通商に関する日本国とフランス共和国との間の協定
通商に関する日本国とフランス共和国との間の協定
 通商に関する日本国とフランス共和国との間の協定
 日本国政府及びフランス共和国政府は、できる限りの自由と安定の基礎の上に両国間の貿易を発展させることを希望して、次の規定を協定した。
第一条
 いずれか一方の締約国が他の国を原産地とする産品又は他の国に仕向けられる産品に対して与えており又は与えることがあるすべての利益、特典、特権又は免除は、他方の締約国を原産地とする同様の産品又は他方の締約国に仕向けられる同様の産品に対し、即時に、かつ、無条件に与えられる。この規定は、輸入若しくは輸出について若しくはそれらに関連して課され、又は輸入若しくは輸出のための支払手段の国際的移転について課されるすべての種類の関税及び課徴金、それらの関税及び課徴金の徴収の方法並びに輸入又は輸出に関連するすべての規則及び手続に関して適用されるものとする。
第二条
 いずれか一方の締約国の領域を原産地とする産品で他方の締約国の領域に輸入されたものには、
(a) 国内に輸入された同様の産品について直接に又は間接に課される内国税その他の内国課徴金より高額のいかなる種類の内国税その他の内国課徴金をも課してはならず、
(b) 当該輸入産品の国内における販売、販売のための提供、購入、輸送、分配及び使用に影響を及ぼすすべての法令及び要件に関し、他の国を原産地とする同様の産品に与えられる待遇よりも不利な待遇を与えてはならない。
第三条
 いずれの一方の締約国も、他方の締約国の領域を原産地とする産品の輸入に対し、又は当該他方の締約国の領域に仕向けられる産品の輸出に対し、なんらの禁止又は制限をも課してはならない。ただし、同様の禁止又は制限が、いずれの第三国の同様の産品の輸入に対しても課され、又はいずれの第三国への同様の産品の輸出に対しても課される場合は、この限りでない。
第四条
 前諸条の規定は、次の利益には適用されない。
(a) 附属書1に定めるフランス関税地域と同附属書2に掲げるフランス共和国の海外領域との間で与えられており若しくは与えられることがある利益又は関税及び貿易に関する一般協定の附属書Bに掲げる地域に成立して現に独立している国の関税地域に対し、アルジェリア共和国の関税地域に対し、若しくはフランス国籍を有する自然人若しくは法人が所有し若しくは経営する商業上若しくは農業上の企業に関してニュー・ヘブリデスの仏英共同統治地域の関税地域に対し、フランス関税地域若しくはフランス共和国の海外領域において与えられており若しくは与えられることがある利益
(b) フランス関税地域又は前記の附属書2に掲げるフランス共和国の海外領域において、千九百五十六年十月二十七日にルクセンブルグで署名されたザール問題の解決に関する条約の範囲内でドイツ連邦共和国に与えられており又は与えられることがある利益
(c) 千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第三条に掲げる地域に対する行政、立法及び司法に関して同条後段に定める状態が存続する間において日本国が当該地域に与えており又は与えることがある利益
(d) 内国漁業の産品に与えており又は与えることがある利益
(e) 一方の締約国が隣接国との国境貿易を容易にするため与えており又は与えることがある利益
(f) 一方の締約国が構成国であり若しくは構成国となる関税同盟若しくは自由貿易地域の他の構成国に対し当該締約国が与えており若しくは与えることがある利益又は、関税同盟の形成若しくは自由貿易地域の設定を予定している協定の適用として、一方の締約国が他の諸国に与えており若しくは与えることがある利益
第五条
 この協定のいかなる規定も、各締約国が関税及び貿易に関する一般協定若しくは国際通貨基金協定又はこれらの協定を修正し若しくは補足する取極に基づいて有し又は有することがある権利及び義務に影響を及ぼすものではない。
第六条
(1) いずれの一方の締約国も、他方の締約国がこの協定の実施に関して行なうことがある申入れを好意的に検討しなければならず、また、必要な場合には、協議に応じなければならない。
(2) この協定の実施については、いかなる場合にも、毎年協議が行なわれなければならない。
(3) 欧州経済共同体を設立する条約上の義務で共通通商政策の漸進的な採用に関するものに基づいて必要が生ずる場合には、この協定にすべての所要の修正を加えるため、できる限りすみやかに交渉が開始されるものとする。
第七条
(1) この協定は、効力発生の日から六年間効力を有する。その後も、この協定は、いずれか一方の締約国により少なくとも三箇月前にする予告をもつて明示的に廃棄されるまで引き続き効力を有する。
(2) 各締約国は、この協定の効力発生のために自国の憲法上必要とされる手続の完了を他方の締約国に通告するものとする。この協定は、この条に規定する通告で二番目に当たるものの日付と本日両締約国間で署名された貿易関係に関する議定書8に規定する通告で二番目に当たるものの日付とのうち最もおそい日付の日に効力を生ずる。
