環境の保護の分野における協力に関する日本国政府と中華人民共和国政府との間の協定
環境の保護の分野における協力に関する日本国政府と中華人民共和国政府との間の協定
 日本国政府及び中華人民共和国政府(以下「両締約国政府」という。)は、
 環境の保護が重要な意義を有していることに留意するとともに、国際的な協力を通じこの分野において現実的な成果が達成されることを希望し、
 現在及び将来の世代の利益を考慮して経済及び社会の持続的な発展を実現していくため、環境の保護及び改善が重要であることを認識し、
 両締約国政府間の協力がそれぞれの国における環境の保護に関し共通の利益となることを信じ、
 そのような協力により地球上の環境の保護及び改善のため国際的な努力が一層促進されることを希望し、
 千九百八十年五月二十八日に署名された科学技術の分野における協力に関する日本国政府と中華人民共和国政府との間の協定において科学技術分野における両締約国政府間の協力の枠組みが設定されていることに留意して、
 次のとおり協定した。
第一条
 両締約国政府は、平等及び相互の利益に基づき環境の保護の分野における協力を維持し、かつ促進する。
第二条
 協力活動は、環境の保護及び改善に関連する両締約国政府が合意する次の分野において行うことができる。
(a) 大気汚染及び酸性雨の防止
(b) 水質汚濁の防止
(c) 有害廃棄物の処理
(d) 環境悪化の人体及び健康に対する影響
(e) 都市環境の改善
(f) オゾン層の保護
(g) 地球の温暖化の防止
(h) 生態系及び生物の多様性の保全
(i) 環境の保護及び改善に関連するその他の分野であって今後両締約国政府が合意するもの
第三条
 この協定に基づく協力活動は、次の形態により行うことができる。
(a) 環境の保護に関連する研究及び開発に関する活動、政策及び法令並びに環境の保護に関連する技術についての情報及び資料の交換
(b) 科学者、技術者その他の専門家の交流
(c) 科学者、技術者その他の専門家による合同セミナー及び会合
(d) 両締約国政府が合意する協力計画(共同研究を含む。)の実施
(e) 両締約国政府が合意するその他の形態の協力
第四条
 この協定に基づく特定の協力活動の細目及び手続を定める実施取極は、両締約国政府又は両締約国政府の機関のいずれか適当なものを当事者として行うことができる。
第五条
1 両締約国政府は、この協定の実施状況についての検討及び、必要な場合には、両締約国政府に対する適当な提案の作成のため日中環境保護合同委員会(以下「合同委員会」という。)を設置する。
2 両締約国政府は、この協定の署名の日の後三箇月以内に合同委員会の共同議長各一名を指名し、外交上の経路を通じて相互に通報する。
3 合同委員会は、原則として年一回日本国及び中華人民共和国で交互に会合する。
4 合同委員会は、必要な場合には、協力の個別の分野を検討し効果的に推進するための作業部会を設置することができる。
5 合同委員会の会合が開催されていない期間中のこの協定の実施に関する連絡は、外交上の経路を通じて行われる。
第六条
 両締約国政府は、両国の各種団体及び機関並びに個人の間の環境の保護及び改善の分野における協力をできる限り促進する。
第七条
 この協定のいかなる規定も、両締約国政府の協力に関する他の取極でこの協定の署名の日に存在するもの又はその後締結されるものに影響を及ぼすものと解してはならない。
第八条
 この協定は、両締約国政府により、それぞれの国において施行されている法令及び利用可能な資金の範囲内で実施される。
第九条
1 この協定は、署名の日に効力を生ずる。この協定は、二年間効力を有するものとし、その後は、いずれか一方の締約国政府が2の規定の定めるところによって終了させない限り効力を存続する。
2 いずれの一方の締約国政府も、六箇月前に他方の締約国政府に対して文書による予告を与えることにより、最初の二年の期間の満了の際又はその後いつでもこの協定を終了させることができる。
3 この協定の終了は、第四条にいう実施取極に従って行われ、かつ、この協定の終了の時に履行を完了していないいかなる計画の履行にも影響を及ぼすものではない。
 千九百九十四年三月二十日に北京で、ひとしく正文である日本語及び中国語により本書二通を作成した。
 日本国政府のために
 國廣道彦
 中華人民共和国政府のために
 解 振 華
 この協定は、日本国政府と中国政府との間で環境の保護の分野における協力を維持し、かつ、促進するため、協力の分野、協力の形態、合同委員会の設置等を定めたものである。