所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とフランス共和国政府との間の条約
所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とフランス共和国政府との間の条約
 日本国政府及びフランス共和国政府は、
 所得に対する租税に関し、二重課税を回避するための条約を締結することを希望して、
 次の規定を協定した。
第一条
 この条約は、第二十条、第二十四条及び第二十五条の規定を留保して、一方の締約国の居住者である者に適用する。
第二条
1 この条約が適用される租税は、次のものとする。
(a) フランスについては、個人所得税、補充税及び会社その他の法人の利得に対する税(以下「フランスの租税」という。)
(b) 日本国については、所得税、法人税及び地方公共団体が課する所得に対する住民税(以下「日本国の租税」という。)
2 この条約は、海上運送及び航空運送の企業に関しては、第八条2に規定する租税についても適用する。
3 この条約は、1及び2に規定する租税と類似の性質を有し、かつ、この条約の署名の日の後に日本国又はフランスにおいて国又は地方公共団体が課する他の租税についても、また、適用する。締約国の国税当局は、各年の末に、それぞれの国の税法について行なわれた改正を相互に通知するものとする。
第三条
1 この条約において、文脈により別に解釈すべき場合を除くほか、
(a) 「日本国」とは、地理的意味で用いる場合には、日本国の租税に関する法令が施行されているすべての領域をいい、「フランス」とは、フランス本国及び海外県(ガドループ、ギアナ、マルティニック及びレユニオン)をいう。
(b) 「一方の締的国」及び「他方の締約国」とは、文脈により、日本国又はフランスをいう。
(c) 「日本の法人」とは、会社その他の法人(日本国の租税に関し法人として取り扱われる法人格を有しない団体を含む。)で、日本国内に本店又は主たる事務所を有し、フランスにおいて管理されず、かつ、支配されていないものをいい、「フランスの法人」とは、法人又はフランスの租税に関し法人として取り扱われる団体で、フランスにおいて管理され、かつ、支配されており、日本国内に本店又は主たる事務所を有しないものをいう。
(d) 「日本国の居住者」とは、日本国の租税に関し日本国の居住者であり、かつ、フランスの租税に関しフランスの居住者でない個人及び日本の法人いい、「フランスの居住者」とは、フランスの租税に関しフランスの居住者であり、かつ、日本国の租税に関し日本国の居住者でない個人及びフランスの法人をいう。また、一方の締約国の居住者」及び「他方の締約国の居住者」とは、文脈により、日本国の居住者又はフランスの居住者をいう。
(e) 「日本の企業」とは、日本国の居住者が営む産業上又は商業上の企業をいい、「フランスの企業とは、フランスの居住者が営む産業上又は商業上の企業をいう。また、「一方の締約国の企業」及び「他方の締約国の企業」とは、文脈により、日本の企業又はフランスの企業をいう。
(f) 「産業上又は商業上の利得」には、第五条に規定する不動産から生ずる所得、第六条に規定する農業及び林業の所得、配当、利子(第十二条3に規定する年金を含む。)賃貸料又は使用料として取得する所得、資産収益並びに人的役務の報酬を含まない。
(g) 「国税当局」とは、日本国については、大蔵大臣又は正当に権限を与えられたその代理者をいい、フランスについては、財政経済大臣又は正当に権限を与えられたその代理者をいう。
2 一方の締約国がこの条約を適用する場合には、特に定義されていない用語は、文脈により別に解釈すべき場合を除くほか、この条約の対象である租税に関する自国の法令上有する意義を有するものとする。
第四条
1 この条約において「恒久的施設」とは、事業を行なう一定の場所で、企業がその事業の全部又は一部を行なつているものをいう。
2 「恒久的施設」には、特に、次のものを含む。
(a) 管理所
(b) 支店
(c) 事務所
(d) 工場
(e) 作業所
(f) 鉱山、採石場その他天然資源を採取する場所
(g) 建設又は組立ての工事現場で、十二箇月をこえる期間存続するもの
3 一方の締約国の企業は、次の場合には、他方の締約国内に恒久的施設を有するものとされる。
(a) 当該他方の締約国内で十二箇月をこえる期間建設又は組立ての契約に係る工事に関して監督活動を行なつており、特にその有する監督の権限の大きさから判断して、当該契約を自ら履行していると認められる場合
(b) 当該他方の締約国内で第十八条にいう芸能人の役務を提供する事業を行なう場合
