情報の保護に関する日本国政府とフランス共和国政府との間の協定
情報の保護に関する日本国政府とフランス共和国政府との間の協定
      情報の保護に関する日本国政府とフランス共和国政府との間の協定
    日本国政府及びフランス共和国政府(以下「両締約国政府」といい、個別に「締約国政府」という。)は、
    両締約国政府の間で交換される秘密の情報の相互保護を確保することを希望して、
    次のとおり協定した。
          第一条 
    この協定の適用上、
    (a) 「秘密情報」とは、日本国政府若しくはフランス共和国政府の権限のある当局により作成され、それらの使用のために作成され、又はそれらにより保持されている情報であって、当該情報の起源となる締約国政府の国家安全保障のために保護を必要とし、かつ、秘密指定が付されるものをいう。秘密情報は、口頭、映像、電子、磁気若しくは文書の形態又は装備若しくは技術の形態をとることができる。
    (b) 「権限のある当局」とは、秘密情報の保護について責任を有する当局として、締約国政府によって指定される当該締約国政府の政府機関をいう。一方の締約国政府は、他方の締約国政府に対し、外交上の経路を通じて、その権限のある当局を通報する。
    (c) 「国内法令」とは、次のものをいう。
      (i) 日本国に関しては、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)その他の施行されている関係法令
      (ii) フランス共和国に関しては、刑法、国防法その他の施行されている関係法令
    (d) 「秘密情報取扱資格」とは、各締約国政府の適当な手続に従って個人に付与される適格性であって、秘密情報を確実に取り扱うためのものをいう。
    (e)  「契約者」とは、秘密情報を受領する締約国政府との間の契約であって、秘密情報の取扱いを含むものを履行する個人又は団体(下請契約者を含む。)をいう。
    (f) 「知る必要」とは、公的に与えられる任務の遂行のため、秘密情報にアクセスする必要性をいう。
          第二条 
    一方の締約国政府から他方の締約国政府に対して直接又は間接に提供される秘密情報は、各締約国政府の国内法令に従って、この協定の規定に基づき保護される。
          第三条 
    各締約国政府の国家秘密保持当局は、次のとおりとする。
      日本国政府については、外務省
      フランス共和国政府については、防衛国家安全保障総局
    国家秘密保持当局は、この協定の実施及び解釈に関する調整及び連絡のための部局としての役割を果たす。
          第四条
    (a) 一方の締約国政府は、要請を受けたときは、他方の締約国政府に対し、秘密情報の保護を確保するために実施される国内法令の写しを提供する。
    (b) 一方の締約国政府は、この協定の下での秘密情報の保護に影響を及ぼす自国の国内法令のいかなる変更についても、他方の締約国政府に対し通報する。この場合には、両締約国政府は、第十七条(b)に規定するところに従って、この協定の可能な改正につき検討するために協議する。その間、秘密情報は、当該秘密情報を提供する締約国政府が書面により別段の同意を与えない限り、引き続きこの協定の規定に従って保護される。
          第五条
    (a) 日本国政府にあっては、自衛隊法に従って防衛秘密に指定される秘密情報は、「防衛秘密(機密)」又は「防衛秘密」と表示され、他の秘密情報は、「機密」、「極秘」又は「秘」と表示される。
       フランス共和国政府にあっては、秘密情報は、「TRES SECRET DEFENSE」、「SECRET DEFENSE」又は「CONFIDENTIEL DEFENSE」と表示される。
    (b) 秘密情報を受領する締約国政府は、送付を受けた全ての秘密情報に当該秘密情報を提供する締約国政府名及び当該秘密情報を受領する締約国政府の秘密指定を表示する。対応する秘密指定は、次のとおりとする。
       日本国            フランス共和国
       機密/防衛秘密(機密)    TRES SECRET DEFENSE
       極秘/防衛秘密        SECRET DEFENSE
       秘                CONFIDENTIEL DEFENSE
          第六条
    この協定に基づく補足実施取極は、両締約国政府の権限のある当局により行うことができる。
          第七条
    両締約国政府は、次の事項を確保する。
    (a) 秘密情報を受領する締約国政府は、当該秘密情報を提供する締約国政府の事前の書面による承認を得ることなく、第三国の政府、個人、企業、機関、組織又は他の団体に対し、当該秘密情報を提供しないこと。
    (b) 秘密情報を受領する締約国政府は、自国の国内法令に従って、当該秘密情報について当該秘密情報を提供する締約国政府により与えられている保護と実質的に同等の保護を与えるために適当な措置をとること。
    (c) 秘密情報を受領する締約国政府は、当該秘密情報を提供する締約国政府の事前の書面による承認を得ることなく、当該秘密情報が提供された目的以外の目的のために、当該秘密情報を使用しないこと。
