日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定
日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定
 日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定
 日本国及び大韓民国は、
 両国が共通の関心を有する水域における漁業資源の最大の持続的生産性が維持されるべきことを希望し、
 前記の資源の保存及びその合理的開発と発展を図ることが両国の利益に役立つことを確信し、
 公海自由の原則がこの協定に特別の規定がある場合を除くほかは尊重されるべきことを確認し、
 両国の地理的近接性と両国の漁業の交錯から生ずることのある紛争の原因を除去することが望ましいことを認め、
 両国の漁業の発展のため相互に協力することを希望して、
 次のとおり協定した。
第一条
1 両締約国は、それぞれの締約国が自国の沿岸の基線から測定して十二海里までの水域を自国が漁業に関して排他的管轄権を行使する水域(以下「漁業に関する水域」という。)として設定する権利を有することを相互に認める。ただし、一方の締約国がこの漁業に関する水域の設定に際し直線基線を使用する場合には、その直線基線は、他方の締約国と協議の上決定するものとする。
2 両締約国は、一方の締約国が自国の漁業に関する水域において他方の締約国の漁船が漁業に従事することを排除することについて、相互に異議を申し立てない。
3 両締約国の漁業に関する水域が重複する部分については、その部分の最大の幅を示す直線を二等分する点とその重複する部分が終わる二点とをそれぞれ結ぶ直線により二分する。
第二条
 両締約国は、次の各線により囲まれる水域(領海及び大韓民国の漁業に関する水域を除く。)を共同規制水域として設定する。
(a) 北緯三十七度三十分以北の東経百二十四度の経線
(b) 次の各点を順次に結ぶ線
(i) 北緯三十七度三十分と東経百二十四度との交点
(ii) 北緯三十六度四十五分と東経百二十四度三十分との交点
(iii) 北緯三十三度三十分と東経百二十四度三十分との交点
(iv) 北緯三十二度三十分と東経百二十六度との交点
(v) 北緯三十二度三十分と東経百二十七度との交点
(vi) 北緯三十四度三十四分三十秒と東経百二十九度二分五十秒との交点
(vii) 北緯三十四度四十四分十秒と東経百二十九度八分との交点
(viii) 北緯三十四度五十分と東経百二十九度十四分との交点
(ix) 北緯三十五度三十分と東経百三十度との交点
(x) 北緯三十七度三十分と東経百三十一度十分との交点
(xi) 牛岩嶺高頂
第三条
 両締約国は、共同規制水域においては、漁業資源の最大の持続的生産性を確保するために必要とされる保存措置が十分な科学的調査に基づいて実施されるまでの間、底びき網漁業、まき網漁業及び六十トン以上の漁船によるさばつり漁業について、この協定の不可分の一部をなす附属書に掲げる暫定的漁業規制措置を実施する。(トンとは、総トン数によるものとし、船内居住区改善のための許容トン数を差し引いたトン数により表示する。)
第四条
1 漁業に関する水域の外側における取締り(停船及び臨検を含む。)及び裁判管轄権は、漁船の属する締約国のみが行ない、及び行使する。
2 いずれの締約国も、その国民及び漁船が暫定的漁業規制措置を誠実に遵守することを確保するため適切な指導及び監督を行ない、違反に対する適当な罰則を含む国内措置を実施する。
第五条
 共同規制水域の外側に共同資源調査水域が設定される。その水域の範囲及びその水域内で行なわれる調査については、第六条に定める漁業共同委員会が行なうべき勧告に基づき、両締約国間の協議の上決定される。
第六条
1 両締約国は、この協定の目的を達成するため、日韓漁業共同委員会(以下「委員会」という。)を設置し、及び維持する。
2 委員会は、二の国別委員部で構成し、各国別委員部は、それぞれの締約国の政府が任命する三人の委員で構成する。
3 委員会のすべての決議、勧告その他の決定は、国別委員部の間の合意によつてのみ行なうものとする。
4 委員会は、その会議の運営に関する規則を決定し、必要があるときは、これを修正することができる。
5 委員会は、毎年少なくとも一回会合し、また、そのほかに一方の国別委員部の要請により会合することができる。第一回会議の期日及び場所は、両締約国の間の合意で決定する。
6 委員会は、その第一回会議において、議長及び副議長を異なる国別委員部から選定する。議長及び副議長の任期は、一年とする。国別委員部からの議長及び副議長の選定は、各年においてそれぞれの締約国がそれらの地位に順番に代表されるように行なうものとする。
