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第39回OECD閣僚理事会コミュニケ
(仮訳)

平成12年6月27日

グローバリゼーションの形成

  1. OECD閣僚理事会は、2000年6月26日から27日まで、オーストラリアのピーター・コステロ財務大臣の議長の下、カナダのピエール・ペティグルー国際貿易大臣及びジム・ピーターソン閣外相(国際金融機関担当)並びにフィンランドのキンモ・サシ貿易担当大臣が副議長として補佐を務めて開催された。OECD経済産業諮問委員会(BIAC)及び労働組合諮問委員会(TUAC)との協議が行われた。

  2. 閣僚は、スロバキア共和国の会議へのオブザーバーとしての参加を歓迎した。閣僚は、OECD参加に向けてのスロバキア共和国の意志と能力を認識した。閣僚は、スロバキア共和国の加盟手続きが、可能な限り早期に完了すべきであることに同意した。

  3. OECD諸国は、より一層知識に基いた、相互に依存する世界に向け、ここ数十年の中で、最も大きな変遷を遂げている。グローバリゼーションと急速な技術進歩の影響は、全ての国、地域、社会及び市民に対し、新たな機会と新たな課題を提供している。急速に変化する情報通信技術は、金融市場を含む市場を変質させ、グローバリゼーションの利益を活用するために、労働、ビジネス及び貿易を組織する新たな手段を求めている。しかしながら、閣僚は、現在進行中の経済的及び技術的変化に対し多くの人々が感じている真摯な懸念、並びにこうした懸念に地域的、国内的及び国際的に対処する重要性を認識した。

  4. グローバリゼーションは、ガバナンスに新しい問いを投げかけた。ガバナンスは、あらゆる水準で、個人が個別及び集団的に、社会における彼らの願望の達成を追求する条件を確立する。良い、かつ、効果的な公的なガバナンスは、民主主義及び人権の強化を助長し、経済的繁栄及び社会的一体性を促進し、貧困を減少させ、環境保護及び天然資源の持続可能な利用を向上させるとともに、政府及び公的行政機関に対する信頼を深める。公的機関に対する信頼の構築は、良いガバナンスの要である。OECDの報告書「公的信頼:OECD諸国における倫理に関する施策」は、全ての加盟国における倫理管理措置の包括的な概観を示している。強化された協議のプロセス及び変化する政府と市民社会との関係のより良い理解を通しての開放性、透明性及びアカウンタビリティーの向上は、全てのガバナンスの根本的な要素である。情報通信技術(ICT)は、政府が市民との相互関係を築く上で重要な新しい手段を提供する。

持続的な開発及び社会的一体性

  1. 持続可能な開発を達成することは、引き続きOECD諸国政府の主要な目標である。2001年に、「持続可能な開発に関するOECD政策報告」が、経済的、社会的及び環境的配慮をより良く統合するための相互支持的な一貫性のある政策枠組みを提供するため、OECDの「成長の研究」及び「環境の概観と戦略」における分析により補完される。気候変動、生物多様性の保護及び天然資源の持続可能な管理は、引続き最も深刻な地球的規模の政策課題であり、OECDは、各国政府に対し京都議定書の下での各国のコミットメントをいかにして達成することが最適かについて、引き続き助言を行う。OECDは、2002年に開催される「リオ+10」会合に向けての持続可能な開発に関する国際的な課題を進展させるために重要な貢献を行うと共に、各国政府に政策分析及び勧告を助言する重要な役割を担うであろう。

  2. OECD諸国は、労働及び社会に対する大きな影響を伴う、広範囲の変化に対応している。完全雇用により高められ、強化された社会的一体性は、こうした調整を容易にするであろう。こうした変化に適応する各国及び個人の能力を高め、かつ、社会の全てのグループ、特に不利な立場にあるグループに利益が及ぶことを確保するために、人的及び社会的資本を拡充する政策が必要とされている。以下の分野におけるOECDの作業は、政府が社会参加を促進することを支援するであろう。

