漁業に関する日本国と大韓民国との間の協定
漁業に関する日本国と大韓民国との間の協定
日本国及び大韓民国は、海洋生物資源の合理的な保存及び管理並びに最適利用の重要性を認識し、千九百六十五年六月二十二日に東京で署名された日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定を基礎として維持されてきた両国の間の漁業の分野における協力関係の伝統を想起し、両国が千九百八十二年十二月十日に作成された海洋法に関する国際連合条約(以下「国連海洋法条約」という。)の締約国であることに留意し、国連海洋法条約を基礎として、両国の間に新しい漁業秩序を確立し、両国の間の漁業の分野における協力関係を更に発展させることを希望して、次のとおり協定した。
第一条
この協定は、日本国の排他的経済水域及び大韓民国の排他的経済水域(以下「協定水域」という。)に適用する。
第二条
各締約国は、互恵の原則に立脚して、この協定及び自国の関係法令に従い、自国の排他的経済水域において他方の締約国の国民及び漁船が漁獲を行うことを許可する。
第三条
1 各締約国は、自国の排他的経済水域における他方の締約国の国民及び漁船の漁獲が認められる魚種、漁獲割当量、操業区域その他の操業に関する具体的な条件を毎年決定し、その決定を他方の締約国に書面により通報する。
2 各締約国は、1の決定を行うに当たり、第十二条の規定に基づいて設置される日韓漁業共同委員会の協議の結果を尊重し、及び自国の排他的経済水域における海洋生物資源の状態、自国の漁獲能力、相互入会いの状況その他の関係する要因を考慮する。
第四条
1 各締約国の権限のある当局は、他方の締約国から前条に規定する決定について書面による通報を受けた後、他方の締約国の排他的経済水域において漁獲を行うことを希望する自国の国民及び漁船に対する許可証の発給を他方の締約国の権限のある当局に申請する。当該他方の締約国の権限のある当局は、この協定及び漁業に関する自国の関係法令に従って、この許可証を発給する。
2 許可を受けた漁船は、許可証を操舵室の見やすい場所に掲示し、及び漁船の標識を明確に表示して操業する。
3 各締約国の権限のある当局は、許可証の申請及び発給、漁獲実績に関する報告、漁船の標識並びに操業日誌の記載に関する規則を含む手続規則を他方の締約国の権限のある当局に書面により通報する。
4 各締約国の権限のある当局は、入漁料及び許可証の発給に関する妥当な料金を徴収することができる。
第五条
1 各締約国の国民及び漁船は、他方の締約国の排他的経済水域において漁獲を行うときには、この協定及び漁業に関する他方の締約国の関係法令を遵守する。
2 各締約国は、自国の国民及び漁船が他方の締約国の排他的経済水域において漁獲を行うときには、第三条の規定に従い他方の締約国が決定する他方の締約国の排他的経済水域における操業に関する具体的な条件及びこの協定の規定を遵守するよう、必要な措置をとる。この措置は、他方の締約国の排他的経済水域における自国の国民及び漁船に対する臨検、停船その他の取締りを含まない。
第六条
1 各締約国は、他方の締約国の国民及び漁船が自国の排他的経済水域において漁獲を行うときには、第三条の規定に従い自国が決定する自国の排他的経済水域における操業に関する具体的な条件及びこの協定の規定を遵守するよう、国際法に従い、自国の排他的経済水域において必要な措置をとることができる。
2 各締約国の権限のある当局は、1の措置として、他方の締約国の漁船及びその乗組員を拿捕し又は抑留した場合には、とられた措置及びその後科された罰について、外交上の経路を通じて他方の締約国に迅速に通報する。
3 拿捕され又は抑留された漁船及びその乗組員は、適切な担保金又はその提供を保証する書面を提供した後に速やかに釈放される。
4 各締約国は、漁業に関する自国の関係法令に定める海洋生物資源の保存措置その他の条件を他方の締約国に遅滞なく通報する。
第七条
1 各締約国は、次の点を順次に直線により結ぶ線より自国側の協定水域において漁業に関する主権的権利を行使するものとし、第二条から前条までの規定の適用上もこの水域を自国の排他的経済水域とみなす。
