社会保障に関する日本国とベルギー王国との間の協定
社会保障に関する日本国とベルギー王国との間の協定
     社会保障に関する日本国とベルギー王国との間の協定
   日本国及びベルギー王国は、
   社会保障の分野における両国間の関係を規律することを希望して、
   次のとおり協定した。
   第一部 総則
      第一条 定義
  1 この協定の適用上、
    (a) 「ベルギー」とは、ベルギー王国をいう。
(b) 「国民」とは、日本国については、日本国の国籍に関する法律にいう日本国民をいい、ベルギーについては、ベルギーの国籍を有する者をいう。
(c) 「法令」とは、日本国については、次条2に掲げる日本国の年金制度及び日本国の医療保険制度に関する日本国の法律及び規則(この協定と同種の社会保障に関する他の協定の実施のために定めたものを
      除く。)をいい、ベルギーについては、次条1に規定する法律及び規則をいう。
    (d) 「権限のある当局」とは、日本国については、次条2に掲げる日本国の年金制度及び日本国の医療保険制度を管轄する政府機関をいい、ベルギーについては、次条1に規定する法律及び規則の適用に関し、それぞれの権限の範囲内において責任を有する大臣をいう。
    (e) 「実施機関」とは、日本国については、次条2に掲げる日本国の年金制度及び日本国の医療保険制度の実施に責任を有する保険機関(その連合組織を含む。)をいい、ベルギーについては、次条1に規定する法律及び規則の実施に関し、その全部又は一部について責任を有する機関、組織又は当局をいう。
    (f) 「保険期間」とは、日本国については、日本国の法令のうち次条2(a)(i)から(v)までに掲げる日本国の年金制度に関するものによる保険料納付期間及び日本国の法令において給付を受ける権利の確立に際して考慮されるその他の期間をいい、ベルギーについては、ベルギーの法令により保険期間と認められる期間及びベルギーの法令により保険期間と同等のものと認められる期間をいう。
    (g) 「給付」とは、いずれか一方の締約国の法令による年金その他の現金給付をいう。
  2 この協定の適用上、この協定において定義されていない用語は、適用される法令において与えられている意味を有するものとする。
      第二条 この協定の適用範囲
   この協定は、
  1 ベルギーについては、次の事項に関する法律及び規則について適用する。
    (a) 被用者及び自営業者に関する老齢年金及び遺族年金
    (b) 被用者、商船の船員、鉱山労働者及び自営業者に関する障害保険
    (c) 被用者に関する社会保障
    (d) 自営業者に関する社会保障
     この協定は、これらの法律及び規則を改正する法律及び規則についても適用する。
     ただし、この協定の適用上、第五条、第六条、第十四条から第二十四条まで、第二十九条、第三十条、第三十三条(4を除く。)、第三十四条及び第三十六条2の規定は、(a)及び(b)に関する法律及び規則についてのみ適用する。
  2 日本国については、
    (a) 次の日本国の年金制度について適用する。
      (i) 国民年金(国民年金基金を除く。)
      (ii) 厚生年金保険(厚生年金基金を除く。)
      (iii) 国家公務員共済年金
      (iv) 地方公務員等共済年金(地方議会議員の年金制度を除く。)
      (v) 私立学校教職員共済年金
        ((ii)から(v)までに掲げる日本国の年金制度を以下「日本国の被用者年金制度」という。)
        ただし、この協定の適用上、国民年金には、老齢福祉年金その他の福祉的目的のため経過的又は補完的に支給される年金であって、専ら又は主として国庫を財源として支給されるものを含めない。
    (b) 次の法律(その改正を含む。)により実施される日本国の医療保険制度について適用する。
      (i) 健康保険法(大正十一年法律第七十号)
      (ii) 船員保険法(雇用保険及び労働者災害補償保険に関する規定を含む。)(昭和十四年法律第七十三号)
      (iii) 国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)
      (iv)  国家公務員共済組合法(昭和三十三年法律第百二十八号)
      (v) 地方公務員等共済組合法(昭和三十七年法律第百五十二号)
      (vi) 私立学校教職員共済法(昭和二十八年法律第二百四十五号)