    (d) 秘密情報を受領する締約国政府は、自国の国内法令に従って、当該秘密情報に関係する特許権、著作権又は企業秘密のような知的財産権を遵守すること。
    (e) 秘密情報を取り扱う政府の各施設が、秘密情報取扱資格を有し、かつ、当該秘密情報にアクセスすることを許可されている個人の登録簿を保持すること。
    (f) 各締約国政府は、秘密情報の配布及び当該秘密情報へのアクセスを管理するために、当該秘密情報の識別、所在、目録及び管理の手続を設定すること。
    (g) 秘密情報を受領する締約国政府は、当該秘密情報を提供する締約国政府の事前の書面による承認を得ることなく、当該秘密情報を提供する締約国政府が指定する当該秘密情報の秘密指定を格下げしないこと。
          第八条
    (a) いかなる政府職員も、階級、地位又は秘密情報取扱資格のみにより、秘密情報へのアクセスを認められてはならない。
    (b) 秘密情報へのアクセスは、政府職員であって、知る必要があり、かつ、当該秘密情報を受領する締約国政府の国内法令に従って秘密情報取扱資格を付与されたものに対してのみ認められる。
    (c) 両締約国政府は、政府職員に秘密情報取扱資格を付与する決定が、国家安全保障上の利益と合致し、及び当該政府職員が秘密情報を取り扱うに当たり信用できかつ信頼し得るか否かを示す全ての入手可能な情報に基づき行われることを確保する。
    (d) 秘密情報へのアクセスを認められる政府職員に関して、(c)に規定する基準が満たされていることを確保するために、適当な手続が、両締約国政府により自国の国内法令に従って実施される。
    (e) 一方の締約国政府の代表者が他方の締約国政府の代表者に対し秘密情報を提供する前に、当該秘密情報を受領する締約国政府は、当該秘密情報を提供する締約国政府に対し次の事項についての保証を与える。
      (i) 当該秘密情報を受領する締約国政府の代表者が、必要な水準の秘密情報取扱資格を有すること。
      (ii) 当該秘密情報を受領する締約国政府の代表者に、知る必要があること。
      (iii) 当該秘密情報を受領する締約国政府は、自国の国内法令に従って、当該秘密情報について当該秘密情報を提供する締約国政府により与えられている保護と実質的に同等の保護を与えるために適当な措置をとること。
          第九条          
    一方の締約国政府の代表者が、他方の締約国政府の施設であって、秘密情報へのアクセスを必要とするものを訪問するための許可は、公用の目的のために必要なものに限定される。
    一方の締約国政府の国の領域内に所在する施設を訪問するための許可は、当該一方の締約国政府によってのみ与えられる。
    訪問を受ける締約国政府は、訪問先の施設に対し、訪問案、主題、範囲及び訪問者に対し提供することができる最も高い水準の秘密情報について助言する責任を有する。
    両締約国政府の代表者による訪問のための申請は、訪問を行う締約国政府の関係する権限のある当局により、政府間の経路を通じて、訪問を受ける締約国政府の関係する権限のある当局に対し提出される。
          第十条
    秘密情報は、政府間の経路を通じて両締約国政府の間で送付される。送付に際し、秘密情報を受領する締約国政府は、当該秘密情報の保管、管理及び秘密保持に責任を有する。
          第十一条
    両締約国政府は、第八条及び第十四条の規定に従ってアクセスを許可された個人のみがアクセスすることが確保されるような方法により、秘密情報を保管する。
          第十二条
    送付される間の秘密情報の秘密保持に関する最低限の義務は、次のとおりとする。
    (a) 秘密指定された文書及び媒体
      (i) 秘密情報を含む文書及び媒体は、二重の封印された封筒であって、内側の封筒に当該文書又は当該媒体の秘密指定及び受領予定者の属する組織の住所のみを記載し、外側の封筒に当該受領予定者の属する組織の住所、発送者の属する組織の住所及び適当な場合には登録番号を記載したものにより送付される。                                         
      (ii) 同封される文書又は媒体の秘密指定は、外側の封筒には表示してはならない。封印された封筒は、秘密情報を提供する締約国政府の定められた規則及び手続に従って送付される。
      (iii) 受領証が、両締約国政府の間で送付される秘密指定された文書又は媒体を含む包みのために用意され、また、同封される文書又は媒体の受領証は、最終の受領者により署名され、発送者に返送される。
    (b) 秘密指定された装備
      (i) 秘密指定された装備は、その細部が識別されることを防止するために、封印され、被覆された車両により輸送され、又は確実に包装され、若しくは保護されるとともに、許可されていない個人によるアクセスを防止するために、継続的な管理の下に置かれる。
      (ii) 発送を待つ間、一時的に保管されなければならない秘密指定された装備は、当該装備の秘密指定の水準に応じた保護を与える保管区域に置かれる。許可された職員のみが、当該保管区域にアクセスするものとする。
      (iii) 送付される間に、秘密指定された装備の管理者が変わる場合には、受領証は、その都度取得される。
