修好交通條約

　日本國皇帝陛下及西班牙國皇帝陛下ハ幸ニ其ノ間竝其ノ臣民間ニ存在スル友好親善ノ關係ヲ鞏固ナラシメムコトヲ欲シ而シテ今後兩國間ノ交通及修好ニ關スル條規ヲ明確ニ訂立スルハ此ノ善美ナル目的ヲ達スルニ資スヘキヲ信シ之カ爲ニ修好交通條約ヲ締結スルコトニ決定シ日本國皇帝陛下ハ西班牙國駐箚特命全權公使從四位勳三等荒川巳次ヲ西班牙國皇帝陛下ハ國務大臣「プレジダン、ド、ラカデミーロアイヤル、ド、ジュリスプリュダンス、エ、レジスラション」、「グランクロア、ド、ロルドルシヴィル、ダルフォンスドゥズ」、「メダイユドール、ダルフォンストレーズ」、巴威國「グランクロア、ド、サン、ミシェル」葡萄牙國「グランクロア、ド、ラ、トゥール、エ、レペ」、「グランクロア、デュ、クリ、ヱ、ド、ヴィヤヴィショサ」、露西亞國「グランクロア、ダレクサンドル、ネウスキー」希臘國「グランクロア、デュ、ソーヴール」、伊太利國「グランクロア、デ、サンモーリス、エ、ラザール」、瑞典國「グランクロア、ド、レトアル、ポレール」、諾威國「グランクロア、ド、サントラフ」、「ヘッセ」國「グランクロア、ド、フィリップ、ル、マニャァニーム」、土耳其國「グランクロア、デュ、メッヂディエ」、朱尼斯國「グランクロア、ヂュ、ニシェン、エル、イフチカル」、佛蘭西國「グラントフィシエ、ド、ラ、レジオンドノール」、「アルセマス」侯爵「ドン、マヌエル、ガルシアプリエト」ヲ各其ノ全權委員ニ任命セリ因テ各全權委員ハ互ニ其ノ委任状ヲ示シ之カ良好妥當ナルヲ認メタル後左ノ諧條ヲ協定セリ

第一條
　兩締約國ノ一方ノ臣民ハ他ノー方ノ版圖内ノ各地ニ到リ又ハ滯在スルコトニ付完全ナル自由ヲ有スヘク而シテ其ノ國法ニ遵由スルニ於テハ

一　旅行居住スルコト、修學研究ヲ爲スコト、生業職業ニ從フコト及生産製造ノ業ヲ營ムコトニ關スル一切ノ事項ニ付總テ最惠國ノ臣民又ハ人民ト同一ノ基礎ニ置カルヘク

二内國臣民ト均シク適法ナル商業ノ目的物タル各種商品ノ取引ニ從事スルノ權利ヲ有シ

三　内國臣民ト均シク必要ナル家屋、製造所、倉庫、店舗及附屬構造物ヲ所有又ハ賃借シテ之ヲ使用シ又住居、商業、生産業、製造業其ノ他適法ナル目的ノ爲土地ヲ賃借スルコトヲ得ヘク

四　國法ニ依リ別國ノ臣民又ハ人民カ取得占有スルコトヲ得又ハ得ルコトアルヘキ各種ノ動産及不動産ヲ相互ノ條件ニ依リ且常ニ該國法ノ定ムル條件及制限ニ從ヒ取得占有スルコトニ付完全ナル自由ヲ享有シ

　内國臣民ニ對シ制定セラレ又ハ制定セラルルコトアルヘキ所ト同一ノ條件ニ依リ賣買、交換、贈與、婚姻、遺言其ノ他ノ方法ニ因リ前記ノ財産ヲ處分スルコトヲ得ヘク

　又財産ノ賣得金及總テ動産ヲ國法ニ從ヒテ自由ニ輸出スルコトヲ得ヘク外國人タルノ故ヲ以テ之カ爲同様ノ場合ニ内國臣民ノ負擔スル所ト異ナルカ或ハ之ヨリ多額ナル税金ヲ課セラルルコトナカルヘク