(1) 北緯三十二度五十七・〇分、東経百二十七度四十一・一分の点 (2) 北緯三十二度五十七・五分、東経百二十七度四十一・九分の点 (3) 北緯三十三度一・三分、東経百二十七度四十四・〇分の点 (4) 北緯三十三度八・七分、東経百二十七度四十八・三分の点 (5) 北緯三十三度十三・七分、東経百二十七度五十一・六分の点 (6) 北緯三十三度十六・二分、東経百二十七度五十二・三分の点 (7) 北緯三十三度四十五・一分、東経百二十八度二十一・七分の点 (8) 北緯三十三度四十七・四分、東経百二十八度二十五・五分の点 (9) 北緯三十三度五十・四分、東経百二十八度二十六・一分の点 (10) 北緯三十四度八・二分、東経百二十八度四十一・三分の点 (11) 北緯三十四度十三・〇分、東経百二十八度四十七・六分の点 (12) 北緯三十四度十八・〇分、東経百二十八度五十二・八分の点 (13) 北緯三十四度十八・五分、東経百二十八度五十三・三分の点 (14) 北緯三十四度二十四・五分、東経百二十八度五十七・三分の点 (15) 北緯三十四度二十七・六分、東経百二十八度五十九・四分の点 (16) 北緯三十四度二十九・二分、東経百二十九度〇・二分の点 (17) 北緯三十四度三十二・一分、東経百二十九度〇・八分の点 (18) 北緯三十四度三十二・六分、東経百二十九度〇・八分の点 (19) 北緯三十四度四十・三分、東経百二十九度三・一分の点 (20) 北緯三十四度四十九・七分、東経百二十九度十二・一分の点 (21) 北緯三十四度五十・六分、東経百二十九度十三・〇分の点 (22) 北緯三十四度五十二・四分、東経百二十九度十五・八分の点 (23) 北緯三十四度五十四・三分、東経百二十九度十八・四分の点 (24) 北緯三十四度五十七・〇分、東経百二十九度二十一・七分の点 (25) 北緯三十四度五十七・六分、東経百二十九度二十二・六分の点 (26) 北緯三十四度五十八・六分、東経百二十九度二十五・三分の点 (27) 北緯三十五度一・二分、東経百二十九度三十二・九分の点 (28) 北緯三十五度四・一分、東経百二十九度四十・七分の点 (29) 北緯三十五度六・八分、東経百三十度七・五分の点 (30) 北緯三十五度七・〇分、東経百三十度十六・四分の点 (31) 北緯三十五度十八・二分、東経百三十度二十三・三分の点 (32) 北緯三十五度三十三・七分、東経百三十度三十四・一分の点 (33) 北緯三十五度四十二・三分、東経百三十度四十二・七分の点 (34) 北緯三十六度三・八分、東経百三十一度八・三分の点 (35) 北緯三十六度十・〇分、東経百三十一度十五・九分の点
2 各締約国は、1の線より他方の締約国側の協定水域において漁業に関する主権的権利を行使しないものとし、第二条から前条までの規定の適用上もこの水域を他方の締約国の排他的経済水域とみなす。
第八条
第二条から第六条までの規定は、協定水域のうち次の(1)及び(2)の水域には適用しない。
(1) 次条1に定める水域 (2) 次条2に定める水域
第九条
1 次の各点を順次に直線により結ぶ線によって囲まれる水域においては、附属書Ⅰの2の規定を適用する。
(1) 北緯三十六度十・〇分、東経百三十一度十五・九分の点 (2) 北緯三十五度三十三・七五分、東経百三十一度四十六・五分の点 (3) 北緯三十五度五十九・五分、東経百三十二度十三・七分の点 (4) 北緯三十六度十八・五分、東経百三十二度十三・七分の点 (5) 北緯三十六度五十六・二分、東経百三十二度五十五・八分の点 (6) 北緯三十六度五十六・二分、東経百三十五度三十・〇分の点 (7) 北緯三十八度三十七・〇分、東経百三十五度三十・〇分の点 (8) 北緯三十九度五十一・七五分、東経百三十四度十一・五分の点 (9) 北緯三十八度三十七・〇分、東経百三十二度五十九・八分の点 (10) 北緯三十八度三十七・〇分、東経百三十一度四十・〇分の点 (11) 北緯三十七度二十五・五分、東経百三十一度四十・〇分の点 (12) 北緯三十七度八・〇分、東経百三十一度三十四・〇分の点 (13) 北緯三十六度五十二・〇分、東経百三十一度十・〇分の点 (14) 北緯三十六度五十二・〇分、東経百三十度二十二・五分の点 (15) 北緯三十六度十・〇分、東経百三十度二十二・五分の点 (16) 北緯三十六度十・〇分、東経百三十一度十五・九分の点
2 次の各線によって囲まれる水域であって、大韓民国の排他的経済水域の最南端の緯度線以北の水域においては、附属書Ⅰの3の規定を適用する。
(1)北緯三十二度五十七・〇分、東経百二十七度四十一・一分の点と北緯三十二度三十四・〇分、東経百二十七度九・〇分の点を結ぶ直線 (2)北緯三十二度三十四・〇分、東経百二十七度九・〇分の点と北緯三十一度〇・〇分、東経百二十五度五十一・五分の点を結ぶ直線 (3)北緯三十一度〇・〇分、東経百二十五度五十一・五分の点から始まり北緯三十度五十六・〇分、東経百二十五度五十二・〇分の点を通過する直線 (4)北緯三十二度五十七・〇分、東経百二十七度四十一・一分の点と北緯三十一度二十・〇分、東経百二十七度十三・〇分の点を結ぶ直線 (5)北緯三十一度二十・〇分、東経百二十七度十三・〇分の点から始まり北緯三十一度〇・〇分、東経百二十七度五・〇分の点を通過する直線
第十条
両締約国は、協定水域における海洋生物資源の合理的な保存及び管理並びに最適利用に関し相互に協力する。この協力は、当該海洋生物資源の統計学的な情報及び水産業資料の交換を含む。
