、統計資料が入手することができる最近の十二箇月間に行なわれた輸出の百五パーセントを期間比例按分したものに相当する水準に維持する。
 本官は、閣下がこの書簡の内容に関する貴国政府の同意を確認されれば幸いであります。
 本官は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。
 千九百七十二年二月七日にブラッセルで
 欧州共同体理事会の名において W・エルンスト
 欧州共同体に対する日本政府代表 安倍 勲閣下
(日本側書簡)
 書簡をもつて啓上いたします。本使は、本日付けの貴官の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
(共同体側書簡)
 本使は、前記の書簡の内容に関する日本国政府の同意を確認する光栄を有します。
 本使は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて貴官に向かつて敬意を表します。
 千九百七十二年二月七日にブラッセルで
 欧州共同体に対する日本政府代表 安倍 勲
 欧州共同体委員会通商局長 ウォルフガング・エルンスト殿
 (第二書簡)
 (適用地域に関する書簡)
(共同体側書簡)
 書簡をもつて啓上いたします。本官は、日本国政府と欧州経済共同体との間で行なわれ、千九百七十二年二月七日に綿製品の貿易に関する協定の署名に至つた交渉の妥結にあたり、両当事者が次の規定に合意したことを確認する光栄を有します。
 ベネルックス
 この協定は、オランダ王国については、同王国の欧州地域にのみ適用される。
 本官は、閣下がこの書簡の内容に関する貴国政府の同意を確認されれば幸いであります。
 本官は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。
 千九百七十二年二月七日にブラッセルで
 欧州共同体理事会の名において W・エルンスト
 欧州共同体に対する日本政府代表 安倍 勲閣下
(日本側書簡)
 書簡をもつて啓上いたします。本使は、本日付けの貴官の次の書簡を受領したことを確認する光栄有します。
(共同体側書簡)
 本使は、前記の書簡の内容に関する日本国政府の同意を確認する光栄を有します。
 本使は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて貴官に向かつて敬意を表します。
 千九百七十二年二月七日にブラッセルで
 欧州共同体に対する日本政府代表 安倍 勲
 欧州共同体委員会通商局長 ウォルフガング・エルンスト殿
 (第三書簡)
 (加工再輸出及び通過貿易に関する書簡)
(共同体側書簡)
 書簡をもつて啓上いたします。本官は、日本国政府と欧州経済共同体との間で行なわれ、千九百七十二年二月七日に綿製品の貿易に関する協定の署名に至つた交渉の妥結にあたり、両当事者が次の諸規定に合意したことを確認する光栄を有します。
1共同体へのすべての輸出は、合意された上限から控除される。共同体加盟諸国の当局は、第三国向けの加工再輸出のために追加的必要がある場合には、合意された上限から控除することなく輸出許可証を発給することを可能とする特別輸入許可証を発給することができる。
 欧州共同体委員会は、四半期ごとに日本国政府に対しその旨通報することとする。
2協定は、共同体加盟諸国の業者が従来行なつて来た第三国との自由な取引をいかなる方法でも妨げるものではない。
 この原則は、通過貿易制度の下で行なわれる取引及び共同体の関税領域にかかわらない商品取引についても同様に適用される。
 本官は、閣下がこの書簡の内容に関する貴国政府の同意を確認されれば幸いであります。
 本官は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。
 千九百七十二年二月七日にブラッセルで
 欧州共同体理事会の名において W・エルンスト
 欧州共同体に対する日本政府代表 安倍 勲閣下
(日本側書簡)
 書簡をもつて啓上いたします。本使は、本日付けの貴官の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
(共同体側書簡)
 本使は、前記の書簡の内容に関する日本国政府の同意を確認する光栄を有します。
 本使は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて貴官に向かつて敬意を表します。
 千九百七十二年二月七日にブラッセルで
 欧州共同体に対する日本政府代表 安倍 勲
 欧州共同体委員会通商局長 ウォルフガング・エルンスト殿
 (第四書簡)
 (品目関連表に関する書簡)
(共同体側書簡)
 書簡をもつて啓上いたします。本官は、日本国政府と欧州経済共同体との間で行なわれ、千九百七十二年二月七日に綿製品に関する協定の署名に至つた交渉の妥結にあたり、両当事者が、次のことに合意したことを確認する光栄を有します。
 協定第一条に規定する綿製品の品目表とこれに対応する「NIMEXE」番号との間の関連表は、できるだけ早期に両当事者の専門家により作成される。
 本官は、閣下がこの書簡の内容に関する貴国政府の同意を確認されれば幸いであります。
 本官は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。
 千九百七十二年二月七日にブラッセルで
 欧州共同体理事会の名において W・エルンスト
 欧州共同体に対する日本政府代表 安倍 勲閣下
(日本側書簡)
 書簡をもつて啓上いたします。本使は、本日付けの貴官の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
(共同体側書簡)
 本使は、前記の書簡の内容に関する日本国政府の同意を確認する光栄を有します。
 本使は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて貴官に向かつて敬意を表します。
 千九百七十二年二月七日にブラッセルで
 欧州共同体に対する日本政府代表 安倍 勲
 欧州共同体委員会通商局長 ウォルフガング・エルンスト殿