日本国とカンボディアとの間の経済及び技術協力協定
日本国とカンボディアとの間の経済及び技術協力協定
 日本国政府及びカンボディア王国政府は、
 カンボディアによる戦争賠償請求権の自発的な放棄及び千九百五十五年の日本国とカンボディアとの間の友好条約の締結によつて顕著に示された両国間の友好関係を強化し、かつ、相互の経済及び技術協力を拡大することを希望して、
 この協定を締結することに決定し、このため、次のとおり全権委員を任命した。
 日本国政府
カンボディア駐在日本国特命全権大使 吉岡範武
 カンボディア王国政府
外務大臣 ソン・サン
 これらの全権委員は、互にその全権委任状を示し、それが良好妥当であると認められた後、次のとおり協定した。
第一条
1 日本国は、日本国の生産物並びに日本国の国民及び法人の役務の供与からなる十五億円(一、五〇〇、〇〇〇、〇〇〇円)の援助を、無償で、かつ、この協定の規定に従い、カンボディアに与えることを約束する。この援助は、この協定の附属書に掲げる計画の実施に充てられるものとする。
2 援助の期間は、両政府が合意により別段の決定をした場合を除くほか、この協定の効力発生の日から三年とする。
第二条
 カンボディア王国政府は、日本国政府との合意により、第一条1の計画の年度実施計画(以下「実施計画」という。)を確定するものとする。実施計画は、日本国が各年度に供与する生産物及び役務を定めなければならない。
第三条
1 カンボディアの指定された当局は、第一条1に定める生産物及び役務の供与が行われるため、カンボディア王国政府に代つて、日本国民又はその支配する日本国の法人と直接に契約を締結するものとする。
2 1の契約(その変更を含む。)は、
(a) この協定の規定
(b) この協定の実施のための両政府間の取極の規定及び
(c) 実施計画に合致するものでなければならない。その契約は、認証を得るため、日本国政府に提出されなければならない。この項の規定に基いて認証された契約は、以下「契約」という。
3 1の規定にかかわらず、第一条1に定める生産物及び役務の供与は、契約を締結することなく行うことができる。ただし、各場合について両政府間の合意によらなければならない。
第四条
1 日本国政府は、第三条1のカンボディアの当局が契約により負う債務に充てるため、並びに第三条3に定める場合には同項の規定に基いて行われる生産物及び役務の供与の費用に充てるため必要な支払を、両政府が合意により定める手続によつて、行うものとする。その支払は、日本円で行うものとする。
2 1の支払に係る生産物及び役務は、その支払により、かつ、その支払が行われた時に、日本国がカンボディアに供与したものとみなされる。
第五条
 両政府は、この協定の円滑なかつ効果的な実施のため必要な措置を執るものとする。
第六条
 両政府に対しこの協定の実施に関する勧告を行う責任を有する両政府の代表者で構成される合同委員会を設置する。
第七条
 この協定の実施細目は、両政府が合意により定めるものとする。
第八条
 この協定は、両締約国によりそれぞれの憲法上の手続に従つて批准されなければならない。この協定は、批准書の交換の日に効力を生ずる。批准書は、できる限りすみやかに東京で交換されるものとする。
 以上の証拠として、各全権委員は、この協定に署名調印した。
 千九百五十九年三月二日にプノンペンで、本書二通を作成した。
 日本国政府のために
吉岡範武
 カンボディア王国政府のために
ソン・サン
附属書
1 農業技術センター(農機具部及び巡回診療班を含む。)
2 種畜場
3 両政府間で合意されるその他の生産物及び役務の供与
 日本国特命全権大使からカンボディア外務大臣にあてた書簡
 書簡をもつて啓上いたします。本使は、千九百五十九年三月二日に署名された日本国とカンボディアとの間の経済及び技術協力協定に言及する光栄を有します。日本国政府は、両政府が同協定第七条の規定に基いて次のとおり合意することを提案いたします。
I 援助
1 同協定の規定に基く援助は、日本国とカンボディアとの間の通常の貿易が阻害されないように、かつ、外国為替上の追加の負担が日本国及びカンボディアに課されないように、実施しなければならない。
2 カンボディア王国政府は、日本国が同協定第一条の生産物及び役務を供与することができるようにするため、利用することがでぎる現地の労務、資材及び設備をできる限り提供するものとする。
3 日本国民であつて、同協定第一条1の計画の実施のためカンボディアにいることを両政府が必要と認める者は、カンボディアにおける所要の滞在期間中、その作業の遂行のため必要なすべての便宜を与えられるものとする。
4 前項にいう日本国民は、カンボディアにおいて、同協定に基く役務の供与から生ずる所得に対する課税を免除される。