五　身體及財産ニ對シテ常ニ完全ナル保護及保障ヲ享受シ其ノ權利ヲ行使擁護セムカ爲自由且容易ニ裁判所二申出ツルコトヲ得且國家及其ノ機關ニ對スル請求ニ付テモ管轄權ヲ有スル裁判所其ノ他ノ官廳ニ出訴スルノ權利ヲ有シ又内國臣民ト均シク右裁判所及官廳ニ於テ自已ヲ代理セシメムカ爲代言人及辨護士ヲ選擇使用スルノ自由ヲ享有スヘク

六　陸軍、海軍、護國軍又ハ民兵ノ何レタルヲ間ハス總テノ強制兵役ヲ免レ且服役ノ代トシテ課セラルルー切ノ貢納ヲ免レ又強募公債及軍用徴發又ハ取立金ニ付テハ不動産ノ所有者、賃借者又ハ使用者トシテ内國臣民又ハ最恵國ノ臣民若ハ人民ト均シク課セラルルモノヲ除クノ外亦一切之ヲ免カルヘク

七　又内國臣民又ハ最恵國ノ臣民若ハ人民カ納付シ又ハ納付スルコトアルヘキ所ト異ナルカ或ハ之ヨリ多額ナル何等ノ課金、租税、手數料又ハ貢納ヲ徴収セラルルコトナカルヘシ

第二條
　兩締約國ノー方ノ臣民カ他ノー方ノ版圖内二於テ有スル家宅、倉庫、製造所及店舗竝一切ノ附屬構造物ニシテ適法ノ目的ニ使用セラルルモノハ侵スヘカラス右建物又ハ附屬構造物ニ付テハ内國臣民ニ對スル法定ノ條件及方式ニ依ルノ外臨檢捜索ヲ爲シ又ハ帳簿、書類若ハ計算書ヲ檢査點閲スルコトヲ得ス

第三條
　兩締約國ノー方ハ他ノー方ノ港、都市其ノ他ノ場所ニ總領事、領事、副領事及領事事務官ヲ置クコトヲ得但シ右領事官ノ駐在ヲ認可スルニ便ナラサル場所二付テハ此ノ限ニ在ラス尤モ此ノ制限ハ一切ノ他國ニ對シテモ亦均シク之ヲ加フルニ非サレハー方ノ締約國ニ對シテ之ヲ加フルコトヲ得ス

　右總領事、領事、副領事及領事事務官ハ駐在國政府ヨリ認可状其ノ他相當ノ證認状ヲ得タルトキハ最惠國ノ同等領事官ニ認許セラレ叉ハ認許セラルルコトアルヘキ範圍内ニ於テ相互ノ條件ニ依リ職務ヲ執行シ竝特權、特典及免除ヲ享有スルノ權利ヲ有スヘシ認可状其ノ他ノ證認状ヲ發給シタル政府ハ其ノ裁量ヲ以テ之ヲ取消スノ權利ヲ有ス但シ其ノ取消ヲ爲スニ付テハ之ヲ正當ト認メタル理由ヲ説明スヘシ

第四條
　兩締約國ノ一方ノ臣民カ他ノー方ノ版圖内ニ於テ死亡シタル場合ニハ當該地方官廳ハ直ニ之ヲ最近地ニ駐在セル右死亡者所屬國ノ領事官ニ通知スヘシ該領事官カ地方官廳ニ先チテ死亡ノ事實ヲ知リタルトキハ之ヲ地方官廳ニ通知スヘシ

　前項ノ場合ニ於テ死亡者ノ本國法ニ依リ相續財産ヲ収受管理スルノ權利ヲ有スル者其ノ地ニ在ラサルトキハ死亡者所屬國ノ當該領事官ハ必要ナル手續ｖヲ履行シタル上右死亡者財産所在地ノ國法ノ定ムル方法及制限ニ依リ該相續財産ヲ収受管理スルコトヲ得

　締約國ノー方ノ臣民カ他ノー方ノ版圖外ニ於テ死亡シタルモ該版圖内ニ財産ヲ所有セル場合ニ相續財産ヲ収受管理スルノ權利ヲ有スル者右財産所在地ニ在ラサルトキハ亦前項ノ規定ヲ準用ス