    • 雇用:いくつかの国における最近の動向は、労働の阻害要因が除去され、相互支持的なミクロ及びマクロ経済政策を通じて雇用機会が拡大すれば、完全雇用が実現可能であることを示している。OECD雇用戦略の勧告の各国毎の包括的な実施は引き続き重要である。
    • 教育及び訓練:職場における新技術、特に情報通信技術の重要性の増大は、継続的な技能の更新を求める。個人的な充足及び経済的成功のためには、教育における投資戦略と生涯を通じた知識及び能力の向上のための効果的な機会が必要である。OECD諸国の教育大臣は、来年4月の会合においてこれらの問題に関する勧告を行うであろう。
    • 参加:高水準の参加を促進する政策を通じた社会的一体性の維持は、知識に基づいた社会における重要な要素である。社会的一体性は、家族と地域社会を適切に支援する政策により更に強化することができる。これらの政策はまた、長期的な経済的及び労働市場の便益の創出を支援することができる。
    • 高齢化:閣僚は、OECDの報告書「高齢化社会における繁栄の維持」のフォローアップ作業を歓迎した。閣僚は、高齢者が社会において活発な役割を果たすことができ、退職に関する決定に更なる柔軟性を持つことのできる環境を創造するとのコミットメントを新たにした。政策の改革は、早期退職の奨励策の段階的な廃止を目的とすべきである。
    • 健康:良好な健康状態は、全ての人にとって利用可能、かつ、入手可能であるべきである。全ての国は、それぞれが公平性と効率性の目標を達成するため、医療制度の状況を改善する必要がある。高齢化と医療財政のコスト及び影響の双方について、全てのOECD諸国が一層の注意を払う必要がある。閣僚は、OECDが健康問題への戦略的重要性を強めたことを支持し、また、OECDの作業の結果に期待した。
    • 国際移民は重要性を増している。受け入れ国における移民のよりよい統合を促進する政策が必要とされている。移民は、変化する労働市場の要求に応えることも支援する。

経済見通し

  1. 世界経済は、ここしばらくの間よりも、より好ましく成長している。ほとんど全てのOECD諸国は、低水準のインフレと失業率の低下とともに、高い成長率――総じて1988年以来最も早いペース――を享受している。OECD域外では、多くの新興市場国及び移行国は、1997年から98年にかけての危機から力強く回復しており、急速な成長を示し続ける見通しである。重要な要素は、これらの国におけるマクロ及びミクロ経済の改革、貿易相手国、特に米国の力強い成長、及び開かれた世界市場の維持である。しかしながら、一次産品及び金融市場の見通し並びにこれらの世界経済への影響については、相当な不確実性があり、いくつかの国における成長の持続性には引続き疑問がある。多くの後発開発途上国は、まだグローバリゼーションの利益を享受していない。

  2. 米国では、これまでで最長の経済成長を経験している。生産性の向上は加速し、失業率は大きく低下し、また実質所得は全ての分野で増加した。新技術及び構造変化が、米国経済のインフレ無き潜在的成長力を向上させた。最近の減退の兆しにもかかわらず、需要は依然として供給を上回って推移しつつあるかもしれず、インフレ上昇の危険性がある。経常収支の赤字は、主として米国経済の相対的な強さを反映し、急激に拡大した。金融当局の課題は、低水準のインフレに見合う需要増大の持続可能なペースを維持することである。財政政策は、緩和されるべきではなく、また国民貯蓄は増大されるべきである。

  3. ユーロ圏及びそれ以外の欧州では、成長及び雇用の短期的な見通しは、1980年代後半以来で最も良好である。失業は、地域全般としては、インフレを生み出すことなく着実に減少した。しかしながら、労働、生産物及び金融市場における最近の積極的な供給面での動きにもかかわらず、インフレ圧力が生じるリスクが限定的だが存在する。金融政策は、持続的なインフレ無き経済成長にとっての良好な条件の維持に貢献するために、物価の安定に引続き焦点を当てるべきである。現在の生産予想を踏まえればユーロ諸国におけるいかなる財政政策の緩和も回避されるべきであり、予想を上回る高水準の歳入があった場合には公債残高の削減に回されるべきである。税負担の高い国においては、減税は供給能力の強化を目的とし、歳出削減も同時に伴うべきであり、このようにして、基本的な財政状態のいかなる悪化も防がれる。今、目指すべきことは、現在の景気拡大を長期にわたり持続する拡大に変換することである。構造改革の更なる進展は、生産性及び雇用の増大、並びに技術革新及び新技術によりもたらされる可能性からのより大きな利益を得ることにより、欧州経済がより高い持続的な成長への軌道に移行することを支援するであろう。