4 次の場合には、恒久的施設があるものとされることはない。
(a) 企業に属する商品をもつぱら保管し、展示し、又は引き渡すため、施設を使用する場合
(b) 企業に属する商品を、もつぱら保管し、展示し、又は引き渡すため、保有する場合
(c) 企業に属する商品を、もつぱら他の企業による加工のため、保有する場合
(d) 企業のためにもつぱら商品を購入し、又は情報を収集するため、事業を行なう一定の場所を使用する場合
(e) 企業のためにもつぱら広告、情報の提供、科学的調査又はこれらに類する準備的若しくは補助的な性質の活動を行なうため、事業を行なう一定の場所を使用する場合
5 一方の締約国内で他方の締約国の企業に代わつて行動する者(7の規定が適用される独立の地位を有する代理人を除く。)は、次の場合には、当該一方の締約国内における恒久的施設とされる。
(a) その者が、当該一方の締約国内で、当該企業の名において契約を締結する権限を有し、かつ、これを常習的に行使する場合。ただし、その者の行動が当該企業のために商品を購入することに限られる場合は、この限りでない。
(b) その者が、当該企業によりあらかじめ締結された契約で引き渡すべき商品の数量並びに引渡しの日及び場所を確定していないものに従つて行なわれる注文に通常応ずるため、当該企業に属する商品の在庫を当該一方の締約国内に保有する場合
6 保険業を営む一方の締約国の企業が、当該企業を代表する者(7の規定が適用される独立の地位を有する代理人を除く。)を通じ、他方の締約国内で保険料を受領し、又は当該他方の締約国内で生ずる危険を保険する場合には、当該企業は、当該他方の締約国内に恒久的施設を有するものとされる。
7 一方の締約国の企業は、仲立人、間屋その他独立の地位を有する代理人でこれらの者としての業務を通常の方法で行なうものを通じて他方の締約国内で事業活動を行なつたという事実のみによつては、当該他方の締約国内に恒久的施設を有するものとされることはない。
8 一方の締約国の居住者である法人が他方の締約国の居住者である法人又は他方の締約国内で事業を行なう(恒久的施設を通ずるかどうかを問わない。)法人を支配し又はこれに支配されているという事実のみによつては、いずれの一方の法人も、他方の法人の恒久的施設であることとはならない。
第五条
1 不動産から生ずる所得に対しては、その不動産が存在する締約国において租税を課することができる。
2 「不動産」の定義は、当該財産が存在する締約国の法令によるものとする。不動産には、特に、鉱石、水その他の天然資源の採取又は採取の権利の対価として料金(金額が確定しているかどうかを問わない。)を受け取る権利を含む。船舶及び航空機は、不動産とはみなさない。
3 1の規定は、不動産の譲渡から生ずる収益についても適用する。
4 1及び3の規定は、企業の不動産に係る所得及び自由職業の活動に使用される不動産に係る所得についても、また、適用する。
第六条
 一方の締約国内に存在する農場又は森林について営まれる農業又は林業の所得に対しては、その締約国において租税を課することができる。
第七条
1 一方の締約国の企業の産業上又は商業上の利得に対しては、その企業が他方の締約限内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内で事業を行なわない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課する。一方の抑約国の企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて事業を行なう場合には、その企業の産業上又は商業上の利得に対しては、その恒久的施設に帰せられる部分についてのみ、当該他方の締約国において租税を課することができる。
2 一方の締約国の企業が他方の締約国にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内で事業を行なう場合には、各締約国において、その恒久的施設が同一又は類似の条件で同一又は類似の活動を行ない、かつ、その恒久的施設を有する企業と、全く独立の立場で、取引を行なう別個のかつ分離した企業であるとすれば、その恒久的施設が取得するとみられる産業上又は商業上の利得が、その恒久的施設に帰せられるものとする。
3 恒久的施設の産業上又は商業上の利得を決定するに際しては、経営費及び一般管理費を含む費用で、その恒久的施設のために生じたものは、その恒久的施設が存在する締約国内で生じたか又は他の場所で生じたかを間わず、経費に算入することを認められるものとする。