7 委員会の下に、その事務を遂行するため常設の事務局が設置される。
8 委員会の公用語は、日本語及び韓国語とする。提案及び資料は、いずれの公用語によつても提出することができ、また、必要に応じ、英語によつても提出することができる。
9 委員会がその共同の経費を必要と認めたときは、委員会が勧告し、かつ、両締約国が承認する形式及び割合において両締約国が負担する分担金により、委員会が支払うものとする。
10 委員会は、その共同の経費のための資金の支出を委任することができる。
第七条
1 委員会は、次の任務を遂行する。
(a) 両締約国が共通の関心を有する水域における漁業資源の研究のため行なう科学的調査について、並びにその調査及び研究の結果に基づき執られるべき共同規制水域内における規制措置について両締約国に勧告する。
(b) 共同資源調査水域の範囲について両締約国に勧告する。
(c) 心要に応じ、暫定的漁業規制措置に関する事項につき検討し、及びその結果に基づき執られるべき措置(当該規制措置の修正を含む。)について両締約国に勧告する。
(d) 両締約国の漁船間の操業の安全及び秩序に関する必要な事項並びに海上における両締約国の漁船間の事故に対する一般的な取扱方針につき検討し、並びにその結果に基づき執られるべき措置について両締約国に勧告する。
(e) 委員会の要請に基づいて両締約国が提供すべき資料、統計及び記録を編集し、及び研究する。
(f) この協定の違反に関する同等の刑の細目の制定について審議し、及び両締約国に勧告する。
(g) 毎年委員会の事業報告を両締約国に提出する。
(h) そのほか、この協定の実施に伴う技術的な諸問題につき検討し、必要と認めるときは、執られるべき措置について両締約国に勧告する。
2 委員会は、その任務を遂行するため、必要に応じ、専門家をもつて構成される下部機構を設置することができる。
3 両締約国政府は、1の規定に基づき行なわれた委員会の勧告をできる限り尊重するものとする。
第八条
1 両締約国は、それぞれ自国の国民及び漁船に対し、航行に関する国際慣行を遵守させるため、両締約国の漁船間の操業の安全を図り、かつ、その正常な秩序を維持するため、及び海上における両締約国の漁船間の事故の円滑かつ迅速な解決を図るために適切と認める措置を執るものとする。
2 1に掲げる目的のため、両締約国の関係当局は、できる限り相互に密接に連絡し、協力するものとする。
第九条
1 この協定の解釈及び実施に関する両締約国間の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとする。
2 1の規定により解決することができなかつた紛争は、いずれか一方の締約国の政府が他方の締約国の政府から紛争の仲裁を要請する公文を受領した日から三十日の期間内に各締約国政府が任命する各一人の仲裁委員と、こうして選定された二人の仲裁委員が当該期間の後の三十日の期間内に合意する第三の仲裁委員又は当該期間内にその二人の仲裁委員が合意する第三国の政府が指名する第三の仲裁委員との三人の仲裁委員からなる仲裁委員会に決定のため付託するものとする。ただし、第三の仲裁委員は、両締約国のうちいずれかの国民であつてはならない。
3 いずれか一方の締約国の政府が当該期間内に仲裁委員を任命しなかつたとき、又は第三の仲裁委員若しくは第三国について当該期間内に合意されなかつたときは、仲裁委員会は、両締約国政府のそれぞれが三十日の期間内に選定する国の政府が指名する各一人の仲裁委員とそれらの政府が協議により決定する第三国の政府が指名する第三の仲裁委員をもつて構成されるものとする。
4 両締約国政府は、この条の規定に基づく仲裁委員会の決定に服するものとする。
第十条
1 この協定は、批准されなければならない。批准書は、できる限りすみやかにソウルで交換されるものとする。この協定は、批准書の交換の日に効力を生ずる。
2 この協定は、五年間効力を存続し、その後は、いずれか一方の締約国が他方の締約国にこの協定を終了させる意思を通告する日から一年間効力を存続する。
 以上の証拠として、下名は、各自の政府からこのために正当な委任を受け、この協定に署名した。
 千九百六十五年六月二十二日に東京で、ひとしく正文である日本語及び韓国語により本書二通を作成した。
 日本国のために
 椎名悦三郎
 高杉 晋一
 大韓民国のために
 李 東 元
 金 東 □
附属書
 この協定の第三条に定める暫定的漁業規制措置は、両締約国のそれぞれに適用されるのもとし、その内容は、次のとおりとする。
1 最高出漁隻数又は統数(共同規制水域内における操業のため証明書を所持し、かつ、標識を附着して同時に同水域内に出漁している漁船の隻数又は統数の最高限度をいう。)
