[3]エストニア

1.エストニアの概要と開発課題

 1999年11月に世界貿易機関(WTO:World Trade Organization)への加盟、2004年に欧州連合(EU:European Union)、北大西洋条約機構(NATO:North Atlantic Treaty Organization)加盟を果たし、政治、経済、安全保障面で欧州への統合を加速させている。
 経済面では、農業の他、木材加工、繊維、加工食品、軽機械などの製造業が主要産業である。一方、近年は運輸・通信、金融等を中心に経済の拡大が続いている。エネルギー関連ではオイル・シェールを産出し、一定の自給力を有している。
 独立後に急落した国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)成長率は1995年よりプラスに転じ、1997年には10.6%と大幅増を記録した。1998年のロシア危機の影響で一時的にマイナス成長となったが、2000年の段階的税制改革が効を奏して成長率は回復した。財政収支の均衡や通貨の安定等を背景とし、1999年にインフレ率は3.3%にまで低下した。通貨クローンの安定は投資家の信頼を得て、国営企業の民営化も順調に進んでいる。
 従来ロシアに大きく依存していた貿易も、近年は北欧諸国を中心とした西側諸国との貿易の比重が高まり、2003年の対ロシア貿易は全輸出の3.9%、全輸入の8.6%となっている。経済面での近年の懸案として、生産性を上回る急激な賃金上昇があり、2000年以降は年10%以上の上昇が続いている。また、貿易収支の大幅赤字を外国からの直接投資が一段落した後、どのように解消し経済発展を図っていくかが喫緊の課題である。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数


2.エストニアに対するODAの考え方

(1) エストニアに対するODAの意義
 エストニアは、独立以来、民主化・市場経済化に取り組み、成果を挙げてきており、我が国としても、ODA大綱の重点課題の一つである「持続的成長」の観点等から、このような取組を側面的に支援してきた。
 市場経済の安定に資する人材の育成、及び豊かな文化的資産の保護・育成といった分野への支援は引き続き効果が期待できる。
(2) エストニアに対するODAの基本方針
 2004年、エストニアはEU加盟を果たした。今後はより一層の援助の効率化のため援助の絞り込みを行う必要がある。
(3) 重点分野
 下記の分野については、引き続き援助需要が存在すると考えられる。
(イ) 市場経済化に係る人材育成
 共産主義体制からの移行が間もないこともあって、市場経済のシステムに通暁した人材が払底、その他、一般的な技能工の不足も顕著で職業技術訓練面での協力が望まれる。
(ロ) 文化分野
 国民の文化に対する造詣は深く、音楽、オペラやバレエ、演劇が人々の日常生活の中に不可欠の一部として組み込まれているが、政府は経済発展を優先させ、文化行政にまで予算を充当できないのが実情。我が国の文化無償協力は国民から大きな感謝をもって受け入れられてきている。

3.エストニアに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のエストニアに対する技術協力は0.16億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、無償資金協力1.45億円(交換公文ベース)、技術協力1.18億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 技術協力
 研修員の受入を実施した。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 諸外国の対エストニア経済協力実績

表-6 国際機関の対エストニア経済協力実績

表-7 我が国の年度別・形態別実績詳細


プロジェクト所在図


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