環境・気候変動
(仮訳)

気候変動

22.我々は、最も包括的な科学評価を提供する気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第4次評価報告書の重要性を再確認するとともに、我々の気候保護努力を導くべきである科学に基づくアプローチが継続することを奨励する。我々は、気候変動との闘いにおいて力強い指導力を発揮するとのコミットメントを再確認し、この観点から、バリにおいて採択された決定を、2009年までに国連気候変動枠組条約(UNFCCC)プロセスにおいて世界的な合意に達するための基礎として歓迎する。我々は同プロセスの成功裡の妥結にコミットしている。すべての主要経済国による約束又は行動の強化が気候変動への取組のために不可欠である。そのため、我々は、主要経済国首脳会合によるUNFCCCに対する積極的な貢献を支持する。

23.我々は、気候変動の最も深刻な結果を避けることにコミットするとともに、条約第2条の究極的な目的に整合的に、かつ経済成長及びエネルギー安全保障と両立すべき時間的枠組の中で、世界全体の温室効果ガスの濃度を安定化させる決意である。この目的の達成は、すべての主要経済国により、適切な時間的枠組の中で、世界全体の排出の増加を遅くし、止め、反転させ、また低炭素社会に移行するとの共通の決意を通してのみ可能となるであろう。我々は、2050年までに世界全体の排出量の少なくとも50%の削減を達成する目標というビジョンを、UNFCCCのすべての締約国と共有し、かつ、この目標をUNFCCCの下での交渉において、これら諸国と共に検討し、採択することを求める。その際、我々は、共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力という原則に沿って、世界全体での対応、特にすべての主要経済国の貢献によってのみこの課題に対応できることを認識する。このような長期目標に向けた実質的な進展は、とりわけ、短期的には、既存技術の展開の加速を必要とし、中長期的には、我々の持続可能な経済発展とエネルギー安全保障という目的を満たせる方法での低炭素技術の開発と展開に依っている。その点、我々は革新的な技術と慣行の開発と展開を促進する適切な措置をとることの重要性と緊急性を強調する。

24.共有のビジョンに向けて進展を図ること、及び世界全体の長期目標は、それらを達成するための中期目標と国家計画が必要である。これらの計画は、緩和と適応への多様な対処方法を反映したものであろう。セクター別アプローチは、各国の排出削減目標を達成する上で、とりわけ有益な手法である。我々は、この問題を明日、他の主要経済国の首脳と議論し、さらに、向こう何か月間にわたり、主要経済国間で、またUNFCCCの交渉において議論を続けることを期待している。我々は、共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力の原則に沿って、先進主要経済国が行うことと途上主要経済国が行うことは異なることを認識する。この点、我々は自らの指導的役割を認識し、我々各国が、各国の事情の違いを考慮に入れ、すべての先進国間における比較可能な努力を反映しつつ、排出量の絶対的削減を達成するため、また可能な場合には、まず可能な限り早く排出量の増加を停止するために、野心的な中期の国別総量目標を実施する。我々はまた、技術、資金及びキャパシティ・ビルディングにより、途上主要経済国の緩和の計画を支援することもできる。同時に、実効的かつ野心的な2013年以降の世界的な気候に関する枠組を確保するためには、2009年末までに交渉される国際合意において拘束される形で、すべての主要経済国が意味ある緩和の行動をコミットすることが必要である。

25.セクター別アプローチは、経済成長と両立する形で、既存及び新しい技術の普及を通じ、エネルギー効率を向上させるとともに、温室効果ガス排出量を削減するための、有用な手法となり得る。我々は、IEAに対して、経済界のイニシアティブも得つつ、データ収集の改善を通じ自発的なセクター別指標に関する作業を強化するよう要請する。
我々は、2013年以降の合意された結果に向けたUNFCCCの下での個別のプロセスに留意しつつ、国際民間航空機関(ICAO)と国際海事機関(IMO)において、国際航空及び海運セクターにおける温室効果ガス排出の抑制又は削減について、迅速に議論することの重要性を強調する。

