[12]マケドニア旧ユーゴスラビア共和国

1.マケドニアの概要と開発課題

(1) 概要
 マケドニアでは、2001年、コソボ国境付近でアルバニア系武装組織(NLA:National Liberation Army)が軍、警察等を攻撃し、一時は首都近郊の村がNLAに占領される事態となった。同年8月にアルバニア系住民の地位を改善する枠組合意が成立して以降は、マケドニアは我が国、欧州連合(EU:European Union)、米国等の支援を得て、同合意履行を中心政策としつつ、EU及び北大西洋条約機構(NATO:North Atlantic Treaty Organization)加盟に向けた改革を実施している。2004年3月にはEUに加盟を申請し、4月には安定化連合協定が発効した。2002年の国会総選挙及び2004年の大統領選挙は概ね平穏に実施され、安定化も進展している。他方、紛争で顕在化した民族間対立の構造は現在も残り、引き続き民族融和のための努力が必要とされている。
 経済面では、国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)及び世界銀行の指導の下、政府支出の削減、国営企業民営化等の改革を進めているが、失業率が30%を上回っており、また外国からの投資も低調な状況が続いている。
(2) 「公共投資計画」
 マケドニアには貧困削減戦略文書(PRSP:Poverty Reduction Strategy Paper)に相当するものはないが、世界銀行及びEUの協力により3ヵ年の公共投資計画(PIP:Public Investment Plan)を策定してエネルギー、運輸・通信、水、環境保全等の分野で開発を実施している。また別途、EU及びNATO加盟に向けた年次戦略が作成され、開発及び改革の指針とされている。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数


2.マケドニアに対するODAの考え方

(1) マケドニアに対するODAの意義
 マケドニアでは、アルバニア系武装組織との民族紛争の傷跡が未だ残っており、また国民の4分の1が貧困状態にある。経済発展を軌道に乗せるための資金、制度、ノウハウ、人材等も不足している。マケドニアが安定した民主的国家として発展することが地域及び欧州の安定に不可欠であり、国際社会もこうした観点からマケドニアに対し支援を継続している。我が国としてもODA大綱が重点課題として「平和の構築」と「特続的成長」を掲げていることを踏まえ同国の安定のために、今後もODAを通じ持続可能な経済発展を実現するための改革努力を支援していくことが重要である。
(2) マケドニアに対するODAの基本方針
 マケドニア政府の民族融和政策及び経済改革に重点を置いた支援を行う。また、協力の際は資金協力だけではなく、技術協力を活用することで、マケドニア側の能力向上を目指すことが必要である。
 また、2004年4月に行われた「西バルカン平和定着・経済発展閣僚会合」で我が国が提唱した3分野「平和の定着」、「経済発展」、「域内協力」の3本柱を重視する。
(3) 重点分野
 これまで以下の様な分野を中心に支援を行ってきた。
(イ) 市場経済化支援
 中小企業振興、産業振興。マケドニアの産業振興の鍵を握る中小企業を主な対象として、生産促進、品質改善、輸出振興等を促すことが必要。これまでに企業リストラクチャリング専門家、金属加工専門家等を派遣した他、多くの研修コースに研修員を受け入れている。2004年春に発足した中小企業庁への支援も必要とされる。
(ロ) 平和の定着・人間の安全保障
 保健医療分野が代表的な支援分野として挙げられる。拠点病院や一次医療施設に対する医療機材供与等の実績により、マケドニア内で「医療は日本」という認識が広く持たれている。草の根・人間の安全保障無償資金協力等を活用し、引き続き医療分野を重点的に支援していく。また医療セクターの財政状況改善も重要なテーマで、研修員受入等を開始している。
(ハ) 環境保全
 水供給、水・土壌汚染が代表的な支援分野として挙げられる。マケドニアにおける水供給及び水再利用の改善は環境保全及び住民の健康に加え、経済発展を考える上でも大きな重要性を持っている。円借款案件「ズレトヴィッツァ水利用改善計画」を最大限活用するために、土壌汚染状況の調査に係る協力も併せ行うこととしている。

3.マケドニアに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のマケドニアに対する円借款は96.89億円、無償資金協力は0.96億円(以上、交換公文ベース)、技術協力は2.32億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、円借款96.89億円、無償資金協力95.38億円(以上、交換公文ベース)、技術協力17.65億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 円借款
 円借款としては、「ズレトヴィッツァ水利用改善計画」を実施した。これは、ズレトヴィッツァ川にダムを建設し、毎年水不足に悩む流域住民への生活用水の提供及び灌漑農業を可能にする農業用水の提供を行うことを目指したものである。
(3) 技術協力
 技術協力としては、貿易振興や企業経営に係る研修員受入、専門家派遣を実施した。
(4) 無償資金協力
 スコピエ周辺地域給水改善計画(詳細設計)を実施した他、6件の草の根・人間の安全保障無償資金協力を実施した。

4.留意点

 対マケドニアODAの実施に際しては、特に北西部及び西部で治安上の懸念があり、注意が必要。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対マケドニア旧ユーゴスラビア共和国経済協力実績

表-6 諸外国の対マケドニア旧ユーゴスラビア共和国経済協力実績

表-7 国際機関の対マケドニア旧ユーゴスラビア共和国経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度実施済及び実施中の開発調査案件

表-10 2003年度草の根・人間の安全保障無償資金協力案件


プロジェクト所在図


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