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OECD「エコノミック・アウトルック」概要


平成15年4月24日


4月24日、OECD『エコノミック・アウトルック』が公表されたところ、概要は以下のとおり。

1.OECD域内経済の見通し

OECD域内の回復は依然はっきりせず。石油価格変動の影響、為替レートの大幅な変動、株価低迷などを背景に、昨年秋の見通しで予測された弱さが予想以上に長引いている。2003年のOECD全体の実質GDP成長率は+1.9%と、前年(+1.8%)をわずかに上回るに止まる。

イラク攻撃が石油価格に与えるより喫緊のリスクが沈静化したこと、イラク戦争の余波によるより広い不確実性が次第に解消すると予想されることにより、最近の石油価格の一時的な高騰が生産と物価に与える影響は限定的に止まる。投資家及び消費者の信頼は徐々に回復、需要にプラスの影響を与える。

OECD域内経済の回復力は、主に石油価格の低下やマクロ経済政策が需要を下支えし続けることにより、2003年末以降高まり、2004年の実質GDPは前年比+3.0%となる。ただし、米国経済が2004年以降に回復力が加速し、これをユーロ圏経済が追う一方、日本経済は実質GDPの成長率が2003‐2004年を通じて平均1%に止まるなど、経済の回復は不均等。

2.先行きのリスクとマクロ経済政策の課題

ただし、先行きは下方リスクが支配的。地政学的な面からは、石油価格急騰に付随する深刻なリスクは後退したが、大幅かつ持続的な石油価格の上昇・下落の可能性は除外し得ない。循環面では、家計のバランスシートへの圧力の高まりにより消費が減退するリスク、企業の収益率の低さにより設備投資回復が遅れるリスク、米国の経常赤字を背景に更なる為替調整が生じるリスクがある。

さらに新たな伝染病に関するリスクが表面化。SARSは、特に中国、香港などで深刻な混乱を惹起。この伝染病の影響は、どれだけ迅速かつ効率的にウイルスを管理下におくことができるかに依存。過去の経験によると、この危機が悪化・持続した場合、最も深刻な国では特定地方や特定部門への影響は甚大となる可能性がある。

3.マクロ経済政策の課題

循環面での回復力の弱さや数々のダウンサイドリスクを背景に、追加的な政策刺激の有効性に関する議論が浮上しているが、政策ミックスはバランスを見直すことが必要。多くの中央銀行は政策金利を歴史的な低水準近くまで引き下げているが、欧州を始めとする国では一層の金融緩和の余地がある。他方、OECD諸国の大半では、財政見通しが悪化。高齢化関連支出の増加により、新たな財政刺激の余地はほとんどない。



1.全体観:緩慢な回復

(1) OECD域内経済の現状

(イ) OECD域内の回復は依然はっきりしない。
  • 石油価格の急激な変動の影響、為替レートの大幅な変動、株価低迷の継続などを背景に、昨年秋の見通しで予測された弱さが予想以上に長引いている。2003年のOECD諸国の実質GDP成長率は+1.9%と、2002年(+1.8%)を限界的に上回るに止まる。
(ロ) 過去よりも厳しい企業部門の調整、地政学的不確実性が影響。
  • 現下の危機においては、1)過去の景気後退期と比較して厳しい企業のバランスシートおよび過剰設備調整の問題、2)イラク危機による地政学的不確実性やその他の地域の安全保障・国際テロに関係するリスクといった、2つの独特の短期的要因が影響している。このうち、後者の要因は、エネルギー価格への影響に加え、既に脆弱な企業・消費者の信頼を損なっている。また両者は、株式市場における、株価バブル崩壊に続く非常に厳しい弱気相場と結びついている。
(2) 先行きの見通し

