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多国籍企業行動指針本文改定案
(平成12年3月15日現在の事務局案)
(仮訳)


序文

  1. OECD多国籍企業行動指針(「行動指針」)は、多国籍企業に対して政府が行う勧告である。行動指針は、適用される法律と合致した信頼ある事業行動のための自主的な原則及び基準を提供する。行動指針は、これら企業の活動と政府の政策との間の調和の確保、企業と企業が活動する社会との間の相互信頼の基礎の強化、外国投資環境の改善の支援及び持続可能な開発への多国籍企業による貢献の強化を目的としている。

  2. 国際的な事業は大きな構造変化を経験した。行動指針それ自体もこれら変化を反映して発展した。サービス産業及び知識集約産業の隆盛とともに、サービス企業及び技術系企業が国際市場に加わった。依然として大企業は国際投資の主要な割合を占め、大規模な国際的合併が行われる傾向がある。同時に中小企業による外国投資も増加しており、これら企業は今や国際的な場で大きな役割を果たす。多国籍企業は、国内企業と同様に、より広範な事業上のアレンジメントや組織的な形態を包含するまでに深化した。戦略的提携と供給者や契約者とのより密接な関係は、企業の境界を不明瞭なものとする傾向にある。

  3. 多国籍企業の構造の急速な発展は、外国投資が急速に成長した開発途上世界でのこれら企業の活動にも反映されている。開発途上国において、多国籍企業は、第一次産業を超えて、製造業、組立業、国内市場開発及びサービスへと活動分野を拡大した。

  4. 多国籍企業の活動は、国際貿易及び投資を通じ、OECD加盟国経済相互間の、またOECD加盟国とその他の地域との間の関係を強化し、深化させた。多国籍企業の活動は、企業の母国及び受入国に実質的な利益をもたらす。これら利益は、消費者が購入を望む製品及びサービスを競争的価格で提供し、資本の供給者に対して公正な収益を提供するときに生じる。多国籍企業の貿易及び投資活動は、資本、技術、人的資源及び天然資源の効率的利用に貢献する。これらは世界の諸地域間の技術移転と地域の諸条件を反映した技術の発展を促進する。企業は、また、正式な訓練及び職業活動を通じた学習によって、受入国における人的資本の開発を促進する。

  5. 多国籍企業は、持続可能な開発の促進のために重要な役割を有する。これら企業は、その投資活動を通じて、全世界、特に事業活動を行う国において、経済成長、雇用創出、環境保護及び社会福祉の分野で相互に補強し合う活動を行う。持続可能な開発を促進する多国籍企業の能力は、開放され、競争的で、また適切な規制の下にある市場の中で貿易及び投資が行われるときに大きく強化される。より一般的に言えば、多国籍企業はしばしば効率性をもたらし、競争指向的な事業環境の育成を助長する。

  6. 多国籍企業の活動は、グローバル化プロセスのもたらす利益の多くに貢献する一方で、懸念も生じさせうる。これら企業は、多様な法律、社会、規制環境の中で、しばしばその事業活動を行う。このような状況は、多国籍企業が基準や政策の違いを不適切な形で利用することもあり得るという国民の懸念を強める可能性がある。グローバリゼーションは、特に雇用、賃金、環境、課税及び国家主権への影響に関する憂慮を生じさせた。受入国の経済に比して規模が大きい多国籍企業の活動は、経済力又は政治力の集中の濫用を生む、或いは、国家の政策目的や期待と衝突するという認識が時として存在する。その活動についての理解を困難とするような幾つかの企業の組織上の複雑性が、この認識を顕著なものとすることもあろう。

  7. 多くの企業は、企業内部の計画、指導及び経営管理制度を発展させることによって、これらの懸念に答えてきた。これらは、良き市民としての企業のあり方、良き慣行、良き事業行動及び従業員行動への企業のコミットメントを補強するものである。幾つかの企業は、コンサルティング、監査及び認証サービスを利用し、これらの分野の専門知識の蓄積に寄与してきた。これらの努力は、良き事業行動を構成するものについての社会的対話を促進してきた。行動指針は、事業行動に対して政府が共有する期待を明確化し、企業に対しての参考を提供する。したがって、行動指針は、信頼ある事業行動を定め、実施するための民間の努力を補完し、強化する。

