[8]ハンガリー

1.ハンガリーの概要と開発課題

(1) 概要
 ハンガリーは、一貫して「西欧への復帰」を最大の外交目標に掲げており、1999年3月には北大西洋条約機構(NATO:North Atlantic Treaty Organization)への加盟を果たし、2004年5月には念願の欧州連合(EU:European Union)加盟国となった。また、近隣諸国に居住するハンガリー系少数民族の擁護に力を入れている。
 ハンガリーでは社会主義時代より比較的自由な市場経済を導入していたが、体制転換後、巨額な財政赤字と貿易赤字に直面した。1995年より社会福祉削減等の財政緊縮政策を採り、当初は国民の反発を引き起こしたが、1997年より国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)がプラス成長に転換し、良好な経済パフォーマンスを誇ってきた。ただし、近年は財政赤字が再び増大しており緊縮財政政策に転換している。
(2) 「国家開発計画」
 ハンガリー政府は国民の生活水準の向上を長期目標として掲げ、この目標を達成するため国家開発計画の中で3つの目標「より競争力のある経済」、「人材の開発」、「環境・地域開発手法の向上」を挙げている。今後、これらの目標を達成するため、1経済競争力プログラム、2人材開発プログラム、3環境保護・インフラ整備プログラム、4農業・農村開発プログラム及び5地域開発プログラムの5つのプログラムが実施される。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数


2.ハンガリーに対するODAの考え方

(1) ハンガリーに対するODAの意義
 ハンガリーはポーランド、チェコと並んで中東欧域の民主化、市場経済への移行の先駆的な役割を果たしてきている。同国は開放的な外交政策をとっており、我が国との関係も金融、貿易、人的交流、本邦企業進出等の面で活発化していることから、同国との間で安定した協力関係を維持することは重要である。
 今後は、特に環境保護政策に対してEUの基準への適合を図ることが最重要課題の一つであり、この分野での支援に対する需要が大きい。
(2) ハンガリーに対するODAの基本方針
 2003年の世界銀行融資ガイドラインでは、ハンガリーはこれまでの第4グループから第5グループへ変更されたことから、2005年度から文化無償の対象外となった。
 EU加盟を果たしたことも踏まえ、今後は一層の支援分野等の絞り込み、支援の効率化を行う必要がある。
(3) 重点分野
 ハンガリーに対しては、これまで、環境保全対策や市場経済化移行等を中心に支援を行ってきている。
(イ) 環境保護
 我が国の進んだ環境対策技術の移転はハンガリーの環境問題解決に貢献することが期待出来る。環境保全への協力は、地球温暖化対策における共同実施事業や、エネルギー分野での公害防止事業等、我が国からの企業投資が期待できる分野でもある。
(ロ) 市場経済化支援
 我が国の生産性向上技術及び経営改善手法を導入するための中小企業育成支援を実施してきたところ、ハンガリーでは引き続きニーズのある分野となっている。
(ハ) 日本語教育
 ハンガリーが地理的に遠い日本について理解を深めるためには日本研究や日本語教育普及といった支援が重要であり、青年海外協力隊が果たした役割は重要なものとなっている。

3.ハンガリーに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のハンガリーに対する技術協力は3.11億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、円借款49.14億円、無償資金協力5.97億円(以上、交換公文ベース)、技術協力72.36億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 技術協力
 技術協力プロジェクト「ドナウーイヴァーロシュ工科大学における環境技術者育成」を実施した他、環境行政や省エネルギー対策に係る研修員受入等を実施しており、全体として環境保全分野への技術協力が中心となっている。

4.ハンガリーにおける援助協調の現状と我が国の関与

 ハンガリーは自らがドナー国として支援を行う際の対象国(セルビア・モンテネグロ、ボスニア、ベトナム等)を定めており、今後ハンガリーによるこうした国々への支援が行われていくこととなる。ハンガリー政府は支援を行うに当たりこれまでドナー国として経験を積んできた国々と援助協調を行うことにより、より高い支援効果が期待できると考え、日本を含め様々な国々との援助協調の可能性を模索している。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対ハンガリー経済協力実績

表-6 諸外国の対ハンガリー経済協力実績

表-7 国際機関の対ハンガリー経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度までに実施済及び実施中の技術協力プロジェクト案件


プロジェクト所在図


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