日本国とラオスとの間の経済及び技術協力協定
日本国とラオスとの間の経済及び技術協力協定
 日本国政府及びラオス王国政府は、
 ラオスが日本国に対するすべての賠償請求権を放棄した事実を考慮し、かつ、ラオスが同国の経済開発のための経済及び技術援助を日本国がラオスに与えることを希望する旨を表明した事実を考慮して、この経済及び技術協力協定を締結することを合意し、次の諸条を協定した。
第一条
1 日本国は、ラオスの経済開発を援助することを目的として、日本国の生産物並びに日本国の国民及び法人の役務の供与からなる十億円の援助を、無償で、かつ、この協定の規定に従い、ラオスに与えることを約束する。この援助は、両政府が合意により決定する事業の実施に充てられるものとする。
2 この協定の規定に基いて日本国が与える援助の期間は、両政府間で別段の合意をした場合を除くほか、この協定の効力発生の日から二年とする。
第二条
 ラオス王国政府は、日本国政府との合意により、第一条1の事業の実施計画(以下「実施計画」という。)を確定するものとする。実施計画は、日本国が各年度に供与する生産物及び役務を定めなければならない。
第三条
1 ラオス王国政府が指定するラオスの当局は、第一条1に定める生産物及び役務の供与が行われるため、日本国民又はその支配する日本国の法人と直接に契約を締結するものとする。
2 1の契約(その変更を含む。)は、(a)この協定の規定、(b)この協定の実施のための両政府間の取極の規定及び(c)実施計画に合致するものでなければならない。その契約は、認証を得るため、両政府に提出されなければならない。この項の規定に基いて認証された契約は、以下「契約」という。
3 1の規定にかかわらず、第一条1に定める生産物及び役務の供与は、総額一千万円の範囲内で、契約を締結することなく行うことができる。ただし、各場合について両政府間の合意によらなければならない。
第四条
1 日本国政府は、第三条1のラオスの当局が契約により負う債務に充てるため、並びに第三条3に定める場合には同項の規定に基いて行われる生産物及び役務の供与の費用に充てるため必要な支払を、第七条の規定に基いて定められる手続によつて、行うものとする。その支払は、日本円で行うものとする。
2 1の支払に係る生産物及び役務は、その支払により、かつ、その支払が行われた時に、日本国がラオスに供与したものとみなされる。
第五条
 両政府は、この協定の円滑なかつ効果的な実施のため必要な措置を執るものとする。
第六条
 実施計画及び契約の実施を管理し、かつ、両政府に対しこの協定の実施に関する勧告を行う責任を有する両政府の代表者で構成される合同委員会を設置する。
第七条
 この協定の実施に関する細目は、両政府が合意により定めるものとする。
第八条
 この協定は、批准されなければならない。この協定は、批准書の交換の日に効力を生ずる。批准書は、できる限りすみやかにヴィエンチァンで交換されるものとする。
 以上の証拠として、下名は、各自の政府によりこのために正当に委任を受け、この協定に署名した。
 千九百五十八年十月十五日に東京で、本書二通を作成した。
 日本国のために
藤山愛一郎
 ラオスのために
チァオ・カマオ
 日本国特命全権大使からラオス外務大臣にあてた書簡
 書簡をもつて啓上いたします。本使は、千九百五十八年十月十五日に署名された日本国とラオスとの間の経済及び技術協力協定に言及する光栄を有します。日本国政府は、両政府が同協定第七条の規定に基いて次のとおり合意することを提案いたします。
I 援助
1 同協定に基く援助は、日本国とラオスとの間の通常の貿易が阻害されないように、かつ、外国為替上の追加の負担が日本国に課されないように、実施しなければならない。
2 ラオス王国政府は、日本国が同協定第一条の生産物及び役務を供与することができるようにするため、利用することができる現地の労務、資材及び設備を提供するものとする。
3 同協定第一条1の事業の実施のためラオスにおいて必要とされる日本国民は、ラオスにおける所要の滞在期間中、その作業の遂行のため必要な便宜を与えられるものとする。
4 日本国の国民及び法人(以下「日本人」という。)は、同協定第一条に基く生産物又は役務の供与に関連して、ラオスにおけるすべての課税を免除される。
5 日本人がその作業の遂行のため資材又は機械を一時的に輸入して使用する必要がある場合には、その資材又は機械の一時的輸入及び再輸出のため、許可、免除その他のすべての便宜がラオス王国政府により与えられるものとする。
6 ラオス王国政府は、援助として供与された日本国の生産物のラオスからの再輸出を防止するため、あらゆる有効な措置を執るものとする。
II 契約
7 契約は、日本円で通常の商業上の手続によつて締結されるものとする。
8 日本国政府は、同協定第三条のラオスの当局(以下「ラオスの当局」という。)に対し、契約を締結する適性を有する日本人を推薦することができる。