      (iv) 受領証は、最終の受領者により署名され、発送者に返送される。
    (c) 電子的送付
      電子的手段により送付される秘密情報は、送付される間、当該秘密情報の水準に照らし適当な暗号を使用することにより保護される。秘密情報の処理、保管又は送付を行う情報制度は、当該制度を採用する締約国政府の適当な当局により、秘密保持についての認定を受ける。
          第十三条
    (a) 両締約国政府は、焼却、破砕、パルプ化又は秘密情報の全て若しくは一部の復元を防止する他の方法により、秘密指定された文書及び媒体を破壊する。
    (b) 両締約国政府は、秘密情報の全部又は一部の復元を防止するために、秘密指定された装備を見分けがつかないまでに破壊し、又は当該装備を変更する。
    (c) 両締約国政府が秘密指定された文書又は媒体を複製するときは、これらに付されている全ての原本の秘密表示についても、複製し、又は各複製物に表示する。両締約国政府は、このような複製された秘密指定された文書又は媒体を、秘密指定された文書又は媒体の原本と同じ管理の下に置く。両締約国政府は、複製物の数を公用の目的のために必要とされる数に限定する。
    (d) 両締約国政府は、秘密情報の全ての翻訳が、第八条及び次条の規定に従って秘密情報取扱資格を有する個人により行われることを確保する。両締約国政府は、複製物の数を最小限にとどめるとともに、その配布を管理する。当該翻訳には、適当な秘密指定表示を付すものとし、かつ、文書又は媒体が当該文書又は媒体を提供する締約国政府の秘密情報を含むことを示す適当な注釈を翻訳された後の言語により付すものとする。
          第十四条
    秘密情報を受領する締約国政府は、当該秘密情報を提供する締約国政府から受領する当該秘密情報を契約者に対し提供する前に、自国の国内法令に従って、次の事項を確保するために適当な措置をとる。
    (a) いかなる個人も、階級、地位又は秘密情報取扱資格のみにより、秘密情報へのアクセスを認められないこと。
    (b) 契約者及び契約者の施設が、秘密情報を保護する能力を有すること。
    (c) 知る必要がある全ての個人が、秘密情報取扱資格を有すること。
    (d) 秘密情報取扱資格が、第八条に規定する方法と同様の方法により決定されること。
    (e) 秘密情報へのアクセスを認められる個人に関して、第八条(c)に規定する基準が満たされていることを保証するために、適当な手続が、実施されること。
    (f) 秘密情報へのアクセスを有する全ての個人が、当該秘密情報を保護するための責任について通知されること。
    (g) 秘密情報を受領する締約国政府は、当該秘密情報を提供する締約国政府の当該秘密情報がこの協定において求められているとおりに保護されることを確保するために、当該秘密情報が保管され、又は当該秘密情報へのアクセスが行われている契約者の各施設において、最初の及び定期的な保安検査を実施すること。
    (h) 秘密情報へのアクセスが、知る必要がある個人に限定されること。
    (i) 秘密情報取扱資格を有し、かつ、当該秘密情報にアクセスすることを許可されている個人の登録簿が、各施設において保持されること。
    (j) 秘密情報の管理及び保護の責任及び権限を有する適格な個人が、指名されること。
    (k) 秘密情報が、第十一条に規定する方法と同様の方法により保管されること。
    (l) 秘密情報が、第十条及び第十二条に規定する方法と同様の方法により送付されること。
    (m) 秘密指定された文書及び秘密指定された装備が、前条に規定する方法と同様の方法により破壊されること。
    (n) 秘密指定された文書が、前条に規定する方法と同様の方法により複製され、及び管理の下に置かれること。
    (o) 秘密情報の翻訳が、前条に規定する方法と同様の方法により行われ、かつ、複製物が、当該方法により取り扱われること。
          第十五条
    秘密情報を提供する締約国政府は、当該秘密情報のあらゆる紛失又は漏せつ及び紛失又は漏せつのあらゆる可能性について直ちに通知され、当該秘密情報を受領する締約国政府は、状況を特定するために調査を開始する。当該秘密情報を受領する締約国政府は、当該秘密情報を提供する締約国政府に対し、当該調査の結果及び再発を防止するためにとられる措置に関する情報を送付する。
          第十六条
    この協定及び補足実施取極の解釈又は適用に関するいかなる事項も、両締約国政府間の協議によってのみ解決されるものとする。
          第十七条
    (a) この協定は、署名の日に効力を生ずる。
    (b) この協定の改正は、両締約国政府の書面による同意により行われる。
    (c) この協定は、一年間効力を有し、一方の締約国政府が他方の締約国政府に対しこの協定を終了させる意思を九十日前に外交上の経路を通じて書面により通告しない限り、その効力は、毎年自動的に延長される。
    (d) この協定の終了の後においても、この協定に従って提供された全ての秘密情報は、引き続きこの協定の規定に従って保護される。
    二千十一年十月二十四日に東京で、ひとしく正文である日本語及びフランス語により本書二通を作成した。
日本国政府のために
玄葉光一郎
フランス共和国政府のために
フランソワ=グザヴィエ・レジェ