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経済協力開発機構(OECD)貿易局貿易委員会
環境と公的輸出信用に関する共通アプローチ
(仮訳*

メンバー1は、公的輸出信用の供与の決定を行う際に、プロジェクト及びプロジェクトに関連する資本財・サービス(以下「プロジェクト」という。)が環境に与える影響を特定・評価するため、以下の共通アプローチを適用する。この環境に与える影響とは、住民移転、先住民又は脆弱な人口集団、文化遺産に対する影響を含む(以下「環境影響」という。)。

I.一般原則

i) 適用範囲
  1. 本アプローチは、プロジェクトに対する償還期間2年以上の公的輸出信用に適用される。
ii) 目的
  1. 本アプローチの一般的な目的は:
    • 公的輸出信用政策と環境保護政策(関連する国際的約束を含む)との一貫性を促進し、もって持続可能な開発に寄与すること。
    • メンバーが講ずる手段の衝平性を確保し、潜在的な貿易歪曲を削減するため、公的輸出信用の供与を受けるプロジェクトの環境レビューに関する共通の手続きとプロセスを発展させること。
    • 高い水準の環境保護を達成するため、環境のグッド・プラクティス及び公的輸出信用の供与を受けるプロジェクトに対する首尾一貫した手続きを促進すること。

  2. これらの目的の実施を通じて、メンバーは下記に努める:
    • 関連する法的規定、商業上の機密、その他の競争に係ることに十分配慮しつつ、意思決定における透明性、予測可能性、及び責任を高めること。
    • プロジェクトによる負の環境影響の回避及び緩和を促すこと。
    • プロジェクトの環境側面を考慮することによって、金融リスク評価を強化すること。

II.スクリーニング及びプロジェクトの分類

  1. メンバーは、本アプローチが対象とする公的輸出信用の全ての申請をスクリーニングすることが期待される。このスクリーニングでは、潜在的に負の環境影響を与えるためレビューを必要とするプロジェクト、及び影響を及ぼしやすいセクターあるいは影響を受けやすい地域に立地・近接するプロジェクトの特定を行う。輸出者、金融機関、プロジェクト・スポンサー等プロジェクト関係者は、このスクリーニングを行うために必要な全ての情報を提供すべきである。スクリーニングは、リスク評価の早い段階で行われるべきであり、また、適当と思われる場合には、資本財・サービスが関係するプロジェクト全体を特定するよう努めるべきである。

  2. (本アプローチのパラグラフ8に規定されているとおり)プロジェクトのセンシティビティに十分配慮しつつ、メンバーはプロジェクトのさらなるスクリーニング及び環境レビューを当該メンバーのシェアが1千万SDR超のプロジェクトに集中して行うことができる。

  3. さらなるスクリーニングとは以下であるべき:
    • プロジェクトが有する潜在的な環境影響の特定を行うこと。
    • プロジェクトが有する潜在的な負の環境影響についての十分な情報が提供されているかどうかを決定し、十分でない場合は、さらなる情報提供を依頼すること。
    • プロジェクトの環境レビューの必要性の有無を決定し、環境レビューが必要な場合には、その環境レビューの度合いを決定すること。

  4. 提供されるべき情報には以下が含まれるべき:
    • プロジェクト関係者の特定とその関係者の役割の明確化。
    • プロジェクトの概要(例:セクター、規模、目的、新規プロジェクトか既存事業の拡張といったようなプロジェクトの類型)。
    • 環境上影響を受けやすいサイトに近接しているか等のデータを含む、プロジェクトの立地に関する情報。

  5. メンバーは、必要とされる環境レビューの度合いに応じてプロジェクトを分類すべき:
    • カテゴリーA:著しい負の環境影響を生じる可能性を有するプロジェクトはカテゴリーAに分類される。影響は、物理的工事が行われるサイトや施設の領域を越えた範囲に及び得る。本カテゴリーは、原則として、影響を及ぼしやすいセクターに属するプロジェクト又は影響を受けやすい地域に立地・近接するプロジェクトを含むべきである。影響を及ぼしやすいセクター及び影響を受けやすい地域の例示リストは、別表Iとして添付されている。
    • カテゴリーB:カテゴリーAに属するプロジェクトと比較して、負の環境への影響が小さいプロジェクト。一般的に影響はサイトそのものにしか及ばず、非可逆的影響は少なく、通常の方策で対応できると考えられる。
    • カテゴリーC:負の環境影響が最小限か、又は全くないと考えられるプロジェクト。