(a) 五十トン未満の漁船による底びき網漁業については百十五隻
(b) 五十トン以上の漁船による底びき網漁業については、
(i) 十一月一日から翌年の四月三十日までの期間においては二百七十隻
(ii) 五月一日から十月三十一日までの期間においては百隻
(c) まき網漁業については、
(i) 一月十六日から五月十五日までの期間においては六十統
(ii) 五月十六日から翌年の一月十五日までの期間においては百二十統
(d) 六十トン以上の漁船によるさばつり漁業については十五隻
 ただし、操業期間は六月一日から十二月三十一日までとし、操業区域は大韓民国の慶尚北道と慶尚南道との境界線と海岸線との交点と北緯三十五度三十分と東経百三十度との交点とを結ぶ直線以南(ただし、済州島の西側においては北緯三十三度三十分以南)の水域とする。
(e) 日本国の漁船と大韓民国の漁船との漁獲能力の格差がある間、大韓民国の出漁隻数又は統数は、両締約国政府間の協議により、この協定の最高出漁隻数又は統数を基準とし、その格差を考慮して調整される。
2 漁船規模
(a) 底びき網漁業のうち、
(i) トロール漁業以外のものについては三十トン以上百七十トン以下
(ii) トロール漁業については百トン以上五百五十トン以下
 ただし、五十トン以上の漁船による底びき網漁業(大韓民国が日本海において認めている六十トン未満の漁船によるえび底びき網漁業を除く。)は、東経百二十八度以東の水域においては、行なわないこととする。
(b) まき網漁業については網船四十トン以上百トン以下
 ただし、この協定の署名の日に日本国に現存する百トン以上のまき網網船一隻は、当分の間例外として認められる。
(c) 六十トン以上の漁船によるさばつり漁業については百トン以下
3 網目(海中における内径とする。)
(a) 五十トン未満の漁船による底びき網漁業については三十三ミリメートル以上
(b) 五十トン以上の漁船による底びき網漁業については五十四ミリメートル以上
(c) まき網漁業のあじ又はさばを対象とする漁網の身網の主要部分については三十ミリメートル以上
4 集魚燈の光力(発電機の総設備容量)
(a) まき網漁業については一統につき、十キロワット以下の灯船二隻及び七・五キロワット以下の灯船一隻とし、計二十七・五キロワット以下
(b) 六十トン以上の漁船によるさばつり漁業については十キロワット以下
5 証明書及び標識
(a) 共同規制水域内に出漁する漁船は、それぞれの政府が発給する証明書を所持し、かつ、標識を附着するものとする。ただし、まき網漁業に従事する漁船については、網船以外の漁船は証明書を所持する必要はなく、また、網船は正の標識を、網船以外の漁船は正の標識に符合する副の標識をそれぞれ附着するものとする。
(b) 証明書及び標識の総数(底びき網漁業及びさばつり漁業に従事する漁船については各漁船に附着される二枚の標識を一として計算し、まき網漁業に従事する漁船については網船に附着される二枚の正の標識を一として計算する。)は、暫定的漁業規制措置の対象となる漁業別に当該漁業に関する最高出漁隻数及び統数と同数とする。ただし、漁業の実態にかんがみ、五十トン以上の漁船による底びき網漁業についてはその最高出漁隻数の十五パーセントまで、五十トン未満の漁船による底びき網漁業についてはその最高出漁隻数の二十パーセントまで、それぞれ増加発給することができる。
(c) 標識の様式及び附着場所は、両締約国政府間の協議により定められる。
 (韓国の漁業に関する水域の直線基線に関する交換公文)
 書簡をもつて啓上いたします。本長官は、本日署名された大韓民国と日本国との間の漁業に関する協定に言及し、大韓民国政府が大韓民国の漁業に関する水域の設定に関して次の直線基線を決定する意向であることを申し述べる光栄を有します。
(1) 長□岬及び達萬岬のそれぞれの突端を結ぶ直線による湾口の閉鎖線
(2) 花岩湫及び凡月岬のそれぞれの突端を結ぶ直線による湾口の閉鎖線
(3) 一・五メートル岩、生島、鴻島、于汝岩、上白島及び巨文島のそれぞれの南端を順次結ぶ直線
(4) 小鈴島、西格列飛島、於青島、稷島、上旺嶝島及び横島(鞍馬群島)のそれぞれの西端を順次結ぶ直線
 本長官は、閣下が前記の直線基線の決定について日本国政府として異議がないことを日本国政府に代わつて確認されれば、大韓民国政府は、この問題についての日本国政府との協議が終了したものとみなすことを申し述べる光栄を有します。
 本長官は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。
 千九百六十五年六月二十二日
 外務部長官 李東元
 日本国外務大臣 椎名悦三郎閣下