      ただし、この協定の適用上、第五条、第六条、第十四条から第二十四条まで、第二十九条、第三十条、第三十三条(4を除く。)、第三十四条及び第三十六条2の規定は、(a)に掲げる日本国の年金制度についてのみ適用する。
      第三条 この協定の適用を受ける者
   この協定は、いずれか一方の締約国の法令の適用を受けているか又は受けたことがある者及びこれらの者に由来する権利を有するその他の者に適用する。
      第四条 待遇の平等
   この協定に別段の定めがある場合を除くほか、前条に規定する者であって一方の締約国の領域内に通常居住するものは、当該一方の締約国の法令の適用に際して、当該一方の締約国の国民と同等の待遇を受ける。
      第五条 海外の受給者への給付の支払
  1 この協定に別段の定めがある場合を除くほか、一方の締約国の領域外に通常居住すること又は当該領域内にいないことのみを理由として給付を受ける権利の取得又は給付の支払を制限する当該一方の締約国の法令の規定は、他方の締約国の領域内に通常居住する者には適用しない。ただし、この規定は、初診日又は死亡日において六十歳以上六十五歳未満であった者に関して障害基礎年金又は遺族基礎年金を受ける権利の取得のために日本国の領域内に通常居住していることを要件として定めた日本国の法令の規定に影響を及ぼすものではない。
  2 一方の締約国から支給される老齢給付及び遺族給付は、第三国の領域内に通常居住する他方の締約国の国民に対しては、当該第三国の領域内に通常居住する当該一方の締約国の国民に対して支給する場合と同一の条件で支給する。
      第六条 給付の額の減額及び給付の支払の停止
   一方の締約国の法令により支給される給付が他方の締約国の法令により支給される給付と同時に受給者に支給される場合又は一方の締約国の法令により支給される給付の受給者が他方の締約国の領域内において被用者若しくは自営業者として就労する場合における給付の額の減額又は給付の支払の停止に関する当該一方の締約国の法令の規定は、当該受給者に適用する。ただし、この条の規定は、同一の支給事由に基づく給付が同時に支給される場合については、適用しない。
   第二部 適用法令に関する規定
      第七条 一般規定
  1 この協定に別段の定めがある場合を除くほか、いずれか一方の締約国の領域内において被用者又は自営業者として就労する者については、その被用者又は自営業者としての就労に関し、当該一方の締約国の法令のみを適用する。
  2 ベルギーの領域内において自営業者として就労し、同時に日本国の領域内において被用者として就労する場合には、自営業者の社会的地位に関するベルギーの法令に基づく義務について決定するため、日本国の領域内におけるその就労は、ベルギーの領域内における被用者としての就労とみなす。
      第八条 特別規定
  1 一方の締約国の法令に基づく年金制度及び医療保険制度に加入し、かつ、当該一方の締約国の領域内に事業所を有する雇用者に当該領域内において雇用されている者が、当該雇用者により当該一方の締約国の領域から他方の締約国の領域内において就労するために派遣される場合には、その派遣の期間が五年を超えるものと見込まれないことを条件として、その被用者が当該一方の締約国の領域内において就労しているものとみなして当該一方の締約国の法令のみを適用する。
  2 1に規定する派遣が五年を超えて継続される場合には、両締約国の権限のある当局又は権限のある当局が指定する実施機関は、当該派遣に係る被用者に対して引き続き1に規定する一方の締約国の法令のみを適用することについて合意することができる。
  3 1の規定は、雇用者により一方の締約国の領域から第三国の領域に派遣されていた者が、その後、当該雇用者により当該第三国の領域から他方の締約国の領域に派遣される場合にも適用される。
  4 一方の締約国の法令に基づく年金制度及び医療保険制度に加入し、かつ、通常当該一方の締約国の領域内において自営業者として就労する者が、一時的に他方の締約国の領域内においてのみ自営業者として就労する場合には、当該他方の締約国の領域内における自営活動の期間が五年を超えるものと見込まれないことを条件として、その者が当該一方の締約国の領域内において就労しているものとみなして当該一方の締約国の法令のみを適用する。
  5 4に規定する他方の締約国の領域内における自営活動が五年を超えて継続される場合には、両締約国の権限のある当局又は権限のある当局が指定する実施機関は、当該自営活動に係る自営業者に対して引き続き4に規定する一方の締約国の法令のみを適用することについて合意することができる。
      第九条 海上航行船舶又は航空機において就労する被用者