  4. 日本では、経済は景気回復への前向きな兆しを示しつつあるが、その持続性には不確実性がある。政策は、長期的な経済の健全性を損なうことなく短期的には回復を持続させることを目標とすべきである。緩和的な金融市場の状況は維持させるべきである。短期的には財政再建は適切ではないが、経済が民需主導の本格的な回復軌道にのった時点で、高くかつ急速に増大するグロスでの公的債務水準に対処するために信頼できる中期的戦略が策定され、実施される必要がある。現在進行中の銀行部門の改革の継続を含む包括的な構造改革の迅速な実施と、企業のリストラは、経済のダイナミズムを促進するために必要である。規制改革は、日本経済にとって引き続き重要である。

「ニューエコノミー」と成長の要因

  1. OECDは、特に「ニューエコノミー」が形成されつつあるのか、またどのように政策を調整する必要があるかを特定するため、2001年に完了する成長要因に関する重要な研究を開始した。最近の加盟国間の成長パフォーマンスには大きな相違があった。より良いパフォーマンスは、1人当たりのGDP成長率がOECD平均を上回って推移している米国で最も顕著であった。他のOECD諸国(特にオーストラリア、デンマーク、アイルランド、オランダ及びノルウェー)は、「OECDの成長プロジェクト第1報告書」において、1990年代には1980年代に比して、1人当たりのGDP成長率の上昇傾向が達成されたとして特定されている。これらの国は、1990年代を通じ、潜在的な労働力の動員に相対的に成功した。ポーランドを含む、最近OECDに加盟したいくつかの国も、同時期を通じ、力強い経済成長を持続した。OECDのその他のいくつかの国の最近のパフォーマンスもまた、大変良好であった。こうしたより良い経済パフォーマンスの要因は異なっているが、経済改革が良い結果をもたらしていることは共通の要素である。

  2. 生産性、雇用及び成長の原動力としての技術革新、研究、知識及び情報通信技術(ICT)の役割は、一層明らかになっている。「ニューエコノミー」の形跡は、増大するICTの影響及び1990年代後半の労働生産性の大きな向上と結びついた強力なインフレ無き成長が進行している米国において最も顕著である。他の多くのOECD諸国において、ICTへの投資拡大による前向きな影響の兆候が、1990年代を通じますます出現してきた。

  3. OECDの作業は、加盟国が、これらの国における力強い経済パフォーマンス、浮かび上がる情報通信技術の役割及び「ニュー・エコノミー」の可能性に対する理解を深め、自らの政策をより良く形成することを支援する。閣僚は、健全な成長及び安定指向のマクロ経済政策、開かれ、かつ柔軟な国内及び国際市場並びに企業家精神をはぐくむ、規制及び行政の枠組みが、良好な経済パフォーマンスにとり極めて重要であることを強調した。全てのOECD諸国及びその他の国は、それぞれの社会的状況のなかで、「ニューエコノミー」の原動力によってもたらされる機会に参加する能力を有している。国内及び国家間の双方における「デジタル・ディバイド」の危険性、特に途上国による技術へのアクセスの問題は、真剣に検討されなければならない。

  4. 電子商取引は、生産性及び成長への影響を急速に増大している。この世界的な現象に対する一貫した政策的アプローチを形成するための国際協力が重要である。電子商取引の潜在力が完全に実現されるためには、消費者の信頼が重要である。1999年12月に採択された「OECD消費者保護ガイドライン」は、この過程に重要な貢献をしており、実施に関するフォロー・アップ作業が必要である。OECDは、2000年12月に、オンライン取引に適用される代替的な紛争解決メカニズムに関する会議を共同で開催する。認証及びプライバシー保護に対する一層の信頼も必要である。OECDは、こうした分野における作業を追及し、ハッキングやウイルスといったその他のインターネットの安全性に関する緊急の問題に対する効果的な政策的対策を発展させるべく、民間セクター及びその他の利害関係者と共働する。OECDは、2001年1月に、幅広いOECD域外の諸国・経済、財界、労働界及び市民社会の関心を有する人々が参加する、「デジタル・ディバイド」の危険性を含む、重要な電子商取引政策に関する問題についての会議を開催する。

