日本国とメキシコ合衆国との間の文化協定
日本国とメキシコ合衆国との間の文化協定
 日本国政府及びメキシコ合衆国政府は、相互の利益のため、両国を結ぶ文化的のぎずなを維持し、且つ、緊密にすることをひとしく希望して、
 文化協定を締結することに決定し、このため、次のとおりそれぞれの全権委員を任命した。
 日本国政府 外務大臣
岡崎勝男
 メキシコ合衆国政府 外務大臣
ルイス・パディリャ・ネルボ
 これらの全権委員は、その全権委任状を示してそれが良好妥当であると認められた後、次の規定を協定した。
第一条
 両締約国は、特に次の諸手段により、各締約国内において相手国の文化が一層理解されるように、できる限りの便宜を相互に与えるものとする。
(a) 書籍、定期刊行物その他の出版物
(b) 講演、演奏会及び演劇
(c) 美術展覧会その他の文化的性質を有する展覧会
(d) ラジオ、音盤その他類似の手段
(e) 科学的、教育的又は文化的性質を有する映画
第二条
 両締約国は、教授、学者、学生その他特に文化活動に従事する者の両国間における交換を奨励するものとする。
第三条
 両締約国は、自国の大学その他の教育又は研究の機関における相手国の文化に関するあらゆる問題を取り扱う講義の拡充及び創設を奨励するものとする。
第四条
 両締約国は、いずれか一方の締約国の国民が、他方の締約国内において修学若しくは研究を行い、又は技術を習得することができるように、これらの者に奨学金その他の便宜を与えるための方法を研究するものとする。
第五条
 両締約国は、いずれか一方の締約国において修学中に又は修学終了の際に大学その他の教育機関から与えられる学位及び資格証書並びに当該締約国において与えられるその他の資格証書が、修学上の目的のため、及び今後定める若干の場合においては職業上の目的のため、他方の締約国においても同等の価値を認められるための方法及び条件を研究するものとする。
第六条
 両締約国は、両国の学会その他の文化団体が協力することを奨励するものとする。
第七条
 いずれの締約国も、自国内において、相手国の国民に対し、博物館、図書館その他の資料供覧施設の利用について便宜を与えるものとする。
第八条
 両締約国は、この協定を実施するための条件を一層具体化し、及びその適用を確保するため必要があるときは、協議を行うものとする。
第九条
 この協定は、批准されるものとし、東京で行われるべき批准書の交換の日に効力を生ずる。
第十条
 この協定は、五年間効力を存続するものとし、その期間の満了後においても、いずれか一方の締約国がその廃棄を通告した日から起算して一年の期間が満了するまでなお効力を有する。
 以上の証拠として、前記の全権委員は、この協定に署名調印した。
 千九百五十四年十月二十五日にメキシコ合衆国連邦区メキシコ・シティで、ひとしく正文である日本語及びスペイン語により本書二通を作成した。
 日本国のために
岡崎勝男(署名調印)
 メキシコ合衆国のために
L・パディリャ・ネルボ(署名調印)
メキシコ外務大臣から外務大臣にあてた書簡
  書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日署名された両国間の文化協定第八条に言及する光栄を有します。
  本大臣は、前記の協定の実施を任務とする文化委員会をメキシコ・シティ及び東京に設置することをメキシコ政府に代つて貴国政府に提案いたしたいと思います。
  メキシコ・シティに設置される委員会は、「メキシコ・日本文化委員会」と称し、かつ、メキシコ駐在日本国大使を委員長とし、メキシコ政府の外務省代表一名及び文部省代表一名をもつて構成するものとします。
  東京に設置される委員会は、「日本・メキシコ文化委員会」と称し、かつ、日本国駐在メキシコ大使を委員長とし、日本国政府の外務省代表一名及び文部省代表一名をもつて構成するものとします。
  本大臣は、閣下が、貴国政府が前記の条件による文化委員会の設置に同意されるか否かを通報されることを要請いたします。
  本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向つて敬意を表します。
 千九百五十四年十月二十五日メキシコ・シティで
  外務大臣
ルイス・パディリャ・ネルボ
  日本国外務大臣
岡崎勝男閣下
外務大臣からメキシコ外務大臣にあてた書簡
  書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日付の閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
 本大臣は、本日署名された両国間の文化協定第八条に言及する光栄を有します。
 本大臣は、前記の協定の実施を任務とする文化委員会をメキシコ・シティ及び東京に設置することをメキシコ政府に代つて貴国政府に提案いたしたいと思います。
 メキシコ・シティに設置される委員会は、「メキシコ・日本文化委員会」と称し、かつ、メキシコ駐在日本国大使を委員長とし、メキシコ政府の外務省代表一名及び文部省代表一名をもつて構成するものとします。
 東京に設置される委員会は、「日本・メキシコ文化委員会」と称し、かつ、日本国駐在メキシコ大使を委員長とし、日本国政府の外務省代表一名及び文部省代表一名をもつて構成するものとします。
 本大臣は、閣下が、貴国政府が前記の条件による文化委員会の設置に同意されるか否かを通報されることを要請いたします。
 本大臣は、日本国政府が前記の書簡に述べられた条件による文化委員会の設置に同意するものであることを閣下に通報いたします。
 本大臣は、以上を申し進めるに際し、とこに閣下に向つて敬意を表します。
 千九百五十四年十月二十五日メキシコ・シティで
 日本国外務大臣
岡崎勝男
 メキシコ外務大臣
ルイス・パディリャ・ネルボ閣下