III.環境レビュー

  1. 環境レビューを行う際には、メンバーは、輸出者、金融機関、プロジェクト・スポンサーといったプロジェクトの適切な関係者に対して、プロジェクトが有する潜在的な環境影響に関連してメンバーが必要とする環境関連情報の種類を示すべき。この情報の種類には、適当と思われる場合、環境アセスメント報告書(EIA報告書)の必要性も含まれる2。提供される情報には下記が含まれるべき:
    • 潜在的な環境影響(例:大量の排気、排水、廃棄物、又は騒音の発生、天然資源の乱用、住民移転、土地利用)。
    • プロジェクト関係者が当該プロジェクトに適用しようと意図している環境基準、運用、手続き。
    • 当該プロジェクトの適切なステークホルダーとのパブリック・コンサルテーションの結果。

  2. EIA報告書の提出が必要とされる場合は、当該EIA報告書は、国際金融機関(脚注2参照)のガイドラインにおいて言及されている関連項目につき記載されるべきであり、別表IIはそのようなガイドラインの例示である。

  3. カテゴリーAに属するプロジェクトに対する環境レビューは、負の環境影響の回避、最小化、緩和、あるいは代償及び環境パフォーマンス改善のための措置も含め、プロジェクトが有する潜在的な正負の影響を確認すべきである。影響を受けやすい地域に立地又は近接するカテゴリーAのプロジェクト及び影響を及ぼしやすいセクターに属する大規模な新規プロジェクトに関しては、メンバーはEIA報告書を要求することが期待される。プロジェクト・スポンサーはこのEIA報告書の準備に責任を有する。

  4. カテゴリーBに属するプロジェクトに対して行われる環境レビューの範囲は、プロジェクト毎に異なり得る。カテゴリーAに属するプロジェクトと同様、環境レビューは負の環境影響の回避、最小化、緩和、あるいは代償及び環境パフォーマンス改善のための措置を含め、プロジェクトが有する潜在的な正負の環境影響を確認すべきである。

  5. カテゴリーCに属するプロジェクトに対しては、スクリーニングより先の行為は必要としない。

  6. パラグラフ9に則して提供された情報のレビューを行う際に、メンバーは、参照点又はベンチマークとして、国際的な基準3に反映されているグッド・プラクティスの例又は同等のプロジェクト所在国基準を使用すべきである。これらの例は、新規プロジェクトだけでなく、環境に重大な影響を与える既存プロジェクトへの改修、増設にも適用されるべきである。

  7. ベンチマーク・プロセスの整合性を確保する観点から、メンバーはプロジェクトが下記の要領で評価されるべきと認識する:
    • プロジェクトはプロジェクト所在国基準を遵守すべき;
    • メンバーが国際的な基準を遵守していると決定したプロジェクトは、通常、さらなるレビューは行われない;
    • プロジェクトのごく一部をなす財・サービスに対して公的輸出信用を供与するメンバーは、当該メンバーの国内環境基準を適用することができる;
    • 国際的な基準より緩い基準を適用することが適切と考えるメンバーは、パラグラフ21において規定されている報告においてその理由を示すべき。

IV.評価と決定

  1. メンバーは、スクリーニング及び環境レビューの結果得られた情報を評価し、さらなる情報を要求するかどうか、公的輸出信用の供与を行うかどうか及び仮に公的輸出信用の供与を行う場合は、条件(例:緩和措置、特約条項、モニタリングの必要性)を付けるかどうか決定すべきである。

  2. メンバーは、公的輸出信用の供与に際して付した全ての条件が確実に遵守されるよう、適切と思われる場合には、プロジェクトの実施状況をモニタリングするための手続きが適切に設けられるよう確保すべきである。

V.情報交換及び情報公開

  1. メンバーは、メンバー間の競争条件及び商業上の機密に伴う制約に配慮しつつ、以下を行うことが期待される:
    • 国内ECAの環境政策に関する声明・原則及び手続きガイダンスの公表。
    • 適当と思われる場合には、ステークホルダーとの意見交換。
    • プロジェクトの環境レビューに対する共通の立場を確立する観点から、適当と思われる場合には、情報共有を行うとともに、メンバーによって容認された環境基準に関する、協調金融あるいは競争関係にある他のメンバーからの求めに対して適時に回答を行うこと。
    • プロジェクト・スポンサーに対して、環境影響に関する情報を対外公表するよう奨励すること。
    • カテゴリーA及びBに分類されたプロジェクトに関する情報を、各メンバーにおける情報公開に関する国内法の範囲内で、少なくとも毎年対外公表すること。

