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OECDドキュメント:地域貿易協定と多角的貿易体制
- Regional Trade Agreements and the Multilateral Trading System -


平成14年11月21日


 OECD貿易委員会において、10分野((1)サービス、(2)労働移動、(3)投資、(4)競争政策、(5)貿易円滑化、(6)政府調達、(7)知的所有権、(8)コンティンジェンシー・プロテクション(SG、AD、補助金)、(9)環境、(10)原産地規則)における各種地域貿易協定(RTA)とWTOの規律を比較・分析したスタディをとりまとめ公表しました(文責はOECD事務総長)。全体部分(Overview)の概要は以下のとおりです。


1.WTOを超える地域貿易協定(RTA)の規律(Going Beyond the WTO)

 多くのRTAにはWTOを超える規律があるが、具体例は以下のとおり。

(1) サービス:ネガティブ・リスト方式を採用。

(2) 労働移動:サービス提供者等に完全な内国民待遇及び市場アクセスを認める。

(3) 投資:設立権(right of establishment)を規定。二国間投資協定における待遇及び保護に関する原則に基づいた規律を設定。

(4) 競争:非競争的な企業行為に対して当局がアクションをとる一般的な義務を規律したり、あるいは特定の競争ルールの協調を提唱する規律を設定。

(5) 貿易円滑化:技術革新に対応するために、定期的に関連規則のアップデートを求めたり、新技術を活用した効率的手続の維持を目指す。

(6) 政府調達:(WTO政府調達協定よりも)対象機関を拡大したり、低い基準額を設定。

(7) 知的所有権:(TRIPsよりも)短い経過期間の設定、特許協力協定の遵守を規定することにより詳細な執行手続を要求。

(8) コンティンジェンシー・プロテクション:域内貿易に影響を与える全ての補助金の撤廃、WTOよりも高いレベルの補助金規律等を規定。

(9) 環境:環境をめぐる状況について締約国が定期的に報告書を準備すること、抵触する場合には特定の多数国間環境協定に基づく義務がRTA上の義務を上回ること、貿易・投資の促進のために環境関連国内法令を緩和することがないよう注意すること等を規定。


2.拡散か収束か(Divergence or Convergence ?)

 各種RTAの規律には収束が見られる面と拡散が見られる面の両方があるが、具体的には以下のとおり。

(1) 収束(Convergence)が見られる面

 サービス、政府調達、知的所有権等の分野においては、WTOを基礎とした規律が規定されており収束が見られる。また、貿易円滑化の分野においては、世界税関機構アルシャ宣言や京都規約(税関手続の簡易化及び調和に関する国際規約)への言及が数多くあり、RTAが規律の収束に向けた動きを促進する。また、投資の分野においては、二国間投資協定ないしNAFTAの投資関連規定に向けて収束が見られる。原産地規則においては、米国やEUにより策定されたモデルが各種RTAでも採用される場合もある。

(2) 拡散(Divergence)が見られる面

 地域レベルでの規律の収束は必ずしも国際的に調和したアプローチを意味しない。例えば、知的所有権保護については、地域毎にアプローチの調和が見られるが、他方で、知的所有権関連規定の内容については各種RTAにより異なりうる。競争政策とAD措置の関係についても米州域内には二つのアプローチがあり、AD措置の発動を認めるRTAと認めないRTAがある。RTAにより異なるアプローチを採用することは、特に原産地規則の場合に取引費用の増大といった形で影響が顕著に見られる。 また、RTAにより異なるアプローチの並存はシステミックな摩擦を引き起こす可能性もある。例えば、いくつかのRTAは、域内でのアンチ・ダンピング(AD)措置及び相殺関税(CVD)措置の使用を認めない一方でセーフガード(SG)措置の発動を認めているが、他のRTAにおいては、域内でAD措置及びSG措置の使用を認めない一方でCVD措置の適用を認めており、更に、AD措置とCVD措置は認めつつもセーフガード措置の使用を禁止しているRTAもある。


3.第3者(域外国)への影響(Effects on Third Parties)

 RTAに第3者(域外国)の利益を保護するための規定がおかれている例は数多くある。例えばサービスに関し、多くのRTAは第3者への利益の否認(denial of benefits)に関して緩やかな規定を設けており、域内に既に商業拠点を設けて実質的に活動を行っている全てのサービス提供者に同等の待遇を認めている(即ち、拠点設立後の活動については域外国のサービス提供者にも同等の待遇を認めている)。また、多くの政府は優遇的な待遇をMFN均霑する用意があるとしている。競争については、反競争的行為を禁止する措置を無差別原則に基づいて適用すべきとの規律がおかれているし、また、貿易円滑化についても通常は第3者に差別的な効果を及ぼさない。
 他方、RTAが第3者(域外国)に影響を及ぼす場合には次のようなものがある。RTAにより市場が拡大し成長機会が増大するとの認識等により、投資パターンに影響が及びうる。また、原産地規則が十分に透明性あるいは予見可能性を備えたものでなければ、貿易への障壁となりうる。更に、域内のアンチ・ダンピングに対処するためにAD措置の代わりに競争政策を活用することや特恵的な税関手数料の供与などを規定している場合には貿易歪曲の可能性がある。また、MRAの分野においては、RTAにおける取極めがGATS第7条(差別的な承認の禁止)の規律に服するかどうかにつき議論がある。


4.教訓(Drawing Lessons)

(1) RTAをめぐる動きの結果の多くは、多角的枠組みの強化の必要性を支持するものである。特に、ルール・メーキングの分野でRTAにより異なるアプローチが取られていること、RTAが域外国に対して影響を及ぼしうること、また、取引費用を増大させること等がこれを支持する。

(2) RTAには、多角的枠組みの強化を補完したり、あるいは、より強化された多角的ルールを策定する際の参考となる(drawn upon)という特徴がある。例えば、GATS金融了解は地域レベルでの動きを踏まえて策定された。




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