(1) |
経済の二重構造と資源再配分の必要性
(イ) |
80年代初頭以降、資本・労働など生産性の伸びが低下した結果、日本経済は他の先進国と比較して顕著に非効率なものとなっている。日本経済は、生産性の高いダイナミックな輸出セクターと、他国と比較して生産性の低い(保護された)国内部門の二重構造となっている。
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(ロ) |
日本経済の二重構造の背景には、競争法制の適用の不十分さ、不確実で制約的な規制等により資源配分が効率的に行われていないことがある。銀行システムは、生産性の低い活動へ資金供給を行うことによって、資源の効率的な移動を妨げた。政策議論は、しばしば次の鍵となる技術や輸出セクターの問題に集中するが、重要なのは非効率な国内部門の構造改革を進め、経済の二重構造を解消することである。
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(2) |
規制改革
(イ) |
政府がサービス部門の規制改革を通じ、参入障壁の削減を進めているが、こうした規制改革は一層進められる必要がある。
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(ロ) |
構造改革特区は、発展を押し留める規制を特定し、規制が改革された場合の影響をデモンストレーションする効果を創出することから、実施されるべき。各中央省庁がこのプログラムを支配し、地域経済が独自に前進しようとする動きに利益集団が介入することは避けられるべき。
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(3) |
貿易・投資・競争政策
(イ) |
経済のファンダメンタルズを健全化するという観点からは、貿易・競争政策も重要。競争政策の執行は、公正取引委員会のスタッフ拡大や強制捜査権限の付与などにより強化されるべき。公正取引委員会の事務局は独立組織となるべき。
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(ロ) |
競争政策の強化と同様に、貿易政策と対内直接投資に向けた姿勢も重要。多国間交渉の補完的な役割として、政府が広範囲な自由貿易協定を模索していることは重要な動きである。ただしこうした動きは、とりわけ農業部門などの改革を伴うべきであり、それ抜きではこうした部門は他国のケース同様障壁として残り続ける。
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(ハ) |
対内直接投資は規制などの障壁によって極めて低水準に止まっている。規制を撤廃し投資環境を改善することは、競争と資源配分の改善を促し、国内・海外企業に同様に利益をもたらす。
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(4) |
人的資本
(イ) |
労働力の再配置にはより活発で大きな労働市場が必要。企業内に限定された年金、年功賃金、強力な雇用者保護は、労働力を新たな方向に向かわせることや、人的資本形成に向けたシグナルの提供を妨げてきた。
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(ロ) |
さらに、日本は高齢者の再雇用という厳しい問題に直面。長期的には、企業はより業績に連動した賃金システムに移行していく必要がある。この結果賃金カーブがフラット化し、高齢者雇用に対する負のインセンティブは減少する。
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(ハ) |
成長のためには人的資本や技術が重要。近年は企業内訓練が減少する一方、企業特定的でない訓練を個人が模索するインセンティブが上昇しており、政府はこうした需要に対応することが必要となっている。
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