日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定
日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定
 日本国政府及びヴィエトナム共和国政府は、
 両国間の経済協力関係を一層緊密にすることを希望し、よつて、ヴィエトナム共和国の産業開発計画の実現に寄与するため、日本国による借款の供与を目的とする協定を締結することを希望して、
 次のとおり協定した。
第一条
1 日本国は、現在において二十七億円(二、七〇〇、〇〇〇、〇〇〇円)に換算される七百五十万アメリカ合衆国ドル(七、五〇〇、〇〇〇ドル)に等しい円の額までの貸付を、この協定の規定に従い、この協定の効力発生の日から三年の期間内に、ヴィエトナム共和国に対して行うものとする。
2 前項の貸付は、この協定の規定に従い、両政府が合意する計画の実施に必要な日本国の生産物及び日本人の役務のヴィエトナム共和国による調達に充てられるものとする。
第二条
 両政府は、前条の貸付の各年度の限度額を毎年協議により決定するものとする。
第三条
1 ヴィエトナム共和国政府又はその所有し、若しくは支配する法人で第一条2の規定に従つて決定される計画の実施に当るものはその計画の実施に必要な生産物及び役務を調達するために必要な資金を、第一条1の総額及び前条の規定に従つて決定される毎年度の限度額の範囲内で貸付を受けるため、日本輸出入銀行と契約を締結するものとする。
2 日本国政府は、日本輸出入銀行が前項の規定に従つて締結される契約に基いて貸付を行うために必要とする資金を確保することができるように、必要な措置を執るものとする。
3 ヴィエトナム共和国政府は、1の規定に従つて締結される契約に基いて行われる元本の償還及び利息の支払が日本国の関係法令の規定に従つて円貨で行われるように、必要な措置を執るものとする。この円貨は、ヴィエトナム共和国政府又はその所有し、若しくは支配する法人がアメリカ合衆国ドルを日本国における外国為替公認銀行に売却して取得されるものとする。
4 ヴィエトナム共和国政府は、同政府が所有し、又は支配する法人が1の規定に従つて締結される契約に基いて行う元本の償還及び利息の支払を保証するものとする。
第四条
 両政府は、ヴィエトナム共和国政府又はその所有し、若しくは支配する法人が第一条2の規定に従つて決定される計画を実施するために調達する生産物及び役務の各年度の調達計画を毎年協議により作成するものとする。
第五条
 この協定の解釈及び実施に関する両政府間の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとする。両政府がこうして解決することができなかつたときは、その紛争は、両政府間で行われることがある取極に従つて解決のため仲裁に付託されるものとする。
第六条
 この協定は、批准されなければならない。この協定は、批准書の交換の日又は千九百五十九年五月十三日にサイゴンで署名された日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定の批准書の交換の日のいずれかおそい日に効力を生ずる。
 以上の証拠として、下名の全権委員は、この協定に署名した。
 千九百五十九年五月十三日にサイゴンで、日本語、ヴィエトナム語及びフランス語により本書二通を作成した。解釈に相違があるときは、フランス語の本書による。
 日本国政府のために
藤山愛一郎
久保田貫一郎
植村甲午郎
 ヴィエトナム共和国政府のために
ヴ・ヴァン・マオ
ブイ・ヴァン・ティン
ファム・ダン・ラム
 借款に関する協定第一条及び第二条に関する交換公文
 日本国全権委員からヴィエトナム共和国全権委員にあてた書簡
 書簡をもつて啓上いたします。本全権委員は、本日署名された日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定の第一条及び第二条に関し、両政府の次の了解を確認する光栄を有します。
1 同協定第一条に関し、借款は、ダニム水力発電所建設計画に充てられるものとする。
2 同協定第二条に関し、第一年度の貸付の限度額は、現在において九億円(九〇〇、〇〇〇、〇〇〇円)に換算される二百五十万アメリカ合衆国ドル(二、五〇〇、〇〇〇ドル)に等しい円の額とする。ただし、この限度額は、計画の細目の検討の結果、両政府の合意により、変更されうるものとする。
 閣下が、前記の了解をヴィエトナム共和国政府に代つて確認されれば幸であります。
 本全権委員は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向つて敬意を表します。
 千九百五十九年五月十三日にサイゴンで
 日本国全権委員 藤山愛一郎
 ヴィエトナム共和国全権委員
ヴ・ヴァン・マオ閣下
 ヴィエトナム共和国全権委員から日本国全権委員にあてた書簡
 書簡をもつて啓上いたします。本全権委員は、次のことを本全権委員に通報された本日付の閣下の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
