日本国とイタリアとの間の文化協定
日本国とイタリアとの間の文化協定
日本国政府及びイタリア政府は、相互の利益のため、両国を結ぶ文化的のきずなを維持し、且つ、緊密にすることをひとしく希望して、
文化協定を締結することに決定し、このため、次のとおり全権委員を任命した。
日本国政府 外務大臣 岡崎勝男
イタリア政府 日本国駐在特命全権大使 ブラスコ・ランツァ・ダイエータ
これらの全権委員は、その全権委任状を示してそれが良好妥当であると認められた後、次の規定を協定した。
第一条 1 両締約国は、特に次の諸手段により、各締約国内において相手国の文化が一層理解されるように、できる限りの便宜を相互に与えるものとする。
(a) 書籍、定期刊行物その他の出版物
(b) 講演、演奏会及び演劇
(c) 美術展覧会その他の文化的性質を有する展覧会
(d) ラジオ、音盤その他の機械的手段
(e) 科学的、教育的又は文化的性質を有する映画
2 両締約国は、両国の文学的及び美術的著作物の翻訳及び複製を相互に奨励するものとする。
第二条 両締約国は、教授、学者、学生その他特に文化活動に従事する者の両国間における交換を奨励するものとする。
第三条 両締約国は、自国の大学その他の教育又は研究の機関における相手国の言語、文学、芸術若しくは歴史又は当該相手国の文化に関するあらゆる問題を取り扱う講義の拡充及び創設を奨励するものとする。
第四条 両締約国は、いずれか一方の締約国の国民が、他方の締約国内において修学若しくは研究を行い、又は技術を習得することができるように、これらの者に奨学金その他の便宜を与えるための方法を研究するものとする。
第五条 両締約国は、いずれか一方の締約国において修学中に又は修学終了の際に大学その他の教育機関から与えられる学位及び資格証書並びに当該締約国において与えられるその他の資格証書が、修学上の目的のため、及び今後定める若干の場合においては職業上の目的のため、他方の締約国においても同等の価値を認められるための方法及び条件を研究するものとする。
第六条 1 いずれの締約国も、自国内における相手国の文化機関の設立、運営及び発展について、できる限り便宜を与えるものとする。
2 両締約国は、既存の日本・イタリア文化機関の運営及び発展について、並びにすべての類似の機関でその創設が両国間の文化関係の発展に資するものの設立について、便宜を与えるものとする。
第七条 両締約国は、両国の学会その他の文化団体が相互に協力することを奨励するものとする。
第八条 いずれの締約国も、自国内において、相手国の国民に対し、博物館、図書館その他の資料供覧施設への入場及びその利用について便宜を与えるものとする。
第九条 1 両締約国は、この協定を実施するための条件を一層具体化し、及びその適用を確保するため、二の日本・イタリア混合委員会を一は東京に他はローマに設置することに同意する。
2 各委員会は、委員長並びに日本国政府及びイタリア政府が半数ずつ指名する四人の委員で構成される。
3 東京においては、日本国政府が日本人を委員長に指名するものとする。ロ-マにおいては、イタリア政府がイタリア人を委員長に指名するものとする。
4 各委員会は、委員長の招集により少なくとも年に一回会合するものとする。
5 各委員会は、それぞれの手続規則を採択するものとする。
6 両委員会による事業の計画は、両委員会の協議によつてできる限り毎年作成するものとする。
第十条 この協定は、その効力発生の時から、千九百三十九年三月二十三日に東京で署名された文化的協力に関する日本国とイタリアとの間の協定に代るものとする。
第十一条 この協定は、批准されるものとし、ローマで行われるべき批准書の交換の日の後十五日で効力を生ずる。
第十二条 この協定は、五年間効力を有する。いずれか一方の締約国がこの期間の満了の日の少なくとも六箇月前にこの協定の廃棄を通告しないときは、この協定は、いずれか一方の締約国がその廃棄を通告した日から起算して一年の期間が満了するまで引き続き効力を有する。
以上の証拠として、署名調印のために任命された全権委員は、この協定に署名調印した。
千九百五十四年七月三十一日に東京で、フランス語により本書二通を作成した。
日本国のために 岡崎勝男 (署名調印)
イタリアのために B・ランツァ・ダイエータ (署名調印)