  2. メンバーは、併せて以下を行うべき:
    • 共通アプローチの観点からOECD輸出信用及び信用保証部会によって採択された「大規模プロジェクトに関する環境情報交換の合意」の手続きを本アプローチに照らして見直すこと。
    • 本アプローチの運用に関し適切なステークホルダーと定期的な意見交換を行うこと。
    • 本アプローチに基づく経験をメンバー以外の国と共有すること。
    • 商業上の機密に十分配慮しつつ、本アプローチのパラグラフ21によってなされるメンバーからの報告に基づく包括的な情報を、毎年対外公表すること。

VI.本アプローチに係る報告とモニタリング

  1. メンバーは以下を期待される:
    • 一定の期間を経たところで本共通アプローチの経験を国家レベルでモニタリング及び評価を行い、本アプローチのパラグラフ14及び15において規定されているベンチマーク・プロセスを要するプロジェクトに適用された基準等にかかる経験を他のメンバーと共有すること。
    • 国家レベルでプロジェクトの環境影響の問題に取組むための手続きを強化及び改善すること、並びにこのための適切なリソースの配分をECAに奨励することを継続すること。

  2. メンバーは、毎年、事後にECGに対して以下を報告しなければならない:
    • カテゴリーAに分類されたプロジェクトは別表IIIに則して報告を行う。
    • カテゴリーBに分類されたプロジェクトで、本アプローチのパラグラフ5に規定されている敷居値を上回るプロジェクトは別表IVに則して報告を行う。

  3. OECD事務局は、メンバーが提出した年次報告の編集を通じて、本アプローチの実施に関するモニタリングを行い、ECGに対して毎年報告を行なうこととする。

  4. ECGは、本アプローチに基づく経験に鑑み本アプローチを強化するため、本アプローチの全項目の見直しを遅くとも2003年末までに行わなければならない。

別表I

影響を及ぼしやすいセクター及び影響を受けやすい地域の例示リスト

以下の実例リスト4は、網羅的なものではないが、影響を及ぼしやすいセクターと影響を受けやすい地域の例示である。

「1.本リストは、以下のカテゴリーにおける『新規』または大規模な増設・改修事業に適用する。」

  1. 原油精製所(原油から潤滑剤のみを製造する事業は除く)及び日量500トン以上の石炭または瀝青頁岩のガス化及び液化施設。

  2. 火力発電所及び熱出力300MW以上の燃焼施設。原子力発電所及びその他の原子炉(連続熱負荷が最高1kWを超えない核分裂性物質及び核分裂性アイソトープ転換可能物質の生産・転換研究施設は除く。)。

  3. 核燃料の生産・濃縮、被爆物質の再処理、放射性廃棄物の貯蔵・処分・処理専用設備。

  4. 大規模な鋳鉄及び鉄鋼の初期熔解精錬設備、大規模な非鉄金属生産設備

  5. アスベスト抽出設備、アスベスト及びアスベスト含有物質の処理・変換設備。完成品ベースで年間2万トン超のアスベスト・セメント生産設備。完成品ベースで年間50トン超の摩擦材生産設備。その他年間200トン超のアスベスト使用設備。

  6. 殺虫剤及び危険物質・有害物質の生産・輸送を含む総合化学設備

  7. 自動車道路、高速道路、長距離鉄道の建設及び2,100m以上の滑走路を有する空港の建設

  8. 大口径の石油・ガスパイプライン

  9. 海港、内陸水路及び1,350トン以上の大型船が通行可能な内陸水路港

  10. 害廃棄物及び危険廃棄物の焼却、化学処理、埋め立てのための処理設備

  11. 大規模ダム及び貯水池

  12. 年間10百万立方メートル以上の地下水抽出活動

  13. 風乾重量日量200トン以上のパルプ及び紙の製造業

  14. 金属鉱石または石炭の大規模鉱山・抽出・処理

  15. 炭化水素生産

  16. 石油、石油化学あるいは化学製品の大規模貯蔵設備

  17. 大規模伐木材搬出

  18. 大規模排水処理設備

  19. 一般固体廃棄物処理設備

  20. 大規模観光事業開発

  21. 大規模送電

  22. 大規模埋め立て

  23. 以前に開発の手が入っていなかった土地利用の強化または開発を伴う大規模農業/造林

  24. 皮なめし設備

2.[...]影響を受けやすい地域は、国立公園のほか、湿地、考古学的価値を有する地域、浸食や砂漠化の傾向がある地域、民族にとって重要な場所等の国や地域の重要な保護地域を含む。」


