海上において遭難した人の救助のための協力に関する日本国とソヴイエト社会主義共和国連邦との間の協定
海上において遭難した人の救助のための協力に関する日本国とソヴイエト社会主義共和国連邦との間の協定
海上において遭難した人の救助のための協力に関する日本国とソヴイエト社会主義共和国連邦との間の協定
日本国政府及びソヴィエト社会主義共和国連邦政府は、日本海、オホーツク海、ベーリング海並びに日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦の沿岸に接する太平洋西北部の水域において海難に遭遇した乗員に対し、その国籍のいかんを問わず、急速なかつ効果的な授助を与えるための協力を可能にする取極を行う必要を認め、
よつて、このためそれぞれの代表者を任命した。これらの代表者は、次のとおり協定した。
第一条 1 船舶(漁船を含む。以下同じ。)が日本海、オホーツク海、べーリング海並びに日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦(以下「ソヴィエト連邦」という。)の沿岸に接する太平洋西北部の水域において海難に遭遇する場合には、両締約国の海難救助機関は、当該船舶の乗員を救助するためにできる限り必要な援助を与えるものとする。
2 いずれか一方の締約国の海難救助機関が船舶の海難につき通報を受けた場合は、当該機関は、当該船舶の乗員に対し、最も適当と認められる救助措置を執るものとする。
3 海難現場が他方の締約国の海岸に近い場合又は必要と認められる場合は、海難の通報を受けた海難救助機関は、他方の締約国の海難救助機関と協議した上救助作業を計画するものとする。
一方の締約国の海難救助機関が、他方の締約国の船舶が海難に遭遇している旨の通報に接したときは、常にこのような協議が行われなければならない。
第二条 日本国及びソヴィエト連邦の領海における救助作業は、それぞれ当該国の法令に従つて行われるものとする。
第三条 1 日本国及びソブィエト連邦の海難救助機関の無線通信局は、遭難信号の発受に関する国際規則に従い、周波数五〇〇キロサイクル(六〇〇メートル)及び二、一八二キロサイクル(一三七・五メートル)による遭難信号を受けるものとする。
2 日本国の海難救助機関とソヴィエト連邦の海難救助機関との間の無線連絡は、日本国の海難救助機関についてはJNL局及びソヴィエト連邦の海難救助機関についてはURH局を通じて、行うものとする。
この場合における呼出しは、周波数五〇〇キロサイクルにより行い、その後の送信は、周波数をJNL局にあつては四七二キロサイクル又は夜間は三、二一二・五キロサイクル、昼間は六、三八六・五キ口サイクルに、URH局にあつては四五七キロサイクル又は夜間は三、二七〇キロサイクル、昼間は六、三六五キロサイクルに、それぞれ切り替えて行うものとする。周波数五〇〇キロサイクルによる呼出しにより一昼夜中のある時間において、確実な無線連絡が確保されないときは、両締約国の海離救助機関は、本条に規定する他の周波数により当該時における呼出しを行うことを合意することができる。
3 海難救助機関の船舶は、救助作業の実施に当り、それぞれJNL局及びURH局を経由して相互間及び海難船舶との間の無線連絡を行い、又は、必要な場合は、周波数五〇〇キロサイクル若しくは二、一八二キロサイクルにより直接の連絡を行うことができる。
4 本条1、2及び3の無線連絡は、国際信号又は、可能な場合には、英語により平文で行うものとする。
第四条 1 援肋のため最初に救助に着手したいずれか一方の締約国の海難救助機関は、救肋作業を完遂するため必要な揚合は、他方の締約国の海難救助機関に対し第三条の規定に従い協力を要請することができる。
2 前項の要請に接した海難救助機関は、できる限り、通報に示された個所に救助のための船舶等を差し向けなければならない。
第五条 両締約国は、その海難救助機関に対し、この協定の規定の実施に関し詳細な指示を与えることを約束する。
第六条 この協定の規定は、千九百十年九月二十三日にブラッセルで署名された海難における救援救助についての規定の統一に関する条約及び千九百四十八年六月十日にロンドンで署名された千九百四十八年の海上における人命の安全のための国際条約にてい触するものとみなしてはならない。
第七条 1 この協定は、日本国とソヴィエト連邦との間の平和条約の効力発生の日又は外交関係の回複の日に効力を生じ、三年間効力を有する。
2 この協定は、いずれか一方の締約国が前記の期間の満了の少くとも一年前にこの協定の廃棄を声明しないときは、更に三年間効力を存続し、かつ、いずれか一方の締約国が延長された三年の期間が満了する少くとも一年前にこの協定の廃棄を声明しない限り、そのつど次の三年間効力を存続するものとする。
以上の証拠として、各代表者は、この協定に署名した。
千九百五十六年五月十四日にモスクワで、ひとしく正文である日本語及びロシア語により本書二通を作成した。
日本国政府の委任により
政府の承認を条件として
河野一郎
松平康東
ソヴィエト社会主義共和国連邦政府の委任により
A・イシコフ
交換公文
日本国農林大臣からソヴィエト連邦漁業大臣にあてた書簡
書簡をもつて啓上いたします。本代表は、本日モスクワで署名された海上において遭難した人の救助のための協力に関する日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の協定第二条に言及し、かつ、日本国政府の見解によれば同条の規定は領海の範囲についての問題に対する締約国の立場になんらの影響を与えるものとみなしてはならないことを申し述べる光栄を有します。
本代表は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向つて敬意を表します。
千九百五十六年五月十四日モスクワで 河野一郎
ソヴィエト社会主義共和国連邦 漁業大臣A・A・イシコフ閣下
ソヴィエト連邦漁業大臣から日本国農林大臣にあてた書簡
書簡をもつて啓上いたします。本代表は、次のとおり述べられた本日付の閣下の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
本代表は、本日モスクワで署名された海上において遭難した人の救肋のための協力に関する日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の協定第二条に言及し、かつ、日本国政府の見解によれば同条の規定は領海の範囲についての間題に対する締約国の立場になんらの影響を与えるものとみなしてはならないことを申し述べる光栄を有します。
本代表は、さらに、前記のことがソヴィエト社会主義共和国連邦政府の見解でもあることを申し述べる光栄を有します。
本代表は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向つて敬意を表します。
千九百五十六年五月十四日モスクワで A・イシコフ
日本国農林大臣 河野一郎閣下