   いずれか一方の締約国の旗を掲げる海上航行船舶又は国際運輸に従事する航空機において被用者として就労する者については、その就労に関し、その者の雇用者の所在する締約国の法令のみを適用する。
      第十条 公務員、外交使節団の構成員及び領事機関の構成員
  1 2の規定に従うことを条件として、一方の締約国の公務員又は一方の締約国の法令において公務員として取り扱われる者が他方の締約国の領域内において就労するために派遣される場合には、その者が当該一方の締約国の領域内において就労しているものとみなして当該一方の締約国の法令のみを適用する。
  2 この協定は、千九百六十一年四月十八日の外交関係に関するウィーン条約又は千九百六十三年四月二十四日の領事関係に関するウィーン条約の規定に影響を及ぼすものではない。
      第十一条 第七条から前条までの規定の例外
   日本国の権限のある当局又は実施機関及びベルギーの権限のある当局は、特定の者又は特定の範囲の者の利益のため、これらの特定の者又は特定の範囲の者にいずれか一方の締約国の法令が適用されることを条件として、第七条から前条までの規定の例外を認めることについて合意することができる。
      第十二条 随伴する配偶者及び子
   日本国の領域内において就労する者であって、第八条、第九条、第十条1又は前条の規定によりベルギーの法令の適用を受けるものに随伴する配偶者又は子については、
    (a) 当該配偶者又は子が日本国民以外の者である場合には、日本国の法令は、適用しない。ただし、当該配偶者又は子が別段の申出を行う場合には、この(a)の規定は、適用しない。
    (b) 当該配偶者又は子が日本国民である場合には、日本国の法令の適用の免除は、日本国の法令に従って決定する。
      第十三条 強制加入
   第七条1、第八条、第九条、第十条1及び前条の規定は、各締約国の法令における強制加入についてのみ適用する。第八条の規定は、日本国の領域内に事業所を有する雇用者に当該領域内において雇用されている者又は通常日本国の領域内において自営業者として就労する者が、第二条2(a)(i)から(v)までに掲げる日本国の年金制度に加入していない場合には、適用しない。
   第三部 給付に関する規定
    第一章 ベルギーの給付に関する規定
     第一節 老齢給付及び遺族給付
      第十四条 通算
  1 2の規定に従うことを条件として、ベルギーの法令による保険期間を有する者について、ベルギーの老齢給付又は遺族給付を受ける権利の取得のために必要な場合には、ベルギーの実施機関は、ベルギーの法令による保険期間と重複しない範囲において、日本国の法令による保険期間とベルギーの法令による保険期間とを通算する。
  2 ベルギーの法令が、特定の職業による保険期間を有することをベルギーの老齢給付又は遺族給付を受ける権利の取得のための要件としている場合には、当該給付を受ける権利の取得のため、ベルギーの実施機関は、日本国の法令による保険期間であって、ベルギーの実施機関が同一の職業による保険期間と認めたもののみを通算する。
  3 ベルギーの法令が、特定の職業による保険期間を有することをベルギーの老齢給付又は遺族給付を受ける権利の取得のための要件としている場合において、2の規定による通算の結果得られた保険期間により当該給付を受ける権利を確立することができなかったときは、ベルギーの実施機関は、ベルギーの被用者に係る一般制度の下での給付に係る決定のために当該通算の結果得られた保険期間を考慮する。
      第十五条 給付の額の計算
  1 保険期間を通算することなくベルギーの老齢給付又は遺族給付を受ける権利が確立される場合には、ベルギーの実施機関は、ベルギーの法令による保険期間のみに基づいて、当該給付の額を計算する。また、当該ベルギーの実施機関は、2の規定の適用により得られるであろう当該給付の額を計算し、これら二つの額のうち高い方を用いる。
  2 前条の規定に従って保険期間を通算することにより初めてベルギーの老齢給付又は遺族給付を受ける権利が確立される場合には、次の規定を適用する。
    (a) ベルギーの実施機関は、両締約国の法令によるすべての保険期間が当該ベルギーの実施機関が適用する法令のみによる保険期間であるとした場合に支給される理論上の給付額を計算する。
    (b) ベルギーの実施機関は、(a)に規定する理論上の給付額に、(a)に規定する両締約国の法令によるすべての保険期間に対する当該ベルギーの実施機関が適用する法令による保険期間の比率を乗じて、支給すべき額を計算する。
     第二節 障害給付
      第十六条 通算