4 2の規定は、恒久的施設に帰せられるべき産業上又は商業上の利得を企業の利得の総額の当該企業各構成部分への配分によつて決定する慣行が一方の締約国において行なわれている場合には、その締約国が租税を課されるべき産業上又は商業上の利得かその慣行とされている配分の方法によつて決定することを妨げるものではない。ただし、この場合において用いられる配分の方法は、その方法によつて得た結果がこの条に規定する原則に適合するようなものでなければならない。
5 恒久的施設が企業のために商品を単に購入したという事実によつては、いかなる利得もその恒久的施設に帰せられることはない。
6 1から5までの規定の適用上、恒久的施設に帰せられる産業上又は商業上の利得は、毎年同一の方法によつて決定するものとする。ただし、別の方法を用いることについて正当な理由があるときは、この限りでない。
第八条
1 第七条の規定にかかわらず、一方の締約国の企業が船舶又は航空機の運用によつて取得する利得に対しては、その締約国においてのみ租税を課する。
2 船舶又は航空抜の運用に関し、日本の企業はフランスにおいて営業税及び営業税附加税を免除され、フランスの企業は日本国において事業税を免除される。
3 千九百六十二年十二月二十一日にパリで交換された公文により構成された国際海上運送又は国際航空運送の利得に対する租税の相互免除に関する両締約国間の協定は、この条約が効力を生じたときは、この条約の規定が適用される日に効力を失うものとする。
第九条
(a) 一方の締約国の企業が他方の締約国の企業の経営、支配若しくは資本に直接若しくは間接に参加する場合又は
(b) 同一の者が一方の締約国の企業及び他方の締約国の企業の経営、支配若しくは資本に直接若しくは間接に参加する場合であつて、そのいずれの場合においても、両企業間にその商業上又は資金上の関係において独立の企業間に設けられる条件と異なる条件が設けられ又は課されるときは、それらの条件がなかつたならば一方の企業の利得となつたはずである利得で、それらの条件のために当該一方の企業の利得とならなかつたものは、その企業の利得に算入して課税することができる。
第十条
1 日本の法人は、フランスに恒久的施設を有しない限り、フランスにおいて、フランスの統一税法第百九条2に規定する動産資本所得に対する租税を源泉微収する義務を負わない。いかなる場合にも、同法第百九条2の規定により租税を課される所得の金額は、第七条及び第九条の規定に従つてフランスにある恒久的施設に帰せられるものとされる利得の金額をこえないものとする。
2 日本の法人は、フランスの法人の経営若しくは資本に参加し、又はフランスの法人との間にその他のなんらかの関係を有することを理由としては、フランスにおいて、1の租税を源泉徴収する義務を負わない。
第十一条
1 一方の締約国の居住者である法人が他方の締約国の居住者に支払う配当に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。
2 (1)の配当に対しては、その配当を支払つた法人が居住者である締約国において、その締約国の法令に従つて租税を課することができる。この場合において、その租税の額は、当該配当の金額の十五パーセントをこえないものとする。
 この規定は、配当に充てられる利得についての当該法人に対する課税に影響を及ぼすものではない。
3 この条において「配当」とは、株式、受益株式及び発起人持分その他の受益者持分(債権を除く。)から生ずる所得並びにその他の持分から生ずる所得であつて、分配を行なう法人が居住者である締約国の税法により株式から生ずる所得とされるものをいう。
4 1及び2の規定は、一方の締約国の居住者である配当の受領者が、その配当を支払う法人が居住者である他方の締約国内に、その配当の支払の基因となつた株式又は持分を実質的に保有する恒久的施設を有するときは、適用しない。この場合には、恒久的施設に帰せられる利得に関する第七条の規定が適用される。
第十二条
1 一方の締約国内で生じ他方の締約国の居住者に支払われる利子に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。
2 1の利子に対しては、その利子が生じた締約国において、その締約国の法令に従つて租税を課することができる。この場合において、その租税の額は、当該利子の金額の十パーセントをこえないものとする。