  8. 政府は相互に、また他の行動主体とともに、事業行動が行われる国際的な法的枠組及び政策的枠組の強化のため協力を行っている。1948年の世界人権宣言の採択に始まり、戦後期はこの枠組みの進展が見られてきた。最近の文書には、中核的労働基準に関するILO宣言、環境と開発に関するリオ宣言及びアジェンダ21並びに社会的発展のためのコペンハーゲン宣言が含まれる。

  9. OECDもまた、国際的な政策の枠組へ寄与してきた。最近の進展には、国際的商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約、OECDコーポレート・ガバナンス原則及び電子商取引における消費者保護ガイドラインの採択並びに多国籍企業及び税当局のための移転価格税制に関するガイドラインに関する継続的作業が含まれる。

  10. 行動指針を採用する政府の共通の目標は、経済、環境及び社会の発展に対する多国籍企業の積極的な貢献を慫慂すること並びに多国籍企業の多様な活動がもたらすであろう困難を最小にすることにある。この目標に向けて作業する中で、政府は、同一の目的に向けそれぞれの方法で作業を行っている多くの企業、労働組合その他の非政府組織との協力関係を見出している。政府は、安定的マクロ経済政策、企業に対する無差別待遇、適切な規制と信用秩序のための監督、公平な司法と法執行制度、効率的で誠実な行政を含めた、効果的な国内政策の枠組を提供することによる支援を行うことができる。また政府は、持続可能な開発を支持する適切な基準及び政策を維持し、促進することによって、また、公共部門活動が効率的かつ効果的であることを確保するための継続的改革に従事することによって、支援を行うことができる。行動指針を採用する政府は、全ての国民の福祉及び生活水準の向上を目指した国内及び国際政策の継続的改善にコミットしている。

I.定義と原則

  1. 行動指針は、多国籍企業に対して政府が共同して行う勧告である。行動指針は、適用される法律と合致した良き慣行の原則及び基準を提供する。企業による行動指針の尊重は自主的なものであり、法的に強制し得るものではない。

  2. 多国籍企業の活動は全世界に及んでいるので、この分野における国際協力は全ての国に及ぶべきである。行動指針を採用する政府は、その領域において活動する企業に対し、各受入国における固有の状況を考慮しつつ、活動する全ての場所で行動指針を尊重することを慫慂する。

  3. 多国籍企業を厳密に定義することは、行動指針の適用上、必要とはされていない。これら企業は、通常、二以上の国において設立される会社又はその他の構成体から成り、様々な方法で活動を調整できるように結びついている。これら構成体の一又は二以上のものは、他の構成体の活動に対して重要な影響力を行使しうるが、企業内における構成体の自主性の程度は、多国籍企業ごとに大きく異なる。その所有は、民間、国家又はその双方による。行動指針は、多国籍企業を構成する全ての構成体(親会社及び(又は)現地の構成体)を対象とする。構成体間の実際の責任配分に応じて、異なる構成体は、行動指針の尊重を容易にするため、相互に協力し、また援助を行うことを期待される。

  4. 行動指針は、多国籍企業と国内企業との間に異なった取扱いを導入することを目的とするものではない。行動指針は、全ての企業に対して良き慣行を示している。したがって、多国籍企業及び国内企業は、行動指針が双方に当てはまる場合は常に、その活動については同一の期待に服する。

  5. 政府は、可能な限り広範な行動指針の尊重を慫慂することを希望する。中小企業が大企業と同等の管理能力を有していないことは認識されているが、行動指針を採用する政府は、中小企業が可能な限り行動指針の勧告を尊重することを慫慂する。

  6. 行動指針を採用する政府は、保護主義的目的のために又は多国籍企業によって投資が行われる国の比較優位に対して疑問を差し挟むような方法で、行動指針を使用するべきではない。

  7. 政府は、国際法に従いつつ、自国の管轄内において多国籍企業が活動するための条件を定める権利を有する。様々な国に所在する多国籍企業の構成体は、所在地国において適用される法律に従う。多国籍企業が行動指針を採用する国の相反する要求の対象となる場合には、関係政府は生じうる問題の解決に向けて誠実に協力する。