   第十四条の規定は、ベルギーの法令による保険期間を有する者がベルギーの障害給付を受ける権利を取得する場合について準用する。
      第十七条 給付の額の計算
  1 ベルギーの障害給付を受ける権利が、前条の規定に従ってベルギーの法令による保険期間及び日本国の法令による保険期間を通算することにより初めて確立される場合には、当該給付の額を計算するため、第十五条2の規定を準用する。
  2 前条の規定を適用することなくベルギーの障害給付を受ける権利が確立される場合において、日本国の障害給付の額と1の規定に従って計算された障害給付の額とを合計した額が、ベルギーの法令のみに基づく給付の額よりも低いときは、ベルギーの実施機関は、これら二つの障害給付の額を合計した額と当該ベルギーの法令のみに基づく給付の額との差額を補てんする。
      第十八条 最低加入期間
   前条1に規定する場合において、保険事故の発生前のベルギーの法令による保険期間の合計が一年に満たないときは、ベルギーの実施機関は、ベルギーの障害給付を支給しない。
      第十九条 障害給付に関する特別規定
   ベルギーの障害給付の受給者は、ベルギーの実施機関により日本国の領域内における滞在があらかじめ承認された場合には、当該滞在中も当該障害給付を受ける権利を引き続き有する。ただし、ベルギーの法令に基づいて当該ベルギーの実施機関が障害の状態を評価し又は再評価しなければならない期間中に当該滞在が行われる場合には、当該ベルギーの実施機関は、この承認を拒否することができる。
     第三節 ベルギーの給付に関する共通規定
      第二十条 給付の額の再計算
  1 日本国の老齢給付、遺族給付又は障害給付の額が、生計費の上昇、賃金水準の変動その他の事由により一定の割合又は額に基づいて変更される場合には、ベルギーの実施機関は、ベルギーの老齢給付、遺族給付又は障害給付の額について再計算を行うことを要しない。
  2 また、日本国の老齢給付、遺族給付若しくは障害給付を受ける権利の確立の方法又はこれらの給付の額の計算に係る規則が修正される場合には、ベルギーの実施機関は、第十五条又は第十七条の規定に従って再計算を行う。
    第二章 日本国の給付に関する規定
      第二十一条 通算
  1 日本国の給付を受ける権利の取得のための要件を満たすのに十分な保険期間を有しない者について、この条の規定に基づいて給付を受ける権利を確立するため、日本国の実施機関は、日本国の法令による保険期間と重複しない限りにおいて、ベルギーの法令による保険期間を考慮する。ただし、この1の規定は、各共済年金の職域加算年金及び保険料の還付として支給される一時金については、適用しない。
  2 1の規定の適用に当たっては、
    (a) ベルギーの法令による保険期間は、日本国の被用者年金制度の保険期間及びこれに対応する国民年金の保険期間として考慮する。
    (b) ベルギーの法令により次の(i)又は(ii)の期間として認められた保険期間は、日本国の厚生年金保険における同種の作業に従事した期間として考慮する。
      (i) 鉱山において常時の坑内作業に従事した期間
      (ii) 海上航行船舶において被用者として就労した期間
      第二十二条 障害給付及び遺族給付に関する特別規定
  1 日本国の法令が、障害給付又は遺族給付(保険料の還付として支給される一時金を除く。以下この1において同じ。)を受ける権利の確立のために初診日又は死亡日が特定の保険期間中にあることを要件としている場合において、初診日又は死亡日がベルギーの法令による保険期間中にあるときは、これらの給付を受ける権利の確立に当たり当該要件は満たされたものとみなす。ただし、国民年金の下での障害給付又は遺族給付を受ける権利がこの条の規定を適用しなくても確立される場合には、この条の規定は、日本国の被用者年金制度の下での同一の保険事故に基づく障害給付又は遺族給付を受ける権利の確立に当たっては、適用しない。
  2 1の規定の適用に当たっては、二以上の日本国の被用者年金制度における保険期間を有する者については、1に規定する要件は、日本国の法令に従って、一の被用者年金制度につき満たされたものとみなす。
      第二十三条 給付の額の計算
1 第二十一条1又は前条1の規定の適用により日本国の給付を受ける権利が確立される場合には、2から5までの規定に従うことを条件として、日本国の実施機関は、日本国の法令に従って当該給付の額を計算する。