 書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
 本長官は、本日署名された大韓民国と日本国との間の漁業に関する協定に言及し、大韓民国政府が大韓民国の漁業に関する水域の設定に関して次の直線基線を決定する意向であることを申し述べる光栄を有します。
(1) 長□岬及び達萬岬のそれぞれの突端を結ぶ直線による湾口の閉鎖線
(2) 花岩湫及び凡月岬のそれぞれの突端を結ぶ直線による湾口の閉鎖線
(3) 一・五メートル岩、生島、鴻島、于汝岩、上白島及び巨文島のそれぞれの南端を順次結ぶ直線
(4) 小鈴島、西格列飛島、於青島、稷島、上旺嶝島及び横島(鞍馬群島)のそれぞれの西端を順次結ぶ直線
 本長官は、閣下が前記の直線基線の決定について日本国政府として異議がないことを日本国政府に代わつて確認されれば、大韓民国政府は、この間題についての日本国政府との協議が終了したものとみなすことを申し述べる光栄を有します。
 本大臣は、大韓民国政府が大韓民国の漁業に関する水域の設定に関して前記の直線基線を決定されることについて日本国政府として異議がないことを申し述べる光栄を有します。
 本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。
 千九百六十五年六月二十二日
 日本国外務大臣 椎名悦三郎
 大韓民国外務部長官 李東元閣下
 (韓国の漁業に関する水域に関する交換公文)
 書簡をもつて啓上いたします。本長官は、本日署名された大韓民国と日本国との間の漁業に関する協定に言及し、両国政府の代表の間で到達された次の了解を確認する光栄を有します。
 暫定的措置として、大韓民国が設定する漁業に関する水域を画する線と次のそれぞれの線とにより囲まれる水域は、当分の間大韓民国の漁業に関する水域に含まれることとする。
(1) 北緯三十三度四十八分十五秒と東経百二十七度二十一分との交点、北緯三十三度四十七分三十秒と東経百二十七度十三分との交点及び牛島の真東十二海里の点を順次結ぶ直線
(2) 北緯三十三度五十六分二十五秒と東経百二十五度五十五分三十秒との交点と北緯三十三度二十四分二十秒と東経百二十五度五十六分二十秒との交点を結ぶ直線
 前記の了解を日本国政府に代わつて確認される閣下の返簡を受領したときは、大韓民国政府は、この書簡及び閣下の返簡が前記の協定の効力発生の日に効力を生ずる両国政府間の合意を構成するものとみなします。
 本長官は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。
 千九百六十五年六月二十二日
 外務部長官 李東元
 日本国外務大臣 椎名悦三郎閣下
 書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
 本長官は、本日署名された大韓民国と日本国との間の漁業に関する協定に言及し、両国政府の代表の間で到達された次の了解を確認する光栄を有します。
 暫定的措置として、大韓民国が設定する漁業に関する水域を画する線と次のそれぞれの線とにより囲まれる水域は、当分の間大韓民国の漁業に関する水域に含まれることとする。
(1) 北緯三十三度四十八分十五秒と東経百二十七度二十一分との交点、北緯三十三度四十七分三十秒と東経百二十七度十三分との交点及び牛島の真東十二海里の点を順次結ぶ直線
(2) 北緯三十三度五十六分二十五秒と東経百二十五度五十五分三十秒との交点と北緯三十三度二十四分二十秒と東経百二十五度五十六分二十秒との交点を結ぶ直線
 前記の了解を日本国政府に代わつて確認される閣下の返簡を受領したときは、大韓民国政府は、この書簡及び閣下の返簡が前記の協定の効力発生の日に効力を生ずる両国政府間の合意を構成するものとみなします。
 本大臣は、前記の了解が日本国政府の了解でもあること並びに日本国政府が閣下の書簡及びこの返簡を前記の協定の効力発生の日に効力を生ずる両国政府間の合意を構成するものとみなすことを確認する光栄を有します。
 本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。
 千九百六十五年六月二十二日
 日本国外務大臣 椎名悦三郎
 大韓民国外務部長官 李東元閣下
 日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定についての合意された議事録
 日本国政府代表及び大韓民国政府代表は、本日署名された日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定に関して次の了解に到達した。
1 証明書及び標識に関し、
(a) 両国政府は、証明書及び標識が、港内における場合を除き、海上において一の漁船から他の漁船に引き渡さけることがないように行政指導を行なう。