  8. 行動指針を採用する政府は、企業を公平に、かつ、国際法及び自国が受諾した契約上の義務に従って取り扱うという責任を果すという了解の下に、行動指針を制定した。企業と受入国政府との間で生じる法的問題の解決を促進する手段として、仲裁を含む適当な国際紛争解決制度の利用が慫慂される。

  9. 行動指針を採用する政府は、行動指針の普及を促進し、その尊重を慫慂する。政府は、行動指針の普及を促進し、行動指針に関連する全ての事項を議論するためのフォーラムとして行動するナショナル・コンタクト・ポイントを設立する。行動指針を採用する政府は、また、変化しつつある世界の中における行動指針の解釈に関連する問題に対応するため、適切な見直しと協議に参加する。

II.一般方針

 企業は、事業活動が行われる国の確立した政策を十分に考慮に入れ、その他の利害関係者の見解を考慮すべきである。この点に関し、企業は次の行動をとるべきである。

  1. 持続可能な開発を達成することを目的として、経済、社会及び環境の発展に貢献する。

  2. 従業員の人権を尊重し、また、事業提携者及び事業活動が行われる国の社会の人権尊重を慫慂する。

  3. 事業関係者を含め、現地社会との密接な協力を通じて現地の能力の開発を慫慂し、また、健全な商慣行の必要性に則しつつ、国内及び外国市場における企業活動の発展を慫慂する。

  4. 人的資本の形成を、特に雇用機会の創出と従業員のための訓練機会の増進によって、慫慂する。

  5. 環境、健康、安全、労働、課税、財政による奨励又はその他の事項に関する法令及び規制の枠組において意図されていない免除の要求及び受諾を回避する。

  6. 良きコーポレート・ガバナンス原則を支持及び維持し、良きコーポレート・ガバナンスを発展させ、適用する。

  7. 企業と事業活動が行われる社会との間の信用及び相互信頼関係を育成する効果的な自主規制慣行及び経営制度を発展させ、適用する。

  8. 訓練計画を含めた適切な普及方法を通じ、会社の方針について従業員の認識を高め、その尊重を促進する。法律、行動指針又は企業の政策に反する慣行について、経営者又は(時宜を得た救済活動が実施されない場合又は否定的な雇用活動がとられると信じるに足る危険性に直面している場合に)所管官庁に対して報告を行った従業員は、その報告を行ったことを理由として差別的又は懲戒的行為の対象とされるべきではない。

  9. 適当な場合には、事業提携者、特に供給者及び下請業者に対し、行動指針と合致した企業行動原則の適用を慫慂する。

  10. 現地の政治活動に対しては、いかなるものであれ適正でない関与を差し控える。

III.情報開示

  1. 企業は、その活動、組織、財務状況及び業績について、時宜を得た、定期的な信頼性のある関連情報の開示を確保すべきである。この情報は、企業全体について、また適当な場合には事業毎又は地域毎に開示されるべきである。企業の情報開示に関する方針は、費用、事業上の秘密及びその他競争上の関心事項を適切に考慮しつつ、企業の性質、規模及び所在地に適合するよう策定されるべきである。

  2. 企業は、情報開示、会計及び監査に質の高い基準を適用すべきである。また企業は、環境及び社会的な報告を含めた非財務情報について、それが存在する場合には、質の高い基準を適用することを慫慂される。財務及び非財務情報の編集及び公表の基準又は方針についての報告が行われるべきである。

  3. 企業は、その名称、所在地及び組織、親会社の名称、所在地及び電話番号、その主要関連会社並びにこれら関連会社間の株式持ち合いを含めた(直接及び間接の)株式保有比率を示す基礎的情報を開示すべきである。

  4. 企業は、また、以下の事項に関する重要な情報を開示すべきである。

    a)会社の財務及び活動に関する結果
    b)会社目標
    c)主要株主と議決権
    d)ボード・メンバー及び主要役員とその報酬
    e)予見可能な重要なリスク要因
    f)従業員その他主要なステーク・ホルダーに関する重要な問題
    g)ガバナンスの構造と政策

