社会保障に関する日本国と大韓民国との間の協定
社会保障に関する日本国と大韓民国との間の協定
社会保障に関する日本国と大韓民国との間の協定
日本国及び大韓民国は、 社会保障の分野における両国間の関係を規律することを希望して、 次のとおり協定した。
第一条
1 この協定の適用上、
(a) 「国民」とは、日本国については、日本国の国籍に関する法律にいう日本国民をいい、大韓民国については、国籍法に定義された大韓民国国民をいう。
(b) 「法令」とは、次条に掲げる年金制度に関する一方の締約国の法律及び規則をいう。ただし、法令には、一方の締約国が第三国との間で締結した社会保障に関する条約その他の国際約束又はそれらの条約その他の国際約束の実施のために公布された法律及び規則を含めない。
(c) 「権限のある当局」とは、次条に掲げる年金制度を管轄する政府機関をいう。
(d) 「実施機関」とは、日本国については、次条(b)に掲げる日本国の年金制度の実施に責任を有する保険機関(その連合組織を含む。)をいい、大韓民国については、国民年金管理公団をいう。
(e) 「難民」とは、千九百五十一年七月二十八日の難民の地位に関する条約第一条又は千九百六十七年一月三十一日の難民の地位に関する議定書第一条にいう難民をいう。
2 この協定の適用上、この協定において定義されていない用語は、各々の締約国の法令において与えられている意味を有するものとする。
第二条
この協定は、次の年金制度について適用する。
(a) 大韓民国については、国民年金
(b) 日本国については、
(i) 国民年金(老齢福祉年金その他の福祉的目的のため経過的又は補完的に支給される年金であって、専ら又は主として国庫を財源として支給されるものを除く。)
(ii) 厚生年金保険
(iii) 国家公務員共済年金
(iv) 地方公務員等共済年金
(v) 私立学校教職員共済年金
第三条
この協定は、いずれか一方の締約国の法令の適用を受けているか又は受けたことがあるすべての者並びにこれらの者に由来する権利を有する家族及び遺族に適用する。
第四条
1 一方の締約国の法令の適用を受けているか又は受けたことがある当該一方の締約国の国民又は難民並びにこれらの者に由来する権利を有する家族及び遺族であって、他方の締約国の領域内に通常居住するものは、当該他方の締約国の法令の適用に際して、当該他方の締約国の国民に対して与えられる待遇と同等の待遇を受ける。
2 1の規定は、日本国の領域外に通常居住することに基づいて日本国民に対して認められる合算対象期間に関する日本国の法令の規定に影響を及ぼすものではない。
3 1の規定は、大韓民国の法令による返還一時金には適用しない。
4 一方の締約国の法令による給付は、両締約国の領域外の地域に通常居住する他方の締約国の国民に対しては、当該地域に通常居住する当該一方の締約国の国民に対して支給する場合と同一の条件で支給する。
5 一方の締約国の領域内に通常居住することを給付を受ける権利の取得又は給付の支払のための要件として定めた当該一方の締約国の法令の規定は、いずれかの締約国の国民又は難民並びにこれらの者に由来する権利を有する家族及び遺族であって、他方の締約国の領域内に通常居住するものについては適用しない。ただし、この規定は、初診日又は死亡日において六十歳以上六十五歳未満であった者に関して障害基礎年金又は遺族基礎年金を受ける権利の取得のために日本国の領域内に通常居住していることを要件として定めた日本国の法令の規定に影響を及ぼすものではない。
第五条
1 第二条に掲げる年金制度への強制加入(以下「強制加入」という。)に関しては、この協定に別段の定めがある場合を除くほか、一方の締約国の領域内において被用者又は自営業者として就労する者については、当該一方の締約国の法令のみを適用する。
2 強制加入に関しては、次条1及び3の規定に従うことを条件として、次に掲げる者に対して同一の期間に両締約国の法令が適用されることとなる場合には、その者が通常居住する領域の属する締約国の法令のみを適用する。
(a) 両締約国の領域内において被用者として就労する者
(b) 一方の締約国の領域内において被用者として就労し、かつ、他方の締約国の領域内において自営業者として就労する者
3 強制加入に関しては、両締約国の領域内において自営業者として就労する者に対して同一の期間に両締約国の法令が適用されることとなる場合には、その者が通常居住する領域の属する締約国の法令のみを適用する。
第六条
1 強制加入に関しては、次条及び第八条の規定に従うことを条件として、第二条に掲げる一方の締約国の年金制度に加入し、かつ、当該一方の締約国の領域内に事業所を有する雇用者に雇用されている者が、当該雇用者により当該一方の締約国の領域から他方の締約国の領域内において就労するために派遣される場合には、その派遣の期間が五年を超えるものと見込まれないことを条件として、その被用者が当該一方の締約国の領域内において就労しているものとみなして当該一方の締約国の法令のみを適用する。
2 1の規定は、雇用者により一方の締約国の領域から第三国の領域に派遣されていた者が、その後、当該雇用者により当該第三国の領域から他方の締約国の領域に派遣される場合にも適用される。