(b) 一方の国の政府は、自国の出漁漁船の正午位置報告に基づき漁業別出漁状況を月別に集計して毎年少なくとも四回他方の国の政府に通報する。
2 年間総漁獲基準量に関し、
(a) 共同規制水域内における底びき網漁業、まき網漁業及び六十トン以上の漁船によるさばつり漁業による年間総漁獲基準量は、十五万トン(上下十パーセントの変動がありうる。)とし、日本国については、この十五万トンの内訳は、五十トン未満の漁船による底びき網漁業については一万トン、五十トン以上の漁船による底びき網漁業については三万トン及びまき網漁業と六十トン以上の漁船によるさばつり漁業については十一万トンであるものとする。年間総漁獲基準量は、最高出漁隻数又は統数によつて操業を規制するに当たり指標となる数量であるものとする。いずれの国の政府も、共同規制水域内における底びき網漁業、まき網漁業及び六十トン以上の漁船によるさばつり漁業による年間総漁獲量が十五万トンを超過すると認める場合には、漁期中においても年間総漁獲量を十六万五千トン以下にとどめるため出漁隻数又は統数を抑制するよう行政指導を行なう。
(b) いずれの国の政府も、暫定的漁業規制措置の適用の対象となる漁業に従事する自国の漁船が共同規制水域内において漁獲した漁獲物を水揚げすべき港を指定する。
(c) いずれの国の政府も、自国の出漁漁船による共同規制水域内におけるその漁獲量の報告及び水揚港における調査を通じ、漁獲量を月別に集計し、その結果を毎年少なくとも四回他方の国の政府に通報する。
(d) いずれの国の政府も、他方の国の政府の公務員が3(c)の視察を行なう際に、当該他方の国の政府の要請があつたときは、その公務員に対し、暫定的漁業規制措置の適用の対象となつている自国の漁船による漁獲物の水揚状況を視察されるための便宣をもあわせてできる限り与え、また、漁獲量の報告及び集計の状況についてできる限り説明が行なわれるよう取り計らう。
3 暫定的漁業規制措置に関する取締り及び違反に関し、
(a) 一方の国の監視船上にある権限を有する公務員は、他方の国の漁船が現に暫定的漁業規制措置に明らかに違反していると信ずるに足りる相当の理由のある事実を発見したときは、直ちにこれをその漁船の属する国の監視船上にある権限を有する公務員に通報することができる。当該他方の国の政府は、当該漁船の取締り及びこれに対する管轄権の行使に当たつて、その通報を尊重することとし、その結果執られた措置を当該一方の国の政府に対し通報する。
(b) 両国の監視船は、暫定的漁業規制措置に関してそれぞれ自国の漁船に対して行なう取締りの実施に当たり、その取締りを円満かつ効果的に行なうため、必要に応じ、あらかじめ両国の関係当局間において協議されたところに従い、相互に連携して巡視し、かつ、緊密な連絡を保持することができる。
(c) いずれの国の政府も、他方の国の政府の要請があつたときは、暫定的漁業規制措置に関し、自国内における取締りの実施状況を視察させるための便宣を、このために特に権限を与えられた他方の国の政府の公務員に対し、できる限り与える。
(d) いずれの国の政府も、他方の国の政府の要請があり、かつ、これを適当と認めるときは、暫定的漁業規制措置に関して自国がその漁船に対して行なう取締りの実施に当たり、その実情の視察のため、当該他方の国の政府の公務員をもつぱら漁業の取締りに従事する自国の監視船に乗船させるための便宣を相互にできる限り与える。
4 日韓漁業共同委員会に関し、
 日韓漁業共同委員会は、その常設の事務局の事務局長を、毎年の定例年次会議の閉会前に、翌年の定例年次会議が開催される締約国の国別委員部の委員の中から選任する。事務局長の任期は、一年とする。事務局長は、自国の関係当局の補佐を受け、及び、必要に応じ、自国に駐在する他方の締約国の権限を有する公務員の援助を受けて、委員会の会議の開催準備を含め、その他の必要な事務局の事務を遂行する。
5 仲裁委員会に関し、
 協定第九条3にいう両国政府のそれぞれが選定する国及びそれらの国の政府が協議により決定する第三国は、日本国及び大韓民国の双方と外交関係を有する国のうちから選ばれるものとする。
6 監視船間の出漁状況の情報提供に関し、
 一方の国の監視船は、共同規制水域内における漁船の出漁状況につき必要と認めるときは、他方の国の監視船に対して必要な情報を提供するよう要請することができ、当該他方の国の監視船は、できる限りこの要請に応ずるものとする。
7 沿岸漁業に関し、
 両国政府は、沿岸漁業(底びき網漁業、まき網漁業及び六十トン以上の漁船によるさばつり漁業を除く。)の操業の実態に関して情報の交換を行ない、漁場秩序を維持するため必要なときは、相互に協議を行なう。
