科学技術協力に関する日本国政府とロシア連邦政府との間の協定
科学技術協力に関する日本国政府とロシア連邦政府との間の協定
日本国政府及びロシア連邦政府(以下「双方」という。)は、
科学技術の分野における協力が両国民の相互理解を強化し、両国及び全人類のために科学技術の進歩を促進することを認識し、
科学技術の分野における協力が両国間の関係において重要な位置を占めていることにかんがみ、
千九百七十三年十月十日に署名された科学技術協力に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定の下で両国間の科学技術の分野における協力が成功裡に発展してきたことを認識し、
科学技術の分野における両国間の協力を新たな政治、経済及び社会の状況に合致させることを希望し、
科学技術の分野における協力の発展及び拡大のために引き続き努力を行うことを決意し、
次のとおり協定した。
第一条
双方は、平和的目的のため、平等及び相互利益の原則に基づき、相互に合意される科学技術の分野における協力を発展させる。
第二条
この協定の下での協力は、以下の形態で行うことができる。
1 学者及び専門家の交換
2 研究開発に関する政策、慣行及び法令に関する情報の交換
3 相互に関心のある分野における共同セミナー、会議、シンポジウム及び展示会の開催
4 学者及び専門家の育成及び技能向上
5 合意された協力計画及び事業の実施
6 技術交流
7 双方により合意されるその他の形態
第三条
1 双方は、研究所及び大学を含む国の科学技術に関する機関その他の団体並びに個人の間の交流及び協力の発展をできる限り奨励し、促進する。
2 この協定に基づく協力活動の参加者は、研究所、大学その他の国の科学技術に関する機関であって、この協定の実施に係る協力活動に参加し、この協定に定める条件を受け入れるものとする。
3 双方は、この協定に基づく協力活動に関し、適当な場合には、その他の団体及び個人の参加を認めることができる。
第四条
この協定の下での特定の協力活動の形態、細目及び手続を定める実施取極は、双方の間又は国の科学技術に関する機関の間で行うことができる。
第五条
この協定の下での協力は、利用可能な資金の範囲内で、それぞれの国において適用可能な法令、規則及び手続に従って実施される。
第六条
1 双方は、この協定を効果的に実施するために、日露科学技術協力委員会(以下「委員会」という。)を設置するものとし、委員会の共同議長は、双方からそれぞれ指名される。委員会の任務は、次のとおりとする。
(1) 両国間の科学技術協力の実施のための最も良好な環境の醸成について勧告し及び提案することを検討し、調整すること。
(2) この協定に基づく協力活動の現状及び成果を分析し、討議すること。
(3) この協定の下での優先的な協力分野を決定し、協力計画を作成すること。
(4) この協定に基づく協力を発展させるため、及び協力活動の効率性を向上させるための措置を検討すること。
(5) この協定の実施に関するその他の事項を討議すること。
2 委員会は、外交上の経路を通じて決定される日に、日本国又はロシア連邦において交互に会合する。
3 委員会の会合が開催されていない期間中は、委員会の活動範囲に含まれる事項は、外交上の経路を通じて交換される委員会の共同議長間の書簡により検討されることができる。
第七条
1 双方及びこの協定に基づく協力活動の参加者のいずれも、この協定に基づく協力活動から生ずる科学的及び技術的情報であって、知的所有権又は商業上の秘密である情報ではないものを、一般の利用に供することができる。
2 双方は、自国の法令並びに日本国及びロシア連邦が締結している関係条約に従って、次のことを確保する。
A この協定に基づく協力活動から生ずる知的所有権及び商業上の秘密である情報の十分かつ効果的な保護
B この協定に基づく協力活動の過程で使用されるために提供される過去に生じた知的所有権及び商業上の秘密である情報の十分かつ効果的な保護
双方は、必要に応じ、この目的のために相互に協議する。
3 この協定の適用上、「商業上の秘密である情報」とは、以下のすべての条件に合致するものをいう。
(1) 所有者により秘密とされていること。
(2) 一般的に知られておらず、又は他の情報源から公然に入手することができないこと。
(3) 所有者により、秘密に保持することに関する義務を負わせることなしに他の者の利用に供されていないこと。
(4) 秘密に保持することに関する義務を負うことなしに受領者の保有するところとなっていないこと。
4 この協定に基づく協力活動から生ずる知的所有権及び商業上の秘密である情報の使用及び譲渡については、当該協力活動の参加者間で合意する。
5 この協定に基づく協力活動から生ずる知的所有権の配分については、当該協力活動の開始に先立ち当該協力活動のそれぞれの参加者の貢献度を考慮して当該参加者間で合意する。
6 知的所有権及び商業上の秘密である情報の取扱いに関し、この協定に基づく協力活動の参加者間に生ずる問題は、原則として、当該参加者間の協議により解決される。当該協議により解決することができない問題は、委員会に提起することができる。委員会における協議の結果問題が解決しない場合には、当該協力活動は停止される。
第八条
この協定のいかなる規定も、日本国及びロシア連邦が締結している他の条約に関する両国の権利及び義務に影響を及ぼすものではない。
第九条
1 この協定は、署名の日に効力を生ずる。この協定は、五年間効力を有し、当該期間の終了の日の六箇月前までに、いずれか一方の政府が他方の政府に対し書面によりこの協定を終了させる意思を通告しない限り、自動的に無期限に延長される。その後は、いずれの政府も、他方の政府に対し、この協定を終了させる意思を書面により通告することができるものとし、その場合には、この協定は、そのような通告が行われた日から六箇月後に終了する。
2 この協定の終了は、この協定に基づいて行われ、かつ、この協定の終了の時までに履行を完了していないいかなる協力活動の実施にも影響を及ぼすものではない。
第十条
1 千九百七十三年十月十日に署名された科学技術協力に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定は、この協定が効力を生ずる日に日本国とロシア連邦との間の関係において終了する。
2 千九百七十三年十月十日に署名された科学技術協力に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定の下で作成され、かつ、その終了の時点で履行を完了していない科学技術協力計画は、この協定の条件の下で実施される。
二千年九月 日に東京で、ひとしく正文である日本語及びロシア語により本書二通を作成した。
日本国政府のために 河野洋平
ロシア連邦政府のために アレクサンドル・ニコラエヴィッチ・ドンドゥコフ