  5. 中小企業は、我々の経済の中心的な活力である。閣僚は、中小企業が繁栄し、それにより雇用、社会的一体性及び地域の発展に貢献することを可能にする効率的な政策環境の必要性を示す、2000年6月14日から15日の会議において採択された「ボローニャ憲章」を歓迎した。OECDは、憲章で示された課題及びその政策的意味合いに関する加盟国の理解を深めるべく作業し、この作業の結果を非OECD諸国と共有するであろう。

貿易自由化のモメンタムの維持

  1. ルールに基づいた多角的貿易体制は、世界的な成長及び繁栄にとって最良の枠組である。この目的のため、強化された多角的ルールに基づき、適切に策定された国内制度及び政策を伴う一層の多角的自由化は、「ニュー・エコノミー」の約束するものの実現を促進し、貧困削減及び持続可能な開発を支援するであろう。閣僚は、全てのWTO加盟国の要望と願望を反映した、野心的で均衡のとれたかつ広範なWTOの多角的交渉ラウンドの可能な限り早期の立ち上げに向けて作業することを決意する。WTOシアトル閣僚会議の教訓は、明確である。閣僚は、新ラウンドに向けてのコンセンサスを形成するためには、全ての国の強い政治的意思とより大きな柔軟性が必要であることに合意した。途上国の特有のかつ様々な懸念に対処するためにより多くのことがなされなければならず、貿易自由化の利益と課題について建設的な対話を構築するために、社会へのより幅広い関与が必要となる。この点に関し、閣僚は、現在WTOで進められているその機能を強化するためのプロセスを加速化させる必要性を強調した。

  2. 閣僚は、合意済み課題(ビルト・イン・アジェンダ)の下での建設的な交渉へのコミットメントを再確認し、これらの交渉の前進に向けて協力していく。合意済み課題である農業とサービスに加え、新ラウンドはまた、WTO体制を一層強化するとともに、21世紀の諸課題に応える形ですべてのWTO加盟国のより包括的な範囲の関心に対処する機会を開くべきである。閣僚は、この目的のために、準備作業を継続するとのコミットメントを再確認した。 

  3. 途上国の関心及び懸念は、新ラウンドの準備及び実施において、特に優先するべき事項である。最近合意された、ウルグアイ・ラウンド合意の実施、後発開発途上国に対する市場アクセスの改善及びキャパシティー・ビルディングの強化のための技術支援に関する短期的信頼醸成措置は、迅速に追求されなければならない。閣僚は、この分野においてさらなる進展を図る必要性を認識した。閣僚は、貿易と開発の問題に関するOECDの作業を歓迎した。

  4. 閣僚は、WTO加盟国の拡大及び中国加盟を含む加盟作業の進捗並びにこれらを通じた新規加盟国の多角的貿易体制へのより完全な統合を歓迎した。

  5. グローバリゼーションに対する国民の関心は、多角的体制に焦点を合わせてきた。この体制の開放性及び透明性の向上は、開かれた市場がもたらす利益を示すための作業の中心である。多角的貿易体制が強化され、国民からの広い支持を得るためには、貿易自由化とその他の政策分野から生じる幅広い課題との関係及び補完性についての国民の理解が深められなければならない。WTO、IMF、世界銀行、UNCTAD、ILO、WHO、UNEP及びOECDといった関連国際機関の間でのより強い協力が不可欠である。多角的貿易体制の支持に向けた投資、貿易と環境、貿易と中核的労働基準、及び貿易と競争に関する作業を含むOECDの分析的作業は、ガバナンスに関する課題の国際的理解へのOECDの貢献と共に、依然として適切である。

  6. 閣僚は、輸出信用アレンジメントの参加国が、ウルグアイ・ラウンドにおいてマンデートを与えられた農業に関する了解につき合意に達することに失敗したことを極めて遺憾とした。閣僚は、交渉が再開され、可能であれば7月末までに、遅くとも2000年末までには、成功裡に妥結されることを要請した。輸出信用アレンジメントのファイナンス関連問題に関する作業は、特に、WTOにおける最近の動向を考慮に入れつつ、その規律について商慣行及び一貫した適用との関連において検討するべきである。OECD輸出信用グループでは、環境と輸出信用に関する共通のアプローチの強化において順調な進捗がみられた。閣僚は、その作業計画を2001年末までに完了することを強く要請し、次回閣僚理事会への進捗状況の報告を求めた。また、輸出信用グループは、重債務最貧国(HIPCs)に対する輸出信用の供与が非生産的な目的に使用されないことを確保するための措置を強化するべきである。