(イ) 石油価格に関する喫緊のリスクは沈静化。より広範な地政学的不確実性も徐々に解消。
  • 戦争の早期段階で石油価格は急落し、4月初旬までの時点では1バレル25ドル近辺を上下している。今後1年間についても市場は石油価格がこの水準にとどまることを予想。イラク攻撃が石油価格に与える喫緊のリスクが沈静化し、イラク戦争の余波によるより広い不確実性が次第に解消する見通しであることから、最近の石油価格の一時的な高騰が生産と物価に与える影響は限定的。投資家及び消費者の信頼は徐々に回復し、需要にプラスの影響を与える。
(ロ) 金融・財政政策は需要を下支え。金融市場からの逆風は概ね解消。
  • 景気悪化に促進され、大幅な需要下支え策が実施された結果、多くの国では個人消費が比較的堅調に推移した。金融・財政政策は、米国を中心に景気を下支えし続ける見通しである。また、株式市場は依然不安定であるものの、前回見通しでみられた金融市場からの逆風はほぼ解消している。
(ハ) 過剰設備は概ね解消。企業の利幅は雇用調整の遅れや企業年金が圧迫
  • 過去2年間の投資削減を受け、90年代後半の経済ブーム期に積み上がった過剰設備の大半は解消された模様。しかし、OECDの三大経済圏(米、ユーロ圏、日本)全てで製造業の設備稼働率が過去の平均を下回っていること、経済ブーム期の負債は通信部門を中心に比較的高い水準となっていることが、投資の明確な回復を抑制している。
  • 他方で、企業の利幅は労働市場の調整の遅れ(大陸欧州)や企業年金の積み立て(米・英、蘭)によって圧縮されている。こうした背景により、OECD経済の回復は緩やかなものとなり、拡張的なマクロ経済政策に依存することが予想される。
(ニ) OECD全体の成長率は石油価格の低下やマクロ経済政策の下支えにより、2004年には+3.0%となる見通し
  • OECD域内経済の回復は、石油価格の低下やマクロ経済政策の下支えもあり、2003年末以降高まる。しかしその回復は不均衡なものとなる。米国経済は2004年に回復力が加速、これをユーロ圏が追う一方で、日本は実質GDPの成長が2003‐2004年を通じて平均1%に止まる(主要国経済の見通しの詳細は後述)。

OECDおよび主要国の実質GDP成長率の推移
  2002年 2003年
(見通し)
2004年
(見通し)
OECD全体 1.8% 1.9% 3.0%
日本 0.3% 1.0% 1.1%
米国 2.4% 2.5% 4.0%
ユーロ圏 0.9% 1.0% 2.4%
(注)前年比伸び率。


2.先行きのリスクとマクロ経済政策の課題

(1) 先行きのリスク要因

(イ) ただし、先行きは下方リスクが支配的。地政学的な不確実性に加え、循環面では家計のバランスシート悪化により消費が鈍化するリスクや設備投資が回復しないリスクがあるほか、更なる為替調整のリスクも存在。
  • 石油の生産・供給インフラへの深刻な被害が生じるリスクが解消したことにより、石油価格急騰に付随するより喫緊のリスクは後退。しかし、石油価格が大幅かつ持続的に上昇または下落する可能性は除外し得ない。
  • 循環面では、設備投資の回復前に消費が減退するリスクがある。例えば、住宅価格の下落が家計のバランスシートを圧迫する可能性があるほか、更なる株価下落も潜在的な不安定要因。株価がこれ以上下落しない場合でも、年金プランの保有者がその損失規模を徐々に自覚することによって、個人消費が影響を受ける可能性もある。
  • 依然として企業の利幅は極めて小さく、価格決定力も弱いが、このことは投資の更なる延期のみならず、特に欧州においてリストラ等労働市場の調整が加速するリスクを意味する。また、これに続く不確実性の増大は、予防的な貯蓄を増大させる可能性がある。
  • 対外不均衡の存在も懸念材料。米国の経常赤字は巨大かつ増加。80年代末の経験は、必ずしも破壊的でないが、更なる為替調整の可能性を示唆。
(ロ) 地政学的、経済上の緊張に加えて、新たな伝染病に関するリスクが表面化。
  • SARSは、特に中国、香港などで深刻な混乱を惹起。この伝染病が経済に与える影響は、どれだけ迅速かつ効率的にウイルスを管理下におくことができるかにかかっている。SARSはOECDに加盟していないいくつかのアジア諸国の株価や航空・旅行・小売業に悪影響を与え、ニュージーランドやカナダからの旅行にも影響。SARSが最終的にマクロ経済に与える影響は現時点では不明であるが、過去の経験によると、この危機が悪化・持続した場合、最も深刻な国における特定地方や特定部門に重大な影響を及ぼす可能性がある。
(2) マクロ経済政策の課題