5 日本国の国民又は法人がその作業の遂行のため資材及び機械を一時的に輸入して使用する必要がある場合には、それらの輸入及び再輸出のため、すべての便宜がカンボディア王国政府により与えられるものとする。
6 カンボディア王国政府は、同協定の規定に基いて供与された日本国の生産物が、カンボディアの領域から再輸出されないように配慮する。
II 契約
7 同協定第三条2の規定に従つて日本国政府に提出された契約は、それがプノンペンの日本国大使館に提出された日から六週間内に日本国政府により認証されなければならない。契約が同協定第三条2の規定に合致しないと日本国政府が認めるときは、認証の拒否の通告は、前記の期間内に日本国政府によりカンボディア王国政府に対して行われるものとする。
8 契約は、日本円で通常の商業上の手続によつて締結され、かつ、実施されるものとする。
9 契約には、その契約の実施から生ずることがある紛争が、両政府が定める手続に従つて解決される旨の規定を含まなければならない。
III 支払
10 同協定第三条1に定めるカンボディアの当局(以下「カンボディアの当局」という。)は、日本国の外国為替公認銀行と取極を行い、自己の名による待別勘定を開設してその銀行に日本国政府からの支払の受領等を授権し、及びその取極の内容を日本国政府に通告するものとする。特別勘定は、利息を付さないものと了解される。
11 カンボディアの当局は、契約の規定に基いて支払の義務が生する少くとも十五日前に、支払金額及びカンボディアの当局が関係契約者に支払を行うべぎ日を記載した支払請求書を日本国政府に送付しなければならない。
12 日本国政府は、支払請求書を受領したときは、請求金額を前記のカンボディアの当局による支払の日の前日までに10に定める銀行に支払わなければならない。
13 日本国政府は、同協定第三条3の規定による生産物及び役務の供与の費用に充てるための支払を、前項に定めると同一の方法で、行わなければならない。
14 12及び前項の規定に基いて支払われる金額は、特別勘定に貸記するものとし、他のいかなる資金も、同勘定に貸記されないものとする。同勘定は、11及び前項の目的のためにのみ借記を行うものとする。
15 カンボディアの当局が特別勘定に払い込まれた資金の全部又は一部を契約の解除又はその他の原因で引き出さなかつた場合には、未払金額は、日本国政府との間で適当な取極が行われた後に11及び13の目的のための支払に充てられるものとする。
16 特別勘定の借記により支払われた金額の全部又は一部がカンボディアの当局に返還された場合には、その返還された金額は、14の規定にかかわらず、特別勘定に貨記するものとする。前項の規定は、これらの金額について準用する。
17 同協定第四条2の規定の適用上、「その支払が行われたとぎ」とは、加に定める銀行が日本国政府が行つた支払をカンボディアの当局に代つて受領した時をいう。
IV 合同委員会
18 両政府は、それぞれ、同協定第六条にいう合同委員会のために代表一人及び代表代理二人を任命するものとする。
19 合同委員会は、一方の政府の代表の要請によつて会合するものとする。
20 合同委員会は、次のことを行うこととする。
(1) 両政府に次の事項を勧告すること。
(a) 契約の作成のため従うべき手続
(b) 当該契約の日本国政府による認証のための方式
(c) 同協定第四条にいう支払の方式
(d) 作成すべき実施計画の主要点
(2) 実施計画に定める事業の進行状態について両政府に報告すること。
(3) 同協定の実施に際して生することがある間題を両政府の要請に基いて審議すること。
 本使は、閣下が両国間の経済及び技術協力協定と同時に効力を生するこの書簡の規定に対するカンボディア王国政府の同意を確認されれば幸であります。
 本使は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向つて敬意を表します。
 千九百五十九年五月十六日プノンペンで
 日本国特命全権大使
吉岡範武
 カンボディア外務大臣
ソン・サン閣下
 カンボディア外務大臣から日本国特命全権大使にあてた書簡
 書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日付の閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
 本使は、千九百五十九年三月二日に署名された日本国とカンボディアとの間の経済及び技術協力協定に言及する光栄を有します。日本国政府は、両政府が同協定第七条の規定に基いて次のとおり合意することを提案いたします。
I 援助
1 同協定の規定に基く援助は、日本国とカンボディアとの間の通常の貿易が阻害されないように、かつ、外国為替上の追加の負担が日本国及びカンボディアに課されないように、実施しなければならない。
