通商に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定
通商に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定
日本国政府及びメキシコ合衆国政府は、両国間の伝統的な友好関係を強化すること及び両国間に存在する通商関係を容易にし、かつ、発展させることを希望して、平等及び相互の利益の原則を基礎とする通商に関する協定を締結することに決定し、このため、次のとおり全権委員を任命した。
日本国政府
外務大臣 愛知揆一
メキシコ合衆国政府
日本国駐在特命全権大使 フリアン・ロドリゲス・アダメ
これらの全権委員は、互いにその全権委任状を示し、それが良好妥当であると認められた後、次のとおり協定した。
第一条 1一方の締約国が次の事項につき第三国を原産地とする産品又は第三国に仕向けられる産品に対して与えており又は将来与えることがあるすべての利益、特典、特権又は免除は、他方の締約国を原産地とする同様の産品又は他方の締約国に仕向けられる同様の産品に対し、即時に、かつ、無条件に与えられるものとする。
(a)すべての種類の関税及び課徴金であつて輸入若しくは輸出に対して若しくはこれらに関連して課され又は輸入若しくは輸出のための支払手段の国際的移転に対して課されるもの、これらの関税及び課徴金の徴収の方法並びに輸入及び輸出に関連するすべての規則及び手続
(b)輸出貨物及び輸入貨物に対する内国税の適用並びに輸入貨物の国内における販売、販売のための提供、購入、分配又は使用に影響を及ぼすすべての法令及び要件
2いずれの一方の締約国も、他方の締約国のすべての産品の輸入又は当該他方の締約国に仕向けられるすべての産品の輸出に対し、制限又は禁止を課してはならない。ただし、すべての第三国からの同様の産品の輸入又はすべての第三国への同様の産品の輸出が同様に制限され又は禁止されている場合は、この限りでない。
第二条 各締約国は、支払手段に関するすべての管理又は外国為替に関する規則で自国が設定しており又は将来設定することがあるものを貿易に関して適用するにあたり、他方の締約国に対して無条件に最恵国待遇を与える。
第三条 両締約国の間の貿易に関連するすべての支払は、自由に交換することができる通貨により、国際的に認められた商業上及び金融上の慣習に従つて行なわれるものとする。
第四条 第一条の規定は、いずれか一方の締約国が与えており又は将来与えることがある次の特別の利益には適用しない。
(a)内国漁業の産品に対して与える利益
(b)国境貿易を容易にするため隣接国に与える利益
(c)当該一方の締約国が構成国となつており又は構成国となる関税同盟又は自由貿易地域の構成国に与える利益
第五条 この協定のいかなる規定も、各締約国が国際通貨基金協定又はこれを改正し若しくは補足する多数国間の協定の締約国として有しており又は有することがある権利及び義務に対し、両締約国が当該協定の締約国である限り、影響を及ぼすものではない。いずれか一方の締約国が当該協定の締約国でなくなつた場合には、両締約国は、その時の状況に照らし、この協定の規定に関してなんらかの調整をすることが必要であるかどうかを決定するため、直ちに相互に協議するものとする。
第六条 この協定は、締約国が次の措置を採用し又は適用することを妨げるものではない。
(a)公共の安全及び秩序、国防又は国際の平和及び安全の維持に関する措置
(b)武器、弾薬又は軍需品の取引に関する措置
(c)人、動物又は植物の生命及び健康の保護に関する措置
(d)美術的、歴史的又は考古学的な国宝の保護に関する措置
(e)金、銀及びこれらの貨幣の輸入及び輸出に関する措置
(f)核物質又はその利用若しくは加工から生ずる放射性副産物の取引、利用又は消費に関する措置
第七条 1各締約国は、他方の締約国がこの協定の適用から又はこの協定の適用に関連して生ずるいかなる問題について行なう申入れに対しても好意的考慮を払うものとする。
2両締約国は、いずれか一方の要請があつたときは、1にいう問題につき、及び両国間の通商関係を容易にし、かつ、発展させるための適当な措置につき、相互に協議するものとする。
第八条 1この協定は、批准されなければならず、批准書の交換の日の後一箇月で効力を生ずる。批准書の交換は、できる限りすみやかにメキシコ市で行なわれるものとする。
2この協定は、三年の期間中効力を有し、その後は一年の期間ずつ自動的に延長される。ただし、いずれか一方の締約国が他方の締約国に対しこの協定を終了させる意思を当該期間の満了の少なくとも三箇月前に通告した場合は、この限りでない。
以上の証拠として、各全権委員は、この協定に署名調印した。
千九百六十九年一月三十日に東京で、ひとしく正文である日本語及びスペイン語により本書二通を作成した。
日本国政府のために
愛知揆一
メキシコ合衆国政府のために
フリアン・ロドリゲス・アダメ
議定書