3 この条において「利子」とは、公債、債券(担保の有無又は利得の分配を受ける権利の有無を問わない。)その他のすべての種類の債権から生じた所得、その他の所得で当該所得が生じた締約国の税法により貸付金から生じた所得とされるもの及び保険会社との契約その他類似の契約に基づいて支払われる年金をいう。
4 1及び2の規定は、一方の締約国の居住者である利子の受領者が、その利子が生じた他方の締約国内に、その利子を生じた債権を実質的に保有する恒久的施設を有するときは、適用しない。この場合には、恒久的施設に帰せられる利得に関する第七条の規定が適用される。
5 利子は、その支払者が一方の締約国又はその地方公共団体若しくは居住者であるときは、その締約国内で生じたものとされる。ただし、利子の支払者(一方の締約国の居住者であるかどうかを問わない。)が一方の締約国内に恒久的施設を有する場合において、その利子を支払う基因となつた債務(船舶又は航空機の購入に関して負担したものを除く。)がその恒久的施設について生じ、かつ、その利子をその恒久的施設が負担するときは、その利子は、その恒久的施設が存在する締約国内で生じたものとされる。
6 支払者と受領者との間又はその双方と第三者との間の特別の関係により、支払われた利子の金額が、その支払の基因となつた債権を考慮する場合において、その関係がなかつたならば支払者及び受領者が合意するとみられる金額をこえるときは、この条の規定は、その合意するとみられる金額についてのみ適用する。その場合には、支払われた金額のうち超過分に対し、この条約の他の規定に妥当な考慮を払つた上、各締約国の法令に従つて租税を課することができる。
第十三条
1 一方の締約国内で生じ他方の締約国の居住者に支払われる使用料に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。
2 1の使月料に対しては、その使用料が生じた締約国において、その締約国の法令に従つて租税を課することができる。この場合において、その租税の額は、当該使用料の金額の十パーゼントをこえないものとする。
3 この条において「使用料」とは、文学上、美術上若しくは学術上の著作物(映画フィルムを含む。)の著作権、特許権、商標権、意匠若しくは模型、図面、秘密方式若しくは秘密工程の使用若しくは使用の権利の対価として、産業上、商業上若しくは学術上の設備の使用若しくは使用の権利の対価として、又は産業上、商業上若しくは学術上の経験に関する情報の対価として受け取るすべての種類の支払金及び船舶又は航空機の裸傭船契約に基づいて受け取る料金をいう。
4 1及び2の規定は、文学上、美術上若しくは学術上の著作物(映画フィルムを含む。)の著作権、特許権、商標権、意匠若しくは摸型、図面、秘密方式若しくは秘密工程の譲渡又はこれらの財産の使用の権利及び産業上、商業上若しくは学術上の経験に関する情報の譲渡から一方の締約国内で生じ、かつ、他方の締約国の居住者が取得した収益についても適用する。
5 1、2及び4の規定は、一方の締約国の居住者である使用料又は収益の受領者が、その使用料又は収益が生じた他方の締約国内に、その使用料又は収益を生じた権利又は財産を実質的に保有する恒久的施設を有するときは、適用しない。この場合には、恒久的施設に帰せられる利得に関する第七条の規定が適用される。
6 支払者と受領者との間又はその双方と第三者との間の特別の関係により、支払われた使用料又は収益の金額が、その支払の基因となつた使用、権利又は財産を考慮する場合において、その関係がなかつたならば支払者及び受領者が合意するとみられる金額をこえるときは、この条の規定は、その合意するとみられる金額についてのみ適用する。その場合には、支払われた金額のうち超過分に対し、この条約の他の規定に妥当な考慮を払つた上、各締約国の法令に従つて租税を課することができる。
第十四条
1 財産の譲渡から生ずる収益(第五条3及び第十三条4に規定する収益を除く。)に対しては、譲渡者が居住者である締約国においてのみ租税を課する。
2 1の規定にかかわらず、
(a) 一方の締約国内にある恒久的施設若しくは固定的施設の譲渡又はその恒久的施設若しくは固定的施設に属する資本的資産(船舶及び航空機を除く。)の譲渡から生ずる収益に対しては、その締約国において租税を課することができる。
(b) 一方の締約国の居住者が他方の締約国内に滞在中当該他方の締約国内で動産の譲渡から取得する収益に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。
