日本国政府とパラグァイ共和国政府との間の移住協定
日本国政府とパラグァイ共和国政府との間の移住協定
日本国政府及びパラグァイ共和国政府は、
両国民の間の友好関係を一層緊密にすることを希望し、及びパラグァイヘの日本人の移住が両国に与える利益にかんがみ、その移住を促進することが相互の利益であることを確信し、
次のとおり協定した。
第一条 1 この協定によつてパラグァイヘの入国が認められる日本人移住者(以下「日本人移住者」という。)の数は、この協定の効力発生の日から三十年の期間において、年令のいかんを問わず八万五千人(八五、〇〇〇人)とする。
2 日本人移住者は、三千五百人を最大限度とするほぼ均等の年間割当によりパラグァイに入国するものとする。日本人移住者の基準年間割当(二、八三三―四人)の一部又は全部が送出されなかつたときは、その割当の残余は、最大限度が定められている前記の年間割当とは別に、次年度以降において使用することができる。
第二条 1 この協定の目的を達成するため、日本・パラグァイ移住混合委員会(以下「混合委員会」という。)をアスンシオン市に設置する。
2 混合委員会は、各政府がそれぞれ三人ずつ指名する六人の委員で構成される。
3 混合委員会の主たる目的は、この協定に基く移住に関する五年ごとの基本計画(日本人移住者の種類、移住地及び定着の方法に関する計画を含む。)を作成すること及び日本人移住者に関する他のすべての問題を協議することとする。
第三条 日本人移住者の選考は、混合委員会が作成して両政府が承認した基準に従い、日本国政府又はその指定する移住取扱団体が行う。ただし、パラグァイ共和国政府は、必要と認めるときは、このために任命された代表者を通じて選考に参加することができる。
第四条 1 パラグァイ共和国政府は、混合委員会が作成して両政府が承認した移住に関する五年ごとの基本計画の実施のため、日本国政府又はその指定する移住取扱団体が日本人移住者の入植に必要な土地(私有地であると国有地であるとを問わない。)を購入するに当り、法令の範囲内であらゆる便宜を与えるものとする。
購入する土地の面積は、一家族当り約五十ヘクタールとして計算する。
第五条 1 パラグァイ共和国政府は、日本人移住者の自用品及び日本人移住者がその職業に応じて携行するすべての機械、器具及び用具につき、関税その他輸入品に対し課せられるすべての税金及び課徴金を免除する。
2 パラグァイ共和国政府は、さらに、日本国政府又はその指定する移住取扱団体が、パラグァイ共和国政府と事前に協議した上で、日本人移住者の使用又は移住地における使用のため、すべての機械、器具及び用具(トラクター、ブルトーザー、トラック及びジープを含む。)を第三者に販売しないという保証の下に、関税その他輸入品に対し課せられるすべての税金及び課徴金の免除を受けて自己の負担で導入することを許可する。
第六条 日本人移住者は、入国、居住、営業、課税、課徴金その他すべての事項に関して、第三国の移住者より不利でない待遇を与えられる。
第七条 パラグァイ共和国政府は、日本人移住者に対し、同政府の技術機関を通じて耕作に必要な技術援助を与えることを約束する。
第八条 パラグァイ共和国政府は、移住地内の日本人移住者のため、パラグァイ人の有資格者のいない間、日本人移住者が日本国の法令に従つて認められた資格を有するときは、それらの者が医師、歯科医師、薬剤師、助産婦又は看護人の職業に従事することを認める。もつとも、これらの職業は、常にパラグァイ共和国の法令に従つて遂行されるものと了解される。
第九条 1 この協定に基く移住により形成された日本人農業移住地は、現行の規則に従つてパラグァイ共和国の教育制度を遵守し、かつ、可能なときからスペイン語で教育を行うことを条件として、私立日本人学校を設けることができる。
2 パラグァイ共和国政府は、前記の学校に対し、教員の派遣その他の可能な援助を与えるものとする。
第十条 この協定の解釈上若しくは実施上の意見の相違又は混合委員会における意見の相違は、すべて両政府間で外交上の経路を通じて解決するものとする。
第十一条 この協定は、パラグァイ共和国の憲法上の規定に従つてこの協定が批准された旨の通告を外交上の経路を通じて日本国政府が受領した日に効力を生ずる。
以上の証拠として、正当に委任された日本国政府及びパラグァイ共和国政府の代表者は、この協定に署名した。
千九百五十九年七月二十二月にアスンシオン市で、ひとしく正文である日本語及びスペイン語により本書二通を作成した。
日本国政府のために 黒田音四郎
パラグァイ共和国政府のために パウル・サペナ・パストール