漁業監視船の活動に関する日本国政府と大韓民国政府との間の交換公文
漁業監視船の活動に関する日本国政府と大韓民国政府との間の交換公文
 書簡をもつて啓上いたします。本長官は、千九百六十五年六月二十二日に東京で署名された大韓民国と日本国との間の漁業に関する協定に規定された暫定的漁業規制措置の実施に関し両国政府の代表の間で到達した次の了解を大韓民国政府に代わつて確認する光栄を有します。
(1) 両国政府は、それぞれ自国の法令の範囲内で、この書簡に添付する附属書I、II及びIIIの規定を実施する。
(2) 両国政府は、相互の合意により、(1)にいう附属書の規定を随時修正することができる。
(3) (1)にいう附属書I、II及びIIIのそれぞれの規定は、この了解が効力を生ずる日から三年間効力を存続し、その後は、いずれか一方の国の政府が他方の国の政府に対してその適用を終了させる意思を書面により通告する日から一年間効力を存続する。
 本長官は、さらに、この書簡及び前記の了解を日本国政府に代わつて確認される閣下の返簡を閣下の返簡の日付の日に効力を生ずる両国政府間の合意を構成するものとみなすことを提案する光栄を有します。
 本長官は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。
 千九百六十六年十月十八日
 大韓民国外務部長官
李東元
 日本国特命全権大使
木村四郎七閣下
附属書I
  大韓民国と日本国との間の漁業に関する協定についての合意された議事録3(a)、(b)及び(d)、6並びに8(c)に関し、両国の監視船相互間の通信連絡は、次の方法に従つて行なうものとする。
1(a) 両国の監視船の無線電信の設備を有している船舶局相互間の通信に使用する周波数は、呼出し及び応答のためには二、〇九一キロサイクルとし、その他の通信のためにはそれぞれの監視船の船舶局の通常の周波数とする。
(b) (a)にいう船舶局は、その監視船が行動している間、常時二、〇九一キロサイクルを聴守する。
2 一方の国の1(a)にいう船舶局が呼出符号の不明な他方の国の監視船の船舶局を呼び出そうとする場合には、その呼出方法は、CP(特定の二局以上あて一般呼出しを表示する符号)の次にXY(いずれか一方の国の監視船の船舶局を一括して表示する符号)を付したものとする。
3(a) 1(a)にいう船舶局は、相互の直接の通信が困難な場合には、両国のいずれかの海岸局を中継して通信を行なうことができる。
(b) (a)にいう海岸局は、大韓民国の国立水産振興院無線局(HMC)及び海洋警察隊本隊無線局(HMF)並びに日本国の第七管区海上保安本部の通信所(JNR)及び佐世保海上保安部の通信所(JNK)とする。これらの海岸局は、常時二、〇九一キロサイクルを聴守する。
4 一方の国の監視船の無線電信の設備を有していない船舶局が他方の国の監視船の船舶局にあてて通信を行なおうとする場合には、1(a)にいう自国の監視船の船舶局又は両国のいずれかの海岸局を中継して通信を行なう。
5 両国の監視船相互間の通信は、可能な場合には、旗流信号又は発光信号により行なうことができる。
6 両国の監視船相互間の通信は、原則として、英語又は国際通信書により行なう。
附属書II
 大韓民国と日本国との間の漁業に関する協定についての合意された議事録3(b)に関し、両国の監視船(大韓民国については水産庁漁業指導船及び海洋警察隊警備艇を、日本国については水産庁漁業取締り船及び海上保安庁巡視船艇をいう。)が相互に連携して行なう巡視(以下「連携巡視」という。)は、次の方法に従つて行なうものとする。
1 連携巡視を行なうにあたつては、大韓民国水産庁漁業指導船及び日本国水産庁漁業取締り船各一隻を一組とし、又は大韓民国海洋警察隊警備艇及び日本国海上保安庁巡視船艇各一隻を一組とする。
2 両国の監視船は、連携巡視を行なうにあたり、原則として相互に視認できる範囲内で行動し、視界が不良なとき又はやむをえないときは容易に会合できる範囲内で行動する。
3 連携巡視は、年六回以上、主として、暫定的漁業規制措置の対象となつている漁業の盛漁期において行なう。一回の連携巡視の期間は、一週間を基準とする。
4 一方の国の政府の関係当局は、連携巡視のために使用する自国の監現船の船名、所属、呼出符号、総トン数及び航海速力を記載した一覧表を他方の国の政府の関係当局に通報する。一方の国の政府の関係当局は、前記の一覧表の記載事項に変更を生じたときは、他方の国の政府の関係当局に対して遅滞なく通報する。
5(a) 一方の国の政府の関係当局は、連携巡視を行なおうとするときは、その連携巡視の開始予定日の原則として三十日前までに、他方の国の政府の関係当局に対して次の事項を明示した交書による要請を行なう。
(1) 連携巡視を行なおうとする自国の監視船の船名
(2) 連携巡視予定海域
(3) 連携巡視予定期間
(4) 両国の監視船が合流することを希望する日時及び場所
(5) その他必要な事項