(c) 一方の締約国の居住者が他方の締約国の居住者である法人の株式(当該他方の締約国内にある恒久的施設又は固定的施設に属するものを除く。)の譲渡から取得する収益は、次のことを条件として、当該他方の締約国において租税を課することができる。この場合において、当該他方の締約国が課する租税の額は、その収益の金額の二十五パーセントをこえないものとする。
(i) 譲渡者が保有し又は所有する株式(他の関係のある者が保有し又は所有する株式で譲渡者が保有し又は所有するものとともに合算されるものを含む。)が、当該課税年度中のいずれかの時において、その法人の株式の総数の二十五パーセント以上であること。
(ii) 譲渡者及び前記の関係のある者が当該課税年度中に譲渡した株式の総数が当該法人の株式の総数の五パーセント以上であること。
第十五条
1 一方の締約国の居住者が自由職業その他類似の性質の独立の活動に関して取得する所得に対しては、その者が他方の締約国内に自己の活動を遂行するために通常使用することができる固定的施設を有しない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課する。その者が他方の締約国内にそのような固定的施設を有する場合には、その所得に対しては、その固定的施設に帰せられる部分についてのみ、当該他方の締約国において租税を課することができる。
2 「自由職業」には、特に、学術上、文学上、美術上及び教育上の独立の活動並びに医師、弁護士、技術士、建築士、歯科医師及び公認会計士の独立の活動を含む。
第十六条
1 第十七条及び第十九条から第二十二条までの規定を留保して、一方の締約国の居住者が勤務に関して取得する給料、賃金その他これらに類する報酬に対しては、その勤務が他方の締約国内で行なわれない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課する。勤務が他方の締約国内で行なわれる場合には、その勤務に関して取得する報酬に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。
2 1の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者が他方の締約国内で行なう勤務に関して取得する報酬に対しては、次のことを条件として、当該一方の締約国においてのみ租税を課する。
(a) その報酬の受領者が当該年を通じて合計百八十三日をこえない期間当該他方の締約国内に滞在し
(b) その報酬が当該他方の締約国の居住者でない雇用者又はこれに代わる者から支払われ、かつ、
(c) その報酬が当該他方の締約国内に雇用者が有する恒久的施設又は固定的施設により負担されないこと。
3 1及び2の規定にかかわらず、国際輸送のために用いられている船舶又は航空機において行なわれる勤務に係る報酬に対しては、雇用者が居住者である締約国において租税を課することができる。
第十七条
 一方の締約国の居住者が他方の締約国の居住者である法人の役員の資格で取得する賞与、日当その他これらに類する報酬に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。
第十八条
 第十五条及び第十六条の規定にかかわらず、演劇、映画、ラジオ又はテレビジョンの俳優、音楽家等の芸能人及び運動家がこれらの者としての個人的活動に関して取得する所得に対しては、その活動が行なわれる締約国において租税を課することができる。
第十九条
 第二十条1及び3の規定を留保して、一方の締約国の居住者に対し過去の勤務について支払われる退職年金その他これに類する報酬に対しては、その締的国においてのみ租税を課する。
第二十条
1 公務の遂行として一方の締約国又はその地方公共団体に提供された役務について、その締約国若しくは地方公共団体が支払い、又はその締約国若しくは地方公共団体の支出に係る基金から支払われる報酬(退職年金を含。)で、その締杓国の国民である個人に支払われるものに対しては、その締約国においてのみ租税を課する。
2 1の規定は、利得を得る目的で行なう産業上又は商業上の活動に関して提供された役務について支払われる報酬又は退職年金については、適用しない。
3 一方の締約国における社会保険に関する法律上の制度に基づく給付に対しては、その締約国において租税を課することができる。
第二十一条
1 過去において一方の締約国の居住者であつた学生又は事業修習者でもつぱら教育又は訓練を受けるため他方の締約国内に滞在するものが自己の生活、教育又は訓練の費用にあてるために受け取る金額に対しては、当該他方の締約国において租税を課さない。ただし、その金額が当該他方の締約国内にある恒久的施設又は当該他方の締約国の団体により負担されるものであるときは、この限りでない。
