核兵器の不拡散の分野における協力及びこの協力のための委員会の設置に関する日本国政府とベラルーシ共和国政府との間の協定
核兵器の不拡散の分野における協力及びこの協力のための委員会の設置に関する日本国政府とベラルーシ共和国政府との間の協定
 日本国政府及びベラルーシ共和国政府は、
 核兵器の不拡散の重要性を強調し、
 このような不拡散のめたに一致して作業することを指向し、
 核兵器の不拡散並びに核物質及び放射性廃棄物その他の放射性物質が引き起こすことのある環境問題の解決のために協力することを希望し、
 核兵器の不拡散の分野における協力のための適当な機関を設置することが必要であることを認識して、
 次のとおり協定した。
第一条
1 日本国政府及びベラルーシ共和国政府(以下「両締約国政府」という。)は、ベラルーシ共和国を締約国とする核兵器の削減及び制限に関する二国間又は多数国間の条約その他の措置に基づいて削減される核兵器の安全かつ確実な廃棄に関連して、核兵器の不拡散並びに核物質及び放射性廃棄物その他の放射性物質が引き起こすことのある環境問題の解決に係る協力(以下「核兵器の不拡散の分野における協力」という。)を促進する。
2 両締約国政府は、1に規定する目的を達成するため、政府間機関として、核兵器の不拡散の分野における協力のための委員会(以下「委員会」という。)を設置する。
第二条
1 委員会は、前条1に規定する目的を達成するため、その任務として次のことを行う。
(a) 核兵器の不拡散の分野における協力の優先分野を決定すること(情報及び意見の交換並びに研究の結果の交換を行うことを含む。)。
(b) 核兵器の不拡散の分野における協力の具体的な計画を策定すること。
(c) 核兵器の不拡散の分野にかける協力のための細目及び手続を定める取決め(以下「取決め」という。)をベラルーシ共和国政府の権限のある当局との間で行うこと。取決めには、具体的な事業計画(適当な場合には、図面を含む。)及び第八条の規定に基づく確認のための手段に関する規定を含む。取決めの規定とこの協定の規定とが抵触する場合には、この協定の規定が優先する。
(d) (b)にいう具体な計画を取決めに従って実施すること。
(e) 政府、政府間機関又は非政府機関から資金の拠出を受けること並びに専ら、第一条1に規定する目的を達成し及びこの条の1に掲げる委員会の任務を遂行するためにこれらの拠出金及びこれらの拠出金から生ずる利子(以下「委員会の財源」と総称する。)を使用すること。
(f) 委員会の活動のために必要な支払を技術事務局を通じて行うこと。
(g) この協定に基づく協力の進展を評価すること及び委員会の財源の使用について拠出者に報告すること。
(h) (b)にいう具体的な計画の実施に当たって、この協定の規定が遵守されなかったと認められる場合に拠出者の意向を考慮して適当な措置をとること。この適当な措置には、(b)にいう具体的な計画の実施に当たって委員会の財源の使用を停止することを含む。
(i) 委員会の手続規則を定めること。
(j) この協定の目的を達成するために委員会が必要と認める他の活動を行うこと。
2 委員会は、1に掲げる任務の遂行に当たり、この協定の範囲内で両締約国政府以外の政府、政府間機関及び非政府機関と適当な形態の協力(協力に関する取決めを行うことを含む。)を行うことができる。
第三条
 委員会は、総務会及び技術事務局で構成する。
第四条
1 総務会は、両締約国政府の代表者で構成する。いずれの締約国政府も、それぞれ一人の代表者(以下「両締約国政府の代表者」という。)を任命する。両締約国政府の代表者は、必要な場合には、総務会の会合に顧問及び専門家を同伴することができる。
2 総務会は、第二条1に掲げる委員会の任務を遂行するための権限を有する。
3 総務会の会合は、両締約国政府の代表者が決定する時期及び場所において招集する。
4 総務会の決定は、意見の一致により行う。
第五条
 技術事務局は、日本国に置く。技術事務局の事務局長及び職員は、総務会の同意の下に日本国政府が任命する。
