[11]ポーランド

1.ポーランドの概要と開発課題

(1) 概要
 1989年の「東欧革命」以来、政治的民主化と市場経済化を着実に進め、ハンガリーと並んでの先駆的な役割を果たした。2004年5月1日には他の旧社会主義国と共に欧州連合(EU:European Union)加盟を果たした。定期的な政権交代はあるものの特に重大な不安定要因となるような内外政上の問題はない。
 1990年から市場経済化のための改革を開始し、1992には国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)もプラスに転じている。社会主義体制時代から継続する課題としては、国鉄、鉄鋼業界等の近代化、道路、通信等のインフラ整備、医療保険・年金等社会福祉政策改革など、市場経済化の一層の体制整備が中心となっている。
(2) 「開発計画」
(イ) 国レベルの計画としては、市場経済化の整備計画が主体で、各分野別に作成されている。主要計画として、高速道路整備計画(南西A4線、南北A1線、東西A2線の整備)、財政・社会福祉総合改革計画(年金、社会保障制度等の改革)がある。
(ロ) 自治体等が主体の地域開発計画については、構造改革基金等EUの補助金受領基準に則して作成されている。対象分野は、公共交通網整備、道路整備、災害対策、上下水道整備の環境対策等が中心である。
(ハ) 現政権の経済政策の特徴
 ポーランド政府は、一貫して安定的成長を目標に掲げ、また内外投資活性化のためのインフラ整備等を促進してきた。加えてベルカ内閣は、経済政策上の重要項目として貧困・失業対策、国営企業民営化の促進を挙げ、雇用促進、低所得層児童に対する奨学金制度の設立等を促進している。総じて、民間部門の活性化を図りつつ、低所得者層に配慮した経済運営を指向している。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数


2.ポーランドに対するODAの考え方

(1) ポーランドに対するODAの意義
 ポーランドは、我が国及び諸外国の支援を享受し市場経済を発展させつつEU加盟を果たした。しかし、引き続きポーランドの開発、特に高度な技術力(IT、環境問題、国鉄民営化等)を必要とする分野の援助需要は存在するところ、かかる分野において支援を行うことはODA大網の重点課題の一つである「特続的成長」の観点から意義が大きい。また、我が国企業の新規投資の促進を図るため、ポーランド側の環境整備を支援している。
(2) ポーランドに対するODAの基本方針
 我が国は、1989年以降、市場経済及び民主主義への円滑な移行に資するため、技術協力を中心に支援を行ってきた。ポーランドは中進国であるため、無償資金協力は文化無償のみ供与している。
 これまで技術移転を行ったカウンターパート機関(ポーランド日本情報工科大学、ワルシャワ経済大学)は、中・東欧諸国に対する第三国研修の拠点として継続的な活用が可能か否か、プロジェクト終了時の評価を踏まえて可能性を検討する。対ウクライナ三角協力(国連開発計画(UNDP:United Nations Development Programme)との協調の下「対ウクライナIT遠隔教育」)などのドナー化支援も重要である。
 ポーランドのEU加盟により、一層の支援分野等の絞り込みが必要である。
(3) 重点分野
 主にこれまで以下の分野で支援を行ってきた。
(イ) IT
 ポーランド日本情報工科大学を拠点に中・東欧諸国への技術移転支援及びIT分野における中・東欧センターとしての活動のサポート。
(ロ) 省エネルギープロジェクト
 ポーランド・日本省エネルギー技術センターを軸とした省エネルギー技術者の育成、情報の普及活動。
(ハ) 国鉄民営化
 ポーランド政府が進める国鉄民営化計画に対し、我が国は開発調査「ポーランド国国有鉄道民営化調査計画」を実施した。
(ニ) 外国投資誘致支援
 我が国からの投資誘致促進のための支援を行うとともに、EU加盟により変更される諸制度をフォローし、EU域内に加わることにより向上するポーランドの経済活動環境の情報を邦人企業に提供、さらにはより好ましい経済活動環境を作り出すための民間活動支援。

3.ポーランドに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のポーランドに対する技術協力は4.48億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、円借款213.92億円、無償資金協力39.77億円(以上、交換公文ベース)、技術協力81.50億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 技術協力
 省エネルギー、中小企業育成等に係る研修員受入を行っている。その他に、我が国が過去に技術協力を実施したポーランド・日本情報工科大学やワルシャワ経済大学において、我が国技術協力によって得られた知見を周辺国(ウクライナ、モルドバ、バルト三国、ブルガリア及びルーマニア)にも裨益させるという目的の下、これらの国を対象とした第三国研修を実施している。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対ポーランド経済協力実績

表-6 諸外国の対ポーランド経済協力実績

表-7 国際機関の対ポーランド経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度までに実施済及び実施中の技術協力プロジェクト案件

表-10 2003年度実施済及び実施中の開発調査案件


プロジェクト所在図


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