日本国及びロシア連邦の国民に対する査証の発給手続の簡素化に関する日本国政府とロシア連邦政府との間の協定
日本国及びロシア連邦の国民に対する査証の発給手続の簡素化に関する日本国政府とロシア連邦政府との間の協定
日本国及びロシア連邦の国民に対する査証の発給手続の簡素化に関する日本国政府とロシア連邦政府との間の協定
日本国政府及びロシア連邦政府(以下「両締約国政府」という。)は、
    両国の国民の間の友好及び相互理解の進展を基礎として両国間の関係を深めることを目指すことを確認し、それぞれの国の国民が他方の国に渡航するための最も良好な環境を確保することが、両国の国民の間の友好的な交流の促進及び両国間の経済上、文化上、科学上、人道上その他の関係の堅実な発展のための重要な要素であることを確信し、両国の国民に対する査証の発給手続を相互主義に基づき簡素化することにより人的交流を促進することを目指し、                   
査証の発給手続の簡素化が不法な移住をもたらすものであってはならないことを確認し、また、国の安全及び公の秩序に特別の注意を払って、次のとおり協定した。
第一条
  1 この協定に定める査証の発給手続の簡素化は、両国の法令又は両国間で効力を有する国際協定に基づいて査証の取得を免除されていない両国の国民に対して適用される。
  2 この協定のいかなる規定も、いずれか一方の締約国政府が他方の国の国民に対して査証の発給、自国への入国又は自国における在留を拒否する権限を制限するものではない。
  3   いずれの一方の国の国民も、他方の国に在留している間、当該他方の国の法令を遵守しなければならない。
第二条
  1 いずれか一方の国の外交使節団及び領事機関は、当該一方の国に入国することを希望する他方の国の国民であって次の(a)から(f)までのいずれかに該当するものに対し、有効期間が三箇月までの一次入国査証又は有効期間が三年までの数次入国査証を発給する。
    (a) 商業活動を行う目的で派遣される者及び商業団体の代表者
    (b) 教育的、科学的、芸術的その他の文化的活動に参加する者
    (c) 国際的なスポーツの行事に参加する者及び専門家の資格でその者に同行する者
    (d) 個別の事案の取材活動に従事するため短期間渡航する報道関係者
    (e) 姉妹都市の間の公式の交流計画に参加する者
    (f) 一方の国に適法に居住する他方の国の国民の配偶者及び二十一歳未満の子(「一方の国に適法に居住する他方の国の国民」とは、当該一方の国の法令に従って九十日を超える期間在留することを許可されている他方の国の国民をいう。)
  2 1(a)から(e)までに規定する者に対する数次入国査証については、査証を申請する者が過去一年間に他方の国の査証を取得し、かつ、当該査証を当該他方の国の法令に従って使用したことがあり、及び数次入国査証を申請する理由がある場合に限り、発給される。
  3 1に規定する者の受入国における在留期間は、次の期間を超えることができない。
    (a) 一次入国査証については、九十日
    (b) 1(a)から(e)までに規定する者に発給された数次入国査証については、百八十日の期間ごとに合計九十日
    (c) 1(f)に規定する者に発給された数次入国査証については、当該者を招請する者の在留期間を超えない範囲で、それぞれの入国の日から九十日
  4 1に規定する者に対する査証の発給のための申請には、次の文書を必要とする。
    (a) 1(a)から(c)までに規定する者については、当該者を招請する受入国に所在する法人若しくは団体又は受入国若しくはその地方の公の機関からの書面による要請
    (b) 1(d)に規定する者については、当該者の渡航の目的を証明する当該者の受入先となる法人又は団体の発行する文書
    (c) 1(e)に規定する者については、当該者を招請する姉妹都市の長又はその代理からの書面による要請
    (d) 1(f)に規定する者については、当該者を招請する者からの公証された書面による要請及び親族関係を証明する文書
  5 4(a)、(c)及び(d)に規定する書面による要請は、次の情報を内容とする。
    (a) 招請される者については、氏名、生年月日、性別、国籍、職業、住所、旅券の番号並びに渡航の期間及び目的
    (b) 招請する法人及び団体については、正式の名称、住所、登記に関する情報並びに当該要請に署名した者の氏名及び役職
    (c) 招請する者については、氏名、生年月日、性別、国籍、職業、住所及び旅券の番号
  6 4(b)に規定する文書は、次の情報を内容とする。
    (a) 報道関係者については、氏名、生年月日、性別、国籍、職業、住所、旅券の番号並びに渡航の期間及び目的
    (b) 受入先となる法人及び団体については、正式の名称、住所、登記に関する情報並びに当該文書に署名した者の氏名及び役職
  7 両国の外交使節団及び領事機関は、必要な場合には、招請する者、招請する法人及び団体又は受入先となる法人及び団体に対し、4に規定する文書に次のものを追加するよう求める。
    (a) 招請される者又は報道関係者の在留日程
    (b) 招請される者又は報道関係者が受入国の法令を遵守することの確認
    (c) 招請される者又は報道関係者に係る受入国に在留する期間の資金上の保証(医療及び住居に関するものを含む。)
    (d) 1(f)に規定する者を招請する者が受入国において在留を許可されていることの証明
  8 1に規定する種別に属する者に対する査証は、この条に規定する文書を除くほか、その他のいかなるそれぞれの国の法令で定める渡航の目的を証明する招待状及び文書も要求されることなく発給される。
