[13]マーシャル

1.マーシャルの概要と開発課題

(1) 概要
 マーシャルは、1947年以来、ミクロネシア、パラオ、北マリアナとともに、米国を施政権者とする国連の太平洋諸島信託統治地域の一部を構成していたが、1986年に米国との自由連合国家に移行した。
 経済面では、伝統的自給経済と貨幣経済が混在しており、農業(コプラ:乾燥ココナツ)と漁業を除き極立った産業は存在していないため、自由連合盟約(コンパクト)に基づく米国からの財政援助及び基地関連収入に依存している。同援助が継続する期間(1986年から15年間)中に経済的自立を達成することを最大の目標に置いていたが、依然国家予算の半分以上を米国の援助に頼っているのが現状である。2003年に米国との間で援助期間を20年(2004~2023年)延長する改訂コンパクトが合意された。
 我が国との関係では、古くは1914年以来1945年まで我が国が南洋群島の一部として統治し、第二次世界大戦時には日米間の交戦があったという歴史的関係に加え、戦後各種の無償資金協力を実施し、国づくり、経済開発において我が国の経済協力は大きな役割を果たしてきている。また政府間漁業協定の締結等漁業関係でのつながりも深い。
(2) VISION2018
 マーシャル政府は、コンパクトの経済関係事項が2001年に失効することを踏まえ、1998年と2001年の2回、官民からの様々な参加者の下で、国家社会経済サミットを開催し、今後の開発課題と戦略について協議を行った。その結果、2003年から15年間の長期開発計画フレームワークである「VISION2018」が策定され、この中で、相互依存社会での持続的繁栄、社会的経済的自立の強化、人材開発、国民の健康、生産性向上、法秩序の安定、道徳心と宗教の尊重、個人の自由と基本的人権の尊重、伝統文化の保護、環境保全、の10項目が目標として明記されている。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.マーシャルに対するODAの考え方

(1) マーシャルに対するODAの意義
 マーシャルは、ミクロネシアやパラオ同様、米国と自由連合関係にあり、改訂コンパクト上の経済協力が2023年に終了する事が予測されることから、国内経済の自立的な発展を目指し、財務管理改善強化を含めた公共セクター改革、離島を含めた社会経済インフラの改善整備、国内生産性向上に寄与する人材育成、民間セクターの振興が重要になっている。マーシャルは我が国と歴史的にも関係が深く、従来から友好的な関係が継続していることから、経済的自立の達成に向けて我が国援助への期待は高い。
(2) マーシャルに対するODAの基本方針
 我が国は、今後も無償資金協力を含む経済協力を継続実施する方針である。その際、我が国の大洋州島嶼諸国への協力フレームワークである、2003年5月に開催された第3回太平洋・島サミットで採択された沖縄イニシアティブ、アクションプランの枠組みを踏まえ、また、マーシャル政府の開発目標・戦略に沿いながら、支援を行っていく。
(3) 重点分野
 我が国は、以下の5分野を重点分野としてマーシャル政府に提示し、支援を実施している。
(イ) 初等・中等教育
 マーシャルでの初等・中等教育の包括的なレベル向上を目指すべく、学校施設の新築・改築に加え、理数科教育、日本語や音楽・体育等の情操教育分野で、政策、カリキュラム、教員訓練、学校現場での多層的な協力を実施していく。
(ロ) 保健サービス
 一般無償資金協力で改修が実施されているマジュロ病院を中心に、看護、助産、医療機器管理等の病院サービス全体の管理改善に対する体系的な協力と、成人病予防と児童栄養改善を中心とした国民一人一人の健康管理改善意識向上の為の協力を実施し、人材育成と組織強化を支援する。
(ハ) インフラ管理
 一般無償資金協力で舗装を行ったマジュロ環礁道路のメンテナンス、交通インフラ体制の整備向上や、通信インフラの整備拡充等、インフラ整備の改善の必要性が高くなって来ている。これらの分野での施設改善、人材・技術者育成への協力を実施していく。
(ニ) 環境保全
 2003年5月の第3回太平洋・島サミットで、大洋州島嶼諸国首脳と我が国が認識を共有した域内共通の開発協力課題である「環境保全」への協力への一環として、環礁島嶼国での固形廃棄物処理に関わる廃棄物埋立地改善、ごみ行政の改革、関連法規の改定、環境教育の普及を主要目標としている。また、廃棄物処理分野での人材育成と、国民の環境保全に関する意識向上を目指し、環境保全体制を確立強化していく。
(ホ) 水産振興
 国内沿岸漁業振興を目的に、今後もマーシャルの水産開発計画の戦略、重点分野に沿って、海外漁業協力財団(OFCF:Overseas Fishery Cooperation Foundation)による技術協力を随時行いながら、同国の水産開発の協力を継続実施していく。

3.マーシャルに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のマーシャルに対する無償資金協力は7.11億円(交換公文ベース)、技術協力は2.03億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、無償資金協力102.09億円(交換公文ベース)、技術協力26.27億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
 2003年度は、同国最大の総合病院であるマジュロ病院の機能を強化する「マジュロ病院整備計画」を実施した。本件は2004-2005年度に渡って継続される予定である。
(3) 技術協力
 研修員受入およびボランティア派遣を中心に協力を実施している。1989年に青年海外協力隊派遣取極が締結されており、教育分野を中心に青年海外協力隊を派遣している。そのほか、水産流通分野での専門家派遣を実施している。

4.マーシャルにおける援助協調の現状と我が国の関与

 マーシャルにおいては、活発な援助協調の動きは見られないが、国家予算の60%以上を支援している米国や、アジア開発銀行(ADB:Asian Development Bank)をはじめとした他ドナーとの協力も視野に入れて援助を実施していく。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対マーシャル経済協力実績

表-6 諸外国の対マーシャル経済協力実績

表-7 国際機関の対マーシャル経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度草の根・人間の安全保障無償資金協力案件


プロジェクト所在図


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