  7. 閣僚は、OECD造船協定が未だに発効しておらず、いくつかの地域では、造船業界が引き続き深刻な困難に直面していることを懸念をもって留意した。OECDは、特に造船業界において正常な競争条件を実現する必要性を念頭に、透明性の向上を含む造船に関する作業を継続する。OECDは、主要な非OECD造船諸国との接触を強化する。

  8. 生産者支持推定量で計測したOECD地域全体の農家への助成は、10年前の高い水準に戻っている。世界的な農産品価格の低迷とその結果生じる農家所得への圧迫は、多くの国が農家への新たな措置を導入し又は追加的な助成を与えることに繋がった。多くの場合、これらの措置は、農業政策改革の原則と整合的でない形で実施されてきたが、一方、いくつかの国がこれらの原則と整合的な、生産に関連しない助成措置を導入したケースもある。閣僚は、ウルグアイ・ラウンド農業協定第20条に従い、根本的改革をもたらすような、助成及び保護の実質的かつ漸進的な削減という長期的目的に対するコミットメントを再確認した。閣僚は、農業政策改革の広範囲な一連の共通目標及び政策原則を実施するための努力を継続することに合意するとともに、農業の多面的機能という特性、及び政策が重点的で、透明性が高く、費用効果的であり、便益を最大化し、かつ生産及び貿易の歪曲を回避することを確保する必要性について認識した。食品安全性、食料安全保障、農村地域の存続及び環境保護は、農業食料部門の経済的効率性とともに、共通の関心事項である。これらの関心に応えるための政策は、上に記され、またOECDで合意された原則と基準に配慮しなければならない。OECDの作業は、農業政策の改革のため、また、現在進行中のWTO貿易交渉への支援として、大きな価値を持つものである。

  9. 漁業資源の効果的かつ持続可能な管理及び資源管理と貿易の関係は、国際的な行動が求められる重要な分野である。過剰漁獲された漁業資源は、持続可能な水準まで回復されなければならない。政策は、過剰漁獲の諸要因に対処するとともに、貿易を歪曲したり、持続可能な資源の利用というグローバルな目的を損なうことなく、短期的な社会的、経済的調整コストに対処すべきである。OECDの「責任ある漁業への移行」についての最近の研究は、水産物市場の自由化、漁業管理コスト及び漁業の持続可能性についての指標に関して開始された、政府の財政支出問題を含む新たな作業と共に、政策の策定にとって価値ある貢献となるであろう。養殖に関する課題は、この作業の不可分の一部とするべきである。

統治(ガバナンス)

  1. OECD諸国及び非OECD諸国において、ガバナンスに関する共通の課題が増大している。グローバリゼーションの利益が完全に実現され、共有されるためには、ガバナンスに向けてのアプローチは、個別の国のそれぞれの状況を勘案し、これに適合させなければならない。閣僚は、OECDが現在策定中のガバナンス・アウトリーチ・イニシアティブを通して非OECD諸国と対話し、他の国際的及び地域的機関と協力し、かつ市民社会との広範かつ開かれた協議を行いつつ、ガバナンスに関する問題についての政策決定及び実施への重要な貢献を継続することを要請する。OECDは、2001年にガバナンス・アウトリーチ・イニシアティブに関する進捗を報告する。

  2. 閣僚は、OECD諸国政府が、アルゼンチン、ブラジル、チリ及びスロバキア共和国の政府と共に採択した改訂版「OECD多国籍企業ガイドライン」を歓迎した。このガイドラインは、既存の法制に整合的な責任ある世界規模での企業行動についての確固とした一連の勧告を提供する。これは、国際投資環境を改善し、多国籍企業が経済、社会及び環境的な目的のために行い得る前向きな貢献を促進するための均衡のとれた枠組みを提供する「OECD国際投資及び多国籍企業に関する宣言」の一部である。このガイドラインは、産業界、労働界の代表及び他の非政府団体との建設的な対話の下に策定され、グローバリゼーションに対するいくつかの国民の関心に対処する上での重要な一歩である。その効果的な実施は、すべての関係者の責任感及び誠実さに依存する。すなわち、政府、産業界、労働組合及びその他の関係者は、すべて何らかの役割を担っている。

