日本国に対するスイスのある種の請求権の解決に関する日本国とスイス連邦との間の取極
日本国に対するスイスのある種の請求権の解決に関する日本国とスイス連邦との間の取極
日本国政府及びスイス連邦政府は、
日本国政府に対するスイス連邦政府のある種の請求権に関する問題を解決することを希望して、
次の諸条を協定した。
第一条 1 日本国政府は、日本国の機関が第二次世界大戦の間にスイスの自然人又は法人若しくは商社に与えた財産上の損害であつて、その責任が国際法上日本国政府に属するものの賠償請求を満足させるため、総額千二百二十五万スイス・フランの金額を、この取極の効力発生の日の後一箇月以内にスイス連邦政府に支払うものとする。
2 1に掲げる自然人又は法人若しくは商社は、損害が生じた時及びこの取極の署名の日に、それぞれ、スイスの国籍を保有し、又はスイス系であつたものでなければならない。
第二条 日本国政府は、スイス連邦政府が、千九百四十九年に二百四十二万六千六百九十三スイス・フランの金額をスイスにある日本の資産の中から控除したこと及び第二次世界大戦の間に日本国の機関によつてスイスの自然人の身体に加えられた損害であつてスイス連邦政府が国際法に基いて日本国政府に責任があることを主張しているものの賠償のためにその金額を分配したことについて、執つた措置に同意する。
第三条 1 スイス連邦政府は、第一条に掲げる金額の同条に定める損害を受けた者に対する分配に当るものとする。日本国又はスイス連邦は、利害関係者との関係においては、その分配について法律上の責任を負わない。
2 スイス連邦政府は、第一条に掲げる金額の支払が行われたときは、同条及び第二条に掲げる損害の賠償に関する同政府のすべての要求を放棄するものとし、また、スイス国民は、その事項に関する要求をいかなる方法によつても日本国政府に提起することができないものとする。
第四条 スイス連邦政府は、第一条に定める支払の実施を容易にするため、合意によつて定める金額までスイスにある日本の資産の封鎖を解除するものとする。その支払が行われたときは、スイス連邦政府はスイスにある残余の日本の資産の封鎖を解除するものとする。
第五条 この取極の効力は、リヒテンシュタイン公領地にひとしく及ぶものとする。この取極の実施上、リヒテンシュタイン公領地の自然人又は法人若しくは商社は、スイスの自然人又は法人若しくは商社とみなされる。
第六条 この取極の実施手続は、日本国の当局とスイスの当局との間の特別の合意によつて定める。
第七条 この取極の効力発生の日は、両政府が交換公文により定めるものとし、できれば千九百五十五年四月三十日前とする。
以上の証拠として、それぞれの政府より正当に委任された両国の代表者はこの取極に署名した。
千九百五十五年一月二十一日にベルンで、ひとしく正文である日本語及びフランス語により本書二通を作成した。
日本国政府のために 萩原徹(署名)
スイス連邦政府のために マックス・プティピエール(署名)