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経済


OECDによる
「世界経済における中国:国内政策への課題」
の公表

平成14年3月19日

 注:レポートの内容をより詳細に把握されたい方は原文に当たって下さい。

 18日、OECDは「世界経済における中国:国内政策への課題」と題する分析レポートを公表した。これは、WTO加盟にともなう中国国内の経済課題について、構造改革に強みを有するOECDがその分野横断的な研究能力を活用して多角的な分析を加えたものである。
 このレポートで、OECDは、中国が過去20年間広範な変化を遂げ、経済を押し上げてきたことを高く評価する一方で、労働力や資本などの生産要素市場内、各産業部門間、各地域間の統合の欠如に起因する実体経済における構造問題が90年代に悪化しており、不完全雇用と実体経済の減速を引き起こしており、中国の経済改革が新しい段階を迎えたと分析しつつ、中国経済の直面する課題として、農村経済の資源活用に対する障害、産業の更なる発展に対する構造的障害、金融システムの脆弱性、マクロ経済の減速、地域格差の増大などを挙げている。
 OECDは、中国がWTO加盟に伴う貿易・投資自由化の促進を通じて潜在的に得ることのできる便益は大きいが、これらの便益は自動的に得られるのではなく、ひとえに中国の国内改革の成否にかかっていると見ており、各々の経済部門(:農村経済、国有企業、非国有企業等)を別個の枠組みで成長させていく従来の政策の効果は限界に来つつあるとの分析に立ち経済全体を統合的に見据えた、より効率的な資源配分と市場の機能強化を促進する政策をとることが必要であるとの見方をとっている。
 OECDは、中国の改革が成功するための鍵は、国内経済の統合強化を通じた資源の利用の効率化、市場機能強化のための法的制度的枠組みの改善、経済成長を支える政府の能力強化が有機的な連関をもって行われることであるとしている。


OECDによる中国への政策提言は以下のとおり。
1.国内経済の統合強化を通じた資源の効率的利用等
 中国経済は、明らかに潜在的な生産性より低い生産性で運営されている。人的資源、土地、その他の資源は経済部門間の間に不適切に配分されており、十分活用されていない状態にあり、資源の有効な活用が中国経済の最も基本的な問題である。そのためには、中国の各地方の間及び中国経済における様々な経済部門の間の統合が不可欠。具体的な課題としては、労働力利用の改善、土地及び環境資源のより適切な活用、企業部門が資源をより生産的に活用する能力の向上、知的所有権保護の強化、金融システム効率向上、中国各地方間の統合強化がある。

(1) 労働市場の分断が労働力の不完全利用につながっており、労働力の移動を妨げる要因を取り除き、全国規模の労働市場の形成をすべきである。そのために、農村から都市への労働力移動を阻害している戸籍(戸口)制度や土地保有制度の見直し、失業保険制度の形成及び社会保障の負担不均衡の是正が求められる。
(2) 農業においては、市場原理と地域ごとの比較優位に基づく生産パターンを確立する必要がある。特にWTO加盟によって、労働集約的な作物への転換が求められるが、これを阻害する穀物買付、価格決定、流通に対する政府のコントロールを段階的に廃止すべきである。
(3) 貿易・投資自由化の促進は労働集約的な産業へのシフトを促す点で潜在的に中国の環境改善に貢献しうるが、そのためには環境政策の実効性を高め、関係政府機関の間の連携を強化する必要がある。特に、環境関連法令の実施における裁判所の権限強化、公害やエネルギーの非効率的な使用を助長する歪んだ政策の是正を行うべきである。
(4) 市場メカニズムの欠如のため産業部門のリストラが阻害されているので、リストラの主要な手段として市場に基づくメカニズムを整備することが必要である。短期的には企業リストラに対する政府に起因する障害を取り除くべきであり、また長期的には資本市場の形成が求められる。
(5) 中国企業の技術レベルは国際標準に達しておらず、技術革新・普及・吸収の能力が低い。そのため、企業の技術力を高めるための包括的な枠組みを整備する必要があり、知的所有権保護の強化、基礎的な研究開発に対する政府資金の増加が求められる。
(6) 金融制度は非効率であり、金融規律は不十分である。また、産業部門のリストラを支えるための金融制度も限定されている。したがって、金融システムの健全性の回復、金融機関の多様化及び金融・資本市場の整備が必要である。短期的には、金融機関の適切な自己資本比率の回復、資本市場の機能や発展を阻害する規制政策の速やかな撤廃が求められる。また、長期的には株式制度や小規模商業銀行の役割の拡大、資本市場への外国人の参入も含めた資本市場形成の促進などが求められる。
(7) 地域間の統合の欠如がより広範な経済発展の阻害要因となっているので、統一的な枠組の形成を目指し、国内の資本移動を改善する包括的な地域発展戦略を策定する必要がある。短期的には行政的その他の地方保護主義を排除すること、中期的には中央-地方政府間の財政関係を改革すること、国内の金融、資本市場の形成を促進することが求められる。