  3. OECDは、投資自由化の利益の最大化及び、その社会的及び環境的側面並びに投資を誘致するための政策に基づく競争の有害な形態に関する作業を含む、投資政策分野における分析作業を継続する。OECDは、非加盟諸国が「国際投資及び多国籍企業宣言」を遵守することを奨励する。

  4. OECDは、有害な税制の除去に向けて重要な前進を示した。1998年の「有害な租税競争に関する理事会勧告」のフォロー・アップとして、OECD加盟国における47の潜在的に有害な優遇税制が特定された。1998年の報告書を承認した閣僚は、1998年の基準の適用に関するガイダンスの策定に伴い、実際に有害と認められた優遇税制のあらゆる要素を、2003年4月までに除去するという加盟国のコミットメントを再確認する。OECDは、タックス・ヘイブンに関し、多数の国・地域の見直しを始めた。閣僚は、有害な税制を除去するとの6つの国・地域(注1)によるコミットメントを歓迎した。これらの国・地域は現時点ではタックス・ヘイブンの基準に合致しているものの、本日発表される報告書(注2)にはこれらの国・地域の名前は、特定されない。残りの国・地域のうち、35がタックス・ヘイブンとされる技術的基準に合致するものとして特定された。OECDは、「非協力的タックス・ヘイブン・リスト」を、2001年7月31日までに、策定する。このリストは、1998年の報告書において予定されていた防御措置の策定のための基礎として用いられるだろう。OECDは、協力的な国・地域が、有害な税制から脱却することにより国際基準に合致することを支援し、こうした税制を除去するために非加盟諸国・経済との間で対話を開始する。

    (注1)バーミューダ、ケイマン諸島、キプロス、マルタ、モーリシャス及びサンマリノ

    (注2)「有害な税制の特定及び除去の進捗状況」

  1. 電子商取引は、租税政策及び税務行政に対し、新しい問題を提起する。電子商取引の潜在力が完全に活用されるためには、財界、消費者及び政府は、予見可能な環境を必要とする。閣僚は、これらの問題の成功裡の解決を達成するためのOECDの主導的役割を確認する。オタワにおける「電子商取引の課税の基本的枠組み」の実施に向けての進展があった。閣僚は、財界及びOECD非加盟国によるこうした作業への建設的な貢献を歓迎し、電子商取引によりもたらされた直接税及び間接税双方の問題に関する次期会合における進捗報告を期待する。OECDは、2001年に、「電子化の進んだ世界における税務行政に関する国際会議」を共同で開催する。

  2. 腐敗に対する戦いは優先課題である。1999年2月に発効した贈賄防止条約の批准、実施及びモニタリングには多くの進展がみられた。23カ国が国内手続きを完了し、そのうち21カ国の実施法令が贈賄作業部会により審査された。閣僚は、これらの国を賞賛し、現行の実施法令の中で特定された問題点が可能な限り早期に修正されることを強く求めた。閣僚は、多くの国が国内手続きをまさに完了しようとしていることに励まされた。すべての調印国がこの条約を批准し、実施することは、緊急の課題である。閣僚は、作業部会が可能な限り早く実施法令執行のモニタリングを開始するよう要請した。贈賄防止のための法律は、実際に効果的に適用され、腐敗に関する更なる問題(注)について作業が進められなければならない。腐敗に対する戦いを強化するため、外国公務員に対する贈賄は、資金洗浄法令の適用を発動する重大な犯罪とされるべきである。OECDは、この作業への非加盟国の関与を引き続き求める。1999年の閣僚のマンデートに従って国際貿易ルールの潜在的な腐敗削減効果に関する作業を継続するべきである。

    (注)外国の政党に関連した贈賄行為、外国公務員になると予見される者に対して約束または供与された利益、資金洗浄における前提犯罪としての贈賄、及び贈賄取引における海外子会社及びオフショア・センターの役割。