通商に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定(以下「協定」という。)に署名するにあたり、下名の全権委員は、各自の政府から正当に委任を受け、協定の不可分の一部と認められる次の規定をさらに協定した。
1協定のいかなる規定も、いずれか一方の締約国が関税及び貿易に関する一般協定の締約国として有しており又は有することがある権利及び義務に影響を及ぼすものではない。
2協定のいかなる規定も、千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコで署名された日本国との平和条約第三条に掲げるいずれかの地域に対する行政、立法及び司法に関して同条後段に定める事態が継続する限り、日本国が同地域の住民及び船舶並びに同地域との貿易に対して与えており又は将来与えることがある権利及び特権の享受を要求する権利をメキシコ合衆国に与えるものと解してはならない。
以上の証拠として、各全権委員は、この議定書に署名調印した。
千九百六十九年一月三十日に東京で、ひとしく正文である日本語及びスペイン語により本書二通を作成した。
日本国政府のために
愛知揆一
メキシコ合衆国政府のために
フリアン・ロドリゲス・アダメ
(通商に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定に関する交換公文)
(メキシコ側書簡)
書簡をもつて啓上いたします。本使は、メキシコ政府がコスタ・リカ、エル・サルヴァドル、グァテマラ、ホンデュラス、ニカラグァ及びパナマの政府に対しこれらの国からの特定の産品について関税上の特恵を与えるためにこれらの政府と取極を行なう意向を示したこと並びにこの問題がラテン・アメリカ自由貿易連合によつて検討されていることを閣下に通報する光栄を有します。
メキシコ政府は、前記の取極の効力発生前に、本日署名された通商に関する協定が前記の取極と両立するものとなるように同協定を改正する目的をもつて日本国政府と協議しなければならないものと了解し、また、その協議によつて改正に関する合意が得られない場合には、いずれの一方の締約国も、同協定第八条2の規定にかかわらず、いつでも、他方の締約国に対する書面による三箇月の予告で同協定を終了させることができるものと了解します。
また、メキシコ政府は、自国の国家企業を通じて資材の輸入を行なうにあたつていかなる国をも差別しておらず、したがつて、日本の企業がメキシコの公共部門による買付けに現在と同様に参加することについて好意的に考慮するものであります。メキシコの公共部門は、当該資材の国外における購入が、品質、価格及び金融について最良の条件を提供する市場で行なわれることに関心を有します。
本使は、閣下が日本国政府に代わつて前記の了解を確認されることを要請いたします。
本使は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向かつて重ねて敬意を表します。
千九百六十九年一月三十日に東京で
日本国駐在メキシコ合衆国特命全権大使
フリアン・ロドリゲス・アダメ
日本国外務大臣 愛知揆一閣下
(日本側書簡)
書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
本使は、メキシコ政府がコスタ・リカ、エル・サルヴァドル、グァテマラ、ホンデュラス、ニカラグァ及びパナマの政府に対しこれらの国からの特定の産品について関税上の特恵を与えるためにこれらの政府と取極を行なう意向を示したこと並びにこの問題がラテン・アメリカ自由貿易連合によつて検討されていることを閣下に通報する光栄を有します。
メキシコ政府は、前記の取極の効力発生前に、本日署名された通商に関する協定が前記の取極と両立するものとなるように同協定を改正する目的をもつて日本国政府と協議しなければならないものと了解し、また、その協議によつて改正に関する合意が得られない場合には、いずれの一方の締約国も、同協定第八条2の規定にかかわらず、いつでも、他方の締約国に対する書面による三箇月の予告で同協定を終了させることができるものと了解します。
また、メキシコ政府は、自国の国家企業を通じて資材の輸入を行なうにあたつていかなる国をも差別しておらず、したがつて、日本の企業がメキシコの公共部門による買付けに現在と同様に参加することについて好意的に考慮するものであります。メキシコの公共部門は、当該資材の国外における購入が、品質、価格及び金融について最良の条件を提供する市場で行なわれることに関心を有します。
本使は、閣下が日本国政府に代わつて前記の了解を確認されることを要請いたします。
本大臣は、閣下の書簡に述べられている了解を日本国政府に代わつて確認する光栄を有します。
本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向かつて重ねて敬意を表します。
千九百六十九年一月三十日
日本国外務大臣 愛知揆一
日本国駐在メキシコ合衆国特命全権大使
フリアン・ロドリゲス・アダメ閣下