　死亡者ノ相續財産ノ管理ニ關スルー切ノ事項ニ付締約國ノー方カ別國ノ領事官ニ現ニ許與シ叉ハ今後許與スルコトアルヘキ權利、特權、恩典叉ハ免除ハ締約國ノ他ノー方ノ領事官ニ即時且無條件ニテ之ヲ及ホスヘキモノトス

第五條
　兩締約國版圖ノ間ニハ相互ニ通商及航海ノ自由アルヘシ締約國ノ一方ノ臣民ハ他ノ一方ノ版圖内ニ於テ外國通商ノ爲ニ開カレ又ハ開カルルコトアルヘキ一切ノ場所、港及河川ニ最惠國ノ臣民又ハ人民ト均シク般舶及貨物ヲ以テ自由ニ到ルコトヲ得但シ常ニ到達國ノ國法ニ從フコトヲ要ス

第六條
　兩締約國ノ一方ノ版圖内ノ生産又ハ製造ニ係ル物品ニシテ他ノ一方ノ版圖内ニ輸入セラルルモノニ對スル輸入税ハ兩國間ノ特別取極又ハ各自ノ國内法ニ依リテ之ヲ定ムヘシ

　締約國ノ孰レノ一方タリトモ他ノ一方ノ版圖二輸出セラルル物品ニ對シ同樣ノ物品カ別國ニ輸出セラルルニ當リ納付シ又ハ納付スルコトアルヘキ所ト異ナルカ或ハ之ヨリ多額ナル何等ノ税金又ハ課金ヲ課スルコトヲ得ス

　又締約國ノ孰レノ一方タリトモ他ノ一方ノ版圖ヨリノ物品ノ輸入又ハ該版圖ヘノ物品ノ輸出ニ對シテハ同樣ノ物品ノ別國ヨリノ輸入又ハ別國ヘノ輸出ニ對シテ均シク適用セラレサル何等ノ禁止又ハ制限ヲ加フルコトヲ得ス但シ衞生上ノ措置トシテ又ハ動物及有用ノ植物ヲ保護スルノ目的ヲ以テ加フル禁止又ハ制限ハ此ノ限ニ在ラス

第七條
　兩締約國ノ一方ノ臣民タル商工業者及該國ノ版圖内ニ於テ住所ヲ有シ其ノ業ヲ營ム商工業者ハ他ノ一方ノ版圖内二於テ本人自ラ又ハ旅商ヲ用ヒテ物品ヲ買入レ見本携帶又ハ不携帶ニテ住文ヲ取集ムルコトヲ得而シテ右商工業者及其ノ用フル旅商ハ買入ヲ爲シ又ハ注文ヲ取集ムルニ當リ課税及便益ニ關シテ最惠國待遇ヲ享受スヘシ

　前記ノ目的ヲ以テ見本トシテ輸入セラルル物品ハ其ノ再輪出セラルヘキコト又ハ法定期間内ニ再輸出セラレサル場合ニ成規ノ關税ノ納付セラルヘキコトヲ確實ナラシメムカタメニ制定セラレタル關税法規及手續ヲ履行スルトキハ各締約國ニ於テー時無税輸入ヲ許可セラルヘシ但シ此ノ特權ハ物品ノ數量又ハ價格ニ徴シ見本ト認ムルコト能ハサルモノ又ハ其ノ性質上再輸出ノ際校合スルコト能ハサルモノニハ之ヲ與フルコトナシ見本カ無税輸入ヲ許可セラルヘキモノタルト否トヲ決定スルハ何レノ場合ニ於テモ輪入地當該官廳ノ權内ニ専屬ス

第八條
　兩締約國ノー方ノ國法ニ從ヒテ即ニ設立セラレ又ハ今後設立セラルヘキ商工業及金融業ニ關スル株式會社其ノ他ノ會社及組合ニシテ該國版圖内ニ於テ登記セラレ又ハ登記セラルルコトアルヘキモノハ他ノー方ノ版圖内ニ於テ其ノ國法ニ違反セサル限リ權利ヲ行使シ且原告又ハ被告トシテ裁判所ニ出頭スルコトヲ得