  3. 「金融活動タスクフォ-ス」は、特に、非協力的な国及び地域の政策改善に関する報告書を通じて、反資金洗浄のメッセージを世界中に広める上で、重要な進展を示した。

  4. 「ハード・コア」カルテルは、世界経済において多額の資金を浪費させる。政府は、世界中の消費者に対し、彼らがこうした濫用から効果的に保護されることを示す必要がある。OECDの1998年の勧告は、より厳しい反カルテル法及び新しい実施プログラムへの触媒となっており、より多くの国が今こうした努力に加わる必要がある。法執行に関する二国間及び多国間での協力が強化され、国家間の適切に保護された情報交換に対する不当な障害を除去するために努力する必要がある。

  5. 加盟国における更なる規制改革の進展が必要である。開放的かつ競争的な市場における質の高い規制は、健康と安全性及び環境といった分野における高い水準を危うくすることなく非効率性を除去する。規制改革に関するOECDの分野横断的な作業及び現在行われている加盟国における進展の見直しは、良い規制慣行を促進するための貴重な貢献であり、他の加盟国と共に継続すべきである。

  6. OECD及び世界銀行は、OECDコーポレート・ガバナンス原則を対話の枠組みとして用いて、コーポレート・ガバナンス改革を世界規模で促進するための共同活動を成功裡に開始した。この2つの機関は、ロシア、ラテン・アメリカ、及びアジアにおける固有ののコーポレート・ガバナンス問題を扱う一連の白書を通じ、向こう数年間に亘り、更に努力する。金融の安定及び企業の透明性を更に促進するため、OECDは、企業の悪用に関する分析作業を行う。

  7. 企業は、行動規範の採択を通じ国民の関心に対応している。このような動向の与える影響を理解するための更なる分析作業が必要である。

  8. バイオテクノロジーは、就中、人の健康及び健康管理、農業/食料生産並びに持続可能な開発に対し大きな影響をもたらすことから、我々の社会における重要性を増している。潜在的な経済、環境及び社会的利益が実現され、規制に関する新しい問題が解決されるためには、利益とリスクを管理するための更なる国際的な理解及び協力が必要である。特に、国民の信頼が、透明性のある政策を通じ維持され、強化される必要がある。OECDは、バイオテクノロジーに関する広範な問題を理解するこうした過程に対し引き続き貢献し、非加盟諸国がこの作業に関与することを求めていく。閣僚は、2001年に、遺伝子組換え体の環境に対する影響に対処するための会議を開催することを検討するようOECDに要請した。

  9. 食品の安全性は、全ての政府にとって根本的な目標である。閣僚は、科学及びルールに基づいたアプローチへのコミットメントを確認した。科学的に不確実な状況の中で食品の安全性に対し、いかにして予防措置が適用されるべきかについては、特にコーデックス食品規格委員会において、この問題に対する様々な見解についての理解を促進し、またこの問題に関するより大きな世界的コンセンサスに到達するために引き続き議論されている。OECDは、G8によって要請された作業を含む、バイオテクノロジー及び食品の安全性に関するその他の側面に関する実質的な作業を行い、異なる政策アプローチに関する国際的な理解に貢献した。利害関係者、特に、NGOとの協議及び本年2月に開催された「遺伝子組換え食品に関するエジンバラ会議」は大きな成功であった。OECDは、市民社会への関与を維持し、OECD非加盟諸国とこの分野における作業を共有することを追求しつつ、分析作業を継続するとともに、引き続き食品の安全性に関する国際的な政策対話において効果的な役割を果たしていく。OECDの作業は、その比較優位を活用しつつ、他の国際機関、特にFAO及びWHOの活動を、重複することなく、効果的に補完する。

開発協力

  1. 開発協力は、成長を持続させ貧困を削減するために、グローバリゼーションの過程への開発途上国の参加を促進する上で重大な役割を担う。開発支援委員会の政策ステートメント「貧困削減のためのパートナーシップ」は、反貧困戦略を統合する包括的な国家レベルの開発の枠組みが極めて重要であることを示している。貧困削減並びに社会的及び環境的前進のために2015年に向けて国際的に合意された開発目標は、国際的な活動及び国内の開発戦略双方のための参考とすべき点及び実行監視の手段を提供する。1990年代には、ほとんどの地域において、真の前進がみられたが、多くの国、特に最貧国においては、大きな国内的な努力及び国際的な支援なしには目標を達成できないであろう。ジェンダー平等及び女性の地位強化を含む人権の尊重に対するコミットメントは、開発協力の不可分の一部を成し、持続可能な貧困削減にとって極めて重要である。