8 国内漁業禁止水域等の相互尊重に関し、
(a) 日本国政府が現在設定している底びき網漁業及びまき網漁業についての漁業禁止水域並びに底びき網漁業についての東経百二十八度、東経百二十八度三十分、北緯三十三度九分十五秒及び北緯二十五度の各線で囲まれた水域と大韓民国政府が現在設定している底びき網漁業及びトロール漁業についての漁業禁止水域とに関し、両国政府は、それぞれ相手国のこれらの水域において当該漁業に自国の漁船が従事しないようにするため必要な措置を執る。
(b) 大韓民国政府が前記の大韓民国の漁業禁止水域内の黄海の部分において大韓民国の五十トン未満の漁船による底びき網漁業及び同水域内の日本海の部分において大韓民国のえび底びき網漁業に関して実施している制度は、例外的に認められる。
(c) 一方の国の監視船上にある権限を有する公務員が(a)に掲げるその国の水域において他方の国の漁船が操業していることを発見した場合には、その事実につき当該漁船の注意を喚起するとともに、すみやかにその旨を当該他方の国の監視船上にある権限を有する公務員に通報することができる。当該他方の国の政府は、当該漁船の取締り及びこれに対する管轄権の行使に当たつて、その通報を尊重することとし、その結果執られた措置を当該一方の国の政府に対し通報する。
9 無害通航に関し、
 領海及び漁業に関する水域における無害通航(漁船は漁具を格納した場合に限る。)は、国際法規によるものであることが確認される。
10 海難救助及び緊急避難に関し、
 両国政府は、両国の漁船の海難救助及び緊急避難に関し、できる限りすみやかに取極を行なうものとする。その取極が両国政府の間で行なわれる前においても、両国政府は、両国の漁船の海難救助及び緊急避難について国際慣行に従つてできる限り適切な救助及び保護を与えるものとする。
 千九百六十五年六月二十二日に東京で
 E・S・T・W・L・
 (漁業協定附属書に定める標識に関する交換公文)
 書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定の附属書に定める標識の様式及び附着場所につき、両国政府の代表者の間で次のとおりの了解に到達したことを確認する光栄を有します。
1 標識には、漁船の国籍を示す略字並びに漁業の種類及び根拠地港を識別することができるように番号を付するものとし、その様式は、別紙のとおりとする。
2 標識には、夜間において前記の略字及び番号を識別することができるような塗料を塗付するものとする。
3 すべての標識には、おのおのの政府の発給証印を付するものとする。
4 標識の附着場所は、船橋の両側の上辺の見やすいところとする。
 前記の了解を大韓民国政府に代わつて確認される閣下の返簡を受領したときは、日本国政府は、この書簡及び閣下の返簡が前記の協定の効力発生の日に効力を生ずる両国政府間の合意を構成するものとみなします。
 本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。
 千九百六十五年六月二十二日
 日本国外務大臣 椎名悦三郎
 大韓民国外務部長官 李東元閣下
(a) 日本側様式

					
(b) 韓国側様式

					
 書簡をもつて啓上いたします。本長官は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
(日本側書簡)
 本長官は、前記の了解が大韓民国政府の了解でもあること並びに大韓民国政府が閣下の書簡及びこの返簡を前記の協定の効力発生の日に効力を生ずる両国政府間の合意を構成するものとみなすことを確認する光栄を有します。
 本長官は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。
 千九百六十五年六月二十二日
 外務部長官 李東元
 日本国外務大臣 椎名悦三郎閣下
 (漁業協力に関する交換公文)
 書簡をもつて啓上いたします。本長官は、本日署名された大韓民国と日本国との間の漁業に関する協定に言及し、両国政府の代表の間で到達された次の了解を確認する光栄を有します。
 両国政府は、両国の漁業の発展と向上を図るため、技術及び経済の分野においてできる限り相互に密接に協力するものとする。
 この協力のうちには、次のことが含まれる。
(1) 漁業に関する情報及び技術を交換すること。
(2) 漁業専門家及び技術者を交流させること。
 前記の了解を日本国政府に代わつて確認される閣下の返簡を受領したときは、大韓民国政府は、この書簡及び閣下の返簡が前記の協定の効力発生の日に効力を生ずる両国政府間の合意を構成するものとみなします。
 本長官は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。
