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OECD対日経済審査報告書(概要)


平成14年11月19日


 OECD経済開発検討委員会では、加盟国等の経済情勢及び政策動向を定期的に審査しています。本日、日本経済についての報告書(OECD Economic Surveys "Japan")が公表されました。この報告書の「評価と提言」部分の要旨は以下のとおりです。


1.マクロ経済の現状

(1) 景気の現状と見通し

(イ) 2002年半ばの日本経済は循環的な回復局面にあるものの、深刻なデフレ状況が続いている。景気回復の基盤は狭く、90年代を通じた低成長パターンを打ち破れていない。資本の効率性の低さや労働市場の弱さが、投資や個人消費を抑制し続ける見込み。

(ロ) より最近では、日本・その他諸国における株安、円高、輸出増加テンポの鈍化などの複合的要因が、2003年までの日本経済の成長見通しを弱いものにしている。2004年までの日本経済は年率0.5-1.0%程度の成長とデフレ傾向が続く見通し

(2) リスク

世界経済のより緩やかな成長の兆しや金融市場の一層の悪化の可能性などを背景に、先行きのリスクは予想以上に悪化に向かうダウンサイドリスクがより大きくなっている。日本は経済システムの機能を迅速かつ抜本的に改善し、デフレを克服するという困難な課題に直面し続けている。


2.マクロ経済政策の課題

(1) 全体観

(イ) 90年代を通じた非効率な政策により、マクロ経済政策の選択肢は厳しく制約されている。財政赤字はこれ以上の増加がより多くの家計貯蓄に結びつきかねず、短期の政策金利は実質ゼロの水準にある。銀行システムは脆弱であり銀行に対する国民の信頼は低い。バブル以降、経済再生を約束する構造改革や財政手段を含む多くの緊急プログラムが実施されてきたが、これらは資源の不適切な配分を明確に適正化していない。こうした結果、日本の中期的な成長の見込みは貧弱なままである。

(ロ) 以上の結果、日本経済を持続的な成長に復帰させる為の決定的な手段はなく、全ての政策領域において整合的な対応を実施し、その相乗効果を生み出すことが必要。金融政策は流動性を一層増加させる追加的手段によってデフレ対応を先導すべき。財政政策は現時点では景気中立な運営が適切であり、更なる景気刺激手段は避けられるべき。加えて、政府は確実に財政再建を行いうる中期的な戦略を明らかにすることが必要。

(ハ) 構造改革は、銀行改革を支え、マクロ経済政策の効率性を高め、資源の再配分を促進する上での鍵であるが、その実行は大胆さに欠け、加速が必要である。構造改革は日本がダイナミズムと成長を高めうる唯一の道であり、日本政府はその努力を続けなければならない。

(2) 金融政策

(イ) 日本銀行は、デフレに対応するため、2001年ゼロ金利下における量的緩和という未踏の領域に乗り出すなど重要な動きをみせた。こうした動きは金融市場の崩壊を防いだが、現時点ではこれらが貨幣供給量や実体経済に与えた影響を明確に認めることは困難である。

(ロ) ダウンサイドリスクの高まりや短期にデフレが収束する見通しが乏しいことに鑑み、日本銀行は更なる未踏の領域へ踏み込む必要がある。これは、銀行部門の問題解決に向けた政策手段との関連でも非常に重要。日銀は、当座預金残高の目標額の一層の引き上げを行うべきであり、国債購入の増額や購入対象となる資産の範囲の拡大も選択肢の一つとなりうる。

(ハ) デフレ収束に向けたタイムフレームの導入やインフレ目標の設定は、経済のおかれた状況が改善し金融政策が経済に与える影響に関する不確実性が減少した際には、デフレ収束に有効となろう。

(3) 財政政策

(イ) 2003年の財政スタンスは概して景気中立的となる見込みだが、政府債務はGDP比150%以上に増加することが予想される。債務残高の増大に鑑みると、短期的にでさえ採るべき手段はほとんどない。

(ロ) 2003年以降の財政政策における中心的な問題は、財政を信頼し得る再建路線に乗せうるかどうかである。政府の「構造改革と経済財政の中期展望」における財政再建の規模は、十分なものには程遠い財政再建に向け、「改革と展望」はより野心的な目的と具体性を持ち、信頼を高めるために短期の支出目標を設定することなどが必要である。