  5. 企業は、以下を含めた追加的情報を公表することを慫慂される。

    a)一般への情報開示が意図された価値基準又は事業行動に関する声明。これらの声明には、社会、倫理及び環境に関する企業の方針についての情報並びに会社が同意する行動規範についての情報を含む。これらに加えて、企業のコミットメントの採択日、並びにこれらを適用する国及び構成体並びにこれらコミットメントと関連する業績が公表され得よう。
    b)リスクを管理し、法律を遵守するための制度に関する情報並びに事業行動のための声明又は規範に関する情報
    c)従業員及びその他のステークホルダーとの関係に関する情報

IV.雇用及び労使関係

 企業は、適用される法律、規則並びに一般的な労使関係及び雇用慣行の枠内において、次の行動をとるべきである。

  1. a)労働組合及び他の誠実な従業員の代表により代表される従業員の権利を尊重し、また雇用条件に関する協約を締結することを目的として、当該従業員の代表と個別的に又は使用者の団体を通じ、建設的な交渉を行う。
    b)児童労働の実効的な廃止に貢献し、特に自己の事業活動においては、最悪の形態の児童労働は行わない。
    c)あらゆる形式の強制労働の撤廃に貢献し、特に自己の事業活動においては、このような労働は行わない。
    d)人種、皮膚の色、性、宗教、政治的見解、国民的出身又は社会的出身などに基づいて雇用及び職業における差別を行わない(従業員をその特質に従って選択的に取扱うことが、特に雇用機会の一層の均等化を推進しようとする政府の確立した政策を更に促進することとなる場合又は職業に固有の要件に関連している場合を除く。)。

  2. a)従業員の代表に対し、有効な労働協約の作成を助けるために必要な便宜を提供する。
    b)従業員の代表に対し、雇用の条件に関する有意義な交渉のために必要な情報を提供する。
    c)労使の共通の関心事項について、使用者と従業員及び従業員の代表との間の協議及び協力を促進する。

  3. 従業員及び従業員の代表に対し、これらの者が構成体の、又は適当な場合には企業全体の業績に関する真正かつ公正な見解を持ち得るような情報を提供する。

  4. a)受入国の類似の使用者が遵守している雇用及び労使関係の基準よりも低くない基準を遵守する。
    b)事業活動において、職業上の健康及び安全を確保するため、適切な措置を実施する。

  5. 事業活動において、従業員の代表及び適当な場合には関係の政府当局と協力しつつ、最大限実行可能な限度において、技術水準の向上を目的として、現地人を雇用し、訓練を提供する。

  6. 特に集団的な解雇(一時的な解雇を含む。)を伴う構成体の閉鎖のように、従業員の生活に重大な影響を及ぼすような事業活動の変更を検討するに当っては、従業員の代表及び適当な場合には関係の政府当局に対し、かかる変更に関して合理的な予告を行い、また最大限実行可能な限度において、悪影響を緩和するため従業員の代表及び適当な政府当局と協力する。各事例の特殊な状況を考慮して、経営者側が最終的な決定を下す前にそのような予告を行うことが望まれる。

  7. 雇用条件に関して従業員の代表との誠実な交渉を行うに当たり、又は従業員が団結権を行使している間は、交渉に不当な影響を与え又は団結権の行使を妨げるために、当該国から事業活動の単位の全部又は一部を移転するとの威嚇は行わず、また、他国にある企業の構成体からの従業員移転は行わない。

  8. 従業員の正当な代表者が、交渉中の事項について決定する権限を有する経営者側の代表と団体交渉又は労使関係の問題について交渉を行い、労使の共通の関心事項について協議することを可能にする。

V.環境

 企業は、事業活動が行われる国の法律、規則及び行政上の慣行の枠内で、関連する国際的な条約、原則、目標及び基準を考慮しつつ、環境、公衆の健康及び安全を保護する必要性に十分な考慮を払うべきであり、また、広範な持続可能な開発の目標に貢献する方法で一般的にその活動を実施するべきである。特に企業は、次の行動をとるべきである。

  1. 次の事項を含め、当該企業に適した環境管理制度を確立し、維持する。

    -その活動が環境、健康及び安全へ与える影響に関して、適切で時宜を得た情報の収集と評価
    -計測可能な目的の確立及び、適当な場合には、これら目的が引き続き妥当であるかについての定期的見直しを含め、環境パフォーマンス改善のための目標の確立
    -環境、健康及び安全に関する目的又は目標への進展についての定期的なモニタリング及び確認