 千九百六十五年六月二十二日
 外務部長官 李東元
 日本国外務大臣 椎名悦三郎閣下
 書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
(韓国側書簡)
 本大臣は、前記の了解が日本国政府の了解でもあること並びに日本国政府が閣下の書簡及びこの返簡が前記の協定の効力発生の日に効力を生ずる両国政府間の合意を構成するものとみなすことを確認する光栄を有します。
 本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。
 千九百六十五年六月二十二日
 日本国外務大臣 椎名悦三郎
 大韓民国外務部長官 李東元閣下
 (安全操業に関する往復書簡)
 (日本国外務省アジア局長の韓国外務部亜州局長あて書簡)
 本官は、本日日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定が署名されるに際し、日本国の水産当局が、日韓両国の漁船間の操業の安全を図り、かつ、その正常な秩序を維持するため及び海上における両国の漁船間の事故の円滑かつ迅速な解決を図る目的に資するため、両国の民間関係団体の間において別紙に掲げる項目をもつた取決めができる限りすみやかに行なわれるように日本国の民間関係団体を指導する意向であることを申し述べます。
 昭和四十年六月二十二日
 外務省アジア局長 後宮虎郎
 外務部亜州局長 延河亀殿
(別紙)
 操業安全及び秩序維持に関する項目
一 標識及び信号
(一) 漁船の漁ろう作業中の事実を示す標識
(二) 漁船の漁ろう中に生じた事故を示す標識
(三) 漁船の夜間における投びよう及び停泊を示す標識
(四) 漁船の夜間識別信号及び針路汽笛信号
二操業中の遵守事項
(一) 前方の漁ろう作業中の漁船の操業を尊重する原則
(二) 漁ろう作業中の漁具の延伸区域を尊重する原則
(三) 複数の漁ろう体の並航操業の場合における原則
(四) ふくそうする漁場における操業の原則(まき網漁業における灯船の操業間隔を含む。)
三避航に関する事項
(一) 漁ろう作業中の漁船の優先の原則
(二) 漁ろう作業中の漁船相互の避航についての原則
(三) 漁ろう作業中に事故(漁具喪失、ロープ切断等)に会つた漁船優先の原則
四 投びよう及び停泊についての注意事項
五 海難救助に関する事項
六 漁船及び漁具の被害補償に関する事項
 (韓国外務部亜州局長の日本国外務省アジア局長あて書簡)
 本官は、本日大韓民国と日本国との間の漁業に関する協定が署名されるに際し、大韓民国の水産当局が、韓日両国の漁船間の操業の安全を図り、かつ、その正常な秩序を維持するため及び海上における両国の漁船間の事故の円滑かつ迅速な解決を図る目的に資するため、両国の民間関係団体の間において別紙に掲げる項目をもつた取決めができる限りすみやかに行なわれるように大韓民国の民間関係団体を指導する意向であることを申し述べます。
 千九百六十五年六月二十二日
 外務部亜州局長 延河亀
 外務省アジア局長 後宮虎郎貴下
(別紙)
 操業安全及び秩序維持に関する項目
一 標識及び信号
(一) 漁船の漁ろう作業中の事実を示す標識
(二) 漁船の漁ろう中に生じた事故を示す標識
(三) 漁船の夜間における投びよう及び停泊を示す標識
(四) 漁船の夜間識別信号及び針路汽笛信号
二操業中の遵守事項
(一) 前方の漁ろう作業中の漁船の操業を尊重する原則
(二) 漁ろう作業中の漁具の延伸区域を尊重する原則
(三) 複数の漁ろう体の並航操業の場合における原則
(四) ふくそうする漁場における操業の原則(まき網漁業における灯船の操業間隔を含む。)
三避航に関する事項
(一) 漁ろう作業中の漁船の優先の原則
(二) 漁ろう作業中の漁船相互の避航についての原則
(三) 漁ろう作業中に事故(漁具喪失、ロープ切断等)に会つた漁船優先の原則
四 投びよう及び停泊についての注意事項
五 海難救助に関する事項
六 漁船及び漁具の被害補償に関する事項
 討議の記録
 日韓漁業協定の締結のための交渉に際し、日韓双方よりそれぞれ次の発言がなされた。
 日本側代表
(a) 協定についての合意された議事録2(a)にいう「出漁隻数又は統数を抑制するよう行政指導を行なう。」における行政指導には、証明書及び標識の発給数の調整が行なわれるよう指導することを含む。
(b) 協定についての合意された議事録3(c)いにう自国内における取締りの実施状況の視察には、証明書及び標識の発給状況についての説明が行なわれることをも含む。