 千九百六十三年五月十四日にパリで、ひとしく正文である日本語及びフランス語により本書二通を作成した。
 日本国政府のために
萩原徹
 フランス共和国政府のために
モーリス・クーヴ・ド・ミュルヴィル
附属書
 フランス関税地域及びフランス共和国の海外領域は、次の地域とする。
1 フランス関税地域
 フランス本国、コルシカ島及び沿岸の諸島
 ガドループ、ギアナ、マルティニック及びレュニオンの各海外県
 モナコ公国
2 フランス共和国の海外領域
 コモロ諸島
 フランス領ソマリ
 ニュー・カレドニア及び属領
 フランス領ポリネシア
 サン・ピエール及びミクロン
 フランス領の極南諸島及び南極地域
 ウァリス及びフトゥナ諸島
 通商に関する日本国とフランス共和国との間の協定に署名するにあたり、下名は、関税及び貿易に関する一般協定が前記の協定の効力発生の日から両国間に適用されることを確認し、かつ、次の適用上の特別規定を協定した。
1 いずれの一方の締約国も、他方の締約国のいずれかの産品が、予見されなかつた事態の発展の結果、同様の産品又は直接的競争産品の国内の生産者に重大な損害を与え又は与えるおそれがある条件で自国の領域内に輸入されていること及びその損害を防止し又は救済するためなんらかの措置を必要とすることについて、合理的な証拠があると認めるときは、他方の締約国に対し、理由を附した書面によるそのような通告を行なわなければならない。締約国は、この通告が行なわれたときは、相互に満足する解決を見いだすため、直ちに協議に入らなければならない。
2 前記の協議が相当な期間内に相互に満足する解決をもたらさなかつたときは、輸入締約国は、前記の損害を防止し又は救済するため必要な範囲及び期間を限度として、当該産品について数量的輸入制限を課することができる。
3 遅延すれば回復し難い損害を生ずるような急迫した事態においては、2に規定する措置は、1の通告を行なつた後に、又は1の協議が定了する前に、暫定的に執ることができる。ただし、締約国は、協議を継続して、相互に満足する解決を見いだすよう努めるものとする。
4
(a) 輸出締約国は、2又は3の規定に基づいて輸入締約国の執つた措置がその利益を著しく阻害するほど多くの数の産品又は多くの量の貿易に影響を及ぼすと認めるときは、生じた事態について協議を行なうことを輸入締約国に書面により要請することができる。
(b) 相当な期間内に満足する合意に到達することができなかつたときは、輸出締約国は、輸入締約国が執つた措置の効果と実質的に等しい効果を得るように、数量的輸入制限を課することができる。
(c) 輸入締約国がこの議定書に基づく措置を終了させたときはは、輸出締約国は、(b)の規定に基づいて執つた自国の措置を、遅滞なく、終了させなければならない。
5 2、3又は4の規定が適用される場合には、締約国は、執られた措置をできる限りすみやかに終了させるため、それぞれ独自に、及び相互に共同して、すべての努力をしなければならない。
6
(a) いずれか一方の締約国において他方の締約国の特定の産品についての輸入制限が従来から継続して実施されており、かつ、当該産品に対する制限を突然撤廃すれば同様の産品又は直接的競争産品の国内の生産者に重大な損害を与えることとなる場合には、輸入締約国は、両締約国の政府が合意により認める輸入制限を過渡的に課することができる。
(b) 前記の制限を適用する締約国は、次のことを約束する。
(1) 他方の締約国の貿易に対し、市場の公平なかつ合理的な割当分を与えること。
(2) 前記の制限をできる限り早い時期に緩和し又は撤廃するための政策を実施すること。
(c) 締約国は、(a)の規定に従つて執られた措置をできる限りすみやかに撤廃するため、その措置の運用を定期的に検討するものとする。
7
(a) この議定書は、六年を期間として締結され、両締約国の相互の合意によつて終了する。
 両締約国は、このため、いずれか一方の締約国の要請により、定期的に協議するものとする。
(b) 前記の六年の期間が満了する時に両締約国がこの議定書を終了させることに合意していない場合には、この議定書は、両締約国が別段の合意を行なうまで引き続き効力を有する。
(c) もつとも、この議定書は、日本国と欧州経済共同体との間に貿易協定が締結された時に、又は関税及び貿易に関する一般協定のわく内において市場攪乱問題について両締約国にとり受諾可能な一般的な多数国間の解決が見いだされた時に終了するものとする。
8 各締約国は、この議定書の効力発生のために自国の憲法上必要とされる手続の完了を他方の締約国に通告するものとする。この議定書は、この項に規定する通告で二番目に当たるものの日付と本日署名された通商に関する協定第七条(2)に規定する通告で二番目に当たるものの日付とのうち最もおそい日付の日に効力を生ずる。
 千九百六十三年五月十四日にパリで、ひとしく正文である日本語及びフランス語により本書二通を作成した。
 日本国政府のために
萩原徹
 フランス共和国政府のために
モーリス・クーヴ・ド・ミュルヴィル