北海道洞爺湖サミットの概要

平成20年7月9日

  1. 日程・場所
    34回目を迎えたサミット(主要国首脳会議)は、7月7日(月曜日)~9日(水曜日)まで北海道洞爺湖にて、福田総理の議長のもと開催された(我が国がサミットを主催するのは、平成12年の九州・沖縄サミット以来8年ぶり。)。
    今次サミットは、7日のアフリカ諸国等とのアウトリーチ会合に始まり、8日及び9日、以下の議事日程に従い議論が行われ、9日午後、総理の議長国記者会見をもって閉幕した。

    7日 拡大会合

    (1) ワーキング・ランチ及び午後:アフリカ首脳等との拡大会合(注1)

    (2) G8社交ディナー

    (注1) G8、アルジェリア、エチオピア、ガーナ、ナイジェリア、セネガル、南アフリカ、タンザニア、アフリカ連合委員長、国連事務総長、世銀総裁

    8日 G8会合
    (1) 午前:世界経済
    (2) ワーキング・ランチ:環境・気候変動
    (3) 午後:開発・アフリカ(食料価格高騰問題を含む)
    (4) ワーキング・ディナー:政治問題

    9日 拡大会合および主要経済国首脳会合(MEM)

    (1) ワーキング・セッション:拡大会合(注2)

    (2) 午前:主要経済国首脳会合(MEM)(注3)

    (3) ワーキング・ランチ:拡大会合(注3)

    (4) 福田総理の議長国記者会見(於・国際メディアセンター)

    (注2) G8、ブラジル、中国、インド、メキシコ、南アフリカ

    (注3) G8、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、メキシコ、韓国、南アフリカ、国連事務総長、世銀総裁、IMF専務理事、OECD事務総長、IEA事務局長

  2. G8会合の概要

    7月8日、世界経済、環境・気候変動、開発・アフリカ及び政治問題を主要議題として、G8首脳による議論が行われた。

    (1)世界経済

    冒頭、総理より、世界経済の長期的見通しには前向きであるとしつつ、現下の経済情勢に鑑み、G8として、1)インフレ圧力への懸念表明、2)石油価格高騰に対し、需給バランスの改善と市場透明性向上のための具体的な行動の必要性、3)保護主義への抵抗(ドーハ・ラウンド妥結に向けた閣僚会合の成功の後押しを含む)といったメッセージを打ち出すべき旨述べた。
    これに対し、各国より、現下の経済情勢及び今後の見直しについておおむね肯定的な評価が示され、原油・食料価格高騰への対応、金融市場の一層の安定化、保護主義を防ぐことの必要性につき意見の一致がみられた。特に、石油価格高騰への対応に関しては、産消国間対話にも資するものとして、エネルギー効率と新技術に焦点を当てたエネルギーフォーラムを開催するとのイニシアティブが打ち出された(その後、総理より第1回会合を今秋にも開催したいと提案、各国の賛同を得た)。
    また、ドーハ・ラウンドについては、交渉の成功裡の妥結の重要性について意見の一致を見た。

    (2)環境・気候変動

    (イ)冒頭、総理より、化石燃料への依存を断ち切り、温暖化、資源枯渇等の課題に対処すべく、低炭素社会へ舵を切れるかどうかがかかった、重要なサミットである旨述べた。

    (ロ)長期目標
    G8は、2050年までに世界全体の排出量の少なくとも50%削減を達成する目標を、UNFCCCのすべての締約国と共有し、採択することを求めることで合意した。

    (ハ)中期目標
    G8は、全ての先進国間で排出量の絶対的削減を達成するため、野心的な中期の国別総量目標を実施することで合意した。

    (ニ)セクター別アプローチ
    セクター別アプローチについては、中期目標の策定と各国の排出削減を進める上で有用な手法との評価を得た。

    (ホ)気候投資基金
    G8首脳は、途上国の努力を支援するための世銀の「気候投資基金」設立を歓迎、さらに多くの国の参加に期待を表明した。

    (3)開発・アフリカ

    (イ)冒頭、総理より、ミレニアム開発目標(MDGs)の達成に向け、特に保健分野に重点を置き、新たな協力を打ち出す重要性及び食料価格高騰問題に対する国際社会の取組みの方向性を示す必要性につき述べた。