(c) 暫定的漁業規制措置の適用の対象とならない沿岸漁業に従事する日本国の漁船で共同規制水域内に出漁するものの大半は零細な経営規模のものであり、その操業区域もこのような漁船の出漁能力の実体からみて同水域内においては主として対馬北方から済州島北西方までであり、このような実体は、当該漁業の実情からみて今後大きく変動するようなものではないと考えられる。
 韓国側代表
(a) 協定についての合意された議事録2(a)にいう「出漁隻数又は統数を抑制するよう行政指導を行なう。」における行政指導には、証明書及び標識の発給数の調整が行なわれるよう指導することを含む。
(b) 協定についての合意された議事録3(c)にいう自国内における取締りの実施状況の視察には、証明書及び標識の発給状況についての説明が行なわれることをも含む。
 T・H・K・S・L・
(参考)
 日韓漁業協定の署名に際して行なわれた両国政府の声明
 (昭和四十年六月二十二日)
((a)日本国外務大臣の声明)
 日本国政府は、日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定が効力を生じ、日本国の漁業に関する水域が設定されたときは、日本国の監視船による大韓民国の漁船の同水域の侵犯の事実の確認とその漁船及び乗組員の取扱いとについて、国際通念に従い公正妥当に処理する用意があることをここに声明する。
((b)韓国外務部長官の声明)
 大韓民国政府は、大韓民国と日本国との間の漁業に関する協定が効力を生じ、大韓民国の漁業に関する水域が設定されたときは、大韓民国の監視船による日本国の漁船の同水域の侵犯の事実の確認とその漁船及び乗組員の取扱いとについて、国際通念に従い公正妥当に処理する用意があることをここに声明する。
((c)日本国農林大臣の声明)
 本大臣は、本日署名された日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定が効力を生ずるときに日本国と大韓民国の共同規制水域において暫定的漁業規制措置が実施されることとなることに関連し、日本国政府が次のとおりの措置を執る方針であることをここに声明する。
1 共同期制水域のうち大韓民国の慶尚北道と慶尚南道との境界線と海岸線との交点と北緯三十五度三十分と東経百三十度との交点とを結ぷ直線以北の日本海の水域において、同時に操業することができる日本国の底びき網漁船は二十五隻を上回ることがないように、並びにそのような漁船が十一月一日から翌年の四月三十日までの期間以外の期間において操業しないように、及び水深三首メートル以浅の部分においては操業しないように指導する。同政府は、また、そのような漁船によるえびの混獲を毎航海の総漁獲量の二十パーセントの範囲内にとどめるように指導する。
2 暫定的漁業規制措置の適用の対象とならない種類の漁業に従事する日本国の漁船で共同規制水域内において同時に沿岸漁業に従事するものの集教は、千七首隻を上回ることがないように指導する。また、これらの日本国の漁船のうち六十トン未満二十五トン以上のさばつり漁船の操業期間は、六月一日から十二月三十一日までとし、その操業区域は、共同規制水域のうち、大韓民国の慶尚北道と慶尚南道との境界線と海岸線との交点と北緯三十五度三十分と東経百三十度との交点とを結ぶ直線以南(ただし、済州島の西側においては北緯三十三度三十分以南)の水域とし、また、この隻数は、百七十五隻を上回ることがないように指導する。
3 日本国政府は共同規制水域内の鯨資源の状態に深い関心を有しているので、同水域内において、小型捕鯨業の操業集数及びその漁獲努力を現在以上に増大しないように、また、大型捕鯨業(首トン以上の漁船によるもの)の操業隻数を現在程度以上に増大しないように指導する。
((d)韓国農林部長官の声明)
  本長官は、本日署名された大韓民国と日本国との間の漁業に関する協定が効力を生ずるときに大韓民国と日本国との共同規制水域において暫定的漁業規制措置が実施されることとなることに関連し、大韓民国政府が次のとおりの措置を執る方針であることをここに声明する。
1 暫定的漁業規制措置の適用の対象とならない種類の漁業に従事する大韓民国の漁船で共同規制水域内に出漁するもののうち六十トン未満二十五トン以上のさばつり漁船の操業期間は、六月一日より十二月三十一日までとし、その操業区域は、共同規制水域のうち、大韓民国の慶尚北道と慶尚南道との境界線と海岸線との交点と北緯三十五度三十分と東経百三十度との交点とを結ぶ直線以南(ただし、済州島の西側においては北緯三十三度三十分以南)の水域とするように指導する。
2 大韓民国政府は共同規制水域内の鯨資源の状態に深い関心を有しているので、同水域内において、小型捕鯨業の操業隻数及びその漁獲努力を現在以上に増大しないように、また、大型捕鯨業(百トン以上の漁船によるもの)の操業隻教を現在程度以上に増大しないように指導する。