通商に関する日本国とペルー共和国との間の協定
通商に関する日本国とペルー共和国との間の協定
 通商に関する日本国とペルー共和国との間の協定
 日本国政府及びペルー共和国政府は、両国間に伝統的に存在する平和及び友好の関係を強化すること、両国間の通商関係を強化し、かつ、発展させること並びに両国民の生活水準を改善するため相互に有益な投資及びその他の形態の経済的協力を助長することを希望して、両国間の通商関係を公正かつ衡平な基礎の上に規律する通商に関する協定を締結することに決定し、このため、次のとおりそれぞれの全権委員を任命した。
 日本国政府
 外務大臣 小坂善太郎
 ペルー共和国政府
 特派特命全権大使
 フェデリコ・ヒルベック・セミナリオ
 これらの全権委員は、互いにその全権委任状を交換し、それが良好妥当であると認められた後、次の諸条を協定した。
第一条
 すべての種類の関税及び課徴金で、輸入若しくは輸出について若しくはそれらに関連して課され、又は輸入品若しくは輸出品のための支払手段の国際的移転について課されるものに関し、それらの関税及び課徴金の賦課の方法に関し、輸入及び輸出に関連する規則及び手続に関し、輸出貨物に対する内国税の適用に関し、輸入貨物について又はこれに関連して課されるすべての内国税その他すべての種類の内国課徴金に関し、並びに輸入貨物の国内における販売、販売のための提供、購入、分配又は使用に影響を及ぼすすべての法令及び要件に関し、いずれか一方の締約国がいずれかの第三国を原産地とする産品又はいずれかの第三国に仕向けられる産品に対して与えているか、又は将来与えるすべての利益、特典、特権又は免除は、他方の締約国の領域を原産地とする同様の産品又は他方の締約国の領域に仕向けられる同様の産品に対し、即時に、かつ、無条件に与えられるものとする。
第二条
1 いずれの一方の締約国の国民及び会社も、両締約国の領域の間における支払、送金及び資金又は金銭証券の移転に関して、並びに他方の締約国の領域と第三国の領域との間における支払、送金及び資金又は金銭証券の移転に関して、いかなる第三国の国民及び会社に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。
2 1の規定は、いずれか一方の締約国が、国際通貨基金協定の締約国として有するか又は有することがある権利及び義務に合致するような為替制限を課することを妨げるものではない。
3 いずれの一方の締約国も、他方の締約国のすべての産品の輸入に対し、又は当該他方の締約国の領域に仕向けられるすべての産品の輸出に対し、なんらの制限又は禁止をも課してはならない。ただし、すべての第三国の同様の産品の輸入又はすべての第三国への同様の産品の輸出が同様に制限され、又は禁止されている場合は、この限りでない。
4 3の規定にかかわらず、いずれの一方の締約国も、貨物の輸入及び輸出について、当該一方の締約国が、2の規定に基づいて当該時に課することができる為替制限と同等の効果を有する制限又は統制をすることができる。
第三条
1 いずれの一方の締約国の国民も、他方の締約国の現行の関係法令及び行政規則に従つて当該他方の締約国の領域に入り、同領域に居住し、及び同領域内を旅行することができ、かつ、すべての事項に関して、いかなる第三国の国民に与えられる待遇よりも不利でない待遇を受けるものとする。
2 いずれの一方の締約国の国民及び会社も、他方の締約国の領域内において、税金の賦課、裁判を受けること、財産権、法人への参加並びに一般にあらゆる種類の事業並びに商業的及び経済的活動の遂行に関するすべての事項について、いかなる第三国の国民及び会社に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。
3 いずれの一方の締約国の国民及び会社も、他方の締約国の領域内において、特許権の取得及び保有並びに商標、営業用の名称及び営業用の標章に関する権利並びにすべての種類の工業所有権に関して、当該他方の締約国の国民及び会社に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。
4 2の規定にかかわらず、各締約国は、相互主義に基づき、又は、二重課税の回避若しくは脱税の防止のための協定により、租税に関する特別の利益を与える権利を留保する。
第四条
 いずれの一方の締約国の国民及び会社の財産も、他方の締約国の領域内において、公共のためにされ、かつ、当該他方の締約国の憲法及び法律の規定に従つて正当に補償される場合を除くほか、収用し、又は使用してはならない。この条で取り扱うすべての事項については、いずれの一方の締約国の国民及び会社も、他方の締約国の領域内において、当該他方の締約国又は第三国の国民及び会社に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。
