■G8北海道洞爺湖サミット首脳宣言 (骨子)
G8北海道洞爺湖サミット首脳宣言
(骨子)
世界経済
1.世界の経済成長
- 我々の経済の長期的強靱性及び将来の世界経済成長に引き続き肯定的。
- 世界のインフレ圧力を高める原油・食料等の価格上昇に強い懸念を表明。世界経済の安定と成長を確保するため、個別にあるいは共同して、適切な行動を取っていく。
- 民間部門、国内監督機関及び国際機関に対し、金融システム強化のため、全ての金融安定化フォーラム(FSF)の勧告を早急に実施するよう求める。
- 自国、新興市場国及び産油国における健全なマクロ経済運営および構造政策を通じた世界の不均衡の円滑な調整の促進に引き続きコミット。多額か
つ増加する経常収支黒字を有するいくつかの新興市場国の実効為替レートが必要な調整が進むように変動することが重要。パートナー国との継続的な協議を促
進。
2.貿易と投資
- 国際的な貿易・投資に対するあらゆる形態の保護主義的な圧力に抵抗。
- 野心的でバランスのとれた包括的なWTOドーハ・ラウンドの成功裡の妥結は決定的に重要。喫緊の課題として交渉妥結に向け取り組む決意を改めて表明。すべてのWTO加盟国に対し実質的な貢献を行うよう呼びかける。7月21日から始まる閣僚会合招集を歓迎。
3.エネルギー安全保障
- 世界経済にリスクをもたらしている原油価格の急激な上昇を強く懸念。供給面では短期的には生産量及び精製能力の増強、中期的には上下流に亘る投資拡大努力が必要。エネルギー効率改善及びエネルギー多様化に向けた更なる努力が重要。
- エネルギー安全保障を強化するため、エネルギー効率と新技術に焦点を当てたエネルギー・フォーラムの開催を提案。
- 石油データ共同イニシアティブ(JODI)を引き続き強く支持。歪曲されない形の価格シグナルを発出し且つ政治的圧力を受けないエネルギー市
場の重要性を強調。G8財務大臣による原油・一次産品価格高騰分析に関するIMF及びIEAへの要請を歓迎。商品先物市場の透明性向上に向けた各国当局間
の更なる協力を奨励。
4.天然資源
- 採取産業透明性イニシアティブ等を通じた採取分野での透明性、説明責任、良い統治の向上及び持続可能な経済成長の促進。
5.知的財産権保護
- 模倣品・海賊版対策拡充(模倣品・海賊版拡散防止条約の年内妥結に向けた交渉加速化)及び経済発展に資する効率的な知財制度への取組。
6.腐敗
- 国連腐敗防止条約やOECD外国公務員贈賄防止条約の実施促進を通じた腐敗対策の取組推進。
7.金融システムの濫用
- OECDに対し、租税回避に関する取組の強化及び2010年の報告を奨励。
8.ハイリゲンダム・プロセス
環境・気候変動
1.気候変動
気候変動と闘うために力強い指導力を発揮するという我々のコミットメントを再確認。バリで採択された決定を2009年までに国連気候変動枠組条約(UNFCCC)プロセスにおいて世界的な合意に達するための基礎として歓迎し、その成功裡の妥結にコミット。
主要経済国首脳会合によるUNFCCCに対する積極的な貢献を支持。
- 2050年までに世界全体の排出の少なくとも50%削減を達成する目標というビジョンを、UNFCCCの全締約国と共有し、かつ、この目標をUNFCCCの下での交渉において、これら諸国と共に検討し、採択することを求める。
- 自らの指導的役割を認識し、我々各国が、全ての先進国間で比較可能な努力を反映しつつ、排出量の絶対的削減を達成するため、野心的な中期の国別総量目標を実施。
- セクター別アプローチは、各国の排出削減目標を達成する上で、とりわけ有益な手法。また、エネルギー効率を向上し温室効果ガスを削減する有用な手法。
- 2009年末までに交渉される国際合意において拘束される形で、全ての主要経済国が意味ある緩和行動をコミットすることが必要。
- 国際エネルギー機関(IEA)に対して自発的なセクター別指標に関する作業の強化を要請。国際航空及び同海運セクターにおける排出の抑制又は削減についての迅速な議論の重要性を強調。
- エネルギー効率に関する中期的な、展望としての目標の設定の重要性を認識。「エネルギー効率に関する協力のための国際パートナーシップ」を設立するという決定を歓迎。
- クリーン・エネルギーを推進。再生可能エネルギーの重要性を認識。持続可能なバイオ燃料の生産と使用の重要性を強調。
- 日本の提案により3S(保障措置(核不拡散)、原子力安全、核セキュリティ)に立脚した原子力エネルギー基盤整備に関する国際イニシアティブが開始。
- 革新的技術のロードマップを策定する国際的イニシアティブを立ち上げ。環境・クリーン・エネルギー技術の研究開発への投資の増大と商業化の促進にコミット。この観点から、G8メンバーは政府の直接投資による研究開発に今後数年間にわたり毎年100億米ドル超をプレッジ。
- 気候投資基金の設立を歓迎し支持。G8メンバーは、既に約60億米ドルをこれらの基金に拠出することをプレッジしており、他のドナーからのコ
ミットメントを歓迎。G8メンバーによる様々な二国間の資金的イニシアティブを歓迎。このような資金的支援が、実効的な2013年以降の枠組への開発途上
国の積極的関与を奨励することを期待。
- 市場メカニズムは価格シグナルの提供を可能とし、民間部門に対する経済的インセンティブを与える潜在力を有する。様々な手段を各国の事情に従って促進し、経験を共有。
