トロント大学G8リサーチ・グループによる北海道洞爺湖サミットの評価概要

平成20年7月11日

  7月10日(木)、トロント大学G8リサーチ・グループ※1 が北海道洞爺湖サミットの評価レポートを発表したところ、各分野の評価、評価の高かった気候変動及び福田総理のパフォーマンスに関する記述の概要は以下の通り。

1.各分野の評価

総合評価78点は、過去のサミットと比較しても相当高い評価(それ以上の評価を得たサミットは過去2回のみ)。
 

総合評価

B+(78点)

環境・気候変動

A

主要経済国首脳会合

B

世界経済・エネルギー

C-

開発・アフリカ

A-

食料安全保障

B+

政治問題

B-

ジンバブエ

A-

テロ対策

C+

G8拡大

B+

福田総理の采配

A(85点)

 

2.気候変動

洞爺湖の最重要議題である気候変動についてはA評価。
  米露も含めたG8各国が、主要排出国が温室効果ガス排出削減に取り組まなければならないことを確認した上、 2050年までに排出を半減させるという長期目標に合意。日本提案のセクター別アプローチが、目標達成の有効な手段であることを確認。 この長期目標はさまざまな短期的および中期的な目標によって補強される。
  他の主要排出国の合意を得るべく、資金面や貿易体制などにおいてG8各国は主要排出国に対してさまざまな支援を行ってきた。 開発途上国は主要経済国会合(MEM)を通して、G8の要請通り、これまで以上に気候変動問題の解決にコミットしていく姿勢を示した。
  このコミットメントを有効なものにするべく、MEM首脳宣言において、開発途上国はG8の短期的および中期的な計画と両立可能な行動を約束した。開発途上 国は、地球規模での排出削減の必要性を認識し、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の野心的なシナリオを真剣に検討することを強く促した。
  G8とMEMは、大筋では同じ原則で動いており、主要な相違点は3点しかない。それはMEMが、(1)国連でのプロセス、(2)資金・技術移転・能力開発を強調し、(3)「2050年までに半減」という長期目標を拒絶していることである。
  一連の動きの中で、(1)重要な排出ゼロの源泉としての原子力エネルギーについてはわずかな進歩しか見られなかったこと、(2)クリーン・コールの使用に 関して努力が示されなかったこと、(3)再生可能エネルギーの利用促進に関し、特別な方策が講じられなかったこと、(4)省エネルギーの必要性に関して、 通り一遍の同意がなされたにすぎないことなどは批判の対象となり得よう。 2050 年までに半減という長期目標についてG8各国がそれぞれ異なる基準年を念頭に置いていることを批判する向きもあるが、1990年という基準に科学的な根拠 はないし、日本は1990年から2008年までの増加分以上の追加的な削減も合わせて60~80%削減するとしているのであるから、有効な批判とはいえな い。それに、米国やO5に1990年を基準年とすることを受け入れろというのも無理な話である。

3.福田総理のパフォーマンス

  福田総理は真の世界的リーダーである。いわゆるねじれ国会の運営や支持率の急落にも苦しめられたが、リスクを恐れずにサミットの主要なテーマであった気候変動問題について成功を収めた。
  開発・アフリカについても、リーダーシップを発揮。
中国、韓国、インドネシア、豪州などのアジアにおけるリーダーシップは、TICAD IV、サミット初日のアフリカ・アウトリーチ、保健、食料安全保障、コンプライス・モニタリングに関するアフリカ支援や、民主主義や人命が危機に瀕しているジンバブエ問題の解決を通して、アフリカへと拡大された。

(了)


※1 同グループは、G8サミットの構造、論点、メンバー国について情報分析、研究を専門的に行う世界でも数少ない研究機関であり、毎年サミット直前には開催国 でG8サミットに関するシンポジウムを開催している(本年は7月3日(木)に東京にて開催し、当省からは河野外務審議官が出席)。