第五条
 一方の締約国の国民又は会社と他方の締約国の国民又は会社との間に締結された仲裁による紛争の解決を規定する契約は、いずれの一方の締約国の領域内においても、仲裁手続のために指定された地がその領域外にあるという理由又は仲裁人のうちの一人若しくは二人以上がその締約国の国籍を有しないという理由だけでは、執行することができないものと認めてはならない。その契約に従つて正当にされた判断で、判断がされた地の法令に基づいて確定しており、かつ、執行することができるものは、いずれの一方の締約国の領域内においても、その判断がされた地がその領域外にあるという理由又は仲裁人のうちの一人若しくは二人以上がその締約国の国籍を有しないという理由だけでは、無効と認め、又は執行のための有効な手段を拒否してはならない。
第六条
1 第一条及び第二条の規定は、いずれか一方の締約国が与えているか又は将来与える次の特別の利益には適用しない。
(a) 内国漁業の産品に与える利益
(b) 国境貿易を容易にするため隣接国に与える利益
(c) 当該一方の締約国が加盟国であるか若しくは加盟国となる関税同盟又は構成地域であるか若しくは構成地域となる自由貿易地域の構成国に対し関税及び貿易に関する一般協定の枠内で与える利益
2 第一条及び第二条の規定は、また、ペルーが関税及び貿易に関する一般協定の枠内でチリ及びアルゼンティン共和国に与えているか又は将来与える利益には適用しない。
第七条
1 この協定のいかなる規定も、いずれか一方の締約国が関税及び貿易に関する一般協定若しくは国際通貨基金協定又はそれらを修正し若しくは補足する多数国間の協定の締約国として有するか、又は有することがある権利及び義務については、両締約国が当該協定の締約国である限り、影響を及ぼすものではない。さらに、いずれか一方の締約国がそのいずれかの協定の締約国でなくなつた場合には、両締約国は、その時の事情に照らし、この協定の貿易、為替又は関税に関する規定について修正を必要とするかどうかを決定するため、直ちに協議を行なうものとすることが了解される。
2 この協定は、次の措置を執ることを妨げるものではない。
(a) 金又は銀の輸入又は輸出を規制する措置
(b) 核分裂性物質、核分裂性物質の利用若しくは加工による放射性副産物又は核分裂性物質の原料となる物質に関する措置
(c) 武器、弾薬及び軍需品の生産若しくは取引又は軍事施設に供給するため直接若しくは間接に行なわれるその他の物資の取引を規制する措置
(d) 国際の平和及び安全の維持若しくは回復に関する自国の義務を履行し、又は自国の重大な安全上の利益を保護するため必要な措置
(e) 美術的、歴史的又は考古学的価値のある国宝の保護のために執られる措置
(f) 公衆衛生の保護並びに病気、害虫及び寄生物に対する動植物の保護に関する措置
第八条
 各締約国の政府は、他方の締約国の政府がこの協定の実施に関して行なう申入れを好意をもつて受け取らなければならず、また、協議のため適当な機会を他方の締約国の政府に与えなければならない。
第九条
1 この協定は、各締約国の憲法上の手続に従つて批准されなければならない。この協定は、批准書の交換の日に効力を生ずる。批准書の交換は、できる限りすみやかにリマで行なわれるものとする。
2 この協定の有効期間は、三箇年とし、その後も同一の期間ずつ自動的に延長される。ただし、いずれか一方の締約国の政府が他方の締約国の政府に対しこの協定を終了させる意思を各期間の終了前少なくとも九十日の予告をもつて書面により通告した場合は、この限りでない。
 以上の証拠として、各全権委員は、この協定に署名した。
 千九百六十一年五月十五日に東京で、ひとしく正文である日本語及びスペイン語により本書二通を作成した。
 日本国のために
小坂善太郎
 ペルー共和国のために
F・ヒルベック
議定書
 通商に関する日本国とペルー共和国との間の協定(以下「協定」という。)に署名するに当たり、下名の全権委員は、各自の政府から正当に委任を受け、さらに、協定の不可分の一部と認められる次の規定を協定した。
1 協定において「会社」とは、商業、工業、金融業その他営利を目的とする事業活動に従事する社団法人、組合、会社その他の団体をいう。
2 移住者は、第三条1の規定の適用の範囲外にあるものとする。
3 第三条1の規定に関し、いずれの一方の締約国も、他方の締約国が相互主義に基づく特別の協定によりいずれかの第三国の国民に対して与えているか、又は将来与える旅券及び査証に関する事項についての利益の享受を要求する権利を有しない。
4 第三条1の規定は、ペルーが与える次の利益には適用しない。
(a) 隣接国、スペイン又はアルゼンティン共和国との間の条約に基づくもの