  2. 貧困削減戦略及びパートナーシップは、昨年合意され、大幅に強化された重債務貧困国のための債務削減努力の基礎をなす。負担の公平の原則に基づき合意された多国間債務削減へのOECD加盟国の財政拠出による貢献は、実施の遅れを回避するために可能な限り早く行われるべきである。債務削減及び外国からの援助により自由になった資源は、開発及び貧困削減のために効果的に利用されなければならず、非生産的な支出は避けられなければならない。OECDは、貧困削減に関するガイドラインとともにパートナー諸国における公的なガバナンスを改善するような方法での、パートナーシップ原則の実施に関する更なるガイダンスを策定する。開発途上国がグローバリゼーションの機会を十分に活用するためには、OECD諸国内における政策一貫性の向上もまた必要である。OECDは、この分野において加盟国を支援するために、「政策一貫性に関するチェック・リスト」を策定する。OECDはまた、貿易自由化、経済成長及び貧困削減の関連に関する分析的作業を深める。

  3. 途上国への援助の流れは、2年続けて、大幅に増大した。OECD諸国政府は、この動きを歓迎する。OECD諸国政府は、この回復が続くことを確保するために作業を進め、追加的な資金が利用可能となるよう更なる努力を行う。そうする中でほとんどの加盟国は、ODAの対GNP比率0.7%という目標に主導される。OECD諸国政府は、新しい「開発資金アジェンダ」において勧告されたように国内及び国外の民間資金を動員することを追求する。閣僚は、1998年の開発支援委員会ハイレベル会合により委任された後発開発途上国への援助をアンタイドにすることに関する勧告に関し、開発支援委員会メンバー団がこれまでのところコンセンサスに達する状況にないことを遺憾とした。援助の有効性を向上するために、閣僚は、可能な限り早く合意に達することを目的として議論を継続するよう要請した。

非加盟諸国との協力

  1. 閣僚は、非加盟諸国との協力に関するOECDの継続的なプログラムを承認した。閣僚は、ハイレベルで行われた「特別対話」を歓迎し、そうした会合がOECD諸国と非加盟諸国間の政策対話の充実及びグローバルな問題についての相互理解に重要な貢献を行うことを認識した。非加盟諸国との協力に関するOECDプログラムの世界的広がりは、世界経済における相互依存の増大を反映している。OECDは、比較優位のある分野で、ルールと価値に基づく世界経済の発展に向けて、非OECD諸国との関係を深め、拡大しなければならない。更に、閣僚は、OECDが選択的であり、かつOECDの高い加盟水準という伝統並びに加盟国にとっての効率性及び有用性を追求する一方、相互利益に基づき、同じ価値を共有する国の加盟に対して引き続き開放的でなければならないことを改めて表明した。

  2. 民主的で、平和でかつ繁栄した南東ヨーロッパの構築には、経済及び社会を改革するというこの地域の国々の強い決意と、これらの国々と協調するというOECD諸国の持続的なコミットメントが必要である。閣僚は、それぞれの国がOECDの南東ヨーロッパにおける効率的な作業を引き続き積極的に支持すること、特に、「南東安定協定下の改革、投資、統合及びと成長に向けた憲章」並びに「反汚職イニシアティブ」の策定及び実施に対し貢献することを表明した。

  1. OECDの財政的安定に向けて、特にその職員の年金基金の設立決定を通じて、進展がみられた。閣僚は、OECDが現在行っている優先事項並びに財政及び運営の改革に関する作業を強化することを奨励した。OECD本部施設に関する長期戦略の実施は、OECDが効果的かつ効率的に機能するために不可欠である。

  2. 閣僚は、OECDフォーラム2000を歓迎した。それは、非加盟国及び市民社会に向けての開かれたOECDの大きな前進である。この関連で、閣僚は、事務総長に市民社会との協議と対話のプロセス及び枠組みを強化するための選択肢を検討するよう要請した。


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