9 契約の実施に関する責任は、契約当事者であるラオスの当局及び日本人のみが負うものとする。
10 契約であつて、輸送、保険又は検査のような附随的の役務の供与を必要とし、かつ、そのための支払がこの援助として行われることとなつているものは、すべて、これらの役務が日本国民又はその支配する日本国の法人により行われるべき旨の規定を含まなければならない。
11 契約は、その契約から又はこれに関連して生ずることがある紛争が、両政府が定める手続に従つて解決される旨の規定を含まなければならない。
III 支払
12 国外において勘定を開設する権能を有するラオスにおける唯一の公的機関であるラオス国立銀行は、ラオスの当局に代つて、自己の選択により日本国のいずれかの外国為替公認銀行と取極を行い、「ラオス国立銀行日本援助」の名の特別勘定(以下「特別勘定」という。)を開設して、その日本国の銀行に日本国政府からの支払の受領及び支払の実施を授権し、及びその取極の内容を日本国政府に通告するものとする。特別勘定は、利子を付さないものと了解される。
13 ラオスの当局は、契約の規定に基いて支払の義務が生ずる前の適当な期間内に、支払金額及びラオスの当局が関係契約者に支払を行うべき日を記載した支払請求書を日本国政府に送付しなければならない。
14 日本国政府は、支払請求書を受領したときは、請求金額を前記のラオスの当局による支払の日の前日までに12に定める日本国の銀行に支払わなければならない。
15 日本国政府は、同協定第三条3の規定による生産物及び役務の供与に必要な費用に充てるための支払を、前項に定めると同一の方法で、行わなければならない。
16 14及び前項の規定に基いて支払われる金額は、特別勘定に貸記するものとし、他のいかなる資金も、同勘定に貸記されないものとする。同勘定は、13及び前項の目的のためにのみ借記を行うものとする。
17 ラオスの当局が特別勘定に払い込まれた資金の全部又は一部を契約の解除その他によつて引き出さなかつた場合には、未払金額は、日本国政府との間で適当な取極が行われた後に、13及び15の目的のための支払に充てられるものとする。
18 特別勘定から支払われた金額の全部又は一部がラオスの当局に返還された場合には、その返還された金額は、16の規定にかかわらず、特別勘定に貸記するものとする。前項の規定は、これらの金額について準用する。
19 同協定第四条2の規定の適用上、「その支払が行われた時」とは、支払が日本国政府により12に定める日本国の銀行に対して行われた時をいう。
IV 合同委員会
20 両政府は、それぞれ、同協定第六条の合同委員会のために代表一人及び代表代理二人を任命するものとする。
21 合同委員会は、一方の政府の代表の要請によつて会合するものとする。
22 合同委員会は、次のことを行うこととする。
(1) 両政府に次の事項を勧告すること。
(a) 契約の作成のため従うべき手続
(b) 当該契約の両政府による認証のための条件
(c) 同協定第四条にいう支払の方式
(d) 作成すべき実施計画の主要点
(2) 実施計画に定める事業の進行状態について両政府に報告すること。
(3) 同協定の実施に際して生ずることがある問題で両政府が合同委員会に付託するものを審議し、かつ、両政府に有益な勧告を行うこと。
 本使は、さらに、この書簡及び前記の提案の貴国政府による受諾を確認される閣下の返簡を、経済及び技術協力協定第七条の規定に基く同協定の実施に関する細目についての両政府間の合意を構成するものとみなすことを提案する光栄を有します。
 本使は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向つて敬意を表します。
 千九百五十九年一月二十三日ヴィエンチァンで
渋沢信一
 ラオス外務大臣 カンパン・パンヤ閣下
ラオス外務大臣から日本国特命全権大使にあてた書簡
 書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日付の閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
 本使は、千九百五十八年十月十五日に署名された日本国とラオスとの間の経済及び技術協力協定に言及する光栄を有します。日本国政府は、両政府が同協定第七条の規定に基いて次のとおり合意することを提案いたします。
I 援助
1 同協定に基く援助は、日本国とラオスとの間の通常の貿易が阻害されないように、かつ、外国為替上の追加の負担が日本国に課されないように、実施しなければならない。
2 ラオス王国政府は、日本国が同協定第一条の生産物及び役務を供与することができるようにするため、利用することができる現地の労務、資材及び設備を提供するものとする。
3 同協定第一条1の事業の実施のためラオスにおいて必要とされる日本国民は、ラオスにおける所要の滞在期間中、その作業の遂行のため必要な便宜を与えられるものとする。
