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OECD「エコノミック・アウトルック」概要


平成14年11月21日


11月21日、OECD「エコノミック・アウトルック」が公表されたところ、概要は以下のとおりです。

1.景気の現状と見通し

(1) 2002年初にみられた景気回復の勢いは鈍化、回復力は弱く不規則な状況。地域的な不確実要因の増大や株価の一層の下落が、2002年後半の家計・企業のコンフィデンスを阻害。

(2) しかしながら、OECD諸国経済が再び景気後退に陥ることはない。既にかなりの財政・金融政策が実施されてきたこと、年末の金融緩和が当面景気を刺激し続ける。2003年以降米国・欧州で再び回復力が高まり、OECD諸国の実質GDPは2002年に+1.5%、2003年に+2.2%、2004年に+3.0%となる見通し。

(3) OECD諸国経済の回復を遅らせているのは、金融市場からの逆風である。株価下落を始めとする最近の金融市場の動向は資金調達コストの上昇や家計資産減少を通じ、設備投資や消費を抑制。会計不祥事やコーポレート・ガバナンス欠如も企業リスクを高めている。

(4) 先行きのリスクは、ダウンサイドリスクが支配的。金融市場における更なるショックが設備投資の回復を一層遅らせるリスク、資産価格の下落が消費を抑制するリスク、国際収支の急激な調整及びドルの大幅な減価が生じるリスク、新興市場の金融市場の混乱、地域的な不確実要因により石油価格が上昇するリスクなどが存在。

(5) 構造改革に向けた努力が加速されるなら、こうしたショックに対するOECD諸国の長期的な耐久力は向上する。

2.主要国・地域経済

(1) 日本経済:予測期間中(2004年まで)の日本経済は弱い状況が続く。リストラの継続や企業の収益率の低さ、厳しい雇用・所得環境を反映して、設備投資や消費の伸びは非常に緩やか。日本の実質GDPは2002年に▲0.7%となった後、2003年に+0.8%、2004年は+0.9%となる見通し。

(2) 米国経済:株価下落や労働市場の弱さを背景に消費による下支えが衰え、成長は幾分鈍化。しかし、輸出市場の回復や企業のバランスシート改善を背景に設備投資が回復することにより、米国経済の成長率は2003年以降徐々に高まる見通し。実質GDPは2002年に+2.3%となった後、2003年に+2.6%、2004年は+3.6%となる。

(3) ユーロ圏経済:2002年前半の成長は非常に緩やかなものに止まった。2003年以降はインフレ率がゆっくりと低下すること、家計マインドが回復に向かうことを背景に個人消費が増加に転じるほか、海外需要の回復や個人消費の増加は、新たな在庫積み増しを通じ設備投資に寄与する。ユーロ圏経済の実質GDPは、2002年に+0.8%となった後、2003年に+1.8%、2004年に+2.7%となる見通し。



1.OECD諸国全体の経済見通しと政策課題

(1) 景気の現状と見通し:ためらいがちな世界経済の回復

(イ) 世界経済の回復は、過去の回復期と比較して弱く、不規則。2002年初の好調なスタートは在庫削減ペースの鈍化等によるものであったが、回復の勢いは第2四半期には鈍化した。地域的な不確実要因の増大や株価の一層の下落が、2002年後半の家計・企業のコンフィデンスを下押ししている。

(ロ) 金融環境悪化を背景に企業のコンフィデンスは概して弱い。短期の業績見通しに不確実要因が増大していることや、稼働率の低さを背景に、設備投資は抑制され続けている。現在の不確実要因が解消するまで(恐らく2003年以降)、確固たる景気の回復は見込めず、2002年のOECD諸国の実質GDPは+1.5%に止まる見通し。

(ハ) しかし、OECD諸国が再び景気後退に陥ることはない。既にかなりの財政・金融政策が実施されてきたことに加え、年末の金融緩和により、景気刺激政策の効果は当面持続。情報技術産業悪化に歯止めがかかったこと、日本を除く大部分のアジア、ロシアの成長持続も景気を下支え。2003年以降米国・ユーロ圏で再び回復力が高まり、OECD諸国の実質GDPは2003年に+2.2%、2004年に+3.0%となる。

