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社会開発サミット・フォローアップに関する国連特別総会
有馬龍夫政府代表のステートメント

平成12年6月28日 

議長
 まず初めに、21世紀に向けて社会開発の現状を討議するこの重要な特別総会の準備に関与した全ての関係者に対して深甚なる謝意を表します。また、私自身、この重要なテーマにつき発言できることは誠に光栄であります。

議長
 「人間を開発の中心におく」という1995年のコペンハーゲンにおける社会開発サミットでのコンセンサスは、この重要な開発の分野における我々の全ての活動に深い影響を与えました。また、「我々が直面する全ての問題への対応において、人々を中心に考えることが必要である」とのアナン国連事務総長のミレニアム・レポートでの言及もコペンハーゲンにおける合意と同様の認識を反映しています。
 しかしながら、このサミット以降、いわゆるグローバリゼーションは、それがもたらす恩恵にも拘わらず、貧富の格差の拡大を生み出しました。この状況に対処するため、我々が実施する施策の中心的な課題は、個人の生活と尊厳の保護にあるべきです。すなわち、「人間の安全保障」を社会開発のための我々の行動の中心に位置づけなければなりません。

議長
 9年連続で最大のODA供与国となった日本は、途上国の貧困削減を特に重視しています。途上国の貧困削減の努力は、債務救済により支援されなくてはなりません。日本は昨年のケルン・サミットで合意された拡大HIPCイニシアティブの下で重債務貧困国(HIPCs)に対する全てのODA債権の帳消しを行うことに完全にコミットしているとの基本的立場を改めて明確にしておきたいと思います。現在、このイニシアティブの迅速な実施が急務となっていますが、この関連で日本は、本年4月、適格な重債務貧困国に対する非ODA債務についても国際的な枠組みの下で削減率を100%まで拡大すること、及び、世界銀行の信託基金に合計2億ドルまでの追加拠出を行うことを決定しました。
 国際的に認められている様々な方法を通じて債務救済を実施する際には、債務帳消しにより利用可能となる資金が当該債務国の経済社会開発及び国民の福祉のために有効に活用されることが重要です。このためには、その過程に市民社会やその他の関係者が参加することが有益であり、日本政府としては債務救済措置の実施に当たり、NGOその他の市民社会を含む様々な関係者の意見も参考としていく考えです。
 しかしながら、長期的には、途上国は債務管理能力を強化し、借り入れ資金を有効に活用する能力を向上させることが必要です。これらの目的のため、日本は、99年からナイロビ、シンガポール、テュニスにおいて、アフリカ諸国の参加する債務管理セミナーを開催しています。我々はまた、経済成長の効果が広く貧困層にも裨益するような制度構築において途上国を引き続き支援していきます。
 途上国における貧困削減のための我々の努力において、基礎教育、保健、並びに女性のエンパワメントの重要性は極めて大きいものがあります。昨年8月に発表した日本の「ODA中期政策」はこれらの分野に高い優先度を置いています。
 教育の分野においては、世界教育フォーラムで採択されたダカール行動計画に沿って、特に女児の教育に重点を置いた良質な基礎教育の促進に向け積極的に貢献していきます。
 保健の分野では、保健医療サーヴィス、特にプライマリ・ヘルス・ケアの提供において引き続き途上国を支援していきます。特にHIV/AIDSを含む感染症の蔓延を防ぐために、「人口・エイズに関する地球規模問題イニシアティブ(GII)」の下、94年度から98年度までに約1億ドルの支援を行いました。
 日本は、引き続き開発援助にジェンダーの視点を取り入れ、女性の教育、保健、社会経済活動への参加に重点を置いていきます。なお、1999年度は、「途上国の女性支援」(WID)イニシアティブの下、関連の国際機関へ550万ドルの拠出を行いました。
 貧困地域の開発においては、生活水準の向上に住民自身が積極的に参加する住民参加型アプローチが非常に有効であることが証明されました。日本は、貧困削減のために、草の根レベルにおける協力において、マイクロ・クレジット、職業訓練、雇用機会の創出、基礎社会サービスの提供などの施策による住民参加型アプローチを重視しています。この分野における国際金融機関の努力を支援するため、日本は、アジア開発銀行及び世界銀行に貧困削減のための基金を設立し、100億円づつ拠出することを決定しました。

議長
 近年頻発する紛争は人道上の問題を引き起こすと同時に、社会開発の成果を破壊しています。社会的統合を含む社会開発の促進は、それ自体重要であるのみならず、紛争の根本原因への長期的取り組みとしても重要な意義を有しています。
 日本は、途上国における「良い統治」のために民主主義が提供する強い基盤の重要性を認識しており、「民主的発展のためのパートナーシップ」の下、行政、法律、及び司法制度のための支援、民主的選挙のための支援、及び選挙民教青、人権教育、指導者教育を通じた市民社会の強化のための努力に対する支援を行ってきました。日本は、94年度から5年間に、民主化支援のために765人の研修員を受け入れ、約40の地域に対し、選挙支援を行いました。

議長
 雇用は、単に所得獲得の手段としてではなく、個人が尊厳を維持するための必要条件としても重要な意義を有します。我々は、日本の現在の経済的難局を克服する努力において、人間中心の観点から雇用の創設を優先して取り組んでおります。同じ考え方に基づいて、日本の開発協力では、女性や社会的弱者の支援に特に重点を置いて職業訓練を重視しております。
 アジア諸国を支援するため、日本がこれまで800億ドル以上の支援を表明した97年以来のアジアにおける経済危機は、我々に多くの教訓を提供しました。教訓の一つとして、このような危機を克服する効果的な社会的合意の形成における政労使三者協議の重要な役割があります。日本は雇用政策分野における政労使三者構成主義が、国際的に確立されることを期待しています。
 社会開発の促進においてILOは主要な役割を担っており、この分野におけるそのイニシアティヴは重要性を増しております。98年に採択された「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」は、中核的労働基準を世界的に促進するための極めて重要な文書です。ILOがこの基準の促進において引き続き指導的な役割を果たしていくことを強く期待しています。

議長
 今日、情報技術の飛躍的な進展は、我々の生活様式を変革し、より効率化させ、生活の質さえも向上させています。このプロセスは個人の潜在能力の十分な実現のための機会を拡大しました。この新しい環境は、個人の潜在能力の活用を演じて、人間中心の社会開発を促進するものでなければなりません。
 残念ながら、情報技術の恩恵は未だ世界中の全ての人々に及んでおらず、情報技術へのアクセスの度合いによって大きな格差が生じ、深刻な問題となっています。21世紀を平和で豊かなものにする鍵の一つは、この進展の恩恵にあづかれない人々も恩恵を受けられるよう確保することです。日本はこの関連で出来る限りの努力を行っており、また、現在、途上国における情報技術の促進を支援するためにいかなる協力が可能か検討しております。

 我々は、経済成長の追求自体を目的とすることの限界、そして、いわゆるグローバリゼーションの非人間的インパクトについて認識を共有してこの場に集まりました。我々は、この認識を念頭において、共に「更なる行動とイニシアティブ」を策定しています。日本としては、その実施に向けて力を尽くすことを誓います。



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