4 日本国の国民及び法人(以下「日本人」という。)は、同協定第一条に基く生産物又は役務の供与に関連して、ラオスにおけるすべての課税を免除される。
5 日本人がその作業の遂行のため資材又は機械を一時的に輸入して使用する必要がある場合には、その資材又は機械の一時的輸入及び再輸出のため、許可、免除その他のすべての便宜がラオス王国政府により与えられるものとする。
6 ラオス王国政府は、援助として供与された日本国の生産物のラオスからの再輸出を防止するため、あらゆる有効な措置を執るものとする。
II 契約
7 契約は、日本円で通常の商業上の手続によつて締結されるものとする。
8 日本国政府は、同協定第三条のラオスの当局(以下「ラオスの当局」という。)に対し、契約を締結する適性を有する日本人を推薦することができる。
9 契約の実施に関する責任は、契約当事者であるラオスの当局及び日本人のみが負うものとする。
10 契約であつて、輸送、保険又は検査のような附随的の役務の供与を必要とし、かつ、そのための支払がこの援助として行われることとなつているものは、すべて、これらの役務が日本国民又はその支配する日本国の法人により行われるべき旨の規定を含まなければならない。
11 契約は、その契約から又はこれに関連して生ずることがある紛争が、両政府が定める手続に従つて解決される旨の規定を含まなければならない。
III 支払
12 国外において勘定を開設する権能を有するラオスにおける唯一の公的機関であるラオス国立銀行は、ラオスの当局に代つて、自己の選択により日本国のいずれかの外国為替公認銀行と取極を行い、「ラオス国立銀行日本援助」の名の特別勘定(以下「特別勘定」という。)を開設して、その日本国の銀行に日本国政府からの支払の受領及び支払の実施を授権し、及びその取極の内容を日本国政府に通告するものとする。特別勘定は、利子を付さないものと了解される。
13 ラオスの当局は、契約の規定に基いて支払の義務が生ずる前の適当な期間内に、支払金額及びラオスの当局が関係契約者に支払を行うべき日を記載した支払請求書を日本国政府に送付しなければならない。
14 日本国政府は、支払請求書を受領したときは、請求金額を前記のラオスの当局による支払の日の前日までに12に定める日本国の銀行に支払わなければならない。
15 日本国政府は、同協定第三条3の規定による生産物及び役務の供与に必要な費用に充てるための支払を、前項に定めると同一の方法で、行わなければならない。
16 14及び前項の規定に基いて支払われる金額は、特別勘定に貸記するものとし、他のいかなる資金も、同勘定に貸記されないものとする。同勘定は、13及び前項の目的のためにのみ借記を行うものとする。
17 ラオスの当局が特別勘定に払い込まれた資金の全部又は一部を契約の解除その他によつて引き出さなかつた場合には、未払金額は、日本国政府との間で適当な取極が行われた後に、13及び15の目的のための支払に充てられるものとする。
18 特別勘定から支払われた金額の全部又は一部がラオスの当局に返還された場合には、その返還された金額は、16の規定にかかわらず、特別勘定に貸記するものとする。前項の規定は、これらの金額について準用する。
19 同協定第四条2の規定の適用上、「その支払が行われた時」とは、支払が日本国政府により12に定める日本国の銀行に対して行われた時をいう。
IV 合同委員会
20 両政府は、それぞれ、同協定第六条の合同委員会のために代表一人及び代表代理二人を任命するものとする。
21 合同委員会は、一方の政府の代表の要請によつて会合するものとする。
22 合同委員会は、次のことを行うこととする。
(1) 両政府に次の事項を勧告すること。
(a) 契約の作成のため従うべき手続
(b) 当該契約の両政府による認証のための条件
(c) 同協定第四条にいう支払の方式
(d) 作成すべき実施計画の主要点
(2) 実施計画に定める事業の進行状態について両政府に報告すること。
(3) 同協定の実施に際して生ずることがある問題で両政府が合同委員会に付託するものを審議し、かつ、両政府に有益な勧告を行うこと。
 本使は、さらに、この書簡及び前記の提案の貴国政府による受諾を確認される閣下の返簡を、経済及び技術協力協定第七条の規定に基く同協定の実施に関する細目についての両政府間の合意を構成するものとみなすことを提案する光栄を有します。
 よつて本大臣は、本国政府に代つて、閣下の書簡に述べられた提案を受諾し、また閣下の書簡及びこの書簡を、経済及び技術協力協定第七条の規定に基く同協定の実施に関する細目についての両政府間の合意を構成するものとみなすことに同意する光栄を有します。
 本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向つて敬意を表します。
 千九百五十九年一月二十三日にヴィエンチァンで
カンパン・パンヤ
 日本国特命全権大使
渋沢信一閣下