26.我々は、エネルギー効率に関する、中期的な、展望としての目標を設定することの重要性を認識する。我々は、国別行動計画に加え国別目標及び目的において、エネルギー効率に関するIEAの25の勧告を最大限実施する。
我々は、エネルギー効率を向上させる健全な慣行の採用を加速させる我々の共同の努力を強化し、調整するハイレベルのフォーラムとして「エネルギー効率に関する協力のための国際パートナーシップ」(IPEEC)を設立するという最近の決定を、歓迎する。IPEECの組織に関する条件は、本年末までに決定される。
我々は、すべての関心国がこれらの努力に加わることを呼びかける。

27.我々は、気候変動への取組及びエネルギー安全保障の強化のための重要性にかんがみ、適切なモニタリングを伴う国別目標の設定及び行動計画の策定により、クリーン・エネルギーを推進する。我々は、相当程度かつ増大する経済的及び雇用機会がこの分野に存在すると信じる。
我々は、気候変動問題に取り組み、長期的に化石燃料への我々の依存度を減らす上での、再生可能エネルギーの重要な役割を認識する。
我々は、持続可能なバイオ燃料の生産と使用の重要性を強調する。同様のことは、バイオマスの燃料、熱、電力へのより広範な利用についても当てはまるべきである。我々は、国際バイオエネルギー・パートナーシップ(GBEP)の作業を支持するとともに、バイオ燃料の生産と使用について科学に基づく基準と指標を策定するために、GBEPが他の利害関係者と共に、取り組むことを呼びかける。我々は、第二世代のバイオ燃料技術の研究開発の継続にコミットしている。

28.我々は、気候変動とエネルギー安全保障上の懸念に取り組むための手段として、原子力計画への関心を示す国が増大していることを目の当たりにしている。これらの国々は、原子力を、化石燃料への依存を減らし、したがって温室効果ガスの排出量を減少させる不可欠の手段と見なしている。我々は、保障措置(核不拡散)、原子力安全、核セキュリティ(3S)が、原子力エネルギーの平和的利用のための根本原則であることを改めて表明する。このような背景の下、日本の提案により3Sに立脚した原子力エネルギー基盤整備に関する国際イニシアティブが開始される。我々は、このプロセスにおいて、国際原子力機関(IAEA)が役割を果たすことを確認する。

29.気候変動の潜在的影響と開発の関連性を認識し、緩和及び適応の戦略は、開発と貧困削減努力の一部として追求されるべきである。気候変動への国際的対応の成功は、開発途上国と先進国の間のパートナーシップを必要とする。低炭素かつ気候に対する回復力を有する経済を構築するために、開発途上国が適切な国別緩和・適応計画を導入しようとする努力は、先進国からの援助規模の拡大によって支援されるべきである。

30.より貧しい国々が気候変動の悪影響に対して最も脆弱であることを認識し、我々は、開発途上国、特に後発開発途上国(LDCs)及び小島嶼開発途上国が災害リスクの低減を含め、気候変動への適応のため行う努力に対する協力を継続し、強化する。この問題に取り組むため、我々は、適応をより広範な開発戦略の中で主流化するための緊急の行動を支援することにコミットするととともに、開発途上国自身が適応を自らの開発政策の中に統合するよう奨励する。UNFCCCの適応基金の下での活動の早期開始は、この面における重要な貢献となるはずである。我々は、国際開発金融機関及び他の開発機関がこうした努力を行う国々を支援することを呼びかける。