2 カンボディア王国政府は、日本国が同協定第一条の生産物及び役務を供与することができるようにするため、利用することができる現地の労務、資材及び設備をできる限り提供するものとする。
3 日本国民であつて、同協定第一条1の計画の実施のためカンボディアにいることを両政府が必要と認める者は、カンボディアにおける所要の滞在期間中、その作業の遂行のため必要なすべての便宜を与えられるものとする。
4 前項にいう日本国民は、カンボディアにおいて、同協定に基く役務の供与から生ずる所得に対する課税を免除される。
5 日本国の国民又は法人がその作業の遂行のため資材及び機械を一時的に輸入して使用する必要がある場合には、それらの輸入及び再輸出のため、すべての便宜がカンボディア王国政府により与えられるものとする。
6 カンボディア王国政府は、同協定の規定に基いて供与された日本国の生産物が、カンボディアの領域から再輸出されないように配慮する。
II 契約
7 同協定第三条2の規定に従つて日本国政府に提出された契約は、それがプノンペンの日本国大使館に提出された日から六週間内に日本国政府により認証されなければならない。契約が同協定第三条2の規定に合致しないと日本国政府が認めるときは、認証の拒否の通告は、前記の期間内に日本国政府によりカンボディア王国政府に対して行われるものとする。
8 契約は、日本円で通常の商業上の手続によつて締結され、かつ、実施されるものとする。
9 契約には、その契約の実施から生ずることがある紛争が、両政府が定める手続に従つて解決される旨の規定を含まなければならない。
III 支払
10 同協定第三条1に定めるカンボディアの当局(以下「カンボディアの当局」という。)は、日本国の外国為替公認銀行と取極を行い、自己の名による特別勘定を開設してその銀行に日本国政府からの支払の受領等を授権し、及びその取極の内容を日本国政府に通告するものとする。特別勘定は、利息を付さないものと了解される。
11 カンボディアの当局は、契約の規定に基いて支払の義務が生ずる少くとも十五日前に、支払金額及びカンボディアの当局が関係契約者に支払を行うべき日を記載した支払請求書を日本国政府に送付しなければならない。
12 日本国政府は、支払請求書を受領したときは、請求金額を前記のカンボディアの当局による支払の日の前日までに10に定める銀行に支払わなければならない。
13 日本国政府は、同協定第三条3の規定による生産物及び役務の供与の費用に充てるための支払を、前項に定めると同一の方法で、行わなければならない。
14 12及び前項の規定に基いて支払われる金額は、特別勘定に貸記するものとし、他のいかなる資金も、同勘定に貸記されないものとする。同勘定は、11及び前項の目的のためにのみ借記を行うものとする。
15 カンボディアの当局が特別勘定に払い込まれた資金の全部又は一部を契約の解除又はその他の原因で引き出さなかつた場合には、未払金額は、日本国政府との間で適当な取極が行われた後に11及び13の目的のための支払に充てられるものとする。
16 特別勘定の借記により支払われた金額の全部又は一部がカンボディアの当局に返還された場合には、その返還された金額は、14の規定にかかわらず、特別勘定に貸記するものとする。前項の規定は、これらの金額について準用する。
17 同協定第四条2の規定の適用上、「その支払が行われたとき」とは、10に定める銀行が日本国政府が行つた支払をカンボディアの当局に代つて受領した時をいう。
IV 合同委員会
18 両政府は、それぞれ、同協定第六条にいう合同委員会のために代表一人及び代表代理二人を任命するものとする。
19 合同委員会は、一方の政府の代表の要請によつて会合するものとする。
20 合同委員会は、次のことを行うこととする。
(1) 両政府に次の事項を勧告すること。
(a) 契約の作成のため従うべき手続
(b) 当該契約の日本国政府による認証のための方式
(c) 同協定第四条にいう支払の方式
(d) 作成すべき実施計画の主要点
(2) 実施計画に定める事業の進行状態について両政府に報告すること。
(3) 同協定の実施に際して生ずることがある問題を両政府の要請に基いて審議すること。
 本大臣は、閣下が両国間の経済及び技術協力協定と同時に効力を生ずるこの書簡の規定に対するカンボディア王国政府の同意を確認されれば幸であります。
 本大臣は、両国間の経済及び技術協力協定と同時に効力を生ずる閣下の書簡に述べられた規定に対するカンボディア王国政府の同意を確認する光栄を有します。
 本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向つて敬意を表します。
 千九百五十九年五月十六日にプノンペンで
 副総理外務大臣
ソン・サン
 カンボディア駐在日本国特命全権大使
吉岡範武閣下