日本国とフランスとの間の文化協定
日本国とフランスとの間の文化協定
日本国政府及びフランス共和国政府は、相互の利益のため、両国を結ぶ文化的のきずなを維持し、且つ、緊密にすることをひとしく希望して、
文化協定を締結することに決定し、このため、次のとおり全権委員を任命した。
日本国政府 外務大臣 岡崎勝男
フランス共和国政府 日本国駐在特命全権大使モーリス・ドジャン
これらの全権委員は、その全権委任状を示し、それが良好妥当であると認められた後、次の規定を協定した。
第一条 両締約国は、次の諸事項に関し、相互にできる限り便宜を与えるものとする。
(a) すべての文化的資料、特に、教育、文学、芸術、科学及び技術に関する書籍及び刊行物並びに映画、音盤その他の視聴覚資材の送付及び普及
(b) 文化的性質を有する展示会への出品を目的とする作品又は物品の送付及び展示
(c) 学識のある者(たとえば、学者、文筆家及び講演者)、芸術家及び運動競技を行う者の訪問
(d) 大学、試験所その他の教育、研究又は調査の機関による教授、技術者、教育者及び学者のそれぞれの専門分野における雇用
(e) 自国内にある大学その他の教育又は研究の機関における相手国の言語、文学、芸術、考古学、歴史及び諸制度並びに相手国に関するすべての問題を取り扱う講座、講義又は講演の拡充並びに必要に際してのそれらの創設
(f) 給費留学生その他の留学生の滞在
(g) 文化的性質を有するラジオ放送の交換
(h) 演劇及び音楽に関する交換
第二条 両締約国は、文学的、芸術的及び科学的著作物の保護をそれぞれの締約国の利益に最も適するように確保するための方法並びにそれらの著作物の翻訳及び複製を著作者の権利を尊重しつつ相互に奨励するための方法を研究し、且つ、整備することを約束する。
第三条 この協定の第一条(c)、(d)、(f)、(g)及び(h)の規定の実施を容易にするため、両締約国は、必要に応じ権限のある機関の許可を受けることを条件として、自国の国民が国外へ旅行すること並びに相手国の国民が自国において滞在し、及び各種の資料収集施設を利用することに関し、相互に便宜を与えることについて直ちに研究するものとする。
第四条 両締約国は、この協定の附属書に掲げる日仏文化機関の円滑な運営及び発展並びにすべての類似の機関でその創設が両国の間の文化関係の発展に資するものの設立及び運営について、相互にできる限り便宜を与えるものとする。
第五条 (1) 両締約国は、いずれか一方の締約国において修学中に又は修学修了後に大学その他の教育機関から与えられる学位及び資格証書並びに当該締約国において与えられるその他の資格証書が、大学その他の教育機関においてであると、今後定める若干の場合には職業上の目的のためであるとを問わず、他方の締約国において同等の価値を認められるための条件を改善するよう努力するものとする。
(2) 両締約国は、この協定の第七条で定める混合委員会に対し、日本国の学位又は資格証書とフランスの学位又は資格証書との間に同等の価値を認める制度を整備し、又は発達させるための方法を研究する権限を認めることに同意する。
第六条 両締約国は、この協定を適用するに当り、それぞれ自国の法制に反しないすべての便宜を相互主義に基いて相互に与えるものとする。
第七条 (1) 両締約国は、この協定の適用を確保し、この協定の実施条件を具体化し、及び共同の事業に関する新たな可能性を求めるため、二の日仏混合委員会を一は東京に他はパリに設置することに同意する。
(2) 各委員会は、日本国政府及びフランス政府が半数ずつ任命する六人の委員で構成される。東京においては、日本国政府が、当該委員会の日本人の委員の一人を委員長に任命し、パリにおいては、フランス政府が、当該委員会のフランス人の委員の一人を委員長に任命する。
(3) 各委員会は、東京においては当該委員会のフランス人の委員の一人に、パリにおいては当該委員会の日本人の委員の一人に、それぞれ事務局の職務を担当させる。
(4) 各委員会は、少くとも年に一回会合する外、委員長の招集に応じて会合する。
(5) 各委員会は、それぞれの手続規則を採択することができる。
第八条 この協定は、五年間効力を有する。いずれか一方の締約国がこの期間の満了の少くとも六箇月前にこの協定の廃棄を声明しないときは、この協定は、いずれか一方の締約国がその廃棄を通告した日から起算して一年の期間が満了するまで引き続き効力を有する。
第九条 この協定は、批准されなければならない。批准書は、パリで交換されるものとする。この協定は、批准書の交換の後十五日で効力を生ずる。
以上の証拠として、このために任命された全権委員は、この協定に署名調印した。
千九百五十三年五月十二日に東京で、ひとしく正文である日本語及びフランス語により本書二通を作成した。
日本国のために 岡崎勝男(印)
フランスのために ドジャン(印)
附属書
日仏文化機関の表
東京 日仏会館及び日仏学院
京都 関西日仏学館
パリ シテ・ユニヴェルシテールにある日本会館 (薩摩会館)