日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定
日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定
日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定
日本国及び大韓民国は、
多年の間日本国に居住している大韓民国国民が日本国の社会と特別な関係を有するに至つていることを考慮し、
これらの大韓民国国民が日本国の社会秩序の下で安定した生活を営むことができるようにすることが、両国間及び両国民間の友好関係の増進に寄与することを認めて、
次のとおり協定した。
第一条
1 日本国政府は、次のいずれかに該当する大韓民国国民が、この協定の実施のため日本国政府の定める手続に従い、この協定の効力発生の日から五年以内に永住許可の申請をしたときは、日本国で永住することを許可する。
(a) 千九百四十五年八月十五日以前から申請の時まで引き続き日本国に居住している者
(b) (a)に該当する者の直系卑属として千九百四十五年八月十六日以後この協定の効力発生の日から五年以内に日本国で出生し、その後申請の時まで引き続き日本国に居住している者
2 日本国政府は、1の規定に従い日本国で永住することを許可されている者の子としてこの協定の効力発生の日から五年を経過した後に日本国で出生した大韓民国国民が、この協定の実施のため日本国政府の定める手続に従い、その出生の日から六十日以内に永住許可の申請をしたときは、日本国で永住することを許可する。
3 1(b)に該当する者でこの協定の効力発生の日から四年十箇月を経過した後に出生したものの永住許可の申請期限は、1の規定にかかわらず、その出生の日から六十日までとする。
4 前記の申請及び許可については、手数料は、徴収されない。
第二条
1 日本国政府は、第一条の規定に従い日本国で永住することを許可されている者の直系卑属として日本国で出生した大韓民国国民の日本国における居住については、大韓民国政府の要請があれば、この協定の効力発生の日から二十五年を経過するまでは協議を行なうことに同意する。
2 1の協議に当たつては、この協定の基礎となつている精神及び目的が尊重されるものとする。
第三条
第一条の規定に従い日本国で永住することを許可されている大韓民国国民は、この協定の効力発生の日以後の行為により次のいずれかに該当することとなつた場合を除くほか、日本国からの退去を強制されさい。
(a) 日本国において内乱に関する罪又は外患に関する罪により禁錮以上の刑に処せられた者(執行猶予の言渡しを受けた者及び内乱に附和随行したことにより刑に処せられた者を除く。)
(b) 日本国において国交に関する罪により禁錮以上の刑に処せられた者及び外国の元首、外交使節又はその公館に対する犯罪行為により禁錮以上の刑に処せられ、日本国の外交上の重大な利益を害した者
(c) 営利の目的をもつて麻薬類の取締りに関する日本国の法令に違反して無期又は三年以上の懲役又は禁錮に処せられた者(執行猶予の言渡しを受けた者を除く。)及び麻薬類の取締に関する日本国の法令に違反して三回(ただし、この協定の効力発生の日の前の行為により三回以上刑に処せられた者については二回)以上刑に処せられた者
(d) 日本国の法令に違反して無期又は七年をこえる懲役又は禁錮に処せられた者
第四条
日本国政府は、次に掲げる事項について、妥当な考慮を払うものとする。
(a) 第一条の規定に従い日本国で永住することを許可されている大韓民国国民に対する日本国における教育、生活保護及び国民健康保険に関する事項
(b) 第一条の規定に従い日本国で永住することを許可されている大韓民国国民(同条の規定に従い永住許可の申請をする資格を有している者を含む。)が日本国で永住する意思を放棄して大韓民国に帰国する場合における財産の携行及び資金の大韓民国への送金に関する事項
第五条
第一条の規定に従い日本国で永住することを許可されている大韓民国国民は、出入国及び居住を含むすべての事項に関し、この協定で特に定める場合を除くほか、すべての外国人に同様に適用される日本国の法令の適用を受けることが確認される。
第六条
この協定は、批准されなければならない。批准書はできる限りすみやかにソウルで交換されるものとする。この協定は、批准書の交換の日の後三十日で効力を背負う生ずる。
以上の証拠として、下名は、各自の政府からこのために正当な委任を受け、この協定に署名した。
千九百六十五年六月二十二日に東京で、ひとしく正文である日本語及び韓国語により本書二通を作成した。
日本国のために 椎名悦三郎 高杉晋一
大韓民国のために 李東元 金東祚
日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定についての合意された議事録
日本国政府代表及び大韓民国政府代表は、本日署名された日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定に関し次の了解に到達した。
第一条に関し、
1 同条1又は2の規定に従い永住許可の申請をする者が大韓民国の国籍を有していることを証明するため、
(i) 申請をする者は、旅券若しくはこれに代わる証明書を提示するか、又は大韓民国の国籍を有している旨の陳述書を提出するものとする。
(ii) 大韓民国政府の権限のある当局は、日本国政府の権限のある当局が文書により照会をした場合には、文書により回答するものとする。
2 同条1(b)の適用上「(a)に該当する者」には、千九百四十五年八月十五日以前から死亡の時まで引き続き日本国に居住していた大韓民国国民を含むものとする。
第三条に関し、
1 同条(b)の適用上「その公館」とは、所有者のいかんを問わず、大使館若しくは公使館として使用されている建物又はその一部及びこれに附属する土地(外交使節の住居であるこれらのものを含む。)をいう。