31.我々は、IEAの支援を受け、炭素回収・貯留(CCS)及び先進的なエネルギー技術を含む、革新的技術のためのロードマップを策定する国際的イニシアティブを立ち上げ、既存及び新しいパートナーシップに基づいて協力する。クリーン・エネルギー技術を緊急に開発、展開、促進するという、ハイリゲンダムのコミットメントを再確認しつつ、我々は新技術に対する民間部門の投資を促進するための、透明性のある規制の枠組、経済的・財政的インセンティブ、官民協調といった幅広い政策手段を認識するとともに、奨励する。我々は、2020年までにCCSの広範な展開を始めるために、各国毎の様々な事情を考慮しつつ、2010年までに世界的に20の大規模なCCSの実証プロジェクトが開始されることを、強く支持する。
これら及びその他の努力を加速するために、我々は、環境及びクリーン・エネルギーに関する基礎的及び応用技術の研究開発への投資の増大、及び政府の直接投資や民間部門の投資を促進する財政手段などを通じた商業化の促進にコミットしている。この観点から、G8メンバーはこれまでに、今後数年間にわたって毎年100億米ドル超を政府の直接投資による研究開発に対して拠出することをプレッジしている。我々はまた、これらの技術を商業化するためのインセンティブを提供するために、様々な政策や規制措置を実施することに合意している。
我々は、安定した気候の維持に資するかもしれない補完的技術アプローチの研究を促進する機会について留意する。
地球観測データに対する需要の増大に応えるため、我々は、優先分野、とりわけ気候変動及び水資源管理に関し、観測、予測及びデータ共有を強化することにより、国連専門機関の事業を基礎とした全球地球観測システム(GEOSS)の枠内の努力を加速化する。
我々はまた、地球観測における開発途上国のキャパシティ・ビルディングを支援するとともに、相互運用性及び他のパートナーとの連携を促進する。

32.開発途上国における、緩和、適応、クリーン・エネルギーへのアクセスという緊急の課題に応じるためには、相当の資金と投資が必要となる。主要な資金源は民間部門となるが、公的資金は、最貧困層を援助するとともに、特に増加費用を賄うことにより、民間投資を促進するために不可欠である。公的資金は、国の政策が低炭素投資のためにインセンティブを提供する場合には、排出量削減に誘導する上で非常に効果的たり得る。この観点から、我々は世界銀行が管理するクリーン・テクノロジー基金(CTF)や戦略気候基金(SCF)を含む気候投資基金(CIF)の設立を歓迎し、支持する。G8メンバーは、これまで約60億米ドルをODAとしてこれらの基金に拠出することをプレッジしており、他のドナーからのコミットメントを歓迎する。CIFは官民の資金供給規模を増大させるであろう。これらの基金は、広範かつ包含的なガバナンス・メカニズムを持ち、2013年以降の体制の下での新しい資金的枠組が有効になるまで、暫定措置として、緊急の行動のための差し迫った資金ギャップを埋めることになる。CTFは、低炭素目的を含む信頼性のある国別緩和計画を支援するための投資を通じて、開発途上国が、商業的に入手可能なよりクリーンなエネルギー技術を国内において展開することを資金的に支援することにより、低炭素経済を促進することを目指す。SCFはより脆弱な国々が経済の気候に対する回復力を高め、また森林減少を防止する行動をとることを助けるとともに、2013年以降の資金の仕組みの協議という文脈において有益な教訓を提供し得る。これらの基金は、UNFCCCの主要な資金的手段として重要な役割を果たし、かつ我々が強化することをコミットしている地球環境ファシリティ(GEF)を含む、既存の多国間の努力を補完するものである。我々はまた、追加的投資を生み出すことができる官民協調を含む、G8メンバーによる様々な二国間の資金的イニシアティブを歓迎する。我々は、このような資金的支援が調整された形で行われ、実効的な2013年以降の枠組への開発途上国の積極的関与を奨励することを期待する。

33.国内及び国家間の排出量取引、税制上のインセンティブ、パフォーマンスに基づいた規制、料金あるいは税金、及び消費者ラベル等の市場メカニズムは、価格シグナルを提供することが可能であるとともに、民間部門に対する経済的インセンティブを与える潜在力を有する。我々はまた、これらが費用対効果の高い方法で排出量削減を実現すること及び長期的な技術革新に刺激を与えるのに役立つことを認識している。我々は、こうした手段をそれぞれの各国の事情に従って促進するとともに、異なる手段の効果について経験を共有する考えである。この観点から、我々は、財務大臣によって採択された民間・公的金融機関の関与を強化するための気候変動G8アクションプランを歓迎する。

34.WTO交渉における環境関連物品及びサービスに対する関税及び非関税障壁を撤廃しようとする努力は、クリーン・テクノロジーと技能の普及のために強化されるべきである。加えて、気候変動への取組に直接関係する物品・サービスに関しては、自主的な貿易障壁の削減または撤廃について考慮されるべきである。我々はまた、低炭素排出に貢献し得るよりクリーンで効率的な製品とサービスを促進及び支援するような、購入及び投資に関する政策や慣行をはじめとする、気候変動の緩和に貢献するイニシアティブを奨励することで合意した。