- WTOにおける環境関連物品及びサービスの関税・非関税障壁撤廃努力を強化。加えて、気候変動への取組に直接関係する物品・サービスの自主的な貿易障壁削減または撤廃を考慮。低炭素に貢献し得る購入・投資政策や実行等を奨励。
- グレンイーグルズ対話の最終報告書及びIEAと世銀の報告書を歓迎。
2.環境
- 違法伐採対策等を含む森林減少対策、生物多様性の保全、3R、持続可能な開発のための教育(ESD)にも取り組む。
開発・アフリカ
1.開発総論
- ミレニアム開発目標(MDGs)に向けた中間年にあたり、目標達成に向けたコミットメントを新たにする。G8の取組を再活性化するとともに、途上国の努力を奨励。
- グレンイーグルズにおけるODAのコミットメント(注)に引き続きコミット。
- (注) グレンイーグルズにおけるコミットメントの内容:
1)G8及びその他のドナーのアフリカ向けODAを2010年までに年間の総額で250億ドル増加させる。
2)OECDの推計によると、G8及びその他のドナーからすべての開発途上国へのODAは、2004年と比較して、2010年までに年間の総額で500億ドル増加することが見込まれる。
- 現行のコミットメントを超えて、対アフリカODAを2011年以降も増加させる必要性に言及。
- 民間主導の経済成長、人間の安全保障の向上、全員参加型の国際協力、新たな援助パートナーとの連携強化を推進。
- MDGsの各目標のうち、とくに保健、水、教育分野に焦点。
2.保健
- G8の過去のコミットメントの履行状況を示す一覧表とともに提出されたG8保健専門家報告書を歓迎。保健分野の行動原則を盛り込んだ「洞爺湖行動指針」を提唱。「行動指針」には、G8のコミットメントを監視するためのメカニズムが含まれる。
- 感染症対策、母子保健、保健従事者の育成を含む保健システム強化に取り組むことに合意。特に、G8としてハイリゲンダム・サミットで合意した
保健分野支援のための600億米ドル供与については、今後5年間で供与するとの目標に向けて取り組む。一部の国は、水分野を含む保健システムに対する追加
的な資金を提供する。
- アフリカ諸国において保健従事者の比率が、世界保健機関(WHO)の基準値である「1000人当たり2.3人」にまで増加するよう取り組む。
- HIV/エイズ、結核、マラリア及びポリオに関するコミットメント履行を再確認する。マラリアについては、他の利害関係者とともに、G8とし
て蚊帳1億張を提供することを2010年末までに達成することを目指すとともに、「顧みられない熱帯病」(NTD)の統制又は征圧の支援に合意。
3.水
- 水問題解決にあたり、良い循環型水資源管理は決定的に重要。
- エビアン・サミットで合意された水行動計画の実施に向け、努力を再活性化するとともに、次回サミットまでにG8水専門家により準備される進捗報告書に基づき、同行動計画を見直す。
- アフリカ及びアジア太平洋地域の水問題解決にも焦点を当てる。
4.教育
- 初等教育の完全普及を推進するとともに、初等教育と初等教育以降の教育にバランス良く取り組む必要性に言及。
- 他のドナーとともに、10億ドルと見積もられるファスト・トラック・イニシアティブ(FTI)に承認された国における資源不足に対処すべく努力。FTIを支援するG8の取組の進捗につき、来年のサミットに提出される報告書を通じて監視。
5.アフリカ
- 第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)の重要な貢献を歓迎。アフリカ諸国の意見をG8の今後の協力に反映する。
- アフリカ支援にあたっての重要な具体策として、ビジネス環境の改善、インフラ整備、農業支援、「貿易のための援助」への支出、アフリカにおける良い統治の支持、アフリカの平和と安全の促進などの諸項目に言及。
- アフリカ問題首脳個人代表(APRs)によるアフリカ進捗報告書を歓迎。今後のAPFのあり方につき議論。
政治問題
1.不拡散
- 大量破壊兵器等の拡散の危険を克服するために、多国間文書の強化を含め、あらゆる努力を行う。
- 拉致問題等の未解決の懸案事項の解決を含む2005年9月19日の共同声明の完全な実施を通じた、朝鮮半島の検証可能な非核化及び関連する六
者会合参加者間の将来の国交正常化に向けた六者会合プロセスを支持。北朝鮮による申告を歓迎しつつ、検証プロセスでの完全な協力を求める。すべての既存の
核施設の迅速な無能力化並びにすべての核兵器と既存の核計画の放棄の重要性を強調。関連する安保理決議の遵守を北朝鮮に求める。
- イランに濃縮関連活動の停止を含む累次の安保理決議の遵守を求める。EU3+3による外交努力を支持し、イランに前向きな対応を要請。日本のハイレベルでの対話を評価。
- G8の核兵器国(米露英仏)の核兵器削減措置を歓迎し、すべての核兵器国に透明な形での核兵器削減を行うよう求める。
- 大量破壊兵器・関連物質の拡散のリスクが世界的に存在することを踏まえ、グローバル・パートナーシップがかかる試練に取り組むことに合意。
- 原子力平和利用に関し、3S(核不拡散(保障措置:safeguards)、原子力安全(safety)、核セキュリティ(security))の最も高い基準にコミット。
2.国際組織犯罪
- 国際組織犯罪と闘うコミットメントを再確認。幅広い脅威に対応するための取組を強化し、関係諸国へのキャパシティ・ビルディングの支援を継続。
3.平和構築
- G8として平和構築のための努力を強化。2010年を目標に、軍、警察、文民の3分野において、世界の平和構築能力を抜本的に強化。