第三条
  1 日本国の外交使節団及び領事機関は、日本国に入国を希望するロシア連邦の国民であって次の(a)から(c)までのいずれかに該当するものに対し、有効期間が三箇月までの一次入国査証を発給し、また、日本国政府の権限のある機関は、当該ロシア連邦の国民に対し、在留が許可されている期間の満了日を超えず、かつ、三年を超えない範囲で数次有効な再入国の許可を付与する。ロシア連邦の外交使節団及び領事機関は、ロシア連邦に入国を希望する日本国の国民であって次の(a)から(c)までのいずれかに該当するものに対し、有効期間が三箇月までの一次入国査証を発給し、その後、ロシア連邦政府の権限のある機関は、当該日本国の国民に対し、有効期間が三年までの数次入国査証であって、当該有効期間中ロシア連邦に継続して在留することを許可するものを発給する。
    (a) 受入国において業務を行う外国の法人及び団体の支店又は子会社の職員
    (b) 受入国において業務を行う外国報道機関の支局の職員
    (c) (a)又は(b)に規定する者の配偶者及び二十一歳未満の子
  2 1に規定する査証の発給又は再入国の許可のための申請は、受入国の法令に定める手続に従って行う。
第四条
    第三国に所在するいずれか一方の国の外交使節団及び領事機関は、他方の国の国民であって、当該第三国の法令に従い当該第三国に長期間在留することを許可されているものに対し、第二条1及び前条1に規定する査証を発給することができる。
第五条
  1 両国の外交使節団及び領事機関は、査証の発給についての決定を、査証の発給のために必要な申請書及び文書の受領の日から十労働日以内に行う。
  2 1に定める期間は、受領した文書についての追加的な検討の必要がある場合には、三十労働日まで延長することができる。
第六条
    1 いずれか一方の国の外交使節団及び領事機関は、2に規定する場合を除くほか、他方の国の国民に対して査証を無償で発給する。
  2 いずれか一方の国の外交使節団及び領事機関は、他方の国の国民が五労働日以内に査証の発給を求める場合には、特別の料金(三労働日以内の場合には一万円相当額とし、四労働日から五労働日までの期間内の場合には四千円相当額とする。)を徴収することができる。また、観光又は通過を目的として当該一方の国に入国することを希望する他方の国の国民が、六労働日から十労働日までの期間内に査証の発給を求める場合には、四千円相当額の特別の料金を徴収することができる。労働日は、査証の発給のために必要な申請書及び文書の受領の日から起算する。
  3 次の(a)から(f)までのいずれかに該当する者は、2に規定する特別の料金の支払を免除される。
    (a) 有効な外交又は公用旅券を所持する者
    (b) 受入国政府からの公式の招待状に基づき、受入国において開催される会合、協議、交渉、交流計画又は政府間機関の行事に参加する公式代表団の構成員
    (c) 姉妹都市の間の公式の交流計画に参加する者
    (d) 障害者及び当該障害者に同伴する者
    (e) 人道上の理由により渡航を希望する者(緊急の治療を受ける者及び当該者に同伴する者、親族の葬儀に出席する者、重病の親族を訪問する者等)
    (f) 一方の国に適法に居住する他方の国の国民の配偶者及び二十一歳未満の子
第七条
  1 いずれか一方の締約国政府の権限のある機関は、他方の国の国民を運搬する航空機又は船舶が遭難し、緊急事態が発生した場合には、必要な国内手続を完了した後に、当該他方の国の国民に対し、査証を取得することなく七十二時間の範囲内で当該一方の国に在留することを許可する。
  2 1に規定する許可を与える場合であっても、いずれか一方の締約国政府の権限のある機関は、他方の国の国民に対し、在留期間、行動の範囲その他必要と認める制限を課することができる。
第八条
    いずれか一方の国の国民であって、他方の国に当該他方の国の法令に従って在留する間に旅券を紛失したものは、当該一方の国の外交使節団又は領事機関によって発行された旅券又は渡航文書に基づき、査証又はその他の許可なしに出国することができる。
第九条
  1 この協定は、両締約国政府が、この協定の効力発生のために必要なそれぞれの国内手続が完了した旨を外交上の経路を通じて相互に文書によって通告した日の後三十日目の日に効力を生ずる。
  2 いずれの一方の締約国政府も、他方の締約国政府に対して外交上の経路を通じて書面による通告を行うことにより、いつでもこの協定を終了させることができる。終了は、当該通告の日の後三十日目の日に効力を生ずる。
  3 この協定は、両締約国政府間の書面による合意により改正することができる。
  4 両締約国政府は、必要に応じ、いずれか一方の締約国政府の要請により、この協定の実施に関する事項について協議する。
  5 各締約国政府は、国の安全、公の秩序及び公衆の健康の理由によりこの協定の全部又は一部の適用を一時的に停止することができる。一方の締約国政府によるこのような適用の停止に関する決定は、当該停止の遅くとも四十八時間前までに他方の締約国政府に通告される。この協定の適用を停止した締約国政府は、当該停止の理由が存在しなくなった場合には、直ちに当該停止を解除し、その旨を他方の締約国政府に通告する。
以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの協定に署名した。
    
    二千十二年一月二十八日に東京で、ひとしく正文である日本語及びロシア語により本書二通を作成した。
 
日本国政府のために
玄葉光一郎


ロシア連邦政府のために
S・V・ラヴロフ