(b) (a)の要請を受けた関係当局は、その要請を受けた日から十五日以内に回答することとし、その要請を受諾することを通報するにあたつては、その連携巡視に従事する自国の監視船の船名を通報する。両国政府の関係当局は、必要と認めるときは、(a)(2)から(5)について協議して調整することができる。
6 3、4及び5の規定にかかわらず、両国の監視船が遭遇したとき又は特に必要と認めるときは、相互に連絡してできる限り連携巡視を行なう。
7 連携巡視を行なうにあたつては、いずれか一方の国の監視船を当番船とする。針路、速力及び間隔等は、当番船が発議し、両国の監視船間の協議により決定する。両国の監視船は、原則として一日交代により、平等に当番船となる。
8 連携巡視を行なつている一方の国の監視船は、海難救助、緊急避難その他のやむをえない理由により、その実施を中止する必要が生じた場合には、他方の国の監視船にその理由と中止の期間を通報した後に、当該連携巡視を中止することができる。
附属書III
  大韓民国と日本国との間の漁業に関する協定についての合意された議事録3(d)に関し、一方の国のもつぱら漁業の取締りに従事する監視船(大韓民国については水産庁漁業指導船を、日本国については水産庁漁業取締り船をいい、以下「漁業取締り船」という。)が暫定的漁業規制措置に関して自国の漁船に対して行なう取締りの実施状況を視察するための他方の国の政府の公務員(以下「視察公務員」という。)による当該漁業取締り船への乗船(以下「視察乗船」という。)は、次の方法に従つて行なうものとする。
1 視察乗船は、主として、暫定的漁業規制措置の対象となつている漁業の盛漁期に行なう。一回の視察乗船の期間は、十日以内とし、一隻の漁業取締り船に乗船する視察公務員の数は、二名以内とする。
2 一方の国の政府の関係当局は、視察乗船のために使用する自国の漁業取締り船三隻を指定し、かつ、これらの船舶の船名及び総トン数を記載した漁業取締り船一覧表を他方の国の政府の関係当局に通報する。一方の国の政府の関係当局は、前記の一覧表の記載事項に変更を生じたときは、他方の国の政府の関係当局に対して遅滞なく通報する。
3(a) 一方の国の政府の関係当局は、他方の国の漁業取締り船への視察乗船を行なおうとするときは、その視察乗船予定日の原則として三十日前までに、他方の国の政府の関係当局に対して次の事項を明示した文書による要請を行なう。
(1) 視察公務員の官職、氏名、年齢及び所属官署名
(2) 視察予定海域
(3) 乗船予定日時及び視察乗船予定期間
(4) その他必要な事項
(b) (a)の要請を受けた関係当局は、その要請を受けた日から十日以内に回答することとし、その要請を受諾することを通報するにあたつては、次の事項を明示した文書による回答を行なう。
(1) 乗船させる漁業取締り船の船名
(2) (1)の漁業取締り船の取締り予定海域
(3) 乗船日時及び視察乗船期間
(4) その他必要な事項
(c) 一方の国の政府の関係当局は、他方の国の政府関係当局の要請に応じ、視察乗船が年六回以上行なわれるよう取り計らう。
4(a) 大韓民国政府の視察公務員が日本国の漁業取締り船に乗船する港は、博多港とし、日本国政府の視察公務員が大韓民国の漁業取締り船に乗船する港は釜山港とする。下船する港は、乗船した港とする。
(b) 一方の国の政府の視察公務員は、他方の国の漁業取締り船に乗船するときは、自国の政府が発給する身分証明書を携帯し、かつ、当該漁業取締り船上にある公務員の要求に応じこれを提示する。
(C) 視察公務員は、その乗船している漁業取締り船の船長が、船員に対する命令、航海安全の確保、船内規律の維持等に関して有している職務及び権限を侵すことはできない。
5 視察公務員は、次のことを含むできる限りの便宜を受ける。
(a) その乗船している漁業取締り船から自国の漁業取締り船に対して無線通信連絡を行なう便宜
(b) 自国の政府から召喚の命令を受けた場合又は疾病等の事由により視察乗船を継続することが困難となつた場合において、その乗船している漁業取締り船が属する国の法令の、範囲内で可能な必要な便宜
6 視察公務員は、その乗船している漁業取締り船内において、居住区、食事及び衛生等につき適切な待遇を与えられる。
7 視察公務員は、その視察乗船により要する食費を乗船している漁業取締り船の属する国の給食費支給基準により負担する。
 書簡をもつて啓上いたします。本使は、千九百六十六年十月十八日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
(韓国側書簡)
 本使は、さらに、閣下の書簡に述べられた了解を日本国政府に代わつて確認し、かつ、閣下の書簡及びこの返簡をこの返簡の日付の日に効力を生ずる両国政府間の合意を構成するものとみなすことに同意する光栄を有します。
 本使は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。
 千九百六十六年十月十八日
 日本国特命全権大使
木村四郎七
 大韓民国外務部長官
李東元閣下