3 強制加入に関しては、第二条に掲げる一方の締約国の年金制度に加入し、かつ、通常当該一方の締約国の領域内において自営業者として就労する者が、他方の締約国の領域内においてのみ自営業者として就労する場合には、当該他方の締約国の領域内における自営活動の期間が五年を超えるものと見込まれないことを条件として、その者が当該一方の締約国の領域内において就労しているものとみなして当該一方の締約国の法令のみを適用する。
4 1又は3の規定の適用に当たっては、これらの規定にいう派遣又は自営活動が五年を超えて継続される場合には、自国の法令の適用を免除する権限のある当局又は実施機関は、第九条の規定に従って、引き続き自国の法令の適用を免除することができる。
第七条
強制加入に関しては、いずれか一方の締約国の旗を掲げる海上航行船舶において船員として就労する者に対して両締約国の法令が適用されることとなる場合には、その者が通常居住する領域の属する締約国の法令のみを適用する。
第八条
1 この協定は、千九百六十一年四月十八日の外交関係に関するウィーン条約又は千九百六十三年四月二十四日の領事関係に関するウィーン条約の規定に影響を及ぼすものではない。
2 強制加入に関しては、1の規定に従うことを条件として、一方の締約国の公務員又は一方の締約国の法令において公務員として取り扱われる者が他方の締約国の領域内において就労するために派遣される場合には、その者が当該一方の締約国の領域内において就労しているものとみなして当該一方の締約国の法令のみを適用する。
第九条
強制加入に関しては、両締約国の権限のある当局又は実施機関は、被用者及び雇用者の共同の申請又は自営業者の申請に基づき、特定の者又は特定の範囲の者の利益のため、これらの特定の者又は特定の範囲の者にいずれか一方の締約国の法令が適用されることを条件として、第五条から前条までの規定の例外を認めることについて相互に同意することができる。
第十条
1 強制加入に関しては、日本国の領域内において就労する者であって、第六条、第八条2又は前条の規定により大韓民国の法令の適用を受けるものに随伴する配偶者又は子が日本国民以外の者である場合には、当該配偶者又は子が別段の申出を行う場合を除き、日本国の法令は、適用しない。また、当該配偶者又は子が日本国民である場合には、日本国の法令の適用の免除は、日本国の法令に従って決定する。
2 強制加入に関しては、大韓民国の領域内において就労する者であって、第六条、第八条2又は前条の規定により日本国の法令の適用を受けるものに同伴する配偶者又は子が被用者又は自営業者として就労しない場合には、大韓民国の法令は、適用しない。
第十一条
両締約国の権限のある当局は、
(a) この協定の実施のために必要な行政上の措置について合意することができる。
(b) この協定の実施のために連絡機関を指定する。
(c) 自国の法令の変更(この協定の実施に影響を及ぼすものに限る。)に関するすべての情報をできる限り速やかに相互に通報する。
第十二条
両締約国の権限のある当局又は実施機関は、それぞれの権限の範囲内で、この協定の実施のために必要な援助を相互に提供する。この援助は、両締約国の権限のある当局又は実施機関の間の相互の同意により別段の決定が行われる場合を除くほか、無償で行う。
第十三条
1 一方の締約国の権限のある当局又は実施機関は、当該一方の締約国の法令の下で収集された個人に関する情報(この協定の適用のために必要なものに限る。)を当該一方の締約国の法令その他関連する法律及び規則に従って他方の締約国の権限のある当局又は実施機関に伝達する。
2 一方の締約国の法令その他関連する法律及び規則により開示が義務付けられている場合を除くほか、1
の規定に従って伝達された個人に関するいかなる情報も秘密として取り扱うものとし、かつ、この協定を適用する目的のためにのみ使用する。
第十四条
1 この協定の実施に際して、両締約国の権限のある当局又は実施機関は、相互に、及び関係者又はその代理人に対して、各々の自国の言語により連絡することができる。ただし、一方の締約国による強制執行に直接結び付き得る文書を他方の締約国の領域内に通常居住する関係者又はその代理人に対して送付する場合には、当該他方の締約国の言語による翻訳を添付することに努める。
2 この協定の実施に際して、一方の締約国の権限のある当局又は実施機関は、他方の締約国の言語で作成されていることを理由として申請書その他の文書の受理を拒否してはならない。
第十五条
この協定の解釈又は適用についての意見の相違は、両締約国間の協議により解決する。
第十六条
第六条1又は3の規定の適用に当たっては、これらの規定にいう派遣又は自営活動をこの協定の効力発生前に開始した者については、当該派遣又は自営活動の期間は、この協定の効力発生の日に開始したものとみなす。
第十七条
この協定は、両締約国が、この協定の効力発生に必要なそれぞれの国内法上の要件が満たされた旨を相互に通告する外交上の公文を交換した月の後三箇月目の月の初日に効力を生ずる。
第十八条
この協定は、無期限に効力を有する。ただし、いずれの締約国も、外交上の経路を通じて他方の締約国に対し書面によりこの協定の終了の通告を行うことができる。この場合には、この協定は、終了の通告が行われた月の後十二箇月目の月の末日まで効力を有する。
以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの協定に署名した。 二千四年二月十七日にソウルで、ひとしく正文である日本語及び韓国語により本書二通を作成した。 日本国のために 高野紀元 大韓民国のために 潘基文