第九條
　兩締約國ノー方ノ港ニ其ノ國ノ船舶ヲ以テ適法ニ輸入セラレ又ハ輸入セラルルコトアルヘキー切ノ物品ハ他ノー方ノ船舶ヲ以テ亦均シク該港ニ之ヲ輸入スルコトヲ得此ノ場合ニ於テ右物品ノ内國船舶ニ依リテ輸入セラルルトキ課スル所ト異ナルカ或ハ之ヨリ多額ナル税金又ハ課金ハ如何ナル名稱ヲ有スルモノタリトモ之ヲ課スルコトナシ右相互均等ノ待遇ハ該物品カ直接ニ製産原地ヨリ到ルト其ノ他ノ外國地方ヨリ到ルトヲ問ハス之ヲ實行スヘシ

　輸出ニ關シテモ右ト同樣ニ全ク均等ノ待遇ヲ爲スヘク從テ兩締約國ノー方ノ版圖内二於テ該版圖ヨリ適法ニ輸出セラレ又ハ輸出セラルルコトアルヘキ物品ハ其ノ輸出カ日本船舶ニ依ルト西班牙船舶ニ依ルトヲ間ハス且其ノ仕向先カ締約國ノ他ノー方ノ港タルト第三國ノ港タルトニ拘ラス之カ輸出ニ當リ同一ノ輸出税ヲ納付シ又同一ノ奬勵金及戻税ヲ受クヘシ

第十條
　締約國ノ領水内二於ケル船舶ノ繋留及貨物ノ積卸二關スルー切ノ事項二付テハ締約國二於テ兩國ノ船舶ヲ全ク均等ニ待遇スルノ意思ナルニ因リ締約國ノ孰レノー方タリトモ他ノー方ノ船舶ニ對シ同樣ノ場合ニ均シク許與セサル何等ノ特權又八便益ヲ自國船舶二許與スルコトナカルヘシ

第十一條
　西班牙國又ハ日本國ノ國旗ヲ掲ケ且各本國法二規定スル國籍證明書類ヲ有スル商船ハ日本國又ハ西班牙國ニ於テ之ヲ西班牙船舶又ハ日本船舶ト認ムヘシ

第十二條
　政府、官公史、私人、團體又ハ各種營造物ノ名義ヲ以テ又ハ其ノ利益ノ爲二課セラルル噸税、通過税、運河税、港税、水先案内料、燈臺税、檢疫費其ノ他名稱ノ如何ニ拘ラス之ニ類似又ハ該當スル税金又ハ課金ハ同様ノ場合二均シク内國船舶一般ニ又ハ最恵國船舶二課スルモノニ非サレハ締約國ノー方ノ領水内ニ於テ之ヲ他ノー方ノ船舶ニ課スルコトナシ右均等ノ待遇ハ兩國ノ船舶力何レノ地ヨリ來リ又何レノ地二住クヲ問ハス相互ニ之ヲ實行スヘシ

第十三條
　兩締約國ノー方ノ定期郵便運送ノ任務二當ル船舶ハ他ノー方ノ領水内ニ於テ同樣ノ最惠國船舶ニ許與セラルル便益特權及免除ヲ享有スヘシ

第十四條
　兩締約國ノ沿岸貿易ハ本條約ノ規定スル限ニ在ラス日本國及西班牙國各自ノ國法ノ定ムル所ニ依ル締約國ノー方ノ船舶ニシテ他ノー方ノ版圖内ノ二箇以上ノ輸入港ヘ仕向ケラレタル貨物ヲ外國ニ於テ積載シタルモノハ右諸港ノ一ニ於テ其ノ貨物ノー部ヲ陸揚シ更ニ他ノー港叉ハ數港二績航シテ其ノ地ニ貨物ノ殘部ヲ陸揚スルコトヲ得但シ常ニ到達國ノ國法、税法及税關規則ニ從フコトヲ要ス又同樣ノ方法及同一ノ制限ニ依ル締約國ノー方ノ般舶ハ他ノー方ノ港ヨリ其ノ國外ニ向ヒ發航ノ途次該國ノ數港ニ於テ貨物ヲ船積スルコトヲ得