2 一方の締約国からの個人で、政府又は宗教、慈善、学術、文芸若しくは教育の団体から支払われる主として勉学又は研究のための奨励金又は手当の受領者として、二年をこえない期間他方の締約国内に一時的に滞在するものは、その奨励金又は手当について、当該他方の締約国において租税を免除される。
3 一方の締約国からの個人で、その締約国の企業若しくは政府その他2に掲げる団体に雇用され又はこれらの者との契約に基づき、もつぱらこれらの者以外の者から技術上、職業上又は事業上の経験を習得するため、一年をこえない期間他方の締約国内に一時的に滞在するものは、自己の生計のための当該一方の締約国からの送金について、当該他方の締約国において租税を免除される。
第二十二条
 一方の締約国からの教授又は教員で、大学、学校その他の教育機関において教育を行なうため二年をこえない期間他方の締約国を一時的に訪れるものがその教育に関して取得する報酬に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課する。
第二十三条
 一方の締約国の居住者の所得で前諸条に規定されていないものに対しては、その締約国においてのみ租税を課する。
第二十四条
1
(a) フランスの居住者である納税者が日本国から所得を取得し、その所得に対し、この条約の規定に従つて日本国において租税が課されるときは、フランスは、(b)の規定を留保して、その所得についてフランスの租税を免除するものとする。この場合において、この条約に基づいてフランスにおいて租税を課される所得に対しては、フランスの税法上本来租税を課されるべき所得の総額に対応する税率でフランスの租税を課することができる。
(b) フランスの居住者である納税者が日本国で所得を取得し、その所得に対し、第十一条、第十二条、第十三条及び第十四条2(c)の規定に従つて日本国において租税が課されるときは、フランスは、その所得をフランスの租税の課税標準に含ませることができるが、日本国において納付される租税の額と等しい額をその納税者に課されるフランスの租税から控除するものとする。ただし、その控除の額は、控除が行なわれる前に、フランスの租税の額のうち日本国から取得する所得に対応する部分として算出された額をこえないものとする。
(c) (a)及び(b)において「フランスの居住者である納税者」とは、フランスの租税に関しフランスの居住者とされる個人並びに法人及びフランスの租税に関し法人として取り扱われる団体でフランスにおいて管理され、かつ、支配されているものをいう。
2
(a) 日本国は、日本国の居住者である納税者に対する租税の額を決定するに際し、この条約の他の規定にかかわらず、日本国の法令に基づいて租税を課することができるすべての項目の所得をその租税の課税標準に含ませることができる。この規定は、第二十条1、第二十一条及び第二十二条の規定の適用を妨げるものと解してはならない。
(b) 日本国の居住者である納税者がフランスから所得を取得し、その所得に対し、この条約の規定に従つてフランスにおいて租税が課されるときは、日本国の法令の規定に従い、フランスにおいて納付される租税の額と等しい額がその納税者に課される日本国の租税から控除されるものとする。ただし、その控除の額は、控除が行なわれる前に、日本国の租税の額のうちフランスから取得する所得に対応する部分として算出された額をこえないものとする。
(c) (a)及び(b)において「日本国の居住者である納税者」とは、日本国の租税に関し日本国の居住者とされる個人及び日本国内に本店又は主たる事務所を有する法人(日本国の租税に関し法人として取り扱われる法人格を有しない団体を含む。)をいう。
第二十五条
1 一方の締約国の国民は、他方の締約国において、同様の状況にある当該他方の締約国の国民が課されており又は課されることがある租税又はこれに関連する要件と異なり又はそれよりも重い租税又はこれに関連する要件を課されることはない。
2 この条において「国民」とは、次のものをいう。
(a) フランスについては、フランスの国籍を有するすべての個人及びフランスで施行されている法令によりその地位を与えられたすべての法人、組合その他の団体
(b) 日本国については、日本国の国籍を有するすべての個人、日本国の法令に基づいて設立され又は組織されたすべての会社その他の法人及び法人格を有しない団体で日本国の租税に関し日本国の法令に基づいて設立され又は組織された法人として取り扱われるもの