(ハ) 長期的な税収増加のために、課税控除の簡素化、課税ベースの拡大、経済活動を活発化するインセンティブを与える課税システムなど、根本的な税制改革が追求されるべきである。


3.金融システム

(イ) 2001年9月以降に当局が行ったより厳格な不良債権へのアプローチによって、不良債権問題は認識されていた以上に厳しいことが明らかになった。

(ロ) 政府は10月にペイオフ解禁の2年延期を宣言したが、ペイオフ解禁は銀行・預金者双方が直面するモラル・ハザードのリスクに取り組む上で重要である。

(ハ) 金融当局はいくつかの分野で前進が不可欠である。具体的には、銀行に対し資産分類を強化し現実的な引当を行うべく圧力を高めること、銀行の事業リストラを強制し、ガバナンスや経営構造の改革を強く要求することなどが必要である。これらは追加的な公的資金投入を要する可能性があるが、その場合は経営者の交代及び株主の減資を含む厳しい条件が付与されるべきである。(この資料作成時には、2004年度までの不良債権処理を達成するための手段が検討されているところである。)

(ニ) 不良債権処理に加え、健全な銀行システムには銀行の収益性改善が必要。しかし、銀行はリスクをとりえず、また適正な金利を課すことが困難な中小企業に対する貸し出しを増大させるよう圧力を加えられている。また、公的金融機関の存在は銀行が戦略を立てる上での自由度を厳しく狭めており、今まさに対応がなされるべきである


4.日本経済の成長の源泉

(1) 経済の二重構造と資源再配分の必要性

(イ) 80年代初頭以降、資本・労働など生産性の伸びが低下した結果、日本経済は他の先進国と比較して顕著に非効率なものとなっている。日本経済は、生産性の高いダイナミックな輸出セクターと、他国と比較して生産性の低い(保護された)国内部門の二重構造となっている。

(ロ) 日本経済の二重構造の背景には、競争法制の適用の不十分さ、不確実で制約的な規制等により資源配分が効率的に行われていないことがある。銀行システムは、生産性の低い活動へ資金供給を行うことによって、資源の効率的な移動を妨げた。政策議論は、しばしば次の鍵となる技術や輸出セクターの問題に集中するが、重要なのは非効率な国内部門の構造改革を進め、経済の二重構造を解消することである。

(2) 規制改革

(イ) 政府がサービス部門の規制改革を通じ、参入障壁の削減を進めているが、こうした規制改革は一層進められる必要がある。

(ロ) 構造改革特区は、発展を押し留める規制を特定し、規制が改革された場合の影響をデモンストレーションする効果を創出することから、実施されるべき。各中央省庁がこのプログラムを支配し、地域経済が独自に前進しようとする動きに利益集団が介入することは避けられるべき。

(3) 貿易・投資・競争政策

(イ) 経済のファンダメンタルズを健全化するという観点からは、貿易・競争政策も重要。競争政策の執行は、公正取引委員会のスタッフ拡大や強制捜査権限の付与などにより強化されるべき。公正取引委員会の事務局は独立組織となるべき。

(ロ) 競争政策の強化と同様に、貿易政策と対内直接投資に向けた姿勢も重要。多国間交渉の補完的な役割として、政府が広範囲な自由貿易協定を模索していることは重要な動きである。ただしこうした動きは、とりわけ農業部門などの改革を伴うべきであり、それ抜きではこうした部門は他国のケース同様障壁として残り続ける。

(ハ) 対内直接投資は規制などの障壁によって極めて低水準に止まっている。規制を撤廃し投資環境を改善することは、競争と資源配分の改善を促し、国内・海外企業に同様に利益をもたらす。

(4) 人的資本

(イ) 労働力の再配置にはより活発で大きな労働市場が必要。企業内に限定された年金、年功賃金、強力な雇用者保護は、労働力を新たな方向に向かわせることや、人的資本形成に向けたシグナルの提供を妨げてきた。

(ロ) さらに、日本は高齢者の再雇用という厳しい問題に直面。長期的には、企業はより業績に連動した賃金システムに移行していく必要がある。この結果賃金カーブがフラット化し、高齢者雇用に対する負のインセンティブは減少する。

(ハ) 成長のためには人的資本や技術が重要。近年は企業内訓練が減少する一方、企業特定的でない訓練を個人が模索するインセンティブが上昇しており、政府はこうした需要に対応することが必要となっている。


本資料は概要であり、詳細については、原文(PDF)PDFをご参照ください。

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