別表II

環境アセスメント報告書の例示

環境アセスメント報告書の対象範囲及び詳細さのレベルは、そのプロジェクトが与え得る影響に応じて決まるべきもの。環境アセスメント報告書には以下の項目が含まれるべきである(順不同)。

  • 概要:重要な結果と推奨される行動について、簡潔に述べる。

  • 政策的、法的、行政的枠組み:環境アセスメントが実施される際の政策的、法的、行政的枠組みを述べる。

  • 案件の記述:提出案件、及びその地理的、生態学的、社会的、時間的背景を簡潔に記述する。プロジェクトサイト外で必要となり得る投資(例:専用パイプライン、アクセス道路、発電所、給水設備、住宅、原材料及び製品保管施設等)についての記述も全て含まれる。また、住民移転計画または社会開発計画の必要性を明らかにする。通常は、プロジェクトの地域とプロジェクトが与える影響範囲を示す地図を含む。

  • 基本情報:調査地域の特性を評価し、関連する物理的、生物学的、また社会経済的条件を記述する。プロジェクトが開始する前から予期されている変化も記述に含む。また、プロジェクト地域内での、しかしプロジェクトとは直接関係のない、現在進行中及び提案中の開発行為も考慮に入れる。ここで与えられる情報はプロジェクトの立地、設計、運営、緩和対策に関する決定に関わるものであるべきである。数値の正確さ、信頼度及び情報源についてもこの節に記される。

  • 環境への影響:プロジェクトが与えうる正及び負の影響を、可能な範囲で定量的に予測・評価する。緩和対策及び緩和不可能な未解決の負の環境影響全てを特定する。環境を向上させる機会を探る。入手可能な情報の範囲並びにその質、重要な情報の欠落及び予測値に伴う不確実性を認知、評価する。また、更なる配慮を要しない事項を特定する。

  • 代替案の分析:プロジェクトの立地、技術、設計、運営についての有効な代替案(「プロジェクトを実施しない」案を含む)を、それぞれの代替案が環境に与えうる影響、その影響の緩和可能性、初期および経常経費、地域状況への適合性、及び必要となる制度整備・研修・モニタリングの観点から、系統的に比較する。それぞれの代替措置について、環境影響を可能な範囲で定量化し、可能な場合は経済評価を付す。特定のプロジェクト設計案を選択する根拠を明記し、望ましい排出レベル及び汚染防止・削減案の正当性を示す。

  • 環境管理計画(EMP):建設・操業期間中に負の影響を除去相殺、削減するための緩和対策、モニタリング、及び制度の強化を扱う。

  • 協議:協議会の記録。影響を受ける人々、地元の非政府組織(NGOs)、及び規制当局が情報を与えられた上で有する見解を得るために行われた協議の記録も含む。

別表III

報告フォーム:カテゴリーA

メンバー名:
年:
プロジェクト名/プロジェクトの詳細な概要 プロジェクトの種類及びセクター プロジェクト金額と契約金額(MSDR) 実施した環境審査の種類/EIA提出の有無 適用した基準/ベンチマーク 主要な環境要素(排出レベル等) 考慮すべきその他の要素 環境審査の結果
               


別表IV

報告フォーム:カテゴリーB

メンバー名:
年:
プロジェクト名/プロジェクトの詳細な概要 プロジェクトの種類及びセクター プロジェクト金額と契約金額(MSDR) 実施した環境審査の種類 適用した基準/ベンチマーク
         


* 本仮訳は便宜上作成したものであり正確な意味を知るためには原文を参照する必要があります。

1 「メンバー」とは、OECDメンバー国のうち、2002年1月1日付で共通アプローチを自主的に実施する意図を示したものをいう。

2 プロジェクトのごく一部をなす輸出に対して公的輸出信用を供与するメンバーは、本アプローチの規定に基づき、その他のメンバー、国際金融機関(例:世銀グループ、地域開発銀行(特に、欧州復興開発銀行、アフリカ開発銀行、アジア開発銀行、米州開発銀行))、あるいは、メンバー国の開発機関によって実施される環境レビューを考慮することができる。

3 関連する国際金融機関(例:世銀グループ、地域開発銀行(特に欧州復興開発銀行、アフリカ開発銀行、アジア開発銀行、米州開発銀行))による基準、あるいは、国際的に認知されている他の環境基準(以下「国際的な基準」という。)。

4 パラグラフ1及び2の出典:「EBRD環境政策と手続」
http://www.ebrd.com/about/policies/enviro/policy/main.htm



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