3 一方の締約国の企業が他方の締約国内に有する恒久的施設に対する租税は、当該他方の締約国において、同様の活動を行なう当該他方の締約国の企業に対して課される租税よりも不利に課されることはない。
4 一方の締約国の企業で資本の全部又は一部が他方の締約国の一又は二以上の居住者によつて直接に又は間接に所有され又は支配されているものは、当該一方の締約国において、当該一方の締約国の類似の他の企業が課されており又は課されることがある租税又はこれに関連する要件と異なり又はそれよりも重い租税又はこれに関連する要件を課されることはない。
5 この条において「租税」とは、すべての種類の租税をいう。
6 この条の規定は、
(a) 一方の締約国に対し、家族の状況又は家族を扶養するための負担を理由として自国の居住者に対して認める租税上の人的控除、救済及び軽減を他方の締約国の居住者に対して認めることを義務づけるものと解してはならず、また、
(b) 日本の法人についてその分配する利得に対して留保所得に対する率よりも低い率で租税を課する日本国の法令の規定に影響を及ぼすものと解してはならない。
第二十六条
 この条約の規定は、一方の締約国の租税の額の決定に関してその締約国の法令によつて現在認められており又は将来認められることがある免除、救済、減額、控除その他の減免をいかなる態様においても制限するものと解してはならない。
第二十七条
1 一方の締約国の居住者は、他方の締約国において執られる措置によりこの条約に適合しない課税を受け又は受けるに至ると認めるときは、両締約国の国内法で定める救済手段とは別に、自己が居住者である締約国の国税当局に対し、その事件について申立てをすることができる。
2 申立てが正当であると認められ、かつ、満足すべき解決をその国税当局が自ら与えることができないときは、その国税当局は、この条約に適合しない課税を回避するために他方の締約国の国税当局と協議するものとする。
3 両締約国の国税当局は、この条約の規定を実施するため、及びこの条約の適用に関する困難を解決するため、直接相互に通信することができる。
第二十八条
 この条約の規定は、国際法の一般原則又は特別の協定の規定に基づく外交官及び領事官の租税上の特権に影響を及ぼすものではない。
第二十九条
1 この条約は、この条約が適用される租税と類似の性質を有する租税を課するフランス共和国の海外領域に対し、そのまま又は必要な修正を加えて適用することができる。この適用は、外交上の公文の交換その他の両締約国のそれぞれの憲法に適合する方法による両締約国間の合意によつて定められる日から、そのようにして定められる修正及び条件(適用の終了に関する条件を含む。)に従つて効力を生ずる。
2 両締約国が別の合意をしない限り、一方の締約国が第三十一条の規定に基づいてこの条約を終了させるときは、この条の規定に基づいてこの条杓が適用された領域に対するこの条約の適用は、終了する。
第三十条
1 この条約は、両国のそれぞれの憲法に従つて承認されなければならない。この条約は、それぞれの国において憲法上の要件が満たされたことを確認する通告の交換の日の後一箇月で効力を生ずる。
2 この条約は、
(a) フランスにおいては、
(i) 第十一条、第十二条及び第十三条にそれぞれ規定する配当、利子及び使用料について源泉徴収される租税に関しては、この条約の効力発生の日以後に支払が行なわれるこれらの収益について、並びに
(ii) その他の租税に関しては、通告の交換が行なわれた年以後の各年において、又はその各年に終了する事業年度において生ずる所得について、
(b) 日本国においては、
 この条約が効力を生ずる年の一月一日以後に開始する各課税年度において生ずる所得について、適用する。
第三十一条
 この条約は、一方の締約国がこの条約を終了させるまで効力を有する。各締約国は、この条約の効力発生の日から五年を経過した後は、いずれの年においても、この条約を終了させる意思の通告をその年の末日の六箇月前に行なうことにより、この条約を終了させることができる。その場合には、この条約は、
(a) フランスにおいては、
(i) 第十一条、第十二条及び第十三条にそれぞれ規定する配当、利子及び使用料について源泉徴収される租税に関しては、終了について通告が行なわれた年の翌年の一月一日以後に支払が行なわれるこれらの収益について、並びに
(ii) その他の租税に関しては、その通告が行なわれた年の翌年以後の各年において、又はその各年に終了する事業年度において生ずる所得について、
(b) 日本国においては、
 前記の一月一日以後に開始する各課税年度において生ずる所得において、
 効力を失う。
 以上の証拠として、下名は、それぞれの政府からこのために正当な委任を受け、この条約に署名した。