第十一条
1 両締約国は、それぞれ自国の国民及び漁船に対して、航行に関する国際法規の遵守、両締約国の漁船間の操業の安全及び秩序の維持並びに海上における両締約国の漁船間の事故の円滑かつ迅速な解決のため、適切な措置をとる。
2 1に掲げる目的のため、両締約国の関係当局は、できる限り緊密に相互に連絡し、及び協力する。
第十二条
1 両締約国は、この協定の目的を効率的に達成するため、日韓漁業共同委員会(以下「委員会」という。)を設置する。
2 委員会は、両締約国の政府がそれぞれ任命する一人の代表及び一人の委員で構成されるものとし、必要な場合には、専門家で構成される下部機構を設置することができる。
3 委員会は、毎年一回、両国で交互に開催するものとし、両締約国が合意する場合には、臨時に開催することができる。2の下部機構が設置される場合には、当該下部機構は、委員会の両締約国の政府の代表の合意により、いつでも開催することができる。
4 委員会は、次の事項に関し協議し、協議の結果を両締約国に勧告する。両締約国は、委員会の勧告を尊重する。
(1) 第三条に規定する操業に関する具体的な条件に関する事項 (2) 操業の秩序の維持に関する事項 (3) 海洋生物資源の実態に関する事項 (4) 両国の間の漁業の分野における協力に関する事項 (5) 第九条1に定める水域における海洋生物資源の保存及び管理に関する事項 (6) その他この協定の実施に関連する事項
5 委員会は、第九条2に定める水域における海洋生物資源の保存及び管理に関する事項に関し協議し、決定する。
6 委員会のすべての勧告及び決定は、両締約国の政府の代表の合意によってのみ行う。
第十三条
1 この協定の解釈及び適用に関する両締約国間の紛争は、まず、協議によって解決する。
2 1にいう紛争が協議により解決されない場合には、そのような紛争は、両締約国の同意により、次に定める手続に従い解決する。
(1) いずれか一方の締約国の政府が他方の締約国の政府から紛争の原因が記載された当該紛争の仲裁を要請する公文を受領した場合においてその要請に応ずる旨の通報を他方の締約国の政府に対して行うときには、当該紛争は、当該通報が受領された日から三十日の期間内に各締約国政府が任命する各一人の仲裁委員と、こうして選定された二人の仲裁委員が当該期間の後三十日以内に合意する第三の仲裁委員又は当該期間の後三十日以内にその二人の仲裁委員が合意する第三国の政府が指名する第三の仲裁委員との三人の仲裁委員から構成される仲裁委員会に決定のため付託される。ただし、第三の仲裁委員は、いずれの一方の締約国の国民であってもならない。
(2) いずれか一方の締約国の政府が(1)に定める期間内に仲裁委員を任命しなかった場合又は第三の仲裁委員若しくは第三国について(1)に定める期間内に合意されなかった場合には、仲裁委員会は、いずれかの場合における所定の期間の後三十日以内に各締約国政府が選定す る国の政府が指名する各一人の仲裁委員とそれらの政府が協議により決定する第三国の政府が指名する第三の仲裁委員をもって構成される。
(3) 各締約国は、自国の政府が任命した仲裁委員又は自国の政府が選定する国の政府が指名した仲裁委員に関する費用及び自国の政府が仲裁に参加する費用をそれぞれ負担する。第三の仲裁委員がその職務を遂行するための費用は、両締約国が折半して負担する。
(4) 両締約国政府は、この条の規定に基づく仲裁委員会の多数決による決定に服する。
第十四条
この協定の附属書Ⅰ及び附属書Ⅱは、この協定の不可分の一部を成す。
第十五条
この協定のいかなる規定も、漁業に関する事項以外の国際法上の問題に関する各締約国の立場を害するものとみなしてはならない。
第十六条
1 この協定は、批准されなければならない。批准書は、できる限り速やかにソウルで交換されるものとする。この協定は、批准書の交換の日に効力を生ずる。
2 この協定は、その効力発生の日から三年間効力を有する。その後は、いずれの一方の締約国も、この協定を終了させる意思を他方の締約国に対し書面により通告することができるものとし、この協定は、そのような通告がなされた日から六箇月後に終了し、そのようにして終了しない限り引き続き効力を有する。
第十七条
千九百六十五年六月二十二日に東京で署名された日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定は、この協定の効力発生の日に効力を失う。
以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当な委任を受け、この協定に署名した。
千九百九十八年十一月二十八日に鹿児島で、ひとしく正文である日本語及び韓国語により本書二通を作成した。
日本国のために 高村正彦 大韓民国のために 洪淳瑛