(2) 金融市場からの逆風

(イ) OECD諸国経済の回復を遅らせているのは、金融市場からの逆風である。その最も顕著な例は株価の継続的な下落であるが、これらはマクロ経済政策による景気刺激の有効性を縮小させ、設備投資の回復を先延ばししたとみられる。

(ロ) すなわち、株価下落は資本調達コスト上昇や逆資産効果を通じて設備投資抑制・消費を抑制。健全な金融企業も資金調達へのマイナスの効果など悪影響を受けている。

(3) 先行きのリスク要因

(イ) 前回(4月)見通し時点においてはアップサイドリスクとダウンサイドリスクが均衡していたが、それ以降は不安定な株価や債券市場に反映されているように不確実性が増大、現時点ではダウンサイドリスクが支配的。

(ロ) これらリスクには、金融市場の更なるショック発生により設備投資回復が一段と遅れるリスク、住宅価格下落による家計資産の減少が消費抑制に結びつくリスク(特に米・英)、国際収支の急激な調整及びドルの大幅な減価により米国の貿易相手の経済が悪影響を受けるリスク、新興市場の金融市場の混乱が拡大するリスク、地域的な不確実要因により石油価格が上昇するリスクがある。構造改革に向けた努力が加速されるならば、こうしたショックに対する長期的な耐久力は向上するであろう。

OECD「エコノミック・アウトルック」における実質GDP成長率見通し
  2001年
(実績)
2002年
(予測)
2003年
(予測)
2004年
(予測)
OECD諸国 +0.7 +1.5 +2.2 +3.0
日本 ▲0.3 ▲0.7 +0.8 +0.9
米国 +0.3 +2.3 +2.6 +3.6
ユーロ圏 +1.5 +0.8 +1.8 +2.7
(注)前年比伸び率、%。

(4) OECD諸国のマクロ経済政策の課題

(イ) 多くのOECD諸国で積極的にマクロ経済政策による景気のてこ入れが実施されてきた結果、経済政策は既に膨張的となっている。今後一層の景気下支えを行う余地は小さいが、政策変更が経済活動に影響するタイムラグを考慮すると、予測外の新たなショックが生じない限り、現時点では十分な景気刺激が与えられている。

(ロ) 金融政策は景気を下支えしている。OECD諸国内の4大通貨圏(米、ユーロ圏、日本、英国)における政策金利は低水準を維持。景気の回復力が予想を下回っていることから、多くの中央銀行は状況を見守るスタンスにあった。先行きのリスクの高まりを考慮し、FRBは11月初旬に政策金利を引き下げ。ユーロ・システムはFRBに追随しなかったが、金利引下げを議論した。

(ハ) 財政政策は支出抑制による再建が必要。景気後退期期を通じて、財政ポジションは急激に悪化。租税収入に対する過信や楽観的に過ぎる成長予測により減税や新たな支出が正当化されたほか、景気の自動安定化機能が働いた結果、米国やいくつかのEU諸国で急激に税収が減少した。2002年のOECD諸国の一般政府赤字は2001年の名目GDP比1.4%から同2.9%に拡大する。新たな減税の余地は限定的もしくは存在せず、税収減に対応するためには、事前の予算編成及び事後の実施の両面において、支出を効率的に抑制することが必要。


2.主要国経済の見通し・政策課題

(1) 日本経済

(イ) 2002年前半の日本経済は低水準の在庫と輸出急増に支えられて回復したが、年後半には輸出の伸び率が明確に鈍化するなど、これらの下支え要因は減退。

(ロ) 先行きも弱い成長が続く。輸出が鈍化する一方、企業リストラの継続や収益率の低さ、厳しい雇用・所得環境を反映して、設備投資や消費の伸びは非常に緩やか。実質GDPの伸びは2003-2004年にかけて1%近辺に止まる見通し。