35.我々は、気候変動、クリーン・エネルギー及び持続可能な開発に関するグレンイーグルズ対話の最終報告書を歓迎する。我々はまた、IEAと世界銀行によって提出された、グレンイーグルズ行動計画に関連する作業に関する報告書を歓迎するとともに、これらの機関との協力を継続する。我々は、メンバー国間及び経済界と市民社会との間の有益な意見交換を評価するとともに、この種の意見交換が更に行われることが、気候変動に関する活動やUNFCCCプロセスを支援する上で果たし得る役割を認識する。
我々は、国際開発金融機関による、グレンイーグルズで合意されたクリーン・エネルギー投資枠組(CEIF)に関する大きな進展に留意し、既存の資金源から2010年までの間に公的な及び民間の投資を1000億米ドル以上の水準とするというこれら金融機関による共同の野心的目標を歓迎する。我々は、これらの金融機関に対し、CEIFを基礎として、気候変動を開発の取組に統合していく指針となるとともに、再生可能なエネルギーのような低炭素投資のために具体的な目標を設定する、包括的戦略を策定することを呼びかける。

森林

36.我々は、既存のイニシアティブを基礎とし国際的な森林監視ネットワークを発展させることを含む、「森林減少・劣化に由来する排出の削減(REDD)」のための行動を奨励する。我々は、違法伐採及び関連取引を抑制することの緊急の必要性を認識し、G8森林専門家違法伐採報告書を歓迎する。我々は、適当な場合には、予備的な選択肢のリストをフォローアップする。我々は、効果的な森林法の執行、森林のガバナンス、持続可能な森林経営を世界的に促進するため、様々なフォーラムやイニシアティブの間の緊密な連携を確保することにより、できる努力をすべて行う。我々はまた、森林火災と闘うための協力を強化する方策を検討する。

生物多様性

37.我々は、ボンで開催された生物の多様性に関する条約第9回締約国会議において強調されたように、生物多様性の保全と持続可能な利用の決定的な重要性について認識し、生物多様性の脆弱性についての懸念を共有する。我々は「神戸・生物多様性のための行動の呼びかけ」を支持し、世界的に合意された2010年の生物多様性目標を達成するため、野生動物の違法取引による脅威の削減も含め、生物多様性の損失速度比率を顕著に減少させるための努力を増大させるというコミットメントを改めて表明する。我々は、温室効果ガス排出量の削減とともに生物多様性の保全及び持続可能な利用につながるコベネフィットアプローチを推進する。我々は、研究活動と国民、政策立案者の間の交流を向上させることの重要性に留意する。

3R

38.我々は、3R(廃棄物の発生抑制(リデュース)、資源や製品の再使用(リユース)、再生利用(リサイクル))原則の実施に当たって、繁栄する世界経済と環境に向けて、資源をそのライフサイクルを通じて使用する方途の重要性を認識する。この目的のため、我々は、神戸3R行動計画を支持する。我々は、資源循環を最適化するための努力を更に進めるためのOECDの作業に基づき、資源生産性を考慮しつつ、適切な場合には、目標を設定する。我々は、情報共有、利害関係者間のパートナーシップ及びプロジェクトの策定と投資において3Rの観点を包含することの重要性を認識する。我々は、再製造品の貿易における障壁を削減することの重要性と、WTOに加盟しているG8メンバーが、WTOドーハ・ラウンドの下で再製造品の貿易を自由化するとの最近提出された提案を支持することの重要性を認識する。我々は、バーゼル条約と整合的であり環境上適正な方法により、再使用または再生利用可能な原材料と資源の国際循環を支持する。

持続可能な開発のための教育

39.我々は、より持続可能な低炭素社会の実現につながるような国民の行動を奨励するため、持続可能な開発のための教育(ESD)の分野におけるユネスコ及びその他の機関への支援及び、大学を含む関連機関間の知のネットワークを通じて、ESDを促進する。