(イ) マクロ経済政策は、ポリシー・ミックスの見直しが必要。
  • 循環面での回復力の弱さや数々のダウンサイドリスクを背景に、追加的な政策刺激の有効性に関する議論が浮上。政策ミックスはバランスを見直すことが必要。
  • 多くの中央銀行は政策金利を歴史的な低水準近くまで引き下げている。これ以上の金融緩和は一部の国で国内外の不均衡を拡大する可能性がある一方、欧州を始めとするその他の国では一層の金融緩和の余地がある。
  • OECD諸国の大半では、景気悪化や支出増加、減税、長期的な支出増加圧力への対応の遅れから、財政見通しが悪化。高齢化関連支出の増加により、新たな財政刺激の余地はほとんどない。幾つかの特定的な国では、財政再建は景気に悪影響を与える怖れがあっても遅らせるべきではない。

3.主要国経済の現状と見通し

(1) 日本経済

(イ) 2003-2004年の日本の実質GDP成長率は平均1%に止まる。
(実質GDP前年比 2003年:前年比+1.0%、2004年:同+1.1%)
  • 日本経済の回復は主に輸出回復が牽引するも、厳しい賃金・雇用情勢が消費を抑制することから、2003,2004年を通じて平均1%の伸びに止まる。収益見通しは幾分回復するも、企業リストラの継続は投資を抑制する。
  • デフレ悪化を防ぐためにも、金融政策は流動性拡大を続けることが必要。不良債権問題の問題の解決には、一貫し、より抜本的な努力が必要。2002年末には公的債務残高が同140%を越え、2003年の財政赤字も増加の見通し。多くの企業が過剰設備に直面しているため、設備投資促進のための税額控除が有効でないと考えられることから、新たな減税による景気刺激の効果には疑問が生じている。課税ベースの拡大など税制構造の改善、支出抑制規律の強化が重要。
(2) 米国経済

(イ) 米国経済の成長は2003年に抑制され続けるが、2004年には加速の見通し。
(実質GDP前年比 2003年:前年比+2.5%、2004年:同+4.0%)
  • 米国経済は、設備投資が非常に緩やかながら強まること、緩やかな在庫積み増しや労働市場の弱さ等を背景に回復する見通し。住宅ローン借り換えによる効果が消えることや弱い労働市場を背景に、消費は少なくとも2003年には鈍化。連邦政府支出は大幅に増加するが、その一部は地方政府の支出抑制によって相殺される。
  • 米国の名目金利は過去40年間で最低水準。政策金利引下げの余地は限られており、これ以上の引下げも不要。主に輸出回復に牽引される一方、年に経済の回復力が強まった時点で、政策金利をより景気中立的な方向へ引き上げ始めることが望ましい。財政ポジションの変更は特に米国で顕著。イラク戦争の最終的なコストに関する不確実性を別にしても、支出増加を抑制する中期的なブレーキが欠けていることにより、長期的に財政赤字が相当程度高まるリスクが高まっている。
(3) 欧州経済

(イ) ユーロ圏の成長は2003年は非常に緩やか、2004年に潜在成長率近辺に回復。
(実質GDP前年比 2003年:前年比+1.0%、2004年:同+2.4%)
  • 緩やかな輸出かいゆ輸出回復、低い設備稼働率、収益下押し圧力を背景に、投資が勢いをつけるのは2004年以降となる。消費は、雇用見通しの悪化を背景に当面弱い状況が続くが、失業率上昇に歯止めがかかる2004年に、回復力の一部を取り戻す。
  • ユーロシステムは3月に政策金利を99年の水準まで引き下げたが、コア・インフレ率の低下傾向を考慮すると、政策金利は更なる引き下げの余地がある。2002年のユーロ圏の一般政府財政収支は、予想以下の成長や一部の減税などにより、見通しよりも悪化。漸進的な財政再建を維持することは、政策枠組みへの信頼を保持するだけでなく、今後数年で増大する高齢化関連の支出圧力の観点からも必要である。


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