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経済


エコノミック・アウトルック


平成16年5月


 5月11日、OECD事務局は『エコノミック・アウトルック』を公表しました。

 概要は以下のとおりです。

1. 世界経済の現状と見通し

(1) これまでの世界経済の推移
  • 世界経済の成長見通しは改善が続き、その範囲や分野も拡大。前回の景気悪化が比較的小さい規模に止まった背景の一つには、回復の初期段階で中国を始めとするアジア諸国の経済活動が活発であったことがある。
  • ただし、成長の度合いには格差がある。米国・英経済の拡大が非常な勢いを維持し、日本経済も真の回復が進んでいる。アジア、東欧、ラテンアメリカ諸国などの非加盟国経済でも確固とした成長となる一方、独・伊を中心にユーロ圏の主要国で弱い回復となっている。
  • 分野別には、ハイテク関連を中心に世界的に投資が回復。消費は米英で堅調に推移する一方、日本の消費は所得回復の遅れにより弱い状況。ユーロ圏の消費は依然弱い。

(2) 2005年までの見通し
  • 今後の世界経済は、景気回復の動きが拡大。OECD全体の成長率は2004年に3.4%,2005年に3.3%となる見通し。米国は、投資回復の裾野の広がりや堅調な輸出を背景に、潜在成長率を上回る成長が続く。日本経済は輸出の二桁成長に牽引され、80年代以来初の持続的な回復となる。ユーロ圏では輸出回復が国内需要を牽引し、経済活動は徐々に加速する。一方、力強い消費や投資の持ち直しにより、英国経済は堅調な成長が続く。

OECDおよび主要国の実質GDP成長率の推移

  2003年 2004年(見通し) 2005年(見通し)
OECD全体 2.2% 3.4% 3.3%
日本 2.7% 3.0% 2.8%
米国 3.1% 4.7% 3.7%
ユーロ圏 0.5% 1.6% 2.4%
(注)前年比伸び率。
(3) 先行きのリスク要因
  • 名目長期金利は歴史的水準まで低下し、社債や株のリスク・プレミアムもファンダメンタルズの改善、収益拡大、拡張的な金融政策などの好ましい環境を背景に縮少。過去の状況と比較すると、リスク・プレミアムは過度に縮小している。リスク・プレミアムや長期金利が予想を上回る速さで拡大・上昇する場合、これが著しく回復を下押しするリスクがある。
  • 米国の経常収支赤字(2003年にはGDP比5%に接近)は、先行きの主要な緊張要因の一つ。経常赤字の抑制と漸進的な削減には、効率的な為替レートの減価や米国財政赤字の再建などが必要。
  • これ以上の石油価格上昇は、世界経済の回復を抑制するリスクがある。

2.主要国・地域経済の現状と見通し

(1) 米国
  • 米国経済は潜在成長率を上回る成長が持続。実質GDP成長率は2004年に4.7%、2005年に3.7%となる見通し。家計需要は低金利などの要因や先行きの雇用・賃金持ち直しが下支え要因となるものの、幾分鈍化の見通し。一方で、良好なキャッシュフローや金融環境などにより投資回復がITセクター以外に広がるほか、輸出も堅調に推移する。
  • FRBは長期にわたり極度に景気刺激的なスタンスを維持してきた。2004年半ば以降、景気刺激的な金融政策を徐々に撤回し始めることが必要。米国の財政赤字は90年台初頭の歴史的水準まで拡大。政府は2009年までに財政赤字がGDP比1.5%に低下することを予想しているが、こうした前提は楽観的にすぎる。今後べビーブーマー世代が退職年齢に達することを考慮すると、より野心的な財政目標が必要。

(2)
  • 輸出の二桁成長を背景に、2005年までの日本経済は成長が持続する見通し。設備投資は2003年後半の急速な回復テンポからは鈍化するものの、景気拡大の主要な要因であり続ける。失業率は低下するが、これに対する消費の回復は部分的なものに止まる。実質GDP成長率は2004年に3.0%、2005年に2.8%となる見通し。
  • 2005年までの予測期間中にはデフレからの決定的な脱出は見込めない。政策金利は実質的にゼロ近辺で維持される見通し。財政赤字残高が2005年にGDP比で169%という記録的水準に達し、高齢化による強い財政支出増加圧力がすでに顕在化しつつ状況を踏まえると、財政再建は他の諸国と比べてもずっと緊急の課題となっている。

(3) 欧州経済
  • ユーロ圏経済も遅れて回復に向かう。ユーロ件の実質GDP成長率は2004年に1.6%、2005年に2.4%となる。拡大傾向にある国際環境を背景に輸出が増加することに伴い、経済活動は徐々に加速。これにより、設備投資が堅調に推移するとみられるほか、雇用の増加により消費も回復。英国経済は堅調な消費や設備投資回復により堅調な成長が持続。
  • ユーロ圏・英国の財政は、独・仏・伊を中心に悪化。2003年には独・仏の財政赤字はGDP比で4%近辺となった。高齢化関連の支出圧力はより切迫しており、今後、過去の回復期のように財政再建に向けた努力が後退した場合、そうした政策的失敗のコストは近年の場合と比べてずっと大きなものとなる可能性がある。財政収支が赤字の国は、最低GDP比で年0.5%のペースで財政再建を行い、景気回復がしっかりするにつれて、再建ペースを高めていくことが必要。




雇用の海外アウトソーシングと構造政策


  • 先進OECD諸国でサービス部門の空洞化の懸念が浮上。こうした懸念は新しいものではなく、製造業雇用は、60,70年代には日本へ、80,90年代には東南アジア及びラテンアメリカ諸国へ、より最近においては中国に移転されてきた。現在では、情報通信技術(ICT)が、ホワイトカラーのサービス部門雇用の国際的なアウトソーシングを促進している。

  • 足元の回復で雇用の回復が遅れていることから、こうした雇用の海外へのアウトソーシングの防止や抑制を目的とする提案が行われている。米国では、海外へのアウトソーシングを行う企業との政府調達契約を制限するなど、国際的なアウトソーシングを制限する法律が検討中されている。

  • しかしながら、海外へのアウトソーシングは雇用喪失の主要な要因とは言えない。製造業の例でいえば、先進OECD諸国の雇用は減少が続いたが、これは海外移転よりむしろ技術進歩とサービス需要の増大によるところが大きい。

  • 加えて、雇用の海外へのアウトソーシング自身は、新たな雇用を生み出す要因でもある。海外の所得増加の一部は、自国に対する財・サービス需要増となるほか、低下した費用の一部は消費者に還元されるか、再投資に結びつく。また、米国のIT関連の海外へのアウトソーシングは、より高い技術と賃金へと、労働構成をシフトさせている。

  • 海外へのアウトソーシングは、それを行う国と受け入れる国の双方にとって有益なプロセスとなる。

  • ただし、海外へのアウトソーシングの短期的影響は、地域・企業・労働者によって異なる。こうした調整コストの大きさは、産業部門や企業間で労働がいかにスムーズに調整されるかにかかっている。労働のスムーズな調整のためには、柔軟な労働市場や、学校や生涯学習の役割強化、研究開発に適した環境、競争的な市場、活発な起業やサービス雇用の創出に結びつく環境などが重要である。

  • サービスの海外へのアウトソーシングを抑制する政策は、消費者や政府にとってのサービス価格をより高いものとするばかりか、これにより中国や東欧のコールセンターへのアウトソーシングが加速するなど、中長期的には雇用の保全という目的においても失敗となる可能性がある。


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