  2 障害基礎年金その他の保険期間にかかわらず一定額が支給される給付に関しては、当該給付を受けるための要件が第二十一条1又は前条1の規定の適用により満たされる場合には、支給される当該給付の額は、当該給付が支給される年金制度における保険料納付期間、保険料免除期間及びベルギーの法令による保険期間を合算した期間に対する当該保険料納付期間及び当該保険料免除期間を合算した期間の比率に基づいて計算する。
  3 日本国の被用者年金制度の下での障害給付及び遺族給付(当該制度における保険期間が日本国の法令上定められた期間に満たない場合に支給されるものであって、支給される当該給付の額が当該定められた期間に基づいて計算されるものに限る。)に関しては、当該給付を受けるための要件が第二十一条1又は前条1の規定の適用により満たされる場合には、支給される当該給付の額は、日本国の被用者年金制度における保険期間及びベルギーの法令による保険期間を合算した期間に対する当該日本国の被用者年金制度における保険期間の比率に基づいて計算する。ただし、当該合算した期間が当該定められた期間を超える場合には、当該合算した期間は、当該定められた期間と同一の期間とする。
  4 2及び3の規定による日本国の被用者年金制度の下での給付の額の計算に関しては、当該給付を受ける権利を有する者が二以上の日本国の被用者年金制度における保険期間を有する場合には、2に規定する「当該給付が支給される年金制度における保険料納付期間」又は3に規定する「日本国の被用者年金制度における保険期間」は、当該二以上の日本国の被用者年金制度における保険期間を合算した期間とする。ただし、当該合算した期間が3に規定する日本国の法令上定められた期間に等しいか又はこれを超える場合には、3及びこの4に規定する計算方法は適用しない。
  5 老齢厚生年金の一部である配偶者加給その他の日本国の被用者年金制度における保険期間が日本国の法令上定められた期間に等しいか又はこれを超える場合に一定額が支給される給付に関しては、当該給付を受けるための要件が第二十一条1の規定の適用により満たされる場合には、支給される当該給付の額は、当該定められた期間に対する当該給付が支給される日本国の被用者年金制度における保険期間の比率に基づいて計算する。
      第二十四条 第四条の規定の例外
   第四条の規定は、日本国の領域外に通常居住することに基づいて日本国民に対して認められる合算対象期間に関する日本国の法令の規定に影響を及ぼすものではない。
   第四部 雑則
      第二十五条 行政上の協力
  1 両締約国の権限のある当局は、この協定の実施のため、必要な行政上の取決めについて合意し、連絡機関及び実施機関を特定する。
  2 両締約国の権限のある当局は、この協定の実施のための措置に関する情報を相互に直接通報する。
  3 両締約国の権限のある当局は、自国の法令の変更(この協定の実施に影響を及ぼすものに限る。)に関するすべての情報をできる限り速やかに相互に直接通報する。
  4 両締約国の権限のある当局及び実施機関は、それぞれの権限の範囲内で、この協定の実施のために必要な援助を提供する。この援助は、無償で行う。
      第二十六条 手数料及び認証
1 一方の締約国の法令その他関連する法律及び規則において、当該一方の締約国の法令の適用上提出すべき文書に係る行政上又は領事事務上の手数料の免除又は軽減に関する規定があるときは、当該規定は、この協定及び他方の締約国の法令の適用上提出すべき文書についても適用する。
  2 この協定及び一方の締約国の法令の適用上提出すべき文書については、外交機関又は領事機関による認証その他これに類する手続を要しない。
      第二十七条 使用言語
  1 この協定の実施に際して、両締約国の権限のある当局及び実施機関は、相互に、及び関係者(居住地を問わない。)に対して、日本国については日本語により、ベルギーについてはその公用語のうちの一の言語により、直接連絡することができる。
  2 この協定の実施に際して、日本国の権限のある当局及び実施機関は、ベルギーの公用語のうちの一の言語で作成されていることを理由として、また、ベルギーの権限のある当局及び実施機関は、日本語で作成されていることを理由として、申請書その他の文書の受理を拒否してはならない。
      第二十八条 情報の秘密性
  1 一方の締約国の権限のある当局又は実施機関は、当該一方の締約国の法令の下で収集された個人に関する情報(この協定の実施のために必要なものに限る。)を当該一方の締約国の法律及び規則に従って他方の締約国の権限のある当局又は実施機関に伝達する。
  2 一方の締約国の法律及び規則により特に必要とされない限り、この協定に従って他方の締約国により当該一方の締約国に対し伝達される個人に関する情報は、専らこの協定を実施する目的のために使用する。一方の締約国が受領するこれらの情報は、個人に関する情報の秘密の保護のための当該一方の締約国の法律及び規則により規律される。
