2000年に発足した社会民主党を始めとするラチャン連立政権は、国内の民主化推進、セルビア系難民のクロアチアへの帰還、旧ユーゴ国際刑事裁判所(ICTY:International Criminal Tribunal for the Former Yugoslavia)との協力、など国際協調路線を図った政策を採った。この間、世界貿易機関(WTO:World Trade Organization)や中欧自由貿易協定(CEFTA:Central European Free Trade Agreement)への加盟を果たし、欧州連合(EU:European Union)への加盟申請等を行った。またマクロ経済の安定化にも成功したが、失業問題を始め具体的な生活水準の向上を実感できないなど国民の不満が募ることとなった。
2003年に発足したサナーデル政権は、積極的に少数民族との融和を図るとともに隣国との友好に努めており、2004年6月にはEU加盟候補国の地位が認められた。2005年3月には加盟交渉を開始し、2007年には加盟を果たすことを国の目的としている。ただし、難民帰還、旧ユーゴ国際刑事裁判所への協力など依然として課題は残されている。
クロアチアは旧ユーゴ時代の先進地域であったが、経済は紛争により大幅に落ち込んだ。1994年以降はプラス成長に転じ、高失業率等の問題を抱えながらも2003年には旧ユーゴ解体以前の経済水準を回復した。サナーデル政権は、当初は付加価値税削減、社会福祉の回復などを掲げたが、これらの公約を反故にし、現実的かつ堅実な路線へ方向修正している。国際的には国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)と新たなスタンド・バイ合意を結び、巨額の対外債務についても新たな借入先を国内市場に絞るなど、国際収支赤字の削減に努めている。他方、課題である国営企業等の民営化、地下経済、汚職の問題などが残っており、有効な産業政策も打ち出せずにいる。
(1) クロアチアに対するODAの意義
クロアチアに対しては、旧ユーゴ紛争後の再建支援によって政治・経済の発展を図り、地域の安定の促進を図ってきたが、同国が2004年6月にEU加盟候補国となり、この段階は一段落したと考えられる。
また、EU加盟前プログラムにより各種の制度改革支援が行われる中で、これと協力する形で行政機関の能力の強化、地方の医療・教育機関等への支援を通じて我が国のプレゼンスの浸透を図ることは有意義である。
(2) クロアチアに対するODAの基本方針
1996年11月の欧州評議会加盟や12月のグラニッチ副首相兼外相の訪日を機に、クロアチアを我が国の技術協力と文化無償の対象国とすることを決定した。この決定を受け、1997年3月には経済協力政策協議を実施し、同国の協力ニーズが避難民の帰還・再定住、環境、行政機関の機能強化と市場経済化支援であることを確認した。
また、1997年度より研修員受入れを開始、1998年度からは草の根・人間の安全保障無償を実施し、2000年から開発調査として、環境・産業政策等の分野を中心に実施した。また2002年度には観光分野での技術協力も行っている。
一方、経済水準の回復・発展により、2004年度を最後に文化無償は卒業した。
(3) 重点分野
これまで、以下の分野を中心に支援を行ってきている。
(イ) 文化
文化無償資金協力により、音楽機材供与等の協力を実施してきた。
(ロ) 行政機関の能力強化
研修員受入等を中心に協力を実施してきた。
(1) 総論
2003年度のクロアチアに対する無償資金協力は0.48億円(交換公文ベース)であった。2003年度までの援助実績は、無償資金協力4.51億円(以上、交換公文ベース)、技術協力5.68億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 技術協力
行政政策に係る研修員受入を行っている。
(3) 無償資金協力
草の根・人間の安全保障無償資金協力として10件を実施した。
クロアチアにおいては、戦後復興の時期を過ぎ、各国ドナーも今後2?3年間に援助を卒業させる段階にある。そのため、援助協調は行われておらず、プロジェクトベースでの他ドナーとの協調案件を実施している例があるのみである。