第十五條
　兩締約國ノー方ノ常該領事官ハ他ノー方ノ版岡圖内ニ於テ自國商船内ノ秩序專管シ海上又ハ駐在國領水内ニ於テ船長、職員其ノ他ノ船員間ニ生スル紛議殊ニ給料ノ決定及契約ノ履行ニ關シテ生スル紛議ヲ單濁ニテ處辨スヘシ但シ締約國ノー方ノ領水内ニ在ル他ノー方ノ商船内ニ騒擾ノ發生シタルトキ其ノ發生地ノ常該官廳ニ於テ之カ爲港内叉ハ陸上ノ安寧秩序ヲ妨害スルカ或ハ其ノ虞アリト認ムル場合ニハ常該内國官廳之ヲ管轄スヘシ

第十六條
　兩締約國ノー方ノ國籍ヲ有スル商船ニシテ他ノー方ノ領水内ニ在ルモノノ船員脱船シタルトキ脱船者ノ逮捕及引渡ノ爲該商船所屬國ノ富該領事官ニ於テー切之ニ關スル費用ノ償還セラルヘキコトヲ保障シテ請求シタル場合ニハ地方官廳ハ國法ノ許ス限リ其ノ權内ニ在ル各般ノ援助ヲ與フルコトヲ要ス

　右ノ規定ハ脱船地ノ國ノ臣民ニ關シテハ之ヲ適用セサルモノトス

第十七條
　兩締約國ノー方ハ局外中立ノ義務ニ反セサル限リ他ノ一方ノ船舶ニ對シ難破、海上損害又ハ不可抗力ニ因ル寄航ノ場合ニ其ノ國有タルト個人ノ所有タルトヲ問ハス同樣ノ場合ニ内國船舶ニ許與スルト同一ノ援助、救護及免除ヲ許與スヘシ右難破又ハ被害船舶ヨリ救上ケタル貨物ニ對シテハ關税ヲ免除ス但シ内地消費ノ爲引取ラルル場合ニハ成規ノ關税ヲ納付スヘシ

第十八條
　本條約ニ於テ別段ノ明文アル場合ヲ除クノ外兩締約國ハ通商、航海及工業ニ關スルー切ノ事項ニ付其ノ一方力別國ノ臣民又ハ人民ニ現ニ許與シ又ハ今後許與スルコトアルヘキー切ノ特權、恩典又ハ免除ヲ即時且無條件ニテ他ノ一方ノ臣民ニ及ホスヘキコトニ同意ス

第十九條
　本條約ノ規定ハ國境貿易ヲ便ナラシメムカ爲接境國(西班牙國ニ付テハ麻洛哥國ヲモ包含ス)ニ現ニ許與シ又ハ將來許與スルコトアルヘキ特殊ノ利益ニシテ接境國ニ専屬シ別國ノ享受セサルモノニハ之ヲ適用セス

第二十條
　本條約ノ規定ハ亜非利加ニ於ケル西班牙國屬地（「セウタ」、「メリーヤ」、「アルセマス」、「ピニョン、デ、ヴェレス、デ、ラ、ゴメラ」、「チャファリナス」、「アルボラン」、［イフゴ、西部「サアラ」、西班牙領「ギネー」、「フエルナンド、ポー」、「アンノボン」、「コリスコ」及「エロベイ」島）ニハ之ヲ適用セス但シ日本國ハ右屬地二於テー切ノ場合二最惠國待遇ヲ享受スヘキモノトス

第二十一條
　本條約ハ千九百十一年七月十七日ヨリ實施シ千九百二十一年七月十六日迄效力ヲ有ス

　右期間滿了ノ十二月前二兩締約國ノ執レヨリモ本條約ヲ消滅セシムルノ意思ヲ他ノー方ニ通告セサルトキハ本條約ハ締約國ノー方カ其ノ廢棄ヲ聲明シタル日ヨリ一年ノ期間ノ滿了二至ル迄引續キ效力ヲ有ス

第二十二條
　本條約ハ批准ヲ要ス其ノ批准書ハ成ルヘク速ニ東京ニ於テ交換スヘシ

　右證據トシテ各全權委員本條約ニ署名調印ス

　明治四十四年五月十五日即千九百十一年五月十五日「マドリッド」ニ於テ本書二通ヲ作ル

　荒川巳次印

　エム、ガルシア、プリエト印