文化交流に関する日本国政府とロシア連邦政府との間の協定
文化交流に関する日本国政府とロシア連邦政府との間の協定
   日本国政府及びロシア連邦政府(以下「両締約国政府」というは、
   千九百八十六年五月三十一日にモスクワで署名された文化交流に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定が日本国とロシア連邦との間の文化交流の発展に重要な役割を果たしてきたことに留意し、
   千九百九十八年十一月十三日にモスクワで署名された日本国とロシア連邦の間の創造的パートナーシップ構築に関するモスクワ宣言を指針とし、
   両国間の文化交流の現状を基礎として、文化、教育及び学術の分野における協力の一層の発展及び強化のために新たな法的枠組みを設ける必要性を認識し、
   これらの分野における協力の発展及び強化が両国間の友好関係及び相互理解の一層の増進に寄与することを確信して、
   次のとおり協定した。
第一条
  1 両締約国政府は、学者、教員、研究員、学生、芸術家その他文化的活動又は教育研究活動に従事する専門家の交換を奨励する。
  2 両締約国政府は、両国の文化機関及び教育研究機関の間における協力及び交流を奨励する。
第二条
   両締約国政府は、それぞれの国において、他方の国の国民に対し修学又は研究のための奨学金その他の便宜が与えられることを奨励する。
第三条
   両締約国政府は、それぞれの国の教育研究機関における他方の国の言語、文学、歴史、文化その他の側面についての教育及び研究を奨励する。
第四条
   両締約国政府は、両国の学位及び教育に関する資格証書の同等性に関する情報の交換についての協力を奨励し、かつ、必要な場合には、その同等性に関する問題についての協議の実施を奨励する。
第五条
   両締約国政府は、それぞれの国において、それぞれの国の法令に従い、文化的活動又は教育研究活動に従事する他方の国の国民が図書館、博物館、美術館、公文書館その他の文化的性質を有する施設を研究、修学その他のこの協定に合致した目的のために利用することができるよう、良好な条件の創出に努める。
第六条
   両締約国政府は、特に次の手段によりそれぞれの国の国民が他方の国の文化、歴史、社会制度及び生活様式を理解することを奨励する。
    (a) 書籍、定期刊行物その他の出版物の交換
    (b) ラジオ番組及びテレビジョン番組の制作及び放送
    (c) フィルムその他の視聴覚資材の交換
    (d) コンピュータの利用による情報の伝達
    (e) 美術展覧会、工芸品展覧会、書籍の見本市その他の展示会の実施
    (f) 講演、セミナー及び会議の実施
    (g) 演奏会及び舞台芸術の実施
    (h)  祭典及びコンクールの実施
第七条
   両締約国政府は、文化財の保護の分野における協力及び交流を奨励する。
第八条
  1 両締約国政府は、それぞれ他方の国の国民又は団体により製作された文学的、音楽的、美術的又は学術的内容の著作物の翻訳、複製及び出版の分野における協力及び交流を奨励する。
  2 両締約国政府は、それぞれの国の法令並びに日本国及びロシア連邦が共に締結している関係条約に基づく著作権及びこれに隣接する権利の保護の分野における協力を奨励する。
第九条
   両締約国政府は、新聞、雑誌、ラジオ及びテレビジョンの分野における協力及び交流並びに両国の報道関係者及びその団体の間における協力及び交流を奨励する。
第十条
    両締約国政府は、映画の分野における協力及び交流を奨励する。
第十一条 
   両締約国政府は、両国の青少年及び青少年団体の間並びにスポーツマン及びスポーツ団体の間の協力及び交流を奨励する。
第十二条 
   両締約国政府は、両国の国民の間の相互理解を促進するため、両国間における観光旅行を奨励する。
第十三条 
   両締約国政府は、それぞれの国の法令に従い、両国間の文化交流の発展に資すると認める他方の国の団体のそれぞれの国の領域内における活動のための良好な条件の創出に努める。
第十四条
   両締約国政府は、この協定の実施に係る諸事項について協議するため、日露文化交流委員会を設置する。同委員会は、少なくとも二年に一回、日本国及びロシア連邦において交互に会合する。
第十五条
   各締約国政府は、必要と認めるときは、この協定の実施に関する自国側の計画を作成し、他方の締約国政府に対し通報する。
第十六条
   この協定は、批准されなければならない。この協定は、モスクワで行われる批准書の交換の日から三十日目の日に効力を生ずる。
第十七条 
   千九百八十六年五月三十一日にモスクワで署名された文化交流に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定は、この協定の効力発生の時に日本国政府とロシア連邦政府との間において終了する。
第十八条
   この協定は、五年間効力を有するものとし、その後においても、いずれか一方の締約国政府がこの協定を終了させる意思を文書により他方の締約国政府に対し通告した日から十二箇月の期間が満了するまで引き続き効力を有する。
    以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの協定に署名した。
   二千年九月五日に東京で、ひとしく正文である日本語及びロシア語により本書二通を作成した。
日本国政府のために 
河野洋平
ロシア連邦政府のために
I・イワノフ