(ハ) 新たな目標に沿って、日本政府は構造改革を一層進めると同時に、必要とあれば公的資金の投入を行い不良債権処理を加速させることが必要。金融政策は資産購入対象の拡大により流動性供給を増加し、デフレ対応の先頭に立つべき。財政スタンスは景気中立的であるべきだが、不良債権処理の規模とスピードには敏感であるべき。中期の財政政策は、今の政府見通しを上回る中期再建枠組みの下に置くことが必要。

(ニ) 金融市場のリスクは依然重大。長期金利上昇は銀行のバランスシートを悪化させ、株価の一層の下落は企業マインド悪化や金融部門の脆弱性増大につながる可能性。

日本の主要マクロ経済指標の推移
  2001年
(実績)
2002年
(予測)
2003年
(予測)
2004年
(予測)
実質GDP(前年比、%) ▲0.3 ▲0.7 +0.8 +0.9
国内最終需要 +0.6 ▲0.7 +0.1 +0.5
純輸出 ▲0.7 +0.7 +0.5 +0.3
在庫投資 ▲0.2 ▲0.7 +0.1 0.0
消費者物価指数(前年比、%) ▲0.7 ▲1.1 ▲1.1 ▲1.1
失業率(%) 5.0 5.5 5.6 5.6
一般政府赤字(名目GDP比) ▲7.2 ▲7.9 ▲7.7 ▲7.8
(注)国内最終需要、純輸出、在庫投資は実質GDP成長率への寄与度。

(2) 米国経済

(イ) 米国経済の回復は不均等に進行。2002年前半の景気回復は主に在庫面での調整による。政府支出が景気を下支えした一方、設備投資の回復は未だ実現していない。株価下落や労働市場の弱さを背景に消費による下支えが衰えることにより、成長は幾分鈍化。ただし、輸出市場の回復や企業のバランスシート改善により設備投資が回復するため、米国経済の成長率は2003年以降徐々に高まる見通し。実質GDPは、2002年に+2.3%となった後、2003年に+2.6%、2004年に+3.6%となる。

(ロ) 金融政策は景気を下支えしている。労働市場の弱さやインフレ率の沈静化を背景に、金利は当面低水準で維持される。ただし、経済活動安定後は、徐々に景気中立的なスタンスに移行し、金利引き上げを行うことが必要。新たな支出増加や減税措置により、財政は大幅に緩和されている。財政規律を再構築するために、新たな支出抑制が必要である。

(3) ユーロ圏経済

(イ) 2002年前半の成長は非常に緩やかなものとなり、特に独・伊経済は不活発であった。先行指標は、ユーロ圏の製造業が悪化している可能性を示唆。

(ロ) ただし、インフレ率が徐々に低下すること、家計マインドが回復することを背景に2003年以降は個人消費が増加に転じることが予想される。予測期間末(2004年まで)には、海外需要の回復や個人消費の増加が、新たな在庫積み増しを通じ設備投資に寄与する。しかしながら、ユーロ圏内の成長のパフォーマンスには相違がみられる模様。独・伊は、ユーロ圏内外の他の国よりも、内需の牽引力が弱いものとなる。ユーロ圏経済の実質GDPは、2002年に+0.8%となった後、2003年に+1.8%、2004年に+2.7%となる見通し。

(ハ) OECDの基本シナリオでは小幅な金利引き下げを見込んでいるが、ユーロシステムは先行きの見通しが大きく悪化した場合により一層の金融緩和を行い得るよう備えが必要である。ユーロ圏の財政は、景気悪化を主たる背景に悪化。一般政府の財政赤字は2001年の名目GDP比1.5%から2002年に同2.2%、2003年に同2.1%、2003年に同1.8%となる見通し。欧州における景気回復がしっかりした時点で、財政再建に向けた努力を加速することが重要である。


3.今後の課題

(1) 長期的見地でみた財政の安定は、OECD諸国の共通の課題。

(2) 今後の高齢化の問題を考慮すれば、財政の安定は構造改革を通じて、特に達成されるべきである。具体的には、高齢者の労働市場への参入や各国市場の競争を高めることが重要である。



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