「欧州への復帰」を目指し、1995年12月に旧社会主義国で初めて経済協力開発機構(OECD:Organization for Economic Cooperation and Development)加盟を実現、また、1999年3月には北大西洋条約機構(NATO:North Atlantic Treaty Organization)加盟が実現した。また、1998年3月より交渉を進めていた欧州連合(EU:European Union)加盟を2004年5月1日に果たしたところである。
経済面では、クラウス内閣の下で緊縮的なマクロ経済安定化政策が進められ、順調な成長を遂げ低い失業率を維持してきたが、1997年に経済は転機を迎え、特にドイツの景気停滞の影響を受けた工業生産が落ち込み、貿易収支赤字が増大した。政府は財政支出削減と賃金抑制を柱とする内需抑制策を導入したが過去5年にわたり安定的に推移した通貨コルナは急落し、同年5月に変動相場制へ移行した。その後チェコ経済は、強い引き締め策の副作用により、1997年第2四半期以降7期連続のマイナス成長という深刻な不況を経て、1999年第1四半期以降プラス成長に転じ、現在は内需を中心に堅調な成長を続けている。
(1) チェコに対するODAの意義
1990年7月のG24閣僚会議においてチェコ・スロバキア支援の決定がなされたこと、分離独立後もチェコは民主化、市場経済への移行を図っていること等を踏まえ、市場経済への移行支援等を主たる目的として、研修員受入等の技術協力を中心に支援を行ってきた。このような支援はODA大綱の重点課題の一つである「持続的成長」観点から意義が大きい。
旧共産体制下における重工業重点の経済開発等のため深刻化していた当国の環境汚染に対し、廃棄物処理の専門家の派遣等の技術協力を行ってきているが、かかる環境保全支援はODA大綱の重点課題の一つである「地球的規模の問題への取組」の観点から重要。
(2) チェコに対するODAの基本方針
チェコに対しては、同国が中東欧地域の中でも高い経済発展段階にあり、国民総生産(GNP:Gross National Product)が高いことにもかんがみ、同国の発展に合わせて分野をある程度特定して行ってきた。本年5月に当国がEU加盟を果たしたこと等を踏まえ、今後の協力の在り方等については、より一層の効率化、重点化が必要になっている。
(3) 重点分野
チェコに対しては、これまで、市場経済化(中小企業振興、産業政策など)や環境保全(廃棄物処理、環境行政)の分野を中心に支援を実施してきている。なお、1991年度から文化無償協力を行ってきており、これまで視聴覚教材等の供与を行ってきているが、2004年度からは当該協力の対象からは外れている。
(1) 総論
2003年度のチェコに対する技術協力は0.37億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、無償資金協力5.37億円(交換公文ベース)、技術協力5.44億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 技術協力
研修員受入を実施している。