2.市場を機能させるための法的・制度的枠組みの改善
 資源の再配分に対する障害を除去し、資源の効率的活用を確保することができるかは、ガバナンス、所有権、競争など市場を効果的に機能させるための枠組みを確保することができるかにかかっている。いくつかの分野では努力がなされたが、相互補完的な関係にある他の分野での進展が不十分だったため、効果は十分発現していない。具体的な課題としては、コーポレート・ガバナンスの強化、所有権及び破産制度の改革、金融規制、監督能力の強化、司法制度の強化がある。

(1) コーポレート・ガバナンス関連の改革は不十分であり、その努力を継続するとともに、所有権の明確化、市場インセンティブの強化が必要である。短期的には、経営者や取締役会の独立性と説明責任の強化を図るべきであり、速やかに国有企業の株式取引制限の撤廃を行うとともに、長期的に金融市場の規律を改善することが求められる。
(2) 曖昧な所有権制度のために、コーポーレート・ガバナンスや産業部門のリストラに必要なメカニズムが機能を発揮しておらず、所有権制度を明確化し、全ての経済部門に等しく適用される整合的な枠組みと法令の整備が必要である。短期的には国有企業の不動産その他の資産に対する権利の明確化や非国有経済主体による国家資産の取得に関するルールの明確化が求められる。
(3) 競争力を失った企業から資源を再配分するための破産関連制度が不十分であり、破産に関するより統一的な枠組みを形成し、破産に関する裁判所の独立性と権限を強化する必要がある。短期的には、債務者、債権者及び株主の権利を明確に規定した統一的なルールに基づく包括的な破産関連法を施行すること、銀行や社会福祉関連基金に対する破産企業の債務の責任を明確化することなどが求められる。
(4) 部門毎に競争の度合いが異なり、また、反競争的な慣行や、場合によっては、法律上又は規制政策上の枠組みが新規参入や競争を制限しており、政府機関の責任を明確化した競争促進のための包括的な枠組みを形成する必要がある。短期的には包括的な競争法の施行、政府機関による反競争的慣行を制裁する行動規範の作成などが求められる他、自然独占を除き、国有企業に制限されている部門を他の形態の企業に開放することが求められる。
(5) 金融規律が脆弱なため、資源の不適切な配分の助長、企業の効率的運営追求の阻害、金融安定性へのリスク等が起こっており、金融規制・監督機関の独立性と能力の強化、金融機関と市場が規律を備えるための能力と動機を強化することが必要である。短期的には、金融機関が健全なスタンダードを維持するための説明責任の強化に努めつつ、金融機関の健全性の回復を行うことが求められる他、速やかに金融監督機関の執行権限を強化する必要がある。また、透明性の向上に努めるとともに、規律強化を阻害する金融市場への制限を撤廃することも求められる。
(6) 法律や規制政策が十分執行されておらず、またその執行にもむらがあるので、司法機関の独立性を強化するとともに、司法権を明確化する必要がある。短期的には司法機関の行政府等への財政的依存を減ずるとともに、他の政府機関に対する司法権の強化を図るべきである。


3.経済成長を支える政府の能力の強化
 中国政府が、貿易・投資自由化の促進に向けた調整と長期的な経済成長を促進する能力を強化するためには、財政の強化、中央-地方の財政関係の改革、マクロ経済政策手段の柔軟性の改善、市場原理に基づく規制制度の創設が課題。

(1) 現在の国家財政は、財政的な持続可能性を確保しつつ、経済発展のニーズに適切に対応するためには不十分であり、GDP比における財政収入の向上によって財政システムの能力強化、財政的に堪えうる社会福祉制度の完成及び不良債権の更なる発生の抑止が必要である。中期的には、徴税能力の強化やゆがみ是正のための税制改革及び予算管理の強化などが求められ、長期的には、年金の支払い率を財政的に堪えうるレベルまで引き下げることが求められる。
(2) 中国の財政は地方分権的であるが、地方政府の財政資源はその責任に見合っておらず、また配分が不均等である。したがって地方政府の財政資源、支出及びその責任について適切なバランスが確保される必要がある。そのためには、短期的には、現在の地方政府に対する収入、支出と責任の配分を再検討すべきであり、より長期的には中央から地方への資金の移転メカニズムから地方のニーズに沿った地方の自主財源に移行していくこと、より効率的に財政資源を各省間に分配するクライテリアを形成することが必要である。
(3) マクロ経済政策が柔軟性を欠いているので、金融政策の効率性強化、公債市場の形成及び為替管理・資本移動規制の柔軟性増大が求められる。短期的には、銀行金利の自由化、金融市場や公債市場の形成を阻害する政府の制限を撤廃することが求められ、長期的には、国内金融市場の発展や金融規律・監督の改善に合わせて資本勘定や為替相場に関する自由化を行うことが求められる。
(4) 規制政策の枠組みは統合的な市場経済のニーズに応えておらず、政府が市場から離れた立場からルールの形成者と仲裁者としての役割を果たす包括的な規制政策の枠組みを作るすることが求められる。短期的には、政府全体の規制政策を調整する機関を形成する必要があり、引き続き透明性の確保及び規制政策の影響を評価する明確な手段の形成に努める必要がある。




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