 千九百六十四年十一月二十七日にパリで、ひとしく正文である日本語及びフランス語により本書二通を作成した。
 日本国政府のために
萩原徹
 フランス共和国政府のために
F・ルデュク
追加議定書
 所得に対する租税に関するニ重課税の回避のための日本国政府とフランス共和国政府との間の条約に署名するにあたり、下名は、同条約の不可分の一部をなす次の規定を協定した。
I
1 同条約第十一条2、第十二条2並びに第十三条2及び4の規定は、各締約国において、これらの諸条に規定する所得の受領者が同条約第三条にいう他方の締約国の居住者である場合において、前記の諸条に十五パーセント又は十パーセントと定める税率の最高限度をこえて租税が課されるときに、その租税の額のうちそのこえる部分を微収しないことによつて適用される。
2 一方の締約国の外交使節団の構成員又は領事機関の構成員であつて、他方の締約国内又は第三国内に居住し、かつ、これらの者を派遺した国の国籍を有するものは、1の所得に対して当該一方の締約国において租税を納付することとされている場合には、当該一方の締約国の居住者とみなす。
3 1の規定にかかわらず、国際機関、その下部概関及び職員並びに両締約国以外の国の外交使節団の構成員又は領事横関の構成員であつて、一方の締約国の居住者であり、かつ、当該一方の締約国において1の所得に対する租税を免除されているものは、他方の締約国において、同条約第十一条2、第十二条2並びに第十三条2及び4の規定に基づく軽減された税率の適用を受けることができない。
II
1 同条約第十一条、第十二条及び第十三条に規定する所得の受領者で、これらの所得に対して源泉徴収される日本国の租税につき、十五パーセント又は十バーセントの軽減された税率の適用を受ける権利を有するものは、その軽減された税率の適用を受けようとするときは、これらの所得の支払者を経由してその支払の前に、権限のある日本国の税務署に対して届出書を提出しなければならない。この届出書は日本国の国税当局が定める書式に従つて作成されなければならない。
2 これらの所得の真実の受領者が1の軽減された税率の適用を受けたことが誤りであると確認されたときは、フランスの税務当局は、日本国の国税当局に対し、当該租税について追微を行なうために必要な事項を記載した資料を送付する。
III
1 日本国の居住者で、同条約第十一条及び第十二条に規定する所得に対して源泉徴収されるフランスの租税につき、十五パーセント又は十パーセントの軽減された税率の適用を受ける権利を有するものは、その軽減された税率の適用を受けようとするときは、これらの所得の支払の時までに、当該所得の支払者又は支払者によりその証券に係る業務を委託された機関に対して申請書を提出しなければならない。
2 その申請書は、申請に係る証券及び所得を詳細に記載したものでなければならず、また、フランスの居住者であるそれぞれの支払者について所得の種類(配当及び利子をいう。)別に作成されなければならない。申請書は、日本国の国税当局によつて利用者の用に供される特別の書式に従つて二通作成されなければならない。
3 申請者又は銀行その他の申請者の代理人は、この申請書においてその所得の受領者が同条約第三条にいう日本国の居住者であることを明らかにし、当該受領者の住所地若しくは居所地又は本店若しくは主たる事務所の所在地を管轄する日本国の税務署に対してその二通の申請書を送付する。
4 その税務署は、当該所得の受領者が日本国の租税に関し日本国の居住者であることを確認し、その申請書にその旨を証明する。その税務署は、申請書の一通を保存し、他の一通を申請者に返却する。
5 フランスの居住者であるこれらの所得の支払者又は支払者によりその証券に係る業務を委託された機関は、税率軽減の申請書の送付を受けたときは、配当については十五パーセント、利子については十パーセントの税率で源泉徴収されるフランスの租税の額のみをその所得の金額から控除した金額を、必要に応じ為替管理に関する規定に従つて、支払うものとする。
6 フランスの居住者であるこれらの所得の支払者は、同条約に定める軽減された税率で源泉微収を行なつた場合には、フランスの税務当局が定める期間内に、その税務当局が定める様式に従つて、動産資本所得について源泉徴収した租税の納付に関して当該支払者を管轄する税務署に対し、その税率軽減の申請書を送付する。
 千九百六十四年十一月二十七日にパリで、
 ひとしく正文である日本語及びフランス語により本書二通を作成した。
 日本国政府のために
 萩原徹
 フランス共和国政府のために
 F・ルデュク