第六条
1 日本国政府は、日本国の国内法令及び利用可能な資金の範囲内で、委員会に対し、自らが決定する額の資金を拠出する。この拠出金は、委員会の財源として、適切に、かつ、専ら、第一条1に規定する目的を達成し及び第二条1に掲げる委員会の任務を遂行するために使用される。
2 日本国政府は、第二条1(b)にいう具体的な計画及び取決めを考慮して委員会の財源の具体的使途を決定し、委員会に通報する。委員会がその通報を受けたときは、第四条1の総務会は、第二条1(f)の規定に従い技術事務局に対し必要な支払を指示する。
第七条
1 委員会は、第二条1(e)の規定に従って資金の拠出を受けること及び委員会の活動のために必要な支払を行うことを目的とする委員会名義の勘定を日本国政府によって指定される日本国の外国為替公認銀行に開設する。
2 委員会の財源の事務的管理(1の勘定の管理を含む。)は、技術事務局が行う。
第八条
1 ベラルーシ共和国政府は、ベラルーシ共和国の領域において、この協定に基づく協力に関し、取決めに従って供与されることのある物品及び役務の利用並びに委員会の財源の使用が第一条1に規定する目的の範囲内で行われることを確保し、かつ、日本国政府がこのことを確認するための手段を提供する。その確認は、これらの物品及び役務が利用されている場所を視察することにより又は文書の閲覧その他の手段により行う。
2 日本国政府は、この協定に基づく協力の実効性を確保するために、日本国の国内法令に従い、可能な限りの協力を行う。
第九条
1 ベラルーシ共和国政府は、この協定に基づく協力の実施に当たってベラルーシ共和国において生じた損害に関し、委員会並びにこの協定及び取決めに基づく協力の実施に関する職務を遂行する者(ベラルーシ共和国の国民又はベラルーシ共和国に通常居住する者を除く。以下「この協定の実施に関係する者」という。)に対して請求を行わない。
2 委員会又はこの協定の実施に関係する者がこの協定に基づく協力の実施に当たってベラルーシ共和国においてベラルーシ共和国政府以外の第三者に与えた損害に関する請求については、ベラルーシ共和国政府が処理する責任を負う。
第十条
1 ベラルーシ共和国政府は、この協定に基づく協力の効果的な実施を確保するために、この協定の実施に関係する者及び取決めに従って供与されることのある物品に対し、必要なすべての行政上の、税制上の及び税関に関する措置をとる。
2 取決めに従って供与されることのある物品は、ベラルーシ共和国への輸入、ベラルーシ共和国からの輸出又はベラルーシ共和国における使用に関し、ベラルーシ共和国によって課される関税、賦課金、輸入税、輸出税及び税関手続手数料並びにその他これらに類する租税及び課徴金を免除される。
3 第一条1に規定する核兵器の削減及び制限に関する条約の特権及び免除に関する規定は、ベラルーシ共和国の国内法令に従い、この協定の実施に関係する者について準用する。
第十一条
 第四条1の総務会は、この協定に基づく協力の実施に関連して生ずるいかなる問題についても、必要に応じ、協議を行うものとし、当該問題の解決のためにあらゆる努力を払う。
第十二条
 この協定のいかなる規定も、また、委員会がこの協定に従って行ういかなる活動も、いずれか一方の政府を締約国とする二国間又は多数国間の他の条約その他の国際約束でこの協定の署名の日に効力を有するものに影響を及ぼすものではない。
第十三条
1 この協定は、署名の日に効力を生ずる。いずれの締約国政府も、他方の締約国政府に対し、この協定を終了させる意思を書面によりいつでも通告することができるものとし、その場合には、この協定は、その通告が行われた後六箇月で終了する。
2 この協定は、両締約国政府間の相互の合意により改正することができる。
 千九百九十三年十一月五日にモスクワで、ひとしく正文である日本語及びロシア語により本書二通を作成した。
 日本国政府のために
 枝村純郎
 ベラルーシ共和国政府のために
 ヴェ・デ・ダニレンコ