2 日本国政府は、同条(c)又は(d)に該当する者の日本国からの退去を強制しようとする場合には、人道的見地からその者の家族構成その他の事情について考慮を払う。
3 大韓民国政府は、同条の規定により日本国からの退去を強制されることとなつた者について、日本国政府の要請に従い、その者の引取りについて協力する。
4 日本国政府は、協定第一条の規定に従い永住許可の申請をする資格を有している者に関しては、その者の永住が許可された場合には協定第三条(a)ないし(d)に該当する場合を除くほか日本国からの退去を強制されないことにかんがみ、その者について退去強制手続が開始した場合において、
(i) その者が永住許可の申請をしているときには、その許否が決定するまでの間、また、
(ii) その者が永住許可の申請をしていないときには、その申請をするかしないかを確認し、申請をしたときには、その許否が決定するまでの間、その者の強制送還を差し控える方針である。
第四条に関し、
1 日本国政府は、法令に従い、協定第一条の規定に従い日本国で永住することを許可されている大韓民国国民が、日本国の公の小学校又は中学校ヘ入学することを希望する場合には、その入学が認められるよう必要と認める措置を執り、及び日本国の中学校を卒業した場合には、日本国の上級学校への入学資格を認める。
2 日本国政府は、協定第一条の規定に従い日本国で永住することを許可されている大韓民国国民に対する生活保護については当分の間従前どおりとする。
3 日本国政府は、協定第一条の規定に従い日本国で永住することを許可されている大韓民国国民を国民健康保険の被保険者とするため必要と認める措置を執る。
4 日本国政府は、協定第一条の規定に従い日本国で永住することを許可されている大韓民国国民(永住許可の申請をする資格を有している者を含む。)が日本国で永住する意思を放棄して大韓民国に帰国する場合には、原則として、その者の所有するすべての財産及び資金を携行し又は送金することを認める。このため、
(i) 日本国政府は、その者の所有する財産の携行に関しては、法令の範囲内で、その携帯品、引越荷物及び職業用具の携行を認めるほか、輸出の承認に当たりできる限りの考慮を払うものとする。
(ii) 日本国政府は、その者の所有する資金の携行又は送金に関しては、法令の範囲内で、一世帯当たり一万合衆国ドルまでを帰国時に、及びそれをこえる部分については実情に応じ、携行し又は送金することを認めるものとする。
千九百六十五年六月二十二日に東京で
E・S・ T・W・L
討議の記録
在日韓国人の法的地位及び待遇に関する協定の締結のための交渉に際し、日韓双方よりそれぞれ次の発言がなされた。
日本側代表
(a) 日本国政府は、協定第一条1(a)の適用に当たつては、兵役又は徴用により日本国から離れた時から復員計画に従つて帰還するまでの間を日本国に引き続き居住していたものとして取り扱う方針である。
(b) 協定第一条の規定に従い永住許可の申請をする者が提出又は提示するものには、次のものが含まれることとする。
(i) 永住許可申請書
(ii) 写真
(iii) 家族関係及び日本国における居住経歴に関する陳述書
(iv) 外国人登録証明書
(c) 協定についての合意された議事録中協定第四条に関する部分の1でいう「必要と認める措置」とは、文部省が現行法令に従つて行さう指導、助言及び勧告をいう。
(d) 協定についての合意された議事録中協定第四条に関する部分の3でいう「必要と認める措置」には、厚生省令の改正が含まれる。もつとも、そのような措置を執るためには、相当な準備期間が必要であるので、日本国政府は、協定の効力発生の日から一年を経過した日の属する会計年度の次の会計年度の初日からそれらの者が国民健康保険の被保険者となるよろにするものとする。
(e) 外国人の財産取得に関する政令に基づく告示において、同政令の適用除外国として大韓民国を指定しているが、日本国政府は、協定の効力発生に際してこれを削除する意図はない。
(f) 日本国政府は、協定第一条の規定に従い日本国で永住することを許可されている大韓民国国民が出国しようとする場合において再入国許可の申請をしたときは、法令の範囲内で、できる限り好意的に取り計らう方針てある。
韓国側代表
(a) 協定の効力発生の後は、出入国管理に関する日本国の法令の規定により日本国からの退去を強制されることとなつた大韓民国国民の引取りについて、大韓民国政府は、日本国政府に協力する方針である。
(b) 大韓民国政府は、協定についての合意された議事録中協定第四条に関する部分の3でいう「必要と認める措置」が執られるためには相当な準備期間が必要であることを認めるが、そのような措置ができる限りすみやかに執られることを期待するものである。
(c) 大韓民国政府は、日本国に居住する大韓民国国民の生活を安定させ、及び貧困者を救済するため、日本国政府の要請に応じできる限り同政府に協力するための措置を同政府とともに検討する用意ががある。
M・Y K・H・L
(参考)
(在日韓国人の法的地位及び待遇に関する協定の署名に際して行なわれた日本国法務大臣声明)
(昭和四十年六月二十二日)
日韓協定の調印に当たり、戦後入国者の取扱いに関し、次のとおり声明する。
終戦以前から日本国に在留していた大韓民国国民であつても、終戦後平和条約発効までの期間に一時韓国に帰国したことのあるものは、「日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する協定」第一条の対象とはならないが、これらの人々については、現在まですでに相当長期にわたり本邦に生活の根拠を築いている事情をも考慮し、協定発行後はわが国におけるその在留を安定されるため好意的な取扱いをすることとし、本大臣において特別に在留を許可するとともに、更に申請があつた場合にはその在留状況等を勘案して、可能な限り入国管理法令による永住を許可する方針をとることとした。
右に伴い前段に該当しない大韓民国国民である戦後入国者についても、平和条約発行日以前から本邦に在留していたことが確証される場合には、状況によりこれに準ずる措置を講ずることといたしたい。