      第二十九条 申請、不服申立て及び申告
  1 一方の締約国の法令による書面による給付の申請、不服申立て又はその他の申告が他方の締約国の法令による類似の申請、不服申立て又はその他の申告を受理する権限を有する当該他方の締約国の権限のある当局又は実施機関に対して提出された場合には、当該給付の申請、不服申立て又はその他の申告は、その提出の日に当該一方の締約国の権限のある当局又は実施機関に対して提出されたものとみなし、当該一方の締約国の手続及び法令に従って取り扱う。
  2 一方の締約国の権限のある当局又は実施機関は、1の規定に従って提出された給付の申請、不服申立て又はその他の申告を遅滞なく他方の締約国の権限のある当局又は実施機関に伝達する。
      第三十条 給付の支払
   この協定に係る給付の支払は、いずれの締約国の通貨によっても行うことができる。いずれか一方の締約国が外国為替取引又は海外送金を制限する措置を実施する場合には、両締約国の政府は、この協定に係る当該一方の締約国による給付の支払を可能とするために必要な措置について、直ちに協議する。
      第三十一条 意見の相違の解決
   この協定の解釈又は適用についての意見の相違は、両締約国の関係当局間の協議により解決する。
      第三十二条 見出し
   この協定中の部、章、節及び条の見出しは、引用上の便宜のためにのみ付されたものであって、この協定の解釈に影響を及ぼすものではない。
   第五部 経過規定及び最終規定
      第三十三条 効力発生前の事実
  1 この協定の実施に当たっては、この協定の効力発生前の事実を考慮する。
  2 この協定は、その効力発生前には給付を受ける権利を確立させるものではない。
  3 この協定の実施に当たっては、この協定の効力発生前の保険期間は、この協定により給付を受ける権利を確立するために考慮する。
  4 第八条1又は4の規定の適用に当たっては、これらの規定にいう派遣又は自営活動をこの協定の効力発生前に開始した者については、当該派遣又は自営活動の期間は、この協定の効力発生の日に開始したものとみなす。
      第三十四条 給付の額の改定、権利の喪失及び権利に係る時効
  1 受給者の国籍を理由として又は受給者が一方の締約国の領域外に通常居住することを理由として支払われていなかった給付又は支払が停止されていた給付については、当該受給者の申請に基づきこの協定の効力発生の日に支払を開始し、又は支払の停止を解除する。
  2 この協定の効力発生前に決定した給付の額については、この協定の適用により当該給付の額が増加することとなる場合には、受給者の申請に基づいて改定する。
  3 この協定の適用の結果として、受給者に対し、この協定の効力発生前に権利が確立された給付の額を減額してはならない。
  4 1若しくは2に規定する受給者の申請又はこの協定の下で取得される給付を受ける権利の確立に必要な年齢に達している受給者による当該給付の申請が、この協定の効力発生の日から二年以内に行われる場合には、この協定の適用により生ずる権利は、当該効力発生の日に取得される。この場合において、権利の喪失又は権利に係る時効に関する各締約国の法令の規定は、これらの申請には適用しない。
  5 4に規定する申請が、この協定の効力発生の日から二年を経過した後に行われる場合には、喪失していない権利又は時効が完成していない権利については、各締約国の法令に従って決定する。
      第三十五条 効力発生
   この協定は、両締約国が、この協定の効力発生に必要なそれぞれの憲法上の要件が満たされた旨を相互に通告する外交上の公文を交換した月の後三箇月目の月の初日に効力を生ずる。
      第三十六条 有効期間及び終了
  1 この協定は、無期限に効力を有する。いずれの締約国も、外交上の経路を通じて他方の締約国に対し書面によりこの協定の終了の通告を行うことができる。この場合には、この協定は、終了の通告が行われた月の後十二箇月目の月の末日まで効力を有する。
  2 この協定が1の規定に従って終了する場合においても、この協定の下で取得された給付を受ける権利及び給付の支払に関する権利は維持される。
   以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの協定に署名した。
   二千五年二月二十三日にブリュッセルで、英語により本書二通を作成した。
    日本国のために
      内藤昌平
    ベルギー王国のために 
      カレル・デ・フフト