  2. 費用、事業上の秘密及び知的所有権保護の必要性を考慮しつつ、

    -事業活動の環境、健康及び安全に対する潜在的な影響に関して、適切かつ時宜を得た情報を国民及び従業員に提供する。この情報は、環境パフォーマンス改善の進展についての報告を含み得る。
    -企業の環境、健康及び安全に関する方針及びその実施によって直接に影響を受けるコミュニティと、適切かつ時宜を得た連絡及び協議を行う。

  3. 工程、物品及びサービスの全ての段階から生じる環境、健康及び安全に対する予見可能な影響を評価し、意思決定に際してはこれら影響を考慮する。提案された活動が環境、健康及び安全に対して重大な影響を与える可能性がある場合であって、関係当局の決定に服する場合には、適当な環境影響評価を準備する。

  4. 危険性に関する科学的及び技術的理解に則するとともに、環境又は人の健康及び安全に対して重大又は回復不可能な損害を与えるおそれがある場合には、十分な科学的確実性の欠如をもって、費用対効果の大きな損害防止又は削減措置を延期するための理由としない。

  5. 事故及び非常事態を含め、事業活動から生じる環境又は健康への重大な損害の防止、緩和及び管理のための非常事態対策計画を維持し、また所管官庁へ即時通報を行うための機構を維持する。

  6. 適当な場合には、次のような活動を慫慂することにより、企業の環境パフォーマンスの改善を継続的に追求する。

    -環境パフォーマンスに関して最も成果が上がっている部署における基準を反映した技術及び手続を、全ての部署において採用する。
    -環境に対して過度の影響を及ぼさず、意図された用途のとおり使用されれば安全で、エネルギー及び天然資源の消費において効率的で、再利用及びリサイクルが可能であり、又は少なくとも最低限安全に廃棄することが可能な製品及びサービスを開発し、提供する。
    -企業の製品及びサービスを使用することによる環境上の意味につき、高い水準の認識を消費者の間に普及させる。
    -長期にわたる企業の環境パフォーマンス改善の方法について研究する。

  7. 有害物質の取り扱い及び環境上の事故の防止を含め、環境、健康及び安全に関する事項について、また、例えば環境影響評価手続、広報関係及び環境技術など一般的な環境管理分野について、従業員に対する適当な教育と訓練を提供する。

  8. 例えば環境についての認識及び環境保護を強化するためのパートナーシップ又はイニシアティブを通じて、環境上意義を有する経済的に効率的な政策の発展に貢献する。

VI.贈賄の防止

 企業は、直接又は間接に、賄賂又はその他の不正な利益の申し出、約束、供与又は要求を行うべきではない。また企業は、賄賂又はその他の不正な利益を提供するよう求められ又は期待されるべきではない。企業は特に次の行動をとるべきである。

  1. 公務員又は事業提携者の従業員に対し、契約上の支払のいかなる部分をも支払うことは申し出ない。企業は、下請契約、購買の注文又はコンサルタント業務に関する合意を、公務員、事業提携者の従業員又はこれらの親類若しくは事業上の同僚に対する支払経路の手段として利用しない。

  2. 代理人への報酬は適切で、かつ、正当な業務のみを目的としたものであることを確保する。適当な場合には、公共機関及び国有企業との取引に関連して雇用される代理人のリストを保存し、関連当局が利用可能なものとする。

  3. 贈賄及び財物の強要との闘いにおける活動の透明性を高める。この措置には、贈賄及び財物の強要に反対する公のコミットメントを行うこと及びこれらコミットメントを尊重するために採用した経営制度を開示することを含め得よう。企業は、また、贈賄及び財物の強要との闘いについて、国民の認識と協力を促進するために、企業の公開性を高め、国民との対話を育成する。

  4. 贈賄及び財物の強要に反対する会社の方針について、適切な周知方法並びに訓練計画及び懲戒手続を通じ、従業員の認識と遵守を増進する。

  5. 贈賄及び腐敗行為を抑制する経営管理制度を採用し、また、「簿外勘定」若しくは秘密勘定の設定又は関連する支払が適正かつ公正に記録されないような文書の作成を防止する財務及び税務会計並びに監査実務を採用する。