 本全権委員は、本日署名された日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定の第一条及び第二条に関し、両政府の次の了解を確認する光栄を有します。
1 同協定第一条に関し、借款は、ダニム水力発電所建設計画に充てられるものとする。
2 同協定第二条に関し、第一年度の貸付の限度額は、現在において九億円(九〇〇、〇〇〇、〇〇〇円)に換算される二百五十万アメリカ合衆国ドル(二、五〇〇、〇〇〇ドル)に等しい円の額とする。ただし、この限度額は、計画の細目の検討の結果、両政府の合意により、変更されうるものとする。
 閣下が、前記の了解をヴィエトナム共和国政府に代つて確認されれば幸であります。
 本全権委員は、前記の閣下の書簡における了解をヴィエトナム共和国政府に代つて確認いたします。
 本全権委員は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向つて敬意を表します。
 千九百五十九年五月十三日にサイゴンで
 ヴィエトナム共和国全権委員
ヴ・ヴァン・マオ
 日本国全権委員 藤山愛一郎閣下
 借款に関する協定第三条1に関する交換公文
 日本国全権委員からヴィエトナム共和国全権委員にあてた書簡
 書簡をもつて啓上いたします。本全権委員は、本日署名された日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定の第三条1に言及する光栄を有します。日本国政府は、両政府が次のとおり合意することを提案いたします。
 両政府は、日本輸出入銀行とヴィエトナム共和国政府又はその所有し、若しくは支配する法人との間で取りきめられることあるべき契約が、次の各項を基礎とする諸条件を含むよう、配慮するものとする。
1 利率は、国際復興開発銀行が課する利息の通常の水準に基いて決定される。
2 貸付は、十年の期間の間に償還される。償還は、三年の経過の後開始され、それに続く七年の間に完了される。
3 元本の償還及び利息の支払は、日本国の外国為替及び外国貿易管理法並びにこれに基く命令及び規則に従つて円貨で行われる。この円貨は、ヴィエトナム共和国政府又はその所有し、若しくは支配する法人がアメリカ合衆国ドルを日本国における外国為替公認銀行に売却して取得されるものとする。
4 ヴィエトナム共和国政府が所有し、又は支配する法人が行う元本の償還及び利息の支払は、ヴィエトナム共和国政府が保証を行う。
 本全権委員は、さらに、この書簡及び前記の提案の貴国政府による受諾を確認される閣下の返簡を、借款に関する協定の効力発生の日に効力を生ずる両政府間の合意を構成するものとみなすことを提案する光栄を有します。
 本全権委員は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向つて敬意を表します。
 千九百五十九年五月十三日にサイゴンで
 日本国全権委員 藤山愛一郎
 ヴィエトナム共和国全権委員
ヴ・ヴァン・マオ閣下
 ヴィエトナム共和国全権委員から日本国全権委員にあてた書簡
 書簡をもつて啓上いたします。本全権委員は、本日付の閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
 本全権委員は、本日署名された日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定の第三条1に言及する光栄を有します。日本国政府は、両政府が次のとおり合意することを提案いたします。
 両政府は、日本輸出入銀行とヴィエトナム共和国政府又はその所有し、若しくは支配する法人との間で取りきめられることあるべき契約が、次の各項を基礎とする諸条件を含むよう、配慮するものとする。
1 利率は、国際復興開発銀行が課する利息の通常の水準に基いて決定される。
2 貸付は、十年の期間の間に償還される。償還は、三年の経過の後開始され、それに続く七年の間に完了される。
3 元本の償還及び利息の支払は、日本国の外国為替及び外国貿易管理法並びにこれに基く命令及び規則に従つて円貨で行われる。この円貨は、ヴィエトナム共和国政府又はその所有し、若しくは支配する法人がアメリカ合衆国ドルを日本国における外国為替公認銀行に売却して取得されるものとする。
4 ヴィエトナム共和国政府が所有し、又は支配する法人が行う元本の償還及び利息の支払は、ヴィエトナム共和国政府が保証を行う。
 本全権委員は、さらに、この書簡及び前記の提案の貴国政府による受諾を確認される閣下の返簡を、借款に関する協定の効力発生の日に効力を生ずる両政府間の合意を構成するものとみなすことを提案する光栄を有します。
 本全権委員は、本国政府に代つて、閣下の書簡に述べられた提案を受諾し、かつ、前記の書簡及びこの書簡を、借款に関する協定の効力発生の日に効力を生ずる両政府間の合意を構成するものとみなすことに同意する光栄を有します。
 本全権委員は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向つて敬意を表します。
 千九百五十九年五月十三日にサイゴンで
 ヴィエトナム共和国全権委員
ヴ・ヴァン・マオ
 日本国全権委員 藤山愛一郎閣下