(b) ペルーが加盟しているか又は将来加盟する地域的統合組織の加盟国として有する義務に基づくもの
(c) 緊急事態により必要なもの
5 第三条2の規定に関し、いずれの一方の締約国も、不動産に関する権利の亨有についての待遇が相互主義に服すべきことを要求することができる。
6 協定のいかなる規定も、著作権に関して、いかなる権利をも許与し、又はいかなる義務をも課するものと解してはならない。
7 第四条の規定は、いずれか一方の締約国の領域内で収用され、又は使用される財産で他方の締約国の国民及び会社が利益を有するものについても適用する。
8 協定のいかなる規定も、ペルーに対し、日本国が(a)千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第二条の規定に基づいて日本国がすべての権利、権原及び請求権を放棄した地域を原籍とする者に対して、又は(b)同平和条約第三条に掲げるいずれかの地域に対する行政、立法及び司法に関し同条後段に掲げる事態が継続する限り、同地域の原住民及び船舶並びに同地域との貿易に対して与えているか、又は将来与える権利及び特権の享受を要求する権利を与えるものと解してはならない。
 以上の証拠として、各全権委員は、この議定書に署名した。
 千九百六十一年五月十五日に東京で、ひとしく正文である日本語及びスぺイン語により本書二通を作成した。
 日本国のために
小坂善太郎
 ペルー共和国のために
F・ヒルベック
 (海運条項の交渉継続に関する交換公文)
 外務大臣からペルー共和国特命全権大使にあてた書簡
 書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日署名された通商に関する日本国とペルー共和国との間の協定に関して、同協定を補足する海運に関する協定をできる限りすみやかに締結するため交渉を引き続き行なうとの了解を、本国政府に代わつて確認する光栄を有します。
 本大臣は、さらに、閣下が前記の了解を貴国政府に代わつて確認されることを要請する光栄を有します。
 本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向かつて敬意を表します。
 千九百六十一年五月十五日
 小坂善太郎
 ペルー共和国
特派特命全権大使
フェデリコ・ヒルベック・セミナリオ閣下
 ペルー共和国特命全権大使から外務大臣にあてた書簡
 書簡をもつて啓上いたします。本使は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
 本大臣は、本日署名された通商に関する日本国とペルー共和国との間の協定に関して、同協定を補足する海運に関する協定をできる限りすみやかに締結するため交渉を引き続き行なうとの了解を、本国政府に代わつて確認する光栄を有します。
 本大臣は、さらに、閣下が前記の了解を貴国政府に代わつて確認されることを要請する光栄を有します。
 本使は、さらに、前記の了解を本国政府に代わつて確認する光栄を有します。
 本使は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向かつて敬意を表します。
 千九百六十一年五月十五日
 F・ヒルベック
 日本国外務大臣 小坂善太郎閣下
 (自由職業に関する交換公文)
 ペルー共和国特命全権大使から外務大臣にあてた書簡
 書簡をもつて啓上いたします。本使は、本日締結された通商に関するペルー共和国と日本国との間の協定に関して、いずれの日本人も、その自由職業に関する資格がペルーの権限のある当局によつて同等の価値を認められる場合には、ペルー国籍が要件とされる場合を除くほか、ペルーにおいて当該自由職業に従事することができる旨を閣下に通報する光栄を有します。
 本使は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向かつて敬意を表します。
 千九百六十一年五月十五日
 F・ヒルベック
 日本国外務大臣 小坂善太郎閣下
 外務大臣からペルー共和国特命全権大使にあてた書簡
 書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、日本国民によるペルーにおける自由職業活動の遂行に関する本日付けの閣下の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
 本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向かつて敬意を表します。
 千九百六十一年五月十五日
 小坂善太郎
 ぺルー共和国
特派特命全権大使
フェデリコ・ヒルベック・セミナリオ閣下