  6. 公職候補者、政党又はその他の政治団体に対して、違法な献金は行わない。献金については、公の情報開示要求に完全に従い、また、上級役員に対して報告を行う。

VII.消費者利益

 企業は、消費者との関係において、公正な事業、販売及び宣伝慣行に従って行動すべきであり、また、提供する物品及びサービスの安全性と品質を確保するための合理的な措置を実施すべきである。特に企業は次の行動をとるべきである。

  1. 提供する物品又はサービスが、消費者の健康及び安全のために課される全ての基準に適合し、また、要求される全ての健康に関する警告並びに製品の安全性及び情報に関する表示を含むことを確保する。

  2. 物品及びサービスに適した形で、内容物、安全的使用、維持管理、貯蔵及び廃棄に関し、消費者が知識を得た上で決定を行うことを可能とするに十分な、正確かつ明確な情報を提供する。

  3. 消費者の苦情を処理するための透明かつ効果的な手続を提供し、また、過度の費用や負担を伴わない、公正で時宜を得た消費者紛争の解決を提供する。

  4. 詐欺的な、不正な、不公正な又は誤解を招くような表示及び省略その他の慣行は行わない。

  5. 消費者のプライバシーを尊重し、個人情報の保護を提供する。

  6. 製品の消費又は使用から生じる公衆の健康に対する重大な脅威の防止又は除去について、透明な方法で公の保健当局と十分に協力する。

VIII.科学及び技術

 企業は次の行動をとるべきである。

  1. その活動が、事業活動が行われる国の科学及び技術に関する政策及び計画に合致することを確保するよう努力し、また地域及び国内の技術革新能力の発展に適切に貢献する。

  2. 知的所有権の保護に適切に配慮しつつ、最大限実行可能な限り、事業上の活動の過程において技術及びノウ・ハウの急速な移転及び普及を可能にする慣行を採用する。

  3. 適当な場合には、商業上の必要性を考慮に入れ、現地市場のニーズに対応するために受入国において科学及び技術開発作業を実行し、科学及び技術能力を有する現地の人材を雇用し、また、これら人材の訓練を慫慂する。

  4. 知的所有権の実施許諾を与える場合又はその他の方法により技術移転を行う場合には、合理的な条件で、かつ、受入国の長期的な開発の見通しに貢献する方法で、これを実施する。

  5. 商業上の目的から妥当な場合には、現地の大学、公共研究機関との関係を発展させ、現地の産業又は産業団体との共同研究計画に参加する。

IX.競争

 企業は、適用され得る法令の枠内において、競争的な方法でその活動を行う。特に企業は次の行動をとるべきである。

  1. 以下を目的とする反競争的協定を、競争者の間で締結又は実施することを回避する。

    a)価格の固定
    b)入札における不正(入札談合)
    c)生産制限若しくは生産割当て
    d)顧客、供給者、地域若しくは取引分野の割当てによる市場の共有若しくは分割

  2. 企業の反競争的活動により経済が悪影響を受ける可能性が高い管轄域の競争法の潜在的適用可能性を考慮しつつ、適用可能な全ての競争法に則した方法で、全ての活動を行う。

  3. 特に、適用され得る法律と適切な保障措置に従い、(a)情報の要請に実行可能な限り迅速かつ完全な回答を提供することにより、及び、(b)適当な場合には、企業の活動を検討する当局が関連情報の交換と議論を行うことを可能とするための自主的な措置を実施することにより、当該管轄域の競争当局と協力する。

  4. 適用され得る全ての競争法及び政策を遵守することの重要性を従業員が理解することを確保するための措置を実施する。

X.課税

 租税支払いにより企業が受入国の公共財政に貢献することは重要である。特に企業は次の行動をとるべきである。

 事業活動が行われる国の全てにおいて租税に関する法令に従い、これら法令の規定及び精神に従って行動することにあらゆる努力を行う。これは、事業活動に関連して賦課される租税の正確な決定のために必要な情報を関連する当局に提出すること、移転価格慣行を独立企業原則(arm's length principle)に合致させること、期限までに納税することなどの措置を含む。

目次


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