    (ロ)開発総論
    MDGs達成に向けた中間年にあたり、G8として目標達成に向けた決意表明がなされるとともに、対アフリカODAを2011年以降も増加させる必要性につき言及した。

    (ハ)保健
    G8の過去のコミットメントの履行状況を示す一覧表とともに提出されたG8保健専門家報告書を歓迎するとともに、保健分野の行動原則を盛り込んだ「洞爺湖行動指針」を立ち上げた。
    また、G8として昨年のハイリゲンダム・サミットで合意した保健分野支援のための600億米ドル供与については、今後5年間で供与するとの目標に向けて取り組むことに合意した。
    加えて、マラリア対策に関し、他の諸国等と協力して、2010年までに蚊帳1億張を提供することを目指すことに合意した。

    (ニ)アフリカ
    第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)の重要な貢献を歓迎。また、ジンバブエ情勢につき議論が行われるとともに、アフリカが経済成長を続ける上でのガバナンスの重要性につき認識が共有された。

    (ホ)食料価格高騰
    冒頭、総理より、食料価格高騰の問題に対しては、緊急対応に加え、中長期的観点の政策が不可欠、本問題に関する支援の過半を提供し、世界の食料需給に大きなシェアを占めるG8が、国際社会の取り組みの方向性を示す必要があるとして、G8専門家グループの設置等につき発言。これに関し、食料価格高騰の複合要因と必要な対策につき議論した。

    (4)政治問題

    (イ)北朝鮮
    総理より、1)北朝鮮が提出した申告の内容をしっかりと検証していくこと、2)北朝鮮の完全な核放棄の実現に向けて粘り強く取り組むこと、3)拉致問題を含む日朝関係を進展させることが必要である旨発言。これに対し、各国首脳より理解と支持が得られた。

    (ロ)イラン
    各国首脳より、イランの核開発に対する強い懸念を表明。また、「対話」と「圧力」を並行して進めることの重要性について一致した。

    (ハ)アフガニスタン、中東和平
    G8としてのコミットメントを強化することで一致した。

    (ニ)スーダン
    現状への懸念を共有。スーダン政府等に対する働きかけを強めるとともに、国連による平和活動等を支援していく必要性につき一致した。

    (ホ)ミャンマー
    サイクロン被害に関し、ミャンマーに対し支援要員受入れの更なる改善を求めること、また、すべての関係者を含む対話と政治プロセスの進展を求めることの必要性につき一致した。

    (ヘ)ジンバブエ
    各国首脳より現状への深刻な懸念が表明されるとともに、「ジンバブエに関するG8首脳共同声明」を発出した。

  3. 成果文書

    議論を踏まえ、上記主要テーマからなる「北海道洞爺湖サミット首脳宣言」を発出するとともに、「世界の食料安全保障」「テロ対策」「ジンバブエ」に関する独立の首脳文書を発出した。また、首脳会合の議論の内容をとりまとめた「議長総括」を発表した。

  4. 拡大会合の概要

    サミット1日目の7月7日にはアフリカ諸国首脳との拡大会合が、3日目の9日には主要経済国首脳会合(MEM)及び同会合出席国首脳による拡大会合等がそれぞれ開かれた(参加国・機関については、1.参照)。

    (1)アフリカ諸国首脳との拡大会合(7日昼・午後)

    (イ)冒頭、総理より、本年5月に横浜で開催された第4回アフリカ開発会議(TICAD Ⅳ)の成果について報告し、アフリカ側からは、TICAD Ⅳは大きな成功であったとして、特に日本の対アフリカ向けODA倍増、インフラ整備等のイニシアティブが評価された。

    (ロ)引き続き、食料価格高騰を含むグローバルな課題につき議論がなされ、食料価格高騰に関し、アフリカが食料自給を実現できるように、技術移転、種籾、肥料等の提供により農業生産を支援してほしいとの要請があった。G8側からも各種対策・支援策につき説明があった。原油価格の高騰に関し、アフリカ側よりその深刻な影響への懸念が繰り返し表明された。また、原油価格の高騰により影響を受ける国への支援要請もあった。環境問題に関しては、特に適応との関係での支援が要請された。新しいエネルギーにアクセスできるよう、クールアース・パートナーシップ等を通じた支援への期待が表明された。この点に関連し、総理より、気候投資基金の設立を紹介した。

