(イ) |
石油価格に関する喫緊のリスクは沈静化。より広範な地政学的不確実性も徐々に解消。
- 戦争の早期段階で石油価格は急落し、4月初旬までの時点では1バレル25ドル近辺を上下している。今後1年間についても市場は石油価格がこの水準にとどまることを予想。イラク攻撃が石油価格に与える喫緊のリスクが沈静化し、イラク戦争の余波によるより広い不確実性が次第に解消する見通しであることから、最近の石油価格の一時的な高騰が生産と物価に与える影響は限定的。投資家及び消費者の信頼は徐々に回復し、需要にプラスの影響を与える。
|
(ロ) |
金融・財政政策は需要を下支え。金融市場からの逆風は概ね解消。
- 景気悪化に促進され、大幅な需要下支え策が実施された結果、多くの国では個人消費が比較的堅調に推移した。金融・財政政策は、米国を中心に景気を下支えし続ける見通しである。また、株式市場は依然不安定であるものの、前回見通しでみられた金融市場からの逆風はほぼ解消している。
|
(ハ) |
過剰設備は概ね解消。企業の利幅は雇用調整の遅れや企業年金が圧迫
- 過去2年間の投資削減を受け、90年代後半の経済ブーム期に積み上がった過剰設備の大半は解消された模様。しかし、OECDの三大経済圏(米、ユーロ圏、日本)全てで製造業の設備稼働率が過去の平均を下回っていること、経済ブーム期の負債は通信部門を中心に比較的高い水準となっていることが、投資の明確な回復を抑制している。
- 他方で、企業の利幅は労働市場の調整の遅れ(大陸欧州)や企業年金の積み立て(米・英、蘭)によって圧縮されている。こうした背景により、OECD経済の回復は緩やかなものとなり、拡張的なマクロ経済政策に依存することが予想される。
|
(ニ) |
OECD全体の成長率は石油価格の低下やマクロ経済政策の下支えにより、2004年には+3.0%となる見通し
- OECD域内経済の回復は、石油価格の低下やマクロ経済政策の下支えもあり、2003年末以降高まる。しかしその回復は不均衡なものとなる。米国経済は2004年に回復力が加速、これをユーロ圏が追う一方で、日本は実質GDPの成長が2003‐2004年を通じて平均1%に止まる(主要国経済の見通しの詳細は後述)。
|