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国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約
(OECD外国公務員贈賄防止条約)の概要

平成29年10月

1.背景

 ロッキード事件を契機に、米国は1977年、外国公務員に対する商業目的での贈賄行為を違法とする「海外腐敗行為防止法」を制定し、国連、OECD等においても各国の取組を要請しました。その後、米国政府は経済界・議会の意向により、次第に各国への働きかけを強化しました。近年の企業活動のグローバル化・ボーダーレス化の進展に伴い、海外市場での商取引の機会の維持、獲得を図るには、製品やサービスの価格や質による公正な国際競争が必要であり、贈賄、すなわち不正な利益供与という腐敗した行為は防止すべきという問題意識が国際的にも高まりました。

2.これまでの経緯

(1) 本条約は、97年7月よりOECDにて交渉が開始され、11月にコンセンサスにより採択されました。その後、12月にパリで行われた閣僚レベルによる署名式において、日本を含む33ヶ国が本条約に署名し(豪州を除く、当時のOECD加盟国28ヶ国とブルガリア、チリ、アルゼンチン、ブラジル、スロバキア(当時非加盟国)。なお、豪州はその後、98年12月7日に署名)、本条約はその後99年2月に発効しました。

(2) 日本では、本条約の締結について98年5月22日に国会の承認を得、また、9月に本条約の担保法である不正競争防止法の一部を改正する法律が成立した後、10月13日に本条約を2番目に締結し、99年2月15日に我が国について発効しました。


3.現在の締約国

   2017年10月現在、本条約の締約国は43ヶ国。具体的な国名は下記のとおりです。
アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブラジルブルガリア、カナダ、チリ、コロンビアコスタリカ、チェコ共和国、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イスラエル、イタリア、日本、韓国、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ロシア、スロバキア共和国、スロベニア、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、英国、米国(太字はOECD非加盟国)


4.本条約の概要(主要規定はこちら)

(1) 贈賄行為の犯罪化
 本条約では、不当な利益の取得のために外国公務員に対して金銭等の不当な利益を供与することを締約国の国内法において犯罪と規定することが求められています。日本においては、不正競争防止法第18条において、外国公務員等に対する不正な利益の供与等を禁止しています。

(2) 制裁の実施
 本条約では外国公務員に対する贈賄行為には刑罰を科すことが求められています。
(イ)条約の対象範囲
 本条約第4条に従い、日本においては、原則として日本国内において外国公務員への贈賄行為が行われた場合に(贈賄を行った者が日本人か外国人かは問わない。)これを処罰の対象としています。例えば、日本の商社『甲』に勤める社員『乙』が、日本国内において、X国の高官に対して、商業上の利益を得ることを目的に、金銭等を渡すなどの不当な方法での利益の供与、又はその申込み若しくは約束を行った場合には、社員『乙』が不正競争防止法違反で処罰されることになります。また、商社『甲』が法人であれば罰金が科されます。受け取ったX国の高官については、本条約は贈賄を行った側のみを処罰対象としているので本条約の処罰対象になりません。
 さらに、2004年の不正競争防止法改正により、日本国民が行った日本国外での贈賄行為についても外国公務員贈賄罪の対象となりました。
(ロ)制裁の内容
 本条約は、制裁の具体的な内容については、各締約国の判断に委ねています。日本においては、不正競争防止法により、自然人については、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又はこれらの併科、法人については、3億円以下の罰金が科されることになっています。また、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律により、外国公務員への贈賄行為により供与された財産や当該行為によって得られた収益も没収の対象となり得ます。

(3) 犯罪人引渡し
 本条約第10条により、外国公務員に対する贈賄行為は、締約国間の犯罪人引渡条約における引渡犯罪とみなされます。日本でも、逃亡犯罪人引渡法等に基づき、引渡が行われることになります。




不正競争防止法第18条第1項: 「何人も、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又はその地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならない。」






本条約の主要規定の概要
及び我が国の担保状況(主要法令)


(1) 外国公務員に対する贈賄(第1条)

 締約国は、国際商取引において商取引又は他の不当な利益を取得し又維持するために、外国公務員に対し、金銭上又はその他の不当な利益を申し出、約束し又は供与することを、自国の法令の下で犯罪とするために必要な措置をとる。(不正競争防止法第18条、刑法第8条、第60-第65条)

(2) 法人の責任(第2条)

 締約国は、自国の法的原則に従って、外国公務員に対する贈賄について法人の責任を確立するために必要な措置をとる。(不正競争防止法第22条)

(3) 制裁(第3条)

 締約国は、外国公務員に対する贈賄について、効果的で、均衝がとれたかつ抑止力のある刑罰を科し、また、賄賂及び贈賄を通じて得た収益等の押収若しくは没収又は同等な効果を有する金銭的制裁の適用のために必要な措置をとる。(不正競争防止法第21条及び第22条)

(4) 裁判権(第4条)

 締約国は、自国の領域内において外国公務員に対する贈賄が行われた場合においてこの犯罪についての自国の裁判権を設定する。また、国外において自国の国民によって行われた犯罪について裁判権を設定している締約国は、同一の原則により、外国公務員に対する贈賄についても、国外において自国民によって行われた場合に自国の裁判権を設定するため、必要な措置をとる。(刑法第1条、同第3条、不正競争防止法第21条第6項)

(5) 出訴期限(第6条)

 外国公務員に対する贈賄に適用される出訴期限は、この犯罪の捜査及び訴追のために適切な期限を与えるものとする。(刑事訴訟法第250条)

(6) 資金洗浄(第7条)

 資金洗浄に係る法制の適用において自国の公務員に関する贈賄又は収賄を前提犯罪としている締約国は、外国公務員に対する贈賄についても、同一の条件で資金洗浄に係る法制を適用する。(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第2条2及び第10条)

(7) 会計(第8条)

 締約国は、自国の法令の範囲内で、外国公務員に対して贈賄を行い又はその贈賄を隠蔽することを目的として、簿外勘定を設定し、架空の支出を記載し、不正な書類を使用すること等を禁止するため必要な措置をとり、企業の帳簿、財務諸表等における欠落や虚偽の記載に関し、効果的で、均衝がとれたかつ抑止力のある罰則を設ける。(財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則第5条、会社法第976条、金融商品取引法第10条、第18条、第22条、第24条の4、第172条、第172条の2、第172条の4、第197条、第207条、公認会計士法第30条、第34条の21)

(8) 法律上の相互援助(第9条)

 締約国は、国内法及び関連する条約等に基づき最大限に可能な範囲で、捜査、刑事手続及び刑事手続以外の手続について、迅速かつ効果的な法律上の援助を他の締約国に与える。(国際捜査共助法、外国裁判所の嘱託に因る共助法)

(9) 犯罪人引渡し(第10条)

 外国公務員に対する贈賄は、締約国の国内法及び締約国間の犯人引渡条約における引渡犯罪とみなされる。(逃亡犯罪人引渡法、日米犯罪人引渡条約、日韓犯罪人引渡条約)

(10) 監視及び事後措置(第12条)

 締約国は、この条約の完全な実施を監視し及び促進するため、組織的な事後措置の計画を実行することに協力し、事後措置の計画及び費用を負担する。当該計画は、締約国がコンセンサスにより別段の決定を行わない限り、国際商取引における贈賄に関する作業部会の枠組みにおいて、その付託事項に基づき、実行する。

(11) 効力発生(第15条)

 OECDの輸出額上位10ヶ国の中の5ヶ国であって、その輸出額の総計がこれらの10ヶ国の輸出額の総額の60%以上を占めるものにより批准書等の寄託が行なわれた日から60日後に効力発生が生ずる。

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