    (ハ)ミレニアム開発目標(MDGs)の達成に向けては、アフリカ諸国より、これまでG8で様々なコミットメントがなされたが、実施が十分になされていないとの指摘があった。G8側からも、フォローアップの重要性に同意する意見があり、具体的なフォローアップのあり方については今後検討していくこととなった。

    (ニ)アフリカのガバナンスの問題に関連し、現下のジンバブエの状況につき懸念する意見が表明された。アフリカ首脳側からは、AU首脳会議決議や、南部アフリカ開発共同体(SADC)による調停努力などアフリカ側の取り組みについて説明があった。

    (2)9日朝の拡大会合

    福田総理より、昨年開始された、G8と新興経済国(ブラジル、中国、インド、メキシコ、南アフリカ)との対話の枠組であるハイリゲンダム・プロセスにつき説明がなされ、これを受けて、メルケル独首相より、対話の進捗状況につき報告があった。新興国側首脳からは、ハイリゲンダム・プロセスにより過去1年間対話をした結果、相互理解の深化及び関係の改善が図られたとの見方が強調された。

    また、原油価格高騰についての懸念が表明され、新興国側より、総じてその投機的側面を発言する国も多くあった。食料価格については、G8側首脳より、ドーハ・ラウンド交渉の成功裏妥結が重要であること、新興国側よりは、農業交渉に関し、補助金の削減・撤廃の必要性につき指摘があるなど、突っ込んだ議論が行われた。

    (3)主要経済国首脳会合(MEM)

    (イ) 冒頭総理より、バリの国連気候変動会議で次期枠組に関する交渉プロセスが立ち上げられた後初めて、主要経済国の首脳が一堂に会するこの機会に、一致した意見を宣言として発表し、実効性ある2013年以降の枠組みを構築するための国連の交渉に弾みをつけたいとし、長期目標、中期目標等テーマについて、議論したい旨述べた。
    気候変動の解決の為に、共通だが差異ある責任原則に沿いつつ、地球規模で更なる行動をとることで意見の一致がみられ、各国より真剣に努力する姿勢が示された。
    経済成長を犠牲にすることなく気候変動に取り組むことを目指すべきとの意見が多く出されるとともに、開発途上国からは先進国からの支援の重要性が指摘された。

    (ロ) 長期目標
    G8が昨8日に示した、2050年までに世界全体の排出量の少なくとも50%削減を達成する目標というビジョンを共有する呼びかけに対して、インドネシア、韓国及び豪州より評価し賛同する発言があった。全参加国間で、世界全体の長期目標を採択することが望ましいと信じる旨合意した。

    (ハ) 中期目標
    先進国として、中期の国別総量目標を実施、排出量の絶対的削減を達成することを約束するとともに、途上主要経済国として、対策をとらない排出シナリオからの離脱を達成するために、国毎の適切な緩和の行動を遂行することで合意した。

    (ニ) 会合の継続
    イタリアからの申し出を受け、総理から、本会合を今後も続けることを提案し、来年のイタリア・サミットの機会に再び開催することで賛同を得た。

    (4)9日の拡大ワーキング・ランチ

    原油価格の上昇を含む世界経済、食料価格高騰、開発といった諸課題につき議論。

    世界経済については、世界経済の持続的成長の確保のためのG8と途上国との政策協調の推進、金融市場安定のための取組、WTOドーハ・ラウンドの早期妥結、途上国におけるインフレ対策の強化の重要性が指摘された。特に、原油価格の上昇については、供給面での増産及び投資拡大、需要面での代替エネルギー推進やエネルギー効率改善に加え、価格高騰要因の分析の促進の必要性が強調された。

    食料価格高騰については、特に貧しい人々に大きな打撃を与えている本問題への対応を一致団結して打ち出すべきとの共通の意思が確認された。また、農業分野の援助、投資、国内での取組みを強化すべきとの点で一致した。開発の観点からは、特に小規模農家を重点的に支援すべきと強調された。また、輸出規制の自粛、バイオ燃料の持続可能な生産・利用、投機的資金による影響への対処の必要性につき指摘があった。

    最後に、ブッシュ米大統領より、福田総理の議長采配に対し感謝の言葉があり、参加首脳よりも、拍手をもって謝意の表明があった。

  5. 2009年G8サミット

    2009年にイタリアでG8